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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

愛されたいなら死んでから

作者: 知日

主人公が死体死体言っていたりするコメディ(?)です。死体や死などの言葉を使っている箇所が多々あります。

そのような表現を不愉快に感じる方はご遠慮ください。

 

 蘭堂らんどう 火乃香ほのか 二十三歳。


 彼氏いない歴=年齢です。好きになることが無いわけではないのですが、付き合ったことはありません。

 見た目は綺麗だ、と言われるのでそれなりには見られる顔だと思っています。性格もまあ悪くはないと思っています。いや自惚れとかではなくて、カッコよくて性格もいい幼馴染に言われるとそんな気がしてくるんです。


 それなのに彼氏がいない原因にも自分で薄々気がついてはいます。でも、やめられないんです。きっと一生抱えたまま生きていくと思えるほど自分の一部になってしまっています。因みに知っているのは両親と幼馴染と職場の人なのですが、両親には呆れられて、結婚ももう諦められています。職場の人は普通に受け入れてくれています。


 見放さないでいてくれる_____というか未だに治そうと言って来るのは幼馴染だけ。その幼馴染を今日も部屋に招いています。二日か三日に一回どちらかの部屋に一緒にいるのが私たちの常です。



「で、まだ治らないのか?」

「治るものならとっくに治ってるよ!それに前に聞いてきた時から二日しか経ってないじゃない」

「早く治って欲しいから」

「琴葉っ!」


 感激で我が愛しの幼馴染に抱きつく。急に抱きついても倒れたりしないところ、やはり我が幼馴染は凄いな、と思う。


「大好きだよ〜!」

「なら生きてる人間を好きになれ!」

「無理だよ、幾ら琴葉が男のくせに綺麗でも死体には勝てない!……あ、でも琴葉の死体ってこの世の最高傑作になるかも?!」

「だ か ら!それを止めろっ!」


 今の会話で皆さんもわかったかもしれません。いや、わかった筈です。……引かないで下さい。お願いします。



 私、死体を愛しているんです!



 世に言う死体性愛、ネクロフィリアでしょうね。

 自分の異常性癖に気付いたのは社会に出てから。それまでは人を好きになったことすらありませんでした。そんな私は監察医になり、気付いてしまったのです。

 死体の美しさに。


 ……引かないで下さい。他は普通なんですよ?


 私は生きている人間にはない魅力を死体に感じてしまったのです。好きになったことはある、というのも勿論死体に惚れただけです。

 写真を見てもときめくことは無いのに、生の死体を見ただけでときめくのはおかしいと自覚しています。だから彼氏もいません。自分でも諦めています。


 でも、幼馴染の琴葉だけは諦めていないのです。カッコよくてこんなにも面倒見がいい琴葉がモテないはずもないのに、私に構っているからか彼女さんができたのを見たことも聞いたこともありません。風の噂にもなりません。あっても私との噂です。それもこれも私のせいです。


「琴葉、合コンしよ」

「は?」

「私がセッティングするから」


 職場ではもうとっくにカミングアウトしてるのですが、全然気持ち悪がられたりとかはないです。何故って?みんな同じ穴のムジナだからですよ。

 頼めばなんとかなるはず。


「運が良ければ私にも琴葉にも恋人ができる。いい案じゃない?」


 そう言って私は合コン計画をバンバン進めていきました。



 ☆



 合コン当日。場所 近所の居酒屋。

 実は初合コンです。三対三の。よくセッティングしようと思ったね、って思ってます?琴葉のためです。琴葉の。やってくれたのほぼ、友達ですけど。

 それより、大体のメンバーが監察医といういつもの職場の風景と変わらない合コンってどうなんでしょうか。琴葉も医師仲間なので知り合いが殆どだと思いますし。これって合コンなんですかね?


「琴葉、どうかした?気分悪い?」

「いや……」


 じゃあなんでそんな疲れてるんですか?彼女ができるかも………いや、琴葉が本気になれば絶対できるんですから、頑張って下さい。


「……火乃香あのさ、今更だけどどうして急に合コンしようとか言い出したの?」

「琴葉に彼女を作らせるためです」

「……………お疲れ、九条くん」

「頑張れば報われるって」

「九条、幸せを願ってるから」


 なんで皆さん琴葉の肩を叩いたり励ましたりするんですか?しかも、琴葉の表情も哀愁がムンムンしてますよ。


「罪な女ね、あんた」

結愛ゆあちゃん、どういうこと?!」


 そんなこんなで合コンスタート。




 した訳ですが、もう三十分以上は経った訳ですよ。なのにこの状況ってなんですか。

 私、まだ女子としか話してないと思うんです。というか、女子が女子と話して男の人が男の人と話しているのは合コンではないと思うんですけど。

 私の性癖が治りさえすれば琴葉も彼女作るかもしれないというのに。琴葉も大体私と同じ話しの輪の中にいるしっ!


「結愛ちゃん」

「どした?」

「私あっち行ってくる」


 男性陣二人が集まっている方を指差す。

 もう既に性癖のカミングアウトは終えたのだから、好きになるとか好きになられるとかあるかもしれないので。


「私が生きてる男の人を好きになるとか、付き合うとかすれば琴葉もふがっ?!」

「頼むから、これ以上言ってくれるな。もう可哀想すぎる」


「いや、この状況で一番可哀想なのは私でしょ」と言いたかったですけど、結愛ちゃんの手によって塞がれている口では無理でした。

 あと苦しいです。


「火乃香が苦しそうだから、離してやって」


 やっと結愛ちゃんの手が退けられる。

 琴葉ーっ!貴方は神ですよね!ほんと、気遣いできるからきっと。


「琴葉ならすぐに彼女作れ、ンンー!!」

「……やっぱこの女に制裁を下す」


 結愛ちゃんっ!口どころか鼻まで塞いでる!死ぬ、死ぬから!あと、制裁ってなに?!

 琴葉に言おうとしたのは褒め言葉なのに…。


「結愛!ほら、恋バナしよ?ね?それ、火乃香が死ぬからマジで」

「あ」

「………死ぬかと思った。死んだら琴葉が死ぬのを見れないじゃない!」

「「そこかよ」」

「琴葉のことだから、おじいちゃんになってもカッコいいおじいちゃんだと思うの。だから絶対私、琴葉を看取るんだ」


 あぁ、想像しただけでうっとりとできます。

 ?何故聞いた皆さんが静かに?あちらの男の人達も固まってますよ?


「………うん、もう九条くん今の言葉言質にして迫っちゃえよ、付き合っちゃえよ」

「うん、これ以上見てらんない」


 結愛ちゃんと佳奈ちゃんの様子がおかしい。


「ホントだ。もう、それを条件に付き合っちまえよ九条」

「お前の切り札使っちゃえ」


 男性陣二人まで来た。

 琴葉には何か秘密があるの?幼馴染の私に秘密が?まさか、私に言えないやつというのなら。


「……………琴葉、何で合コンなのに女子と話さないのかなって思ってたけどまさかホ」

「「「「それ以上言ったらちょっと殺す」」」」


 物騒すぎるよみんな!琴葉以外に怒られてるこの状況は何?!最早きっと合コンですらないって初心者の私でも思う!


「火乃香」

「うん?」

「帰ろっか」

「琴葉が帰りたいならいいよ。あ、でも」

「いや、こっちはこっちで楽しむから。頑張れよ九条!」

「ああ」

「何を?」


 私は琴葉に腕を引っ張られるままに居酒屋を出て行った。

 本当に近所なので、徒歩五分で家に着きます。


「送ってくれてありがとう??」


 最後の方が疑問形になったのは、私の家でなく琴葉の家にそのまま引き摺られていってしまったから。まあ、いつもお邪魔させて頂いているのでそのまま大人しく琴葉の部屋まで引き摺られて行きました。

 そして、ベッドの上という私の定位置に座る。いつもと違うのは、琴葉もベッドに座ったことです。二人分の体重を乗せたベッドが少し軋みました。


「合コン、楽しかった?」

「………火乃香は?」

「まずあれは合コンなのかな…。で、女子と話してなかったけど、もしかして好きな人とかいた?」


 部屋の明かりの下なら琴葉の顔もよく見えます。綺麗な顔の目元が少し赤くなっているのもわかります。図星ですね。好きな人がいるなら、合コンも迷惑だったかなぁ。


「誰?私も知ってる人?」

「まあ…」


 教えて欲しいな、と思いながら琴葉の顔を見つめていると、不意に手を握られました。私は手に視線を送りました。相変わらず綺麗な手です。それでいて男らしい。


「琴葉なら好きな人を振り向かせられるよ」


 外見が綺麗なだけでなく中身も綺麗だから、きっと両想いになれる。

 そう思っていると、琴葉が手を握る力が少し強くなった。


「?」

「……俺が好きなのはさ、火乃香だよ?」

「ごめん、私耳おかしいかも」

「現実逃避やめろ。本当に、ずっと、好きだから。………あと、俺の気持ちを疑うとか無視するって、俺を侮辱するのと同じだから」

「……ずるいし怖い。その笑顔怖い」

「そうしないと信じないでしょ」

「当たり」

「あんまり驚いてない?」

「ムッチャ驚いてます」


 そう見えないかもしれないけれど、本当に驚いています。これは、きっと時間差でくる。

 それにしても、琴葉が私のことを好き?一番私の性癖を治そうと必死だったの、琴葉ですよね。それってまさか、自分を好きになって欲しいから、とか?まさか。自惚れるな自分。


「俺のこと好きになって欲しくて、その性癖、治して欲しかった」


 まじですか。当たっちゃったよ。自惚れなんかじゃなかったよ自分。


「でも、手段選ぶのやめようかなって。とりあえずは俺のモノになってもらって、そこから好きになって貰おうかなと」

「ヤバい、幼馴染が俺様に突然変異。ニュースだ」

「心の声出てる」


 いや、私が好きなのは死体なんですけど。そんな死体をこよなく愛する女でいいの?まさか、琴葉も変人なんですかね。


「あのさ、俺の死体はきっとこの世の最高傑作になるって言ってたよね。俺を看取りたいって言ってたよね」

「う、うん」

「付き合ったら俺は火乃香のだよ。俺が死んだら死体も火乃香のだ。看取れるよ。好きにしていいよ。だから、付き合って?俺のになって?」



「是非っ!付き合おう!!」



 死体の為に付き合うっておかしいって?もともと私はおかしいんですよ。死体を愛してるんですから。

 最高傑作の死体を自分のモノにできるこの美味しすぎるこんなチャンスを逃してしまっては据え膳食わぬはネクロフィリアの恥ですから。




 こうして私たちは付き合い始めた。




 fin

話し方が揃ってないかな?と思いつつ書いたやつです。なんか急に異常性癖について書こう!というノリになって(笑)


連載の方はのんびり更新していこうと思っています(^^)


読んでくださり、ありがとうございました^_^

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