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《無課金》の勇者  作者: 水ノ〆
第一章『不運の脱却』
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第一章4話『刺客』

 《鉄壁の要塞(ギルド)》第四ゲートの正面に奴は佇んでいた。

 周辺の冒険者は俺も加え全員、倒れ伏していた。

 《銅の券(ブロンズ・チケット)》を狙う冒険者は基本的には俺みたいな運なし金なしか、新人冒険者だ。

 その中でも唯一☆5武器を持っているライルさえも不意を突かれたとはいえ、倒れている。


「思ってたより強そうなんだけど、どうする?」


 ライルが体勢を立て直す。

 気がつけば、他の冒険者も各々武器を構え始めている。


「取り合えずあいつを倒せなくてもいい。ギルドの中に入れればそれで終わりだ」


「今度は僕が囮役ってわけか。もう少しで《自立式魔導機(ナイト)構搭載四型》もやってくるだろうし。それまでの時間稼ぎは任せてよ」


 黒いローブの男、女、おそらくは男であろう存在はライルに任せる事にする。

 俺は左側から、ゲートを目指し走り出す。

 遅れて他の冒険者も走り出した。


 閃光--


 --攻撃を躱わし、往なし、反撃する。度重なる剣戟により何度も閃光が迸る。

 黒いローブの男のその動きは訓練された兵のように完璧で綺麗な動きだった。


 既に半数以上の冒険者が、地に伏していた。

 ライルは激しい剣戟を辛うじて、受けながしているようだった。

 ライルの☆5武器《最後の星屑(ラスト・スターダスト)》を圧倒する程の武器--赤い軌跡を幾重にも描いているあの双剣はおそらく☆5武器だろう。

 俺の武器ではまったく歯が立たないであろうことは、確かめるまでもなく明確だ。


 俺のやることは明白。

 ただ走ればいい。

 ゲートを目指して。


「リビ!」


 ライルの言葉に反応し、体が勝手に動く。


 刹那--


 --赤い軌跡が俺の頬を掠めた。

 先程までライルと剣を交わしていた黒いローブの男は、今俺の目の前にいる。


 どういうことだ?


 頭の中の疑問を一旦後回しにし、とにかく回避に徹する。

 右。左。後ろ。何度も攻撃を躱わすが、徐々に俺の体に傷が増えていく。


 --隙がない。


 このままでは負けると確信した瞬間、黒いローブの男は目の前から姿を消した。


 どうやら俺と戦っていた黒いローブの男の隙をついてゲートに向かった冒険者の前に、一瞬で移動したらしい。

 冒険者はあっという間に倒される。


「リビ、大丈夫?」


 ライルと合流し、黒いローブの男を見据える。


「ライル、二人なら勝てると思うか?」


「エンジュがいたらともかく、この傷だとちょっと厳しいかな」


 見ると、ライルの腕には大きな傷が出来ていた。

 ライルの装備、☆3防具《空風の鎧(スカイ・メイル)》もまたボロボロになっていた。


「しょうがない。諦めよう」


 これ以上戦っても意味はないだろう。

 俺が苦肉の策を実行しようとした瞬間。それはやってきた。


「《自立式魔導機(ナイト)構搭載四型》」


 《鉄壁の要塞(ギルド)》のみが作成、管理、管轄をしている、魔力のみで動く兵器--


 --《自立式魔導機(ナイト)構搭載四型》


 ここアルカディアの治安を護る意志なき兵士。

 《自立式魔導機(ナイト)構搭載四型》の登場と同時に、すでに黒いローブの男の姿はどこにもなかった。

 それはそうだろう。すでに、ゲート前には《自立式魔導機(ナイト)構搭載四型》が十体存在していた。

 一体が一級冒険者と同じ力を持つ《自立式魔導機(ナイト)構搭載四型》を十体も相手にするのは、黒いローブの男でも、さすがに無理だろう。


「チケット!」


 黒いローブの男の襲撃から助かった安堵のせいか、肝心な事を忘れていた。

 ライルに治療費は後で必ず払うと伝えてから別れ、大急ぎで俺は《鉄壁の要塞(ギルド)》第四ゲートの内部で行われている《銅の券(ブロンズ・チケット)》配布会へと向かった。


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