chapter1 眉毛への誓い
夏美の携帯が鳴った。
一緒に泊まるって言ってた子かな。
一体どんな子なんだろう。
まだ何も聞いていなかった。
「じゃあ、直接来てよ。今もう部屋だからさ。」
何かドキドキしてくる。
ダッサイ女って思われるんだろうな。
夏美に化粧とかしてもらってからの方が良かったな。
いっぱい時間は合ったのにと過ぎ去った時間を悔やんでいた。
「すぐ来るの?」
「ううん。今起きたから直接現地に行くって」
なら大丈夫。
変身する時間がある事を知り
イケテナイ私の気持ちはかなり安堵した。
「じゃあ、そんなに時間もないし改造しますか〜!」
今のままでは、自分に自信が持てない。
夏美みたいに別人になりたい。
「宜しくお願いいたします」
変わりたいと真剣な思いを込めてベッドの上で三つ指を突いた私。
「精魂込めてやらせて頂きます!」
反対側のベッドに三つ指を付いた夏美。
同時に顔を上げた事が可笑しくって正座しながら2人で笑い合った。
「ビューティーサロン夏美へようこそ」
「何か名前が古くない?」
「お客様。本日はいかがなさいましょうか?当店はお客様のご希望通りに」
真顔で続ける夏美に笑い殺されそうになった。
「ねえ。優奈」
「何?もうヤメテよ?死にそうなんだけど」
「真剣な話さ。眉毛剃ってもイイ?
剃るって言うか、カット。手入れした事ないでしょ」
今時珍しいかもしれないけれど、生まれてこの方眉毛をいじった事がない。
「眉毛を手入れするとかなり変わると思うんだけど。
ってか。何でしないの?」
「おばあちゃんがさ。
眉毛をいじると人生が変わるって言ってたから。アンタのは良い眉毛だからいじるなって」
「確かにしっかりとした良い眉毛だよね」
迷信を信じてるなんて私らしい理由だとでも思ったのか。
笑う所か何度も眉毛に指を置きながら真剣な顔の夏美。
「でもさ〜。コレをどうにかしない限り変わらないよ?」
「変わらない?」
「うん。100%変わらない。顔の印象って眉毛で変わるんよ?
このままだとやっても意味がないかも」
意味がないと言う言葉がグサッと音が聞こえるぐらいの勢いで胸に刺さった。
変わりたいのに変われない。
でも、私の人生を振り返ったら変わった方が良いのかも知れない。
特に恋愛においては、いつもサヨナラもなしで自然消滅していく。
「決めた!剃って!」
「ナチュラル系っていうのもあるしね」
「イヤ!剃って!」
「どうしたの?急に?」
眉毛を変えて人生が変わるなら、こんな人生変えてやる!
キレイになって絶対に見返してやるんだ!
もう2度と自然消滅なんてしないんだから!
幸せ過ぎて困るぐらいになってやる!
私は心の中で切られていく眉毛達に誓った。