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シルキーのアルバイト

「ごめんね、良いアイディアを貰ったのに」

 それは悠人と葵に向けられた謝罪だった。

「いえ、気にしないで下さい。試作品なんだから、自由な発想が大事ですよ」

「そうですよ。美味しい事には変わりないんですかから、後は調理法やちょっとした工夫でガラッと変わりますよ」


 口直しのコーヒーを啜る月読は、考え事しているらしく黙ったまま何も喋らない。

 それを不審に思った都が月読に声をかける。

「どうしたの? 気分でも悪い?」

 優しく尋ねる都の目をじっと見つめて、月読は言う。

「都に足りないのは普通じゃ。なまじ美味いものを作るもんだから気付かんじゃろうが、お前には普通が足りない」

 真を突いた言葉だ。いくらベースが美味しいものでも、受け入れられなければ意味がない。

「そこで私からの提案じゃ。葵を雇うのはどうじゃ?」

「え!? 私ですか?」

「うむ、アルバイト探しとるんじゃろ?」


 また無茶な事を言い出したな。と悠人は思った。月読の行動の大半が思いつきで、今回の標的は葵と都だ。

 葵がアルバイトを探しているのは知らなかったが、職種だって自分に合っているかという問題もあるし、そもそもシルキーがアルバイトを募集しているのかのわからない。

「私は働いてくれる人がいるなら嬉しいわよ? 月読ちゃんの知り合いなら安心だし」

 三人しか会っていないが、出会った神様はおおらかの様な大雑把な様な性格をしている。しかし、悠人は知っている。葵がおそらく誰よりも大雑把な事を。いや、正確に言うなら考え方が男前なのだ。判断が非常に早く正解を選んでいく。

「月・水・金。土・日も空いてます」

「じゃあ、月・水・金・日の週四日でも良い?」

「ありがとうございます。頑張ります」

 シルキーの客足は鈍い。そのため、暫く葵の仕事は都の料理センスを普通にする事になるらしい。


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