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カフェ・シルキー

「こんな気を使わなくてもいいのよ?」

「いえ。毎日お弁当作ってもらえるのは有り難いですから」

 壬生悠人はアルバイト代が入った今日、毎日悠人の弁当を作ってくれるお礼の品を携えて雨村家を訪れていた。

 母に言われた通り五千円ほどの値段で、月読に聞いた美味しい洋菓子の店。そこのマカロンを購入して葵の母に差し出した。

「あら、此処って最近有名になった洋菓子屋さんよね?」

「みたいですね。俺もバイト先の人に聞いただけなんで、詳しい事はわからないですけど」

「嬉しい事には変わりないわよ。葵なんて十年以上食べてるのに、労いのプレゼントも無いんだから」

「そんなん言われたって……」

 葵は口を尖らせ抗議する。

「……冗談よ。それより、お父さんもそろそろ帰ってくるから夕飯にしましょう。悠人君も食べていってね」

 葵の多少の機嫌の悪さを感じながら、悠人は夕飯をご馳走になった。


 もう完全に習慣化した満理月堂でのアルバイト。今日は土曜日なので、朝から働いていた。そして、そこでのガラクタ磨きも慣れたものとなっていた。

「これ、なんですか?」

 悠人はいぶかしげにコーヒーメイカーに三回転のループを加えた管がくっついたような形をしている物を見る。

「それは、氷を作れるとかいう江戸時代くらいの発明品だな」

 月読は本を読みながら答えた。

 氷が貴重品だった事を考えると必要な発明だったのだろう。しかし、どういう理屈で氷が生成されるのかは検討も付かなかった。

 悠人はなるほどね。と呟きながら手入れを再開する。一通りの手入れが終わったので棚に戻し、一息つくと月読も本を閉じる。

「さて、昼食に行くぞ」

 気付けば時計は正午を指していた。いつもなら悠人が昼食を作っているのだが、今日はどいう訳か食べに行くらしい。

「どこに行くかはもう決まってるんですか?」

「ああ決まっとるぞ。【シルキー】という喫茶店じゃ。古い友人が店主をやっとる」

 月読の友人と言うからには、普通の人間ではあるまい。恐らくは日本に伝わる神の一柱だろう。

 月読に案内されるまま、満理月堂から徒歩で五分。オシャレな外観の店に着いた。

ドアを開けるとカランカランとベルが鳴る。するとコーヒーの香りが悠人の鼻孔をくすぐった。

「あら、いらっしゃい。月読ちゃん」


最後まで読んでいただいてありがとうございます。

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