ワイズ賢国のクラスメイト
トキ達が行軍始めた頃・・・
「なあ?聞いたか?あの話!」
「何の話だよ!
今やってる事と関係なかったら殴るぞ!」
「・・・」
ドスッ・・・ドン。
殴られた衝撃で壁に激突する。
「お…お前、本当に腹殴るなよ…」
「ん?関係なかったから殴ると前もって言ったろ?
で?何の話だ?休憩の暇潰しに聞かせてくれ」
男はフラスコとビーカーに
飲料水を入れたビーカーを殴った相手に渡し
丸いすに座り足を組む。
殴られた相手も殴られた腹を押さえながら
丸いすに座りビーカーに入ってる水を飲む。
男達がいる場所はワイズ賢国の研究室。
男達は召喚された生徒であり3つのグループ、
動物、植物、生活の生活グループに所属している。
本来は5人組だが見張り付きの野外作業,採集等の
フィールドワークを終えて戻って来たところで
先に2人だけが研究室にいる。
残りの3人はジャンケンに負けて荷運びをしている。
「これで飲むのも慣れたな…
なんだか科学の先生になった気分だよ…」
「どうでもいいわ!早く教えろよ!」
男は苛立ちながら答える。
「せっかちだなぁ…
せっかく外に出れる話を持ってきたのに」
「どうせ、監視付きの外出だろ?
さっきまでと同じじゃないのかよ!」
「監視付きのは間違いじゃないけどな?
ラジュマ王国で内乱が起きてるだろ?」
「ああ、親子喧嘩だろ?兵士も噂してるよ」
ワイズ賢国にも内乱の話が入っている。
第3王子が王に若い貴族を率いて
反乱を起こしており半分の貴族を取り込んだと。
「その内乱の反乱軍側にワイズの貴族が居たらしくてな?
殺されたらしいぞ?ラジュマ王国に。
それで報復として反乱軍に加担するとかで
志願兵を集めてるみたいだぞ!
そしてその志願兵の手伝いとして
俺等がフィールドワーク含めて外部調査をする為に
同行させられるってさ」
話をした男は嬉しそうに話している。
やっと異世界を探索できると喜んでいるが
聞いていた男はジト目をして睨んでる。
「それさ?体のいい厄介払いの間違いだろ?
神楽坂さえ居ればこの国は安泰だからな?
気になったんだが内乱中の国に
何故ワイズの貴族が居たんだ?
殺される可能性が高い国に居るのが間違いだろ?
潜入捜査でもしてたのか?」
「さあな?王国軍側にも潜入していたそうだぞ?」
「完全に策略じゃねえか!
・・・っというか良く知ってんなお前?」
軍の策謀を知っている相手に不思議に思いながら
何処で仕入れたのか気になる男。
生活グループとして殆ど一緒にいる仲間。
寝食を共にする相手として策謀を知っている事に
驚きを隠せなかった。
「ほら最近、俺達休みがあったろ?
その時に昼間っから酒場に行って酒呑んでたら
軍の兵士が現れてな?
酔っ払ったのか話してるのを聞いたんだよ!」
「おい!未成年!なに酒飲んで・・・ん?
この世界は15歳が成人だから問題ないのか?」
この世界では15歳から大人と認められている。
日本の常識と混合してしまい悩んでしまう男。
「戸川は縛られ過ぎてんだよ!
もう少し大人になろうぜ!」
「直方?大人だろこの世界では俺達は…
まあ、詮索しないでやるよ…
それよりも遅くないか?上津役達?」
「そういえば・・・遅いな?
もしかして捕まってんのかな…兵士に…」
「また例の奴等か?懲りないよな?
求婚されてんだっけ?」
「そうそう、何回もフラれてんのにしつこいよな?
きっと今度の口説き文句は…」
「今度の遠征に無事帰ってきたら結婚してくれ!
だったわよ?」
呆れた顔で部屋に入ってくる女性が告げる。
肩が凝ったのか肩を回しながら歩いてくる。
「上津役?返事はやっぱり?」
「お断りしたわよ!うんざりだわ!
私の名字と爵位を間違えてるんだから!
私は囚われてる一般人なのにね?」
上津役は新たなビーカーを用意して
紅茶を注いで戸川達の所に向かった。
「遠征か…って事は直方の言った通りに
なるってことなのか?」
「え?何の事を話してるの?」
「俺達も遠征に行くって事だよ!
ラジュマ王国の内乱の手伝いに…」
「えぇぇぇぇ!?本当に?嫌なんだけど…」
「上津役?言葉と顔が一致してないぞ?」
上津役の顔は嬉しそうに笑顔になっていた。
「まあ、良いとして残りの2人は?」
「一年は宰相に呼ばれていたわよ?
北斗は・・・」
ダン…扉の方から音が聞こえた。
「ちょっと…演じる身になってくれるかな?
狂人キャラ辛いんだけど・・・」
ぼろぼろになって入ってくる北斗。
いつも上津役の恋の断り方が酷いために
常に狂人キャラで接する北斗が
兵士に逆恨みとしてボコボコにされるのが
毎日である。
今回も逆恨みにボコボコにされてしまった北斗。
「・・・ボコボコにされてるな?
治してやるからこっち来いよ」
戸川は治癒魔法が使える。
ワイズで魔力鑑定出来る水晶を使い
各々が使える属性を鑑定されている。
本来、命の軽いこの世界では重宝されるが
賢国では治癒に関して最先端の技術を
保有しているために外れ枠として
生活グループに入れられている。
戸川は両手に青白い光を纏わせて
北斗を青白い光で包み込む。
ぼろぼろで擦り傷が多数有った体は
痛みを抑えながら治癒させる。
「いつもありがとう。」
「大変だな?そろそろ治るから待ってろよ」
青白い光が北斗から徐々に離れていく。
治癒が終わった場所から光が蝶々の様に
ヒラヒラと漂いポンっと
線香花火のように消えていく。
全ての光が消えると衣服は汚れたままだが
体に傷は無くなっていた。
「凄いわよね?いつ見ても…
ここにいるよりも治癒師として
働いてた方がいいんじゃないかしら?」
「俺も出来るものならそうしたいが…
無理だろうな…ワイズ製のポーションは
俺の治癒よりも治癒力高いからな?
高い値段なら腕が生やせるらしいぞ?ニョキッとな?」
「・・・想像してしまったわよ…気持ち悪い…」
「治そうか?今なら肩凝りも治すぞ?」
「胸が大きいから肩凝りするって言いたいわけ?
セクハラで殴るわよ?」
ドスッ・・・
「も、もう殴ってる…しかも何故僕・・・」
バタンと倒れる北斗。
「あーあ、せっかく治したのに!
パワハラで訴えられるぞ?」
「訴えられる法廷があるなら出てみたいわよ!
あんたのせいでしょ?北斗が倒れたのは!」
「いやいや、八つ当たりだろ?今の状況は?」
「一年?帰ってきてたのか。
宰相に何か言われたか?」
扉からうんざりした顔で入ってくる一年。
戸川の所に向かう途中で倒れる北斗を見て
憐れみの視線を向けた。
「聞いてるかも知れないが今回の遠征、
僕達も行くことが決定した。
ワイズに残るのは動物グループから神楽坂、斎藤。
植物グループは八乙女、金城。
後は全員、総勢10人は手伝いだそうだ。
残ってるのは功績がある奴として残してるが
人質みたいなものだろうな…」
一年が肩を落としてがっかりする。
「・・・想像していたが俺達だけじゃなかったな?
一年?他にもあるだろ?言うことが」
「・・・互いに監視する様に命じられたよ…
これは各グループの代表だけが
知らされている事だからね?
他のグループは報酬を求めて躍起に僕達を見るだろうね…
未だに未練を残して研究してるの僕達だけみたいだし…
流石に2年近く飴と鞭が続くとこうなるんだね…」
落ち込み丸くなっていく一年。
そんな一年の肩をポンと叩く戸川。
「洗脳と一緒だからな?
仕方無いって言えば仕方無いだろ?
だがこれはチャンスが来たんだ!
ギリギリまでワイズに靡いて
フィールドワークと請じて離れられる。
最後のチャンスかもしれないからな?
ここは宰相に言われたように行動して
ラジュマに逃亡しよう!
神楽坂達には悪いが俺達は逃げさせてもらう」
「一緒には逃げないだろうね…
飴を常に与えられて躾られてる。
犬みたいに八乙女と神楽坂は首輪着けてたよ…
久しぶりに会ったら感情が無いように見えた…」
「・・・気になるけど今は
ワイズから逃亡することだけを考えようよ。
噂では斗鬼君らしい冒険者がラジュマに
いるらしいから頼ってみる?」
「斗鬼か・・・」
全員が頭を上げて思い出していた。
倒れてる一人を除いて・・・
「・・・そこら辺は後で考えようか?
今はどう逃げるか考えていこうか!」
戸川達は今の斗鬼を知らない。
遠征を明日行うと知り急いで策を練る。
戸川達は変貌したクラスメイトと会うことになるのか?
答えはラジュマ王国で・・・