1/20
夢見る私
「約束だよ」
夢の中で、確かにそこにいる誰かの顔が見えない。
時に逆光で、時に仮面で、時に……顔なんてなくて。
それでもその人は私に言うのだ。
「約束」
幼い声。
小さな掌の温もり。
「必ず迎えに行く」
私の頬に、その人はまるで宝物を撫でるように優しく触れる。
その人はそれだけを繰り返すのだ。
「どこに行っても、どこにいても、必ず見つける、必ず迎えに行く」
その人を、私はただぼんやりと見つめている。
私は知っていた。
これが夢だということ。
夢の終わりで別れたっきり、迎えなんて来ない。
それでも私は頷いて見せた。
物分りの良い子のふりは、ずっと得意だった。
だから私は、頷いて見せた。
それ以外に、私には出来ることがなかった。