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disappear  作者: 黒土 計
36/71

chapter2 傷を負わせた告白

「え〜何で言ってくれなかったの!?」


夏美と待ち合わせたのは


YUIちゃんから話を聞いた2日後。


「制服イイよね〜売らなきゃ良かった」


智子も来るなんて聞いてなかった。


「優奈ばっかりズルイよ!」


「え?何が?」


「私だって幸せになりたいのに!」


夏美は本気で不貞腐れてる。


「浅見君って彼女いるって?」


「そういう話はしてない」


「いつ言ってくれるの!?」


本当は、夏美の願いどおり


YUIちゃんに伝えた事は言えない。


「付き合えたら私マジ真面目に戻るよ?」


「何か想像付かないって言うかキモイって!」


髪を三つ編みにし始めた夏美を智子が笑ってる。


このまま3人で笑い合えたら楽しいのに。


余計に伝えなきゃいけない事までも言いにくくなった。


「どうしたの元気ないんじゃない?」


「優奈はいつもこうなの!」


夏美が私のマイペースネタを話していたけど


「本当は何か言いたい事があるんじゃないの?」


智子の目には見えてる。


私が言いにくい何かを話せないでいる事を。


「何?浅見君に彼女がいたの!?」


「違う」


「じゃあREIさん!?」


「ちょっと!言いたくても言えないって!」


智子もきっと判ってない。


私が何を伝えないといけないのか予想もしてない。


「もしかして私は、いない方がいい?」


智子も関係あるから聞いて欲しいと引き止めたのは私。


でも言い出せない。


「親友でしょ」


「え?」


「えじゃないよ。私と優奈は親友でしょ?隠し事ナシだよ」


夏美のいう親友という言葉に


昔聞いた小学校の校長先生がいう【親友】を思い出せなかった。


「落ち着いて聞いてね」


言わなきゃいけない事と言わなくても良い事。


何時・何処で・誰が


見たまま聞いたままに伝える事しか


まだ無知で人生経験不足な私には判らなかった。


「誰が言ってたの!?」


「YUIちゃんが、お前ら3人性病にかかってるから病院行けって。


トキ君以外のメンバーの性病持ちは有名で、


だからリザードのファンの子達も女連れ込んでも何も言わないらしくって」


「でもYUIちゃんが言ってただけでしょ?」


「あの夜NFのメンバーにリュウセイさんとセイジさんが自分で言ってたって」


「ちょっと待って!何それ」


智子の顔が険しくなった。


「って事は何?

性病うつされて金までうち等が出したって事!?」


「そう・・いう事かな」


「でも大した事ないヤツじゃない?クラミジアとかさ!」


「何かリュウセイさんは入院してた事もあるみたいだよ」


「REIさん知ってるんだよね?」


「何を?」


「リュウセイさんが性病持ちなの」


「俺とヤッタやつは全員病院送りってリュウセイさんが言ってたって」


「じゃあ浅見君も知ってるんだ」


智子は黙ったまま話そうとはしなかったけど


どんな時だって笑ってごまかす夏美。


いつものように笑い始めた。


「本当は聞いたんでしょ?私の事」


「浅見君には聞いてないよ」


「YUIちゃんで良いよ。この際だから全部教えてよ」


「無理だって。迷惑だって言ってるって」


「そうだったんだ。私ってバカだよね!」


「でも!私から」


(夏美の良い所をいっぱい今から浅見君に伝えてもらうから)


その言葉は最後まで言わせてもらえなかった。


「実を言うとさ。最近おかしいんだよね!」


痒み・匂い・色・激しい痛み


何かが夏美の体の中で起こってる。


「何かそんな感じしたんだよな〜」


判ってくれたと思った。


浅見君が夏美の事をどう思ってるかではなく


早く病院に行って検査をして適切な処置をしてもらわないといけないという事を。


でも笑う夏美と固まる智子の頭の中には


「何かムカツクよね」


「すっげえムカツク」


そんな事はどうでも良かったのかもしれない。


「誰かにうつしてヤリたくない?」


「有名所を狙いたいよね」


2人の視線はテーブルを睨み付け怒りを抑えてる。


「優奈」


「教えてくれてありがとう」


「良いよ。帰って」


「え・・でも」


「また電話するわ。早く帰りなよ」


「うちらもコレで踏ん切り着いたし」


「じゃあ、ちゃんと病院に行ってね!あ!そうそう!」


たまには学校においでよ!


本当に3年になれないよ?


私なりにコノ空気を変え様と思って必死だった。


あんなに楽しそうだったあの日の智子と夏美の思い出を私の告白が2人を傷つけてる。


何か別の話題に変えてから帰らなきゃと必死だった。


「何それ。何様のつもり?」


「何様じゃなくて、親友として」


「親友ねえ・・・

じゃあ聞くけど嘘付いてるでしょ」


「何を?」


「夏美は騙せるかもしれないけど。

あの日RYOと寝たんじゃないの」


「そうなの!?」


智子は全部お見通しだった。


「酷いじゃん!何で教えてくれないの!」


無言で立ち尽くす私を夏美が軽蔑してる。


「YUIちゃんに全部言ってやろうか?」


「言ったよ。相葉さんの事も言ったよ

YUIちゃんは全部知ってるのにヨリを戻そうって」


「惚気てんの?」


「そういうつもりはないけど」


脅迫めいた智子の態度が気に入らなくって。


「夏美達とは付き合わないでくれって」


YUIちゃんと付き合い始めた当時に言われた事まで口を滑り出し


メンバーから要注意人物扱いされてる事まで言ってしまった。


「いいよ。こっちから願い下げだよ!」


夏美が蹴飛ばしたテーブルが私にぶつかった。


「2度と電話してこないでね」


「夏美?ゴメン」


「今日までありがとうね」


「ちょっと待って!?」


「お願いだから!もう帰って!」


後ろを向いて夏美が泣いてる。


「このまま優奈の顔見てたら

私 親友じゃいられなくなるよ」


その空気に耐え切れなくって


【ゴメン】


その一言しか言えなかった。


智子にも。


夏美にも他に何も言えなかった。



「姉ちゃん夏美ちゃんと喧嘩したんだって」


「だからって食べてくれないと洗えないじゃないの!ちょっと優奈!」


下からお母さんの声が聞こえる。


お父さんが何かを言ってくれたのかもしれない。


私の部屋まで来る事はなかった。


電気も付けずに1人泣いた。


私がもう少し遠まわしに言えば良かった。


性病の事だって噂で聞いたって。


私が智子と夏美を傷つけた。


もう親友とは思ってないかもしれない。


自己嫌悪になってる最中に鳴り響くYUIちゃん専用の着信音。


「もしもし・・・?どうした!?」


YUIちゃんの声を聞いたら余計に涙が溢れた。


「お前は本当にバカだな」


鼻をすする音でしか返事ができない。


「でも性病の事言えたんだろ?」


「言えたけど」


「じゃあ。良いんじゃねえの」


「イイ?」


「後はあいつ等が決める事だろ」


「でも」


「でもじゃない。だからお前はバカなんだ」


「バカって判ってるよ」


「じゃあ、ほっとけ」


「ほっとけないよ!親友だもん!」


「親友って言うのはさ」


数年後に偶然道でバッタリ会ったとしても


年月を感じないで笑い会える


「そういう者だと思うんよ」


今はお互い別々の道を歩き出してる最中。


無理やり取り繕ったって良くはならない。


「その時に笑って迎えてやれば良いんじゃねえの?」


「また電話来るかな」


「まあ、その時は一応俺に聞いてからにしろ」


「何で?」


「何でって態々言わせる気ですか!?」


「何を?」


「お前はバカだから。以上」


YUIちゃん流の慰め方に、私は大切に思われてるのを感じて。


夏美達に悪い事をしたと思いながらも


YUIちゃんとの絆がまた1つ深くなったと嬉しく感じてた。


「俺は安心したけどな」


夏美達とは付き合わないで欲しい。


それがYUIちゃんの会った時から変わらない答え。


私の悲しい無知は結果的にYUIちゃんの不安を1つ消し


「これで良いんだよ」


喜びも。


悲しみも。


嬉しい時も楽しい時も・・・


泣いたり笑ったりして分かち合える親友と引き換えに


YUIちゃんとの絆がまた少し強くなった気がした。



いつか何処かで偶然出会ったとしても


月日を感じないで笑いあえる。


それが【親友】


だけどそれは亀裂が入らず離れ


何もその期間に起こらなければの話。


「お前A型か。じゃ、俺は教えない」


何で!?


「どうせアレだろ?相性とか占うんだろ?」


そう!


「じゃ一生教えねえ」


YUIちゃんとの優しくって温かく過ぎる時間に


無知な私の気持ちだけ癒されてた。


単なるクラスメートでもなく


通りすがりの知人でもない。


【親友】という名の付いた者から負った心の傷は鋭い刃へと変わり


再び会う機会が早ければ、さらにお互いを深く傷付け


時により誰かに危害を加える事もあり


その月日の間に2度と会えなくなる事もあるなんて


まだ想像もつかなくて。


「もしもし?」


「相葉さんですか?智子です」


夏美・智子・麻紀と


いつかまた一緒に笑い合える。


4人で泣いたり笑ったり


きっといつかまた


【親友】という関係に戻れるってそう思ってた。

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