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参加不参加

「都さん! これに出場しましょう!!」

「きゃー!」

 勢いよく開かれた扉に驚き、都は危うく拭いていたカップを落としそうになった。

扉の方を見れば、それは最近雇った少女だ。

「葵ちゃん? どうしたの、そんなに慌てて」

 ひどく慌てている彼女を落ちつけるために優しく声をかけると、その様子に葵もだんだん落ち着きを取り戻していく。


 そして彼女はスイーツコンテストの用紙を都に見せた。

「これに出場するのはチョットね」

 一通り内容を呼んで、困惑を見せながらやんわりと断る。

「駄目ですか」

 しょんぼりと肩を落とす姿はなんとも心苦しいが仕方がない。料理が美味しくなったのは昨日なのだ。いくら何でも早すぎる。せめて半年後ならば出場を考えるところだが、今回では無い。

「ごめんね。第二回には出場しましょ」

 姉がいたらこんな感じなのだろうか。と兄弟の居ない葵は思った。

 そもそもこの話は、学校でのくだらない言いがかりから生まれた自分の我儘だと納得した。

「解りました。いきなり無茶を言ってすいませんでした」

 ゴメンね。と重ねる都と、シュンとする葵。そんな空気を終了させるように、カウンターに置かれている固定電話が鳴った。


 都は受話器を取り、話し始める。

「うん、うん。そういう事だったのね。わかったわ。葵ちゃんと相談してみる」

 都はガチャ、っと受話器を置いて葵を見る。

「今の電話は月読ちゃん。葵ちゃんがコンテストに出たがった理由も聞いちゃった」

「聞いちゃいましたか」

「ええ、コンテストは一ヶ月後でしょ? それまでに美味しいスイーツを考えなきゃね」

「良いんですか? さっきは嫌だって言ってたのに」

「月読ちゃんにも、コンテストに出て自信をつけて場末の喫茶店を脱出するべきじゃ。って怒られちゃったから」

 あはは。と笑う都。

 自分の我儘に付き合ってくれる店長と、後押しをしてくれた月読に感謝をしながら、葵も笑うのだった。


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