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第零話 「暁にて」
夜明けは必ずやってくる。
だだっ広い草原で寝転ぶ二人がいた。
お互い、傷だらけで体中疲労でくたびれきっている。
だが、不思議と心は晴れやかだった。
片方が片方の手を握る。そして握り返す。
目は見ず、明るみがかった蒼穹に語り掛けるように語らう二人。
駆け抜けてきた、激しい日々を思い出しては、喜び、悲しみ、泣き、そして笑い合う。
やっと終わったんだね、と、片方が呟いた。
もう片方は笑いながら首を振る。
違う、ここからが始まりなんだ、と。
深い深い夜の時代はもう終わる。
真新しい時代はすぐそこまで来ていた。
二人は起き上がり、大地の果て、地平線の向こうに目をやる。
すべてはこの時のためにあった。
地平線の向こうから夜明けがやってくる。
誰も見たことのない真新しい時代が。
それは決して、輝かしい未来だけではないだろう。
苦難の連続かもしれない。それでも、なにも心配はないように思う。
地平線の向こうから夜明けがやってくる。
黄金の、夜明けがやってくる。