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disappear  作者: 黒土 計
52/71

chapter2 春休みの予定

せっかくの春休み。


「来ても良いぞ」


YUIちゃんは言ってくれたけれど


TDRディズニーランドに行くって言えば?」


最高の言い訳を思い付いた時には既に遅し。


「夏休みには来いよ」


今更誰かを誘える訳もなく


1人で行くなんて怪し過ぎて、お母さんが納得してくれるはずもない。


「しっかり稼ぎなさい」


毎日バイトに明け暮れる日々。


春休み唯一の予定は


「クラスのヤツもお誘いの上」


「興味ないって」


「1人で行くのか?」


「愛子って友達が1人」


「今からノルマ5人を命じる」


篤君(B)と浅見君(G)のバンドクリムゾンバインのライブが明日


初めて行ったライブハウスである事だけ。


「対バンだから」


一緒に出るバンドもYUIちゃんのお友達。


ノルマという物の都合で篤君から直接チケットを購入する。


「水かポカリの差し入れ持ってけよ」


「何で水なの?」


「ライブ中に飲むんだけど、ジュースだと喉に引っかかるんだよね」


YUIちゃんのバンドのレブナントとNFが来る予定はない。


「まあ、NFでと言いたい所だが」


「何?」


「今は言えねえな」


「何で?」


「まあ色々とあって」


「何が?」


「何何って煩せえな。まあ、お前に言っても漏れねえか」


レブナントから正式に脱退してREIさんのバンド【ゴッドレスパイク】に加入する。


「NFと同じメンバーだけど」


篤君と浅見君も加入して


「REIが名前に拘っててさ」


NFとしてではなくゴッドレスパイクになる。


「クリムゾンもこのツアーで最後だな」


「そうなの?」


「他のメンバーには言ってない」


「いつ言うの?」


「そのうちじゃねえ?」


年末の騒動でNFから篤君を脱退させたのはREIさんだったけれど


「REIが篤と組みたいから」


「仲良しなの?」


「悪い方かな」


「じゃあ、また」


「なるかもな」


篤君の楽曲とベーシストとして何か特別な物をREIさんが必要としてる。


そして篤君もREIさんにしかない何かを認めている。


「メンバーが仲の良い所って少ないと思うぜ?」


「そうなの!?」


「俺は平和主義ピースフルだけどな」


1つの曲を作っていくのに、仲が良いから出来るのではなく


仲が悪いから出来ないのでもない。


意見がぶつかり合う事もあれば以心伝心のまま出来る事もある。


「俺も篤の事は尊敬してるし」


面と向かって言った事はないけれど、浅見君も認めている篤君の才能。


「REIもカッコいいしね」


私でさえ何かを感じたREIさんの魅力。


「浅見は下手だけど」


ルックスの良さと独特なメロディーでギタリストとして着実にファンを掴む浅見君。


「俺?」


「YUIちゃんは?」


「運転手兼ドラマーかな」


仲が良くはないのに、1つの物を作れる。


バンドというのは私には計り知れない不思議な世界。


「もう何曲かは作ってるけど」


「YUIちゃんも?」


「俺は作らねえな」


「1度も?」


「昔1曲だけあるけど」


「どんな?」


「ボツになったからな」


「じゃあもう1曲作って!」


「私の為にって言いたいんだろ」


「そう!」


「絶対に書かねえ!」


「良いじゃん!」


「死んでも嫌だね」


音楽には興味がないけれどYUIちゃんのバンドだから。


どんな言葉をメロディーに乗せているのかYUIちゃんの女として。


バンドマンの彼女として一応知っておかなければと思ったけれど


「聞いただろ?」


「聞こえなくて」


「あんな馬鹿デカイ音がか?」


「だから」


「だから何だよ」


初めて会った時、NFのライブを見たけれどYUIちゃんの事しか見えなくて。


どんな曲でREIさんが何を声にしてたか何も耳に入ってこなくて。


正直に口にした答えに


「今度な」


YUIちゃんの照れた笑い声がバンドマンとしてではなく


油井という1人の男に恋してる普通の女の子にさせる。


「8月か9月には、そっちに行けると思うから」


「本当?」


「その時は」


「その時は?」


「また尺ってくれ」


誰かが聞いている訳でもないのにYUIちゃんの言葉に慌てふためく。


「ツンデレですか」


「違います!」


「今度は最後までしような!」


きっと浅見君もいない。


YUIちゃんだけしかいない部屋。


「ゴム買っておけよ」


「しません!」


「明るいバンド計画だ。ご利用は計画的にってな」


ワイセツな言葉もドラマに出てくるような臭いセリフもツンデレになってしまうけれど。


私にとって何もかもが嬉しい言葉。


「打上げ?」


「あるのかな」


「まあ浅見もいるし行っても良いか」


きっとYUIちゃんも私と同じように


【純粋に】


お互いを好きだと思ってる。


「電話しろよ」


「何処から?」


「打上げの途中でも良いし」


「どうして?」


「別に良いけど」


「???」


「何か心配」


どちらの思いが強いのか計れる何かがあるのなら


もしかしたら私よりYUIちゃんの方が強く出るのかもしれない。


「例えたら?」


「どれぐらい好き?」


「スズメの涙程度かな」


「それだけ!?」


「嘘だよ」


「じゃあ、本当は?」


「下から何番目だろうな〜」


誤魔化されてばかりだけど


誰よりもじゃなく私だけ思われてる。


言葉ではなく携帯から感じるYUIちゃんの気持ち。


「気を付けて行って来いよ」


たった30分程度の時間とは思えないほど、たくさんの幸せな気持ちを貰って


「おやすみ」


電話を切ってベッドに入ったけれど、YUIちゃんの1つ1つの言葉を思い出してはニヤケ


鏡を見たり、写真を見て照れたり笑ったりで眠れなくて。


やっと体が起き上がらなくなったのは電話を切って2時間以上経った後。


薄れ行く意識に描いたのは


【ゴッドレスパイク】


という名で立つ4人の姿。


NFという名前には感じなかったけれど


何かが急激に上向きへ私にも大きく変わる予感がした。

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