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ひらめき

「都さん、パンケーキなんてどうですか? 厚いのを三段くらい重ねれば見た目のインパクトも良くなると思います」

「それはやめた方がいいと思うわ。【ウサギのおやつ】さんがパンケーキを出すみたいだから」

「ケーキ屋さんでしたっけ。ある意味本職のパンケーキですね」

 スイーツコンテストに出場を決めてからからの一週間、都と葵の二人は出品するスイーツを考えていた。

 アイディアを浮かばせながら床掃除をしたり、今の様な会話が圧倒的に増えた。常連客にも出場することが広まったらしく、他店の情報をくれる人もいた。卑怯と言われればそれまでだが、全員がわざとらしく独り言のようにつぶやくのだから、聞こえてしまうものは仕方がない。

 かくして、他店とかぶらないスイーツの開発が続いた。

 だが、そんなに上手くも簡単にもいかなかった。コンテストに出品するものには二つの条件がある。

 一つ目は、スイーツは必ず最短でも三ヶ月間、店頭で販売しなくてはならない。

 二つ目は、値段の提示だ。

 地域活性のためのコンテスト。優勝したかに関わらず、美味しそうなスイーツを求める人を呼び込むのが優先事項だ。

 その催しで優勝の看板だけを狙い、高級な食材だけを使えば原価の関係で値段が高くなる。わざと値段を低く設定しても、三ヶ月間は販売しないといけないので儲けは出ない。あくまで、手ごろな値段で甘味を楽しんでもらうのが目的の防止策だった。


「値段も審査対象になるのから大げさなものは出せませんしね」

「そうねぇ。小麦粉を使うものだと、ある程度は抑えられるけど人気も高くなるのよね」

 なかなか良い答えが見つからずにいた。

 だがある日、転機を迎えた。その日も学校の後にシルキーで働いて帰宅した。

時間は夜の二十時過ぎ、リビングのソファでくつろぐ父と母は時代劇ドラマを見ていた。

「おかえり葵、お疲れ様」

「ただいま」

 母は振り返って葵の労をねぎらうが、その会話にも父は入ってこないで画面を見つめている。

(集中してるなぁ)

 真剣に時代劇を見ている父は気にしない事にする。

「夕飯は食べるでしょ?」

「うん、食べる」

 用意するから待ってて。と、母はソファから立ち上がりキッチンへと向かう。

 葵は自室で制服を着替てからリビングへ戻った。

 テーブルに着き、何となくテレビを見る。場面は茶店ちゃみせで、二人の同心どうしんと呼ばれる侍が会話をしながらお茶を飲んでいた。すると店の奥からお茶請けの和菓子が出てきた。

「………」

 画面に映るそれを葵はマジマジと見つめる。頭の中で歯車がかみ合う感覚と共に、名案が浮かぶ。

「これだ」

 自分の案に絶対の自信を見せながら、夕飯を済ませた。


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