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disappear  作者: 黒土 計
22/71

chapter1 手紙

「電話気が付いたけど、ちょっと色々あってさゴメンな」


YUIちゃんから3回目の電話があったのは元旦から4日経った5日だった。


「篤が脱退って言うかクビになってさ」


「何で?」


「何でって。まあ、その・・・」


「その?」


「智子とやっただろ?で、31日も別のヤツとさ。その女がファンに喋りやがって」


「で?」


「これからって言う時にイキナリ悪い評判が立つからさ」


「篤君は納得してるの?」


「まあ納得はしてねえだろうけど、そんなのは通用しないしね」


「ツアーはどうなるの?」


「REIのとこのギターがいるからさ。まあ篤は一応メンバーだっただけだしね」


「そんなにイキナリ変わって曲覚えられるの?」


「普通は憶えられるよ。って言うか出来ないならバンド自体組めんでしょ」


「スゴイね!その人」


「そうか?まあ、当たり前だけど」


「私なら絶対に無理だよ?」


「そうだな。お前には100%無理だ。で」


「で?」


「手紙届いたよ」


「あ・・・うん」


「お前アレって手紙って言うより自己紹介だろ。結構笑わかせてもらったけど」


元旦の深夜に一生懸命YUIちゃんに初めて書いた手紙。





出会いから約5時間。


正確にはその内2時間ぐらいしか話してない


私を知ってもらう為に


最初は100の質問というのを書いたけど


簡潔にした方がイイかどうか悩んだ結果


何度も書き直して書いた手紙。


誤字脱字はないか携帯で変換しながら


【Dear YUIちゃん】


「お元気ですか?


誕生日に送ってくれたメールすごく嬉しかったよ」


たった3行だけの文章に


私の好きな物。


苦手な物と


簡単なプロフィール。


真剣にゆっくり書いてもキレイな字が書けなくて。


何度も見直してバランスの悪さに書き直し


結局差し出した手紙を書き終えた時には午前7時を回っていた。



「知って下さいってやつ?」


「ってヤツかな」


「で、俺の事も?」


「教えてください!」


「幻滅するかもな!」


「するかも!」


「じゃあ、教えられません。知らない方がイイジャン秘密があるって魅惑的〜」


「知らない事だらけなんですけど」


「不安?」


「不安」


「じゃあ、何を知りたい?質問してみ」


好きな食べ物


行った事がある場所


好きなテレビとかは判ったけど


好きな音楽とかの話は聞いたけれど私には全く判らない。


でも、1つ1つYUIちゃんの事を知って


好きな物や子供の頃の話をして。


2時間ぐらいしか会ってないYUIちゃんとの時間が1秒づつ増えて行く気がした。


でも1番聞きたい


【私の事】は自分からは聞けない。


夜に知り合って居酒屋のトイレでキスをして


その朝に途中までした私をYUIちゃんはどう思ってるのかな。


お互いまだ何も知らない。


初めて会った時に


【彼女】っていうのはいないって言った


【っていうのは】がすごく気になるけど聞く勇気がなかった。


「他に聞きたい事は?ないなら俺が聞くけど?」


「え?何?」


「何が不安か言ってみ」


「教えない」


何がって言われても素直に正直に言うにも


まだ何も知らないし言えないって思った。


「教えないってお前バカか?ゆうてみよ麻呂が何でも答えようぞ?」


「でも言わない!」


ボケですぐ泣く所しか


まだ見せた事ないけど


「あっ!俺が当ててやろうか。お前の不安な所を」


お母さんが言う私の


気が強くて強情で意地っ張りな部分は


YUIちゃんの前では出番はないのかもしれない。


まさか1発で当るって思わなかった。


「まだ1回しか会ってないし〜

ちょっとの時間だったし〜

それなのにあんな事までしちゃって。

私ってどういう関係にあるのかな〜って所だろ。当ってない?」


「へ?」


「当ってませんか」


「当ってる・・・よ」


受話器越しにきっと笑ってたと思う。


YUIちゃん特有の声にならない笑い声が聞こえた。


「不安?聞きたい?」


うん。と頷いたけど声には出せなかった。


「でも、コレって俺が思う関係だろ?お前は俺の事どう思ってるの?」


「どうって?」


「だからさあ」


「だから?」


「あ〜もうメンドクせえ!お前ワザと言ってるだろ!

ちゃんと答えてやるからお前は俺の事どう思ってるのか言ってみ」


恥ずかしいし言えない。


勘違いって笑われたらショックだし


「イイか?10数えるまでに言わなかったらお終いだぞ!」


「お終いって?」


「お終いは、お終い!はい1・2」


3がカウントされる前に好きって言った。


「何か言った?聞こえませんが」


「好きって言ったの!」


電話で良かった。


鏡を見たら顔が耳たぶまで赤い。


きっとYUIちゃんは笑ってる。


そんな気がした。


「俺も好きだよ」


「何番目?」


「何番目ってお前!じゃあ他に何人かいて」


「YUIちゃんだけだよ」


「俺もお前だけなんですけど」


「今は?」


「今はって今だね・・・判った。もういい!まあ!

俺は彼女にしたいって思ってる」


「え・・・・」


「何その・・・えって。ヤダ?」


「ううん嬉しい」


「まああれだ。こういう出会いだったし

まだ大して知らないのにあ〜いう関係になった訳だし

今度いつ会えるかってのも判んねえし」


「うん」


「不安なのは判るけど、電話だけだけど時間を重ねて行ければな」


会えない時間も


淋しさも


不安な気持ちも全部埋めて行けるように


YUIちゃんは努力してくれるって。


私も不安な事があったら何もかも全て隠さずに聞けと言った。


「一々泣くなって。本当だからな?ちゃんと信じた?そういう事だ。」


会いたいのは私だけじゃない。


YUIちゃんも同じ。


「電話代かかるからさ。今日は切るぞ?じゃ、おやすみ!」


私のおやすみの言葉にYUIちゃんはきっとあの優しい笑みをしてると思う。


そして私は今、誰が見ても


きっと幸せな顔をしてると思う。


そばに居ないけど、すぐ隣にいるような。


YUIちゃんがすごく近くにいる。


そんな気がした。

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