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disappear  作者: 黒土 計
16/71

chapter1 新世界

あっ・・・眠れたんだ。


こんなに起きてたの初めてだったし疲れてたからかな。


何か鳴いてる・・・


声が・・・


聞こえ・・・る!?


「ダメ!優奈ちゃん!見ないで!」


目を開けた先で


正常位の智子と目が合って思わず横に寝返った。


「起きた?もう4時過ぎだよ?」


イスに座っていたトキ君がベッドの上に腰を下ろし


返事も出来ず固まる私の髪を撫で背中を擦り笑ってる。


「ビックリしてる?大丈夫?」


智子のアノ声が聞こえなくなって数分。


部屋の中を見渡せるまで落ち着きを取り戻すと


ローディー君がホテルの部屋に準備してあるお茶を入れてる姿が見えた。


「もう終ったからさ。お茶でも飲まない?」


「でも」


「あ〜。じゃあ、ちょっと待ってて」


何やらトキ君が智子達と話してる。


「もうイイよ。見えないようにしたから安心して」


トキ君の手に助けられ立ち上がってチラ見すると


頭まで被ったシーツの中で事を終えた智子達が余韻に浸っていた。


「最初はビックリするかもしれないけど、まあそのうちなれると思うからさ」


「そうなんですか?」


「今日の夜には普通に見れるよ」


他人のSEXという物がアダルトビデオではなく


テレビやテーブル。


猫や犬。


ありふれた日常の生活に当たり前にある風景のように。


トキ君とローディー君の平然な様子がすごく普通で、


ドキドキしている私の方が不自然に見えた。


「トキ君も、こういう事っていうか」


他の人だったら聞けなかったけど


トキ君には何でも疑問を思ったまんまに口から出る。


「気分でね。乱交はないけど、

でも大体今日みたいにDSゲームしたりしてるかな」


何でも口からスラスラ出て。


「今日はそういう気分じゃないんだ」


「今日?優奈ちゃんがその気になったら相手になるけど?」


トキ君に一瞬でも心が揺らいだ自分が見透かされてないか緊張した。


でも、トキ君は私が


YUIちゃんのお気に入りだって知ってるはず。


他の人なら単なる冗談だと思うのに、トキ君が言うと冗談に聞こえない。


相手になるってどういう事なのか。


口から出ようとしてた疑問は、私を呼ぶ智子の声に消された。


「バッグの中に新しいタバコが入ってるの」


隣の部屋からボストンバッグを持って来てという智子の願いに


トキ君はローディー君に行かせようとした。


でも、初めて会う人に物を頼むのも悪い気が10%。


気が利く所でもトキ君に見せたいが90%。


自分のバッグも持って来たいからと嘘を付き、私は部屋の外に出た。



「コレがなくってどうやって入るつもりだったの?」


勢い良く出たまでは良かったけれど


逆に世間知らずな一面をアピール状態。


【811】のカードキーを持ってトキ君が出てきた。


「僕が取って来るから」


何色のバッグか。ココで待ってろって何度も言われたけど


「じゃあ、お願いしちゃおうかな」


何かを企んで微笑んだトキ君の笑顔を


ただ単純にカッコイイと思って。


ドキッと高鳴った心のまま張り切ってドアを開け電気を点けた時


「やだ!優奈!電気消して!!」


トキ君が気を使ってくれた意味が判った。


電気を消す事もせず。


露骨に絡み合う目の前の光景にただ呆然と固まる私。


「はいはい。君は外で待ってるように」


こうなる事が予定通りと言わんばかりに


私を部屋から連れ出してトキ君はドアを閉めた。



ルームナンバー【811】


AVぐらい見た事はある。


さっき智子ちゃんの行為も一瞬だったけど生で見た。


でも4人であんな・・・


「あ〜4Pだったしね」


「4Pってなんですか?」


「あ〜そういうレベルか」


「スイマセン・・・」


「見たまんま。乱交だしね」


聞かなくても考えれば判る事。


後の会話が続かない私を感じてトキ君が会話を変える。


「コレが優奈ちゃんので、これが智子のでしょ?」


「何で判ったの?」


「何でって・・・どれ?って夏美に聞いたから」


平然と答えるトキ君。


あんな状態の夏美と会話までして。


「ほら行くよ?」


トキ君の冷静さに心底奥深さを感じ【812】に戻った。



「ありがとう♪やっぱり自分のタバコが1番美味しい♪ねえ。何時に行くの?」


今日も同じライブハウスで


リザードマンは出演するらしく


仲が良いバンドが次に出るから


一緒に合同打ち上げをする場所を取るようにセイジさんが智子に指示をしている。


「優奈ちゃんも来るの?良かったら俺のライブ見てくれない?」


「あ・・はい!」


「あとで感想聞かせて。

バンド系に全く興味がない女の子の感想って聞いた事ないからさ!じゃ、後でね!」


【811】の衝撃から


15分ぐらいしか経っていないのに


リザードマンのメンバーは全員リハーサルとかいう準備の為に部屋を出て行った。


寝坊して着替えて家を出るのに10分で行けた事はあったけど


SEXの後に速攻出て行けるって


男って言うのは出したら本当にお終いなんだって感じた。


今この部屋にいるのは私と最中を目撃してしまった智子だけ。


「ビックリした〜?私さあ正直ココだけの話ね?」


「何?」


「優奈ちゃんと目が合った時さ、何かすっごい興奮しちゃった!」


恥ずかしいって気分を超えると違う感情が出てくるらしい。


また1つ女に発展した感じって智子は照れた笑みを浮かべながら


煙を吐いて部屋の電話から【811】に内線をかけた。


「もしもし?まあ、そんな話は後で!取り合えず集まろうか。

え?チョット待ってて何?」


私の希望で集合場所は【812】にしてもらった。


たった15分前に4人であんな状態になっていた


【811】に入ると光景を思い出しそうで拒絶感まで感じた。


内線を切ってすぐ夏美と麻紀が大声で笑いながら入って来た。


「ちょっと!聞いて!」


「もうあんなの初めてだよ!」


最初は1対1から始まって


2人でリュウセイを舐めあげただの


違う穴に入れられただの。


「でね!リュウセイったらさ!」


「後で聞くから、取り合えず今日だけど」


大声で盛り上がる2人に引きを感じながら


智子が話す今日の予定を黙って聞いた。


今日のリザードの出演時間は昨日と違って早いらしい。


その次のバンドも見て、その後は打ち上げに行って


「ホテルに戻って〜!っで〜!次はメンバーチェンジしようよ!」


夏美はリュウセイさんじゃなく、セイジさんを指名した。



「ねえ。優奈ゴメンネ」


夏美がメイクしてくれながら乱交の件を黙ってた事を謝ってきた。


「本当!?良かった〜!怒ってるかと思って!」


今日の乱交の件はさておいて。


事実、もし夏美が誘ってくれてなかったら


YUIちゃんとは出会えなかった訳で。


トキ君とも会わなかった訳で。


どちらかと言うと怒りよりも


半分以上連れてきた事に対して夏美に感謝してた。


「え〜!?じゃあ、トキ君とはやってないの?」


「やってないよ?何でやるの?」


「だってトキ君だよ!?」


麻紀と夏美の驚きの表情を見てると私の方がおかしく思える。


「じゃあ今晩、私はトキ君が良い〜!」


麻紀ちゃんはリザードマンの中ではトキ君が1番好きだけど


私が穴埋め要因になった原因の女の子がトキ君ファンだったから


100歩譲って赤毛の男にしたって言い切った。


「この前のツアーからトキ君がベースで加入したんだけど」


「はあ・・・」


「前のバンドの時から、トキ君ファンだったからさ!早くライブ終んないかな〜♪」


「そうなの?」


「そう!あ〜トキ君ってどんなSEXするのかな〜♪超〜楽しみ!!」


何か3人が話してる事が良く理解できなくて頭の中を整理したくなった。


「まず、夏美が1番好きなのはリュウセイさんで」


「え?私は浅見君命だよ?」


「は?」


「で、麻紀がTOY君で、智子はREI君」


聞いたら逆に混乱してきた。


「私の心はTOY君命〜!!だよ」


「さっき、麻紀ちゃんはトキ君が好きって」


「スッゴイ好きだよ?リザードマンの中ではね!でも心はいつもTOY君命!」


命っていう一文字を体で作って夏美と麻紀が爆笑しあう。


何が笑えるのか判らない。


どうしてSEXできるのか。


好きな人がいないなら何となく判るけど


本当に好きな人がいるのに不思議だった。


「何て言うのかな〜。寿司も好きだけど焼肉もって感じ?」


「って言うか〜。私の場合は悲しい思い出が〜!!!」


麻紀ちゃんの悲しい思い出って何だろうって気になったけど。


「今は幸せかもしれないけど

優奈ちゃんもメン(メンバー)に恋したんだから、次会う時は仲間だったりして」


得体の知れない不安な言葉を残し智子がトイレに消えたと同時に


2人も無言で出かける準備をしだした。


その空気が余計に不安になった。


YUIちゃん今頃何してるの?


電話来てるかも!


携帯を開いて28件の未読メールを確認したけどYUIちゃんの名前はない。


「YUIちゃんから来てた?」


昨日から別人のようにテンションの高かった夏美が、いつもの口調で話しかけて来た。


来てないって知ると私にも支度を急ぐように促せ


また昨日と同じ道を歩いて駅に向かう。


電車に揺られてる時間が昨日はあんなに長く感じたけど


YUIちゃんの事を思うと余計に智子の意味深な言葉が不安で


「ねえ優奈!降りるよって!」


次に、この3人が会う日は


私も【811】のようになってるのかな?って思ったら急に胸が苦しくなった。

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