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disappear  作者: 黒土 計
3/71

chapter1 12月27日

待ち合わせたのは県内で1番栄えてる町の駅。


「え〜!?本当に優奈?誰だか判らなかったよ〜!」


「そんなにビックリしないでも」


「イイ感じだよ!!」


夏美の驚いた顔と言葉に


履き慣れないパンプスで出来た靴擦れの痛みさえもが嬉しく感じた。


「じゃあ行こうか!」


改札を出て夏美が向かったのは


デパートの中のランジェリーショップ。


「こんなの良いんじゃない?」


「大丈夫!ちゃんと持ってきたよ」


「新品の?」


「え?違うけど?」


「ダメダメ!どうせダッサイのでしょ?

こういうカワイイのじゃなきゃ!あ!これ色違いでお揃いにしようよ」


ホテルに泊まるって下着まで新しくしないといけないの?


予定外の無駄な出費を押さえたい私に夏美が微笑んだ。


「優奈もうすぐ誕生日でしょ?私からのプレゼントって事で!」


「え?パンツが?」


「パンティーだよ!親友同士お揃いのね!」


サテン地に両サイドの花とリボン。


夏美がピンク。


「黄緑言うな!グリーンアップルとか言いなよ」


はしゃぎながらレジに向かう夏美。


本当は一目惚れした可愛いパンティー。


タダでプレゼントしてもらえる事に心が躍った。




でも、何かやっぱり変。


「お待たせ!どうしたの?」


ショーウィンドーに写った自分の違和感。


雑誌から飛び出たような夏美と


広告のモデルの代表格が写ってる。


同じクラスメートなのに何でこうも違うんだろう。


「そう?化粧と髪型じゃない?

じゃあさ!ホテルに行ったら優奈大変身させてあげるよ!」


やっぱりお母さんの選ぶ服じゃダメだと落胆する私に夏美が言った言葉。


「絶対変わるって!ほら!

優奈知ってるジャン!私のスッピンをさ〜お墨付きでしょ?」


そうだね何て冗談でも言えなかった。



学校に来る時もいつもメイクをしていた夏美。


何度も担任に注意され、そのまま早退した。


何度か泊まりに行ってる私だけがクラスメートの中で唯一夏美のスッピンを知っている。


「本当に見ても友達でいてくれる?」


「当たり前ジャン!」


「絶対?絶対に?帰らないでよ?」


何で素顔を見たら私が帰るの?


友達でいられないの?って不思議だった。


でも、メイクを落とした夏美の素顔を見て正直に恐怖まで感じてしまった。


能面のような細い目と唇。


老人のような目下のクマがさらに醜くい。


「怖いでしょ。」


沈黙してしまった私に夏美が言った。


「うん。確かに怖いね・・・」


正直にしか言葉が出なかった。


「帰る?」


いつもの事っていうぐらいに夏美は悲しむ事もなく怒る事もなく淡々と言った。


私も、もし終電があったら帰るって言ったかも知れない。


「え!?いてくれるの?嬉しい〜!」


笑った顔がさらに怖かった。


私がいつもの遠まわしで気にしないって言ったと夏美は思ったのかもしれない。


でも、時間が経つに連れて夏美の面影が見える。


「私ね?中学校はほとんど行ってないの。

この顔でイジメられてさ〜行くと化け物扱いで!」


朝までずっと夏美と話した。


顔の事で小学校の頃からず〜とイジメられていた事。


お父さんが夏美の顔を見て醜いって言った事。


そして夏美の非行でお父さんが出て行った事。


「私は友達だよ?みんなが夏美を何て言おうが私はずっと友達だからね!」


「ありがとう優奈。嬉しいよ〜」


2人で抱き合って泣いたあの日。


ずっと大人になっても


何があっても永久に親友でいようって誓い合った。



その日から私達は学校でも外でもいつも一緒だった。


2年生に進級しても同じクラス。


私がコンビニでバイトを始めて一緒にいられる時間が減り


2学期が始ってから、あまり学校に来なくなった夏美。


携帯に電話をしても繋がらない。


メールを送ったって、数日かかったけど返信が来るのは私だけ。


クラスメイトも担任も私に夏美の事を聞いた。


「何か今新潟にいるってメール来た」


昨日は青森。


今日は新潟。


その前にメールが来た時は福岡。


「何それ〜!冗談きついよね〜」


クラスメートは笑ってた。


私も、冗談だって思ってた。


「これが今日一緒に泊まる子だよ」


でも、差し出されたデジカメの画像に写っていたのは新潟という文字。


「そう!新潟駅で撮ったの。

あれ?メールしなかったっけ?」


駅名をバックに自分撮りされた画像を見て


親友なのに信じなかった自分が恥ずかしくなった。


「ゴメンって何?あ〜テンション低いの?大丈夫!いつもの事ジャン!

でね?これが来れなくなった子で」


声に出したけど増えていく罪悪感。


ゴメンの本当の意味を判ってない夏美の笑顔がさらに心を締め付け


これからは、もっと親友の事を信じようと私は強く心に誓った。

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