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無理やりな偶然

「確かにそのくらいの方が奇抜な改良はしないじゃろ。よく考えついたな」

「いえ。正直に言えば、俺が考えたわけじゃないんですよ。葵、ウチの隣に住んでる友人に喫茶店のメニューを聞いたら、答えてくれたんです」

「ほぅ、彼女か?」

 月読の思いがけない質問にも悠人は動揺なく答えた。

「そんなんじゃないですよ。家族ぐるみの付き合いがあるだけです」

「でも、仲は良いんじゃろ?」

「悪くはないですよ。今回の俺の一人暮らしだって、葵がいなきゃもう少しすさんでますから」


 月読は今度は何も言わず、ニヤニヤと笑みを保っていた。

「なんでニヤついてるんですか」

「いやな、是非会ってみたいなと思ってな」

「絶対に会わせませんよ。だいたい月読さんのこと、どう説明すればいいんですか」

「普通に女神と説明すればよかろ。悠人が説明すれば信じてもらえるのではないか?」

「俺のバイト先の店長って、神話に出てくる月読之尊なんだ。って突然言い出したら心配以外されませんよ」


 短期間にストレスが掛かり過ぎたと判断されるのがオチだろう。ただでさえ初めての一人暮らし、初めてのアルバイト。心労からくる言動と思われても不思議はない。

「なッ、雇い主に対して随分な言い草じゃな。時給を下げるぞ!」

 ばちも当てるぞ。と威嚇をする月読。しかし、何と言われようとも葵に月読の事を話す気は無かった。


 その日も悠人は満理月堂へ向かっていた。土曜日なのでゆっくりとしたかったが、そうもいかない。

「お疲れ様です」

 いつもなら、すぐにでも何らかの返答があるのだがそれが無い。代わりに聞きなれた声が二つ聞こえてきた。

「このお店の店長さんなんですか?」

「うむ。悠人も最初は信じんでな」

 そんな会話が聞こえてきた。嫌な予感も何も、確実に葵がいるのは理解できた。店の中を見ると月読と葵がお茶を飲みながら談笑していた。

「あの」

 控えめに割り込んでみる。すると月読が悠人に気付いて挨拶をする。


「おう、お疲れさん。昨日友人になった雨村葵じゃ。話してみるとお主の知り合いじゃと言うんじゃから世の中は狭いもんじゃな」

 絶対に偶然ではない。どうやったかはわからないが、月読が無理やり葵に出会ったに違いない。

「昨日?」

 悠人と月読の会話を知らない葵に、それとなく聞いてみる。


「うん。昨日買い物してたら、道に迷ってる女の子がいたから声をかけたのがきっかけ。でもそれが悠人のバイト先の店長さんだなんてねぇ」

 どうやって葵の行動を先読みして、待ち伏せをしたのかはわからないが、確実に月読は狙ってやったのは明確だ。それを問い詰めたいが、恐らく月読はのらりくらりとはぐらかすだろう。


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