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プロローグ


 薄暗く、ろくに明かりもないダンジョンの中、私は縦横無尽に襲い来る邪神の攻撃を、ギリギリのところで捌き続けていた。


「フレイムエンチャント!」


 私の二本の愛剣に、炎の付与魔法を使う。

燃え盛る剣を構え、私はもう何度目かわからない邪神への突撃を試みた。


「諦めが悪いな冒険者よ! 貴様の力はたいしたものだが、この我には通じぬ!」


 目の前の敵は、まるで死神のような黒いフードをかぶり、その下からはドクロのような白い仮面が覗いている。

不気味なその姿に気圧されながらも、私は勢いを緩めることなく剣を振り下ろした。

 ガキィンという音と共に、邪神の腕によって剣がはじかれる。

一体あのマントの下の体はどうなっているのか。


「久しぶりに楽しめた。礼をいうぞ冒険者よ。さぁ我が魔法を持ってこの戦いに幕を下ろしてやろう!ダークネスライトニング!」

「させるか、レジスト! ぐあああああああッ!」


 突如邪神の指から黒い稲妻がほとばしり、私を襲う。

とっさに耐性魔法を放つが、そんなものは御構い無しに電撃が体を貫いた。

一気に体から力が抜け、私はたまらず膝をついてしまう。


「……くそ、ここまでか!」


 もう魔力は限界、立ち上がる体力も残っていない。

私は自身の死を覚悟し、せめて最後は潔くと目を閉じた。


「ほう、見上げた心構えだ。その命、奪うのは惜しいな」


 だが邪神はそんなことを口にし、私の前で立ち止まる。


「貴様には、この戦いの褒美に我の加護をやろう。力を示したものには、それ相応の対価がなければいけないからな」

「加護だと……?」


 思ってもみなかった言葉に、私は怪訝な顔をして邪神を見上げた。

仮面から覗くその瞳はぐにゃりと歪み、愉快そうに笑っているのが窺い知れる。


「さぁ汝に我が崇高なる加護を。祝福を授けよう!」


 そう言って動けなくなった私の頭に、邪神はそっと手を乗せた。


「これで良い、それでは我は消えるとしよう。褒美のついでだ、このダンジョンからは退いてやる」


 はははははは! と高笑いを上げながら、邪神は私の前から姿を消した。


「助かった、のか……?」


 私はどうやら見逃されたらしい。

助かったという実感が沸くと、私はどっと疲れを感じその場に座り込んでしまった。


「今まで見てきた中で間違いなく最強の相手だった……。はは、私でも勝てない相手が、まだいるのだな」


 自分の実力に思い上がっていたということだろう。

私は冒険者としてまだまだだなと自分を諌める。


「そういえば、さいつ最後に加護がどうとか言っていたな。どれどれ」


 邪神が口にしていた言葉を思い出し、私は自分のステータスカードを眺めた。


『邪神の加護 不運値+100 ?????? ??????』


 ステータスカードには?????と表示されているのはなんなのだろうか。

いや、今はそんなことはどうでもいい。

問題なのはここに書かれている不運値+100というところだ。


「あいつううううう!!!何が加護だああああ!!」


 思わず私は獣のような叫び声を上げてしまう。

その声はだれもいないダンジョンの中へ虚しく響き渡った。



 邪神から受けた加護という名の呪いに精神的なダメージをうけながらも、とりあえず私はダンジョンを出ようと、邪神が待ち構えていた部屋の奥へとすすむ。

そこには、出口へとつながるポータルと共に、ダンジョンの定番である宝箱が置いてあった。

ぐったりしながらも、冒険者としてもらえるものは貰っておこうと、宝箱に手を伸ばした。


 ばくり。


 宝箱に化けていたミミックが、私の腕にガジガジと噛みついてくる。

身体強化魔法がかかっている私には一切ダメージはないが、精神的なダメージは半端じゃない。


「私! あいつ! 嫌い!」


あの邪神の性格悪そうな目を思い出し、ミミックを地面に叩きつけながら私は涙目で叫んだ。


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