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二人で仲良く

(決まってしまった)

 悠人たちと別れシルキーからの帰り道、葵は悩んでいた。アルバイトが決まった事は嬉しい。アルバイトをするなら雰囲気の良い所と決めていたし、店長の食神さんも優しそうだったから即決してしまった。でも自分に求められているのは料理のアイディアで、自分は料理には詳しくない。今まで母親が出してくれる料理をただ食べるだけだった。


 三ヶ月前に悠人の両親が、彼を置いて出張することになったと聞き、その際に母に言われた言葉。

悠人君も頑張るんだから、アンタも少しはやってみたら?

 一人暮らしをやれと言っているのではない事は理解できた。家事をやれと言われているのだ。

 負けず嫌いとしては、母に上手い様に乗せられているとしても、受けて立つしかなかった。家事をこなせるようになったので、実践として悠人にコロッケを作ったりもしたが、それも母に教わった事をそのまま試しただけだ。決して料理上手でも詳しいわけでも無い。

「解らない事は勉強すればいい」

 それが葵の答えだ。その日から葵の料理に対する挑戦が本格的になった。

「アルバイト決まったの?」

「まあね。シルキーって喫茶店」

 先ほど決まったアルバイト先を伝え、リビングのソファーに座る。右手にスマートフォンを持ち、喫茶店のメニューを調べる。

 悠人に言った時は何となくのイメージを伝えたが、今は状況が違う。人気の喫茶店で出されている料理はどれも美味しそうだ。昔ながらを売る店もあれば、量を売る店もある。その一つ一つを調べ考える。

 シルキーに合う料理は何か。夕飯を食べているときも、お風呂に使っているときも、寝る瞬間まで使って考えた。

 そして次の日、初めてシルキーに出勤した。

 看板も出ていないシルキー。そのドアを開けると、都は開店の準備をしていた。

「おはよう、時間ぴったりね」

「おはようございます。よろしくお願いします」

 渡されたエプロンを付ける。

「じゃぁ、テーブルを拭いてもらえる?」

「解りました」

 床掃除をした後なのだろう。テーブルの上に逆さで乗っている椅子を下ろしてテーブルを拭く。

 五つあるテーブルを順番に拭き、カウンターも拭いた。

「終わりました」

「ありがとう。じゃぁそこの看板を外に出してくれる?」

 シルキーと書かれた看板を表に出す。

「お疲れ様。準備はこんなものなの。お客さんが来れば料理系のお仕事とか、洗物とかあるからその時教えるわね」

「はい」

 初めてのアルバイトで緊張もあり、あまり会話が続かないそれに都も気付いて積極的に会話を振る。

「私もアルバイトの子を雇うのは初めてだから緊張しちゃうわ。二人で仲良くやっていきましょうね」

 微笑む都に釣られるように笑う葵。

 そこに本日一人目の来客が扉を潜った。


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