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信頼とは

 何もない休日。十一時を過ぎるまで惰眠をむさぼり、のっそりと起きて顔を洗う。寝巻のまま適当にパンを焼き何も付けづに食べる。素材の味と言えばカッコいいが、わびしいといえばその通りだった。

(マヨネーズくらいつければよかったかな)

 牛乳を飲みながら適当な後悔をしていると、ポケットのスマートフォンが震えた。画面を見ると電話の通知が表示されていて、相手は雨村葵となっていた。

 通話をタップして耳に当てる。

「もしもし」

『あのさ。変な事聞くんだけど、神様って信じてる?』

 その言葉に、悠人はピンと来た。


(都さんに聞いたかな)

 神話に出てくる大宜都比売。それが自分だという証明はどうしたんだろうか。そんな疑問を思いながら、葵を安心させるための言葉を言う。

「俺も最初は信じられなかったけどさ、本当の事なんだよ」

『本当にそうなんだ。写真を見せられて、悠人に確かめてみれば良いって月読さんが』

「あ、いるんだ」

 月読がいるという事は、見せられた写真とは以前悠人が見たものと同じだろう。女学生姿や、もんぺ姿の白黒写真だ。

『悠人。お願いがあるんだけど、今からお店に来てくれない? 私一人じゃ受け止めきれなさそうなんだけど』


「わかった。すぐ行くよ」

 そう告げて電話を切った。

 今の葵を待たせるのは可愛そうなので、さっさと着替えてシルキーへ向かった。

 シルキーの扉を開けると、すぐに葵が駆け寄ってきた。

「遅かったじゃない」

 決して遅いと言われるほどの時間は掛けていないのだが、彼女にとってはそれほど時間を長く感じたのだろう。

「悠人。こっちに来て葵の説明に加われ」

 月読にこっちに来いと言われたので、葵と共にカウンターに座った。

 そこから一時間をかけて丁寧に説明を繰り返した。

「…………」

「どう?」

 沈黙の葵に対し、少し疲れた様子の悠人。月読と都も一生懸命話していたので若干の疲労が見える。


「つまり、本当に月読之尊と大宜都比売なの?」

 葵は月読と都を交互に眺めてから写真を見る。

「そうじゃ」

「ええ」

 二人の女神が答える。

 突然信じるというよりも、一先ず棚上げにするか信頼から信用に変化するまで時間を過ごすかの二択。葵の出した答えは、

「解りました。信用します」

 だった。

 その言葉に思わず三人はため息を吐く。一歩間違えば、都は雇ったばかりのアルバイトを失い、悠人は可笑しな事になったと騒がれる事態になっていた。

「ありがとう葵ちゃん。信じてくれて」

「私も悠人がいなければ、信じてなかったかもしれないです」

「だそうじゃ。よくやったな悠人よ」


 人に信頼される人間になれ。それが悠人の父親の座右の銘であり、息子にもそうなってほしいと願っていることでもある。なので悠人本人も父の口から幾度となく聞いてきた言葉で、少なからず人生に影響を与えてきた言葉だ。しかし、それが葵に対して効力を発揮しうるとは考えてもいなかった。


 なので悠人は苦笑いで答えるしかなかった。

 その日は、都の手料理とコーヒーで昼食を取り、悠人の一日は終了した。葵も初めてのアルバイトを満足に終える事が出来た。

 しかし次の日に、葵にとって不満ともいえる出来事が起こった。


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