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フィリアの受難

1000文字前後くらいで気楽に書いていこうと思います。


 家の扉を開けると、ものすごい勢いで雨が降っていた。


「なぜ……。日差しはあるのに……」


 お天気雨というやつだろうか、さっきまでなんともなかったのに出かけようとした瞬間にこれだ。

仕方がないと一度傘を取りに戻り、もう一度外へと向かう。


「……」

 

 どうやら通り雨だったようで、すでに一滴も雨は降っていなかった。


「……まぁ、こういう日もあるな。お天気雨はすぐに上がるというし」


 そう自分に言い聞かせ、私は傘をもとの場所に戻し、いつも通り冒険者ギルドへ向かう。

まだ朝早いためか、ギルドにはあまり人がいない。

冒険者は夜中まで飲んでる者が多いので、大体昼過ぎくらいから活発になっていくのが普通だ。


「あら、フィリアさん。おはようございます」

「おはよう。何かいい依頼はきているかな?」


 ギルドの受付へ挨拶へ行き、今日出ている依頼を確認する。


「フィリアさんのランクの依頼はさすがに出ていませんが、その下のならいくつかありますよ」


 そう言って受付嬢が依頼の一覧表を手渡してきた。

私は一応ギルドの最高ランクの冒険者のため、そうそう自分の適正ランクのクエストは依頼されない。

 そのため適正ランクより少し下の、なるべく難しいクエスト受けるのが日課となっていた。


「新しい階層が発見されたダンジョンの探索などはどうですか?」


 受付嬢が提案してきたクエストをみて、私は首を横に振る。


「すまん、今ちょっとダンジョンにトラウマがあってな……」


 私のその言葉に、何かを察したような表情をした受付嬢は、申し訳ないですといって依頼を引き下げた。


「この龍の巣跡の調査でもいこうかな。しばらく、地下には潜りたくないし……」


 ダンジョンに潜るとあの忌々しい高笑いが聞こえてくるような気がするし、少しの間は日差しの下で生活を行いたい。


「それでは受理いたしますね。調査報告書をまとめてこちらに提出していただければ成功となりますので」

「わかった」


 依頼書の説明書をもらい、私はギルドを後にする。

そして依頼斡旋所から出た瞬間、鳥の糞が私の頭を直撃した。



 一旦家に戻って体を洗った後、身支度を整えて龍の巣跡へと向かう準備をする。

鳥の糞が降ってくるくらいのことはもう慣れたので、いちいち気にしない。


「さて、準備はバッチリだ!」

 

 姿見で自分の格好を確認し、満足げに頷く。

腰まで伸びる自慢の金の髪は今日も美しい。

強さしか取り柄のない私だったが、この髪だけはちょっと誇りに思っている。

もっとも、あの加護という名の呪いを受けてからはよく糞まみれになっているのだけれど。

そろそろ出かけようと愛剣を腰に差し、私は威勢良く玄関の扉を開ける。


同時に、目の前を荷馬車が通り過ぎ、泥水が容赦なく私の顔面を襲った。


先ほど降っていた雨でできた水たまりを、思いっきり馬車が巻き上げたらしい。


「……もう一回体洗ってこよう」


泥水でぐしゃぐしゃになった髪のまま、私は肩を落としながらもう一度家の中へと戻った。



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