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うっかり間違い

「な? これに参加して優勝すれば人気店間違いなしじゃ!」

 このコンテストは市が運営しているもので、市の活性化を目的としていた。本当に美味しいものが優勝すれば町や市で話題となり、さらにはテレビの出演も望める。そうなれば市としてもアピールができて喜ばしい。というプランだった。


「せっかく都の料理も普通になったんじゃ。腕試しも必要じゃろ。ちなみに、私たちも参加するぞ悠人。私たちはプロではないからな。参加する事を目的に楽しもう」

 しかし、ずっと用紙を見ていた悠人が月読に質問する。

「でも、何で飲食店でもない満理月堂にこんなものがあるんです?」

 月読の持っているのは参加要項の書類。本来であれば、飲食店にのみ渡されるもののはず。満理月堂に渡されるのは、宣伝用のポスターのはずだ。


「今朝、市の職員の男がやって来て置いていった。きっと誰でも参加OKなんじゃろう」

「あぁ、これって間違えただけですよ。参加資格に【飲食を提供している店舗なら、現在スイーツを販売していなくても創作スイーツで参加可】って書いてあります」

 その職員の男は、完全に店構えで間違えたのだろう。満理月堂はパッと見の雰囲気は老舗の和菓子屋のも見える。その事が生んだ悲しい出来事だった。

 葵は都に連絡を取り、スイーツコンテストの参加を説得するためにシルキーへと向かった。そして満理月堂には、参加できない事に臍を曲げてテーブルに突っ伏した月読と、どうやって機嫌を取ろうか悩む悠人がいた。


「お茶にしますか?」

「うむ」

 元気なく頷く月読のために、お茶を淹れにキッチンへと向かう。

 いつも通りティーバッグのお茶を棚から出した時にある事に気付いた。

「あの、お茶請けが棚に無いんですけど」

 いつもなら棚にあるお茶請け。月読がその日に食べたいものが入っているのだが今日は無い。コンビニまで走ることを覚悟した悠人だったが、月読はテーブルの下から紙袋を取り出した。

「今日のお茶請けはこれじゃ」


「それってグランの紙袋じゃないですか」

 自身も買ったことがあるので、紙袋に書かれているマークがグランであると知っていた。

「だって葵の愚痴が、グランに関することだなんて知らんかったじゃから仕方なかろう」

 包装紙をはがして箱を開ける。中身はマカロンとクッキーが詰められていた。

「怒りと美味し物は別じゃ」

 そう言って月読は出された緑茶を飲み、マカロンを頬張った。


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