売れる時には売れる
「昨日だけで大分キてるな」
『そうか。持って二日じゃな』
貴子は携帯電話で月読に経過を伝えた。眠ろうとすると恐怖で起きるというのは偶然では無い。月読が与えた罰だ。それは絶対に逃げられるものでは無いので、信二が改心するしか手立てはない。
「ほどほどにな」
そう言って通話を終了する。
その日の夜もまた、信二は眠ることを許されなかった。精神は削られ、疲労はたまっていく。うとうとするだけでもツライ。それが三日目になった時、内藤信二は洗いざらい全てを話した。全てを語りつくし、その場で崩れるように倒れ病院に担ぎ込まれた。それと同時に平内喜造の逮捕も着手された。
そのニュースを見た悠人は、月読が何かをやったことは判っていたがあえて何も聞かなかった。今回ばかりは何をしたか聞くのは本能が拒否をした。
「盗まれたものも帰って来たし、一件落着じゃな」
「全く、証拠品だから本来であれば、まだ返せないと言ったのにお前は」
「姉上には感謝しとるさ。じゃから都のところの限定おはぎをご馳走しとるんじゃろ?」
「朝から並んで買ったのは俺ですけどね」
盗まれた物の早期返還を手伝ってくれた貴子へのお礼として、ただでさえ競争率の高いカフェ・シルキーのおはぎを、朝早くから並んだのは月読では無く悠人だった。
「悠人にも感謝している。いやー、私は恵まれているなぁ」
悠人としても、朝並んだことで今月のバイト代に少額の上乗せがあると言っていたので大した文句は無い。
「だが、何で急いでいたんだ? 何か必要だったのか?」
おはぎを食べながら貴子が訪ねる。
「まあな。もうじきわかる」
月読が扉を見ると、その瞬間に扉が開いた。
そこには温厚を絵にかいたような老人がいた。白い髭を蓄え杖をつき、和服を身に纏っていた。
老人が満理月堂に入ってくるなり、視線をぐるりと一周させた。そして迷うことなく月読に話し掛ける。
「貴方が店長さんですか。今朝テレビを見ていましたら、私が長年コレクションに加えたいと考えていたものが映りましてな。何とかこの店の事を突き止めまして。大変な不躾だという事は重々承知しておりますが、出来ればアレをお譲り頂きたい」
「よかろう」
そしてあっさりと氷を作れるらしいガラクタは売れた。しかも男性は、
「私は無駄に買い叩くような真似はしない」
そう言って四百八十万円という大金を置いて去っていった。
「な? 早く返してもらって良かったろ?」
驚いたのは貴子だ。危うくモチ米がのどに詰まりそうになったのを、お茶で何とか流して事なきを得た。
「まさか売るために早くしろと言ってたのか?」
「欲しいと言っているヤツがおるんじゃから売るしかないじゃろ。それに私を一発で店長と見抜いたこともポイント高いのう」
「確かに、真っ先に月読さんに話し掛けてましたね」
「悠人はどう見ても学生じゃし、姉上は経営者の感じはせんわな」
一番子供に見える容姿なのに。と心の中だけで思い、悠人は今日のアルバイトを始めるのであった。
この話を持ちまして、日本神話のあの神は、現代日本でのじゃロリ店主となっている は終了します。
元々日本神話などが好きだったので、とても楽しく小説を書けました。
読んで下さった方、ブックマーク・評価・感想をしてくださった皆様には本当に感謝です。
本当にありがとうございました。




