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disappear  作者: 黒土 計
24/71

chapter1 終幕

いつかかってくるか怖かったYUIちゃんからの電話は


「もしもし。今自分の部屋?」


日付けが変わる前に鳴った。


まだ何も聞いてないと思った。


聞いても智子が話す事実を信じてくれたと思った。


「REIに聞いたぞ。お前そういうヤツだったのか」


「そういうって」


「リザードと乱交したんだって?」


「してない」


「何で先に言わねえんだよ」


「YUIちゃんに会った時は、知らなくて」


「トキの名前が出たから何かと思ったけど、意味が判ったよ」


「トキ君とは話をし」


「お前最悪だな!何そういう天然キャラも作ってるらしいじゃん」


「え・・・?」


「聞いたぜ?本当は色々なバンド食ってるんだって?」


「誰が?」


「誰ってお前が俺の女って聞いたアイツがお前の事色々と教えてくれたぜ?」


「待って!?そのヒトはあの日初めて会って別に」


「何も知らないフリして色々なヤツと寝たって自慢してるらしいジャン」


「ちょっと待って!私は」


「ふざけんな!最初から判ってたら俺だってお前に!」


「待って!?」


「そうだ。手紙燃やしただろうな」


「燃やしてない」


「今すぐ燃やせ。写真もだ。

書いてあっただろ。証拠は隠滅しないとな」


「できない」


「ふざけんなよテメエ!!何?泣いてるの?」


・・・・・・・・


「まじウザイだけなんだけど」


「ゴメンナサイ」


「泣けば済むとでも思ってんだろ。

絶対にテメエだけは許さねえからよ。早く燃やせよ!」


・・・・・・・・


「本当に俺もすっかり騙されたよ。まあイイや。声聞いてるとムカツクだけだしよ」


「してない・・・」


「は?」


「話してただけでトキ君とは」


「そんなの知るか。お前とはコレっきりだ」


「本当に違う・・・」


「イイか?手紙と写真を燃やせ。アドレスも番号も全部消せよ」


「どうして?本当に」


「まじウゼえ!お前死ねよ。かけてきても2度と出ないからな」


「智子ちゃんが本当の事知ってる!だから」


「アイツも出入り禁止だ。じゃあな!2度と俺の前に顔出すな!」


早口で言いたい事だけ言われ


「クソ女が!死んじまえ!」


その言葉を最後に電話は切れた。





終っちゃった・・・。


どうして・・


どうしてこんな事になっちゃったの?


【もしもごっこ】で自然消滅はしないってなったけど。


こんな終わり方なら自然消滅の方がマシ。


YUIちゃんと出会ってから忘れていたデータの中の間瀬の写真を見て涙が溢れた。


間瀬と出会った夜に戻りたい


今の記憶のままあの日に戻って間瀬に素直に好きと言って付き合いたい。


そしてYUIちゃんには出会いたくない。


間瀬と付き合ってればYUIちゃんに会う事も、


こんな悲しい思いをする事もなかったのに。


髪も。


頬も。


胸も。


YUIちゃんの手の感触が蘇り痒くて引掻きまくった。



「やっぱり信じてくれなかったんだ」


悲しくって1人でいるのが怖かった。


1人でいたら壊れそうで、苦しくって夏美に電話をかけた。


「あの女が言ってるって!?マジで!?」


頼みの綱の智子の携帯は繋がらないらしい。


色々と心配してくれて話してくれてたと思うけど


頭が呆然としていつの間にか私は気を失ってた。


携帯が繋がってる・・・


もしもし?という私の声に


「もしもし?どうしたのかと思って切らなかったよ。大丈夫?」


夏美の声がYUIちゃんと事実じゃない事で終ってしまった事が夢じゃない事を教えてくれた。


夢だったら良かったのに・・・


YUIちゃんと出会って嬉しい時や幸せな涙以外出なかったから。


悲しくって苦しい時に出る涙は頬に痛い成分が出るのを思い出した。


「もうすぐ始発出るから優奈の家に行こうか?」


「大丈夫」


「気を使わなくたってイイよ」


「ううん。お母さん達がいるし」


本当は家じゃなくって夏美の家に行きたい。


お母さんには知られたくない。


何も理由を知らないのに余計なアドバイスも受けたくないし


どうせいつものように人を馬鹿にするだけ。


「じゃあ、私今日も学校行かないからさ。いつものところで待ってるよ」


朝5時過ぎ。


約束をして電話を切った。


空の色が変わって行くのを見てトキ君の事を思い出した。


こんな事になるならトキ君とヤッテおけば良かった。


繋がっておけば良かった。


こんな誰かの嘘で終っちゃうんだったら


人の気持ちなんか


どう思われるなんて変に考えないで


誰かが羨ましがるような男とカッコイイと


その時の欲望のまま快感だけ求めてヤッテおけば良かった。


素直になれば全て上手く行くんだって勘違いしてた。


間瀬には素直にならなかったから終ったって。


だから今度もし誰かを好きになったら絶対に素直になるって。


そうしたら私は幸せになれると思ってたのに・・・


絶対あの女だけは許さない。


絶対に許さない!


もうかける事は出来ないYUIちゃんの番号を見つめてあの女に復讐を決めた。



「あ〜イイよ!今日からでもうちは大歓迎だけど」


学校が終った後いつもの待ち合わせ場所。


案の定、何も知らないお母さんは朝から目が腫れてるだの鬱陶しかった。


ほっといてくれれば良いのに、いつだってズケズケと人の心に土足で入り込んでくる。


「イイ事思いついちゃった!ちょと待っててね!」


ニッコリ笑って夏美が携帯で話し始めた。


「あ〜ババア?あのさあ」


夏美の案は


3学期が始まって夏美が学校に行きたくないと言ってる事をうちのお母さんに電話する。


イジメが原因で、


1人で行くのがイヤだから私が一緒だったら学校に行けると言ってるから


当分私が夏美の家で生活してくれないかという事。


「お前上手くやらなかったら、タダじゃ済まないよ?じゃあね。」


お母さんに言ってるとは思えない脅しを吐いて夏美が電話を切った。


そんな事を母親が協力する訳がない。


「じゃあ夜車で迎えに行くからさ。1か月分ぐらい用意しておいで」


いくら何でも上手く行くとは思わなかった。


「初めまして〜あの、コレつまらない物ですが」


夜8時に夏美とお母さんが車で迎に来てくれた。


「あらあら!こんな大層な物を本当にスイマセン。あら!夏美ちゃん?」


キャバ嬢的で来るのかと思いきや


制服に薄化粧で今時の普通の女子高生姿でやって来た夏美にお母さんが私の愚痴を言い出した。


「いつも優奈ちゃんには仲良くしてもらってます。私の勝手でスイマセン」


と深々とお辞儀をした夏美に


お母さんは挨拶もきちんと出来る優等生だとでも勘違いしたのか


「アンタも見習いなさい!じゃあ、宜しくお願いいたします」


と言って気分良さげに車を見送ってた。


「上手くいったね。優奈も吸う?」


運転するお母さんの隣で躊躇う事無く夏美がタバコを吸いだす。


その光景を何も言わず


無言で運転をするオバサンのミラーごしに見えた目は


言いたいけど言えない雰囲気ではなく


何かとても嬉しそうに見えた。


「おばさん?ゴメンナサイ」


「あ〜イイの。コイツに気なんか使わなくたってイイから」


無言のオバサンより早く助手席から夏美の言葉が返ってきた。


うちのお母さんが逆の立場だったら


きっと夏美を質問攻めにして自分の狭い世間間からつまらないアドバイスや説教をしてたと思う。


「おじゃまします」


ただニッコリ笑うだけで、最後までおばさんは無言だった。


「あ〜明日は学校に行かないとイケナイのか〜」


でも、このメイクだったら全然OKじゃない?


「OKって言うかずっと行ってないから起きれるかな」


行く来はなかったけど、


私が行かないとうちのお母さんに嘘がバレルから付き合いで夏美は学校へ行ってくれる。


「ゴメンネ」


「え?イイよ親友ジャン!でもあの女まじムカツク!」


YUIちゃんは夏美達とは付き合わないで欲しいって言ってたのを言わなくって本当に良かった。


好きな男よりも、親友を大切にしなきゃイケナイって。


YUIちゃんと付き合う為に夏美達と縁を切ろうって真剣に考えてた自分が恥ずかしい。


「明日には智子も帰って来て、うちに来るからさ」


智子の実家は隣の市だって初めて知った。


何が起こったのか。


YUIちゃんは、どういう顔をしてたのか。


早く智子に会いたくて1秒1秒がイラつくほど遅く感じた。

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