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disappear  作者: 黒土 計
15/71

chapter1 本当の意味

「ねえ!YUIちゃんどうだった?」


部屋に戻ると智子が切り出した。


まだ夏美と麻紀は帰って来ていない。


「教えてよ!帰りも何かすごく良い感じだったじゃん?」


機材車が去ってすぐから本当は何時聞いてくれるのか


エレベーターの中で自分から話すタイミングさえ伺ってた。


話したくてしょうがない 自分が幸せな女の子として過した時間。


「え〜!?何で?男ってさあ、止められないもんだよ!?」


智子の驚いた表情につられ話せば話すほど


YUIちゃんにとって私は


【特別な女】


そう心地良い思いで満ち溢れた。


終わりのない惚気話。


まだまだ話したい事はあったけれど


居た堪れなくなった智子が篤君の話で切り込む。


「篤君なんかさ前儀ナシだよ!?」


キスもなし。


口で準備をさせた後は


そのまま挿入。


「しかも超〜早漏!」


助手席に移動して


私とYUIちゃんが後部座席にいた間 篤君は、


ずっと隙間から覗きながら聞き耳を立て


その間、智子と一切の会話もナシ。


「もうがっかりって言うか幻滅!ヤリ逃げだよ」


「でも、良かったねって」


「あ〜。優奈ちゃんはって言う意味だよ」


「そうだったの?」


「だって本当にYUIちゃんの事が好きなんでしょ?」


「うん。」 


「って言うか洗ってくるよ」


「え?」


「中出しされてさ」


「ヤバクない!?」


「マジで行かなきゃ良かったけど」


「けど?」


「有名どころと寝たって言うと、自慢って言うか女としての自信にもなるしさ」


好きだからって思ってた。


そう呟いた無知な私の言葉に


「別にさ」


智子の声色が低くなった。


「好きじゃなくてもSEXぐらいって」


ブラウスのボタンに手をかけ、床に投げつける用に脱ぎ捨て


「優奈ちゃんには判らないか」


そう言い捨て智子はバスルームに消えた。




私は智子から見て、どんな女だと思われてるのだろう。


【好きじゃなくてもSEXぐらい出来る】


私には判らないと智子は思い込んでるけれど


そんな事ぐらい判ってる。


初体験の相手は


【初恋の男と同じ苗字】の


好きではなかった男。


あの時も【もしも】


携帯に誰かから電話がかかってきたら止めようと賭けて


結果はかかって来なかった。


好きじゃなきゃSEXは出来ない物じゃナイぐらい判ってたけど


本当に好きな人の体と触れ合う事は


こんなに幸せな気分になるって事を初めて知った。


心が温かくなって


自然と笑みがこぼれ


自分がこの世に生まれてきた事を喜び


今まで感じた事のない


皆の幸せまで願いたくなるような優しくて不思議な気持ち。


今頃YUIちゃんは何を考えてるのかな?


ベッドの上にしゃがんでYUIちゃんの温もりの変わりを枕に求め


眠ってしまった事に気がついたのは夏美の大きな笑い声だった。


「お帰・・り??」


夏美と麻紀。


そして見知らぬ男が2人。


「へェ〜。結構可愛いじゃん!

じゃ、俺はコイツにしようかな〜って冗談だよ!夏美怒るなって!」


「ココと隣の部屋借りたの?じゃあ、俺先に風呂入りたいからさ。

今誰か入ってんの?そう言えば俺の荷物は?」


「取り合えず隣に行こうよ!」


「じゃあ、優奈後でね」


ドカドカと物凄い靴音を立て


大きな笑い声と共に4人が去って行った。


【今の男の人達】


一体誰?


何でここに来たの? 


「リザード来たね。後で紹介するよ」


隣の部屋のドアが大きく閉まる音が聞こえたと同時に


シャワーを浴び終えた智子がタバコに火を点け話し始める。



「ねえ優奈ちゃんさ。イヤだったら断れば良いんだからね」


その言葉の意味が何の事なのか


何も判らないうちに部屋のドアが開き夏美と麻紀が戻ってきた。


「私と優奈ちゃんはコッチの部屋を使うよ」


「まずは優奈ちゃんを紹介しようよ!」


「で、それからで良いんじゃない別に。私はリュウセイだけど」


何が始まるのか聞いたけど興奮状態で後回しにされ


そのまま隣の【812】に連れて行かれた。


同じ間取りの部屋だったけど


女4人と男5人。


大きな荷物が散乱していてスッゴク狭くてドアの前に立ってるスペースしかない。


「へえ〜優奈ちゃんね。何か夏美達の連れには見えないけど?」


「そう!私の高校のクラスメートで」


「お前本当に高校行ってたの?ギャグかと思ってたw」


NFのメンバーとは違って


髪の色が、赤・ピンク・金髪・青と色とりどりの男の人達。


これは何の匂いなのか。


汗臭いだけじゃない。


ヘアスプレーをかけた瞬間に鼻を突く匂いと


色々な物が混ざり合ったような狭い空間に息苦しさまで感じた。


「で、優奈ちゃんは誰のファンなの?」


どの男(人)が出したのか判らない声に全員の視線が私に向いている。


夏美も離れた場所にいるし聞くにも聞けない。


キョドッテルのも可笑しいし、早く答えなきゃ!


ファン・・・・


ファンって言ったら


好きなメンバーって事だから!


「YUIちゃんのファンですって・・・・よ?」


部屋の空気が一瞬にして固まったのは鈍感な私にもヒシヒシと伝わった。


その原因はきっと私。


「そういう事じゃないでしょ!?」


血相を変えて慌てて突進してきた夏美の顔が


不味い発言をしてしまった事を物語ってた。


「しょうがないじゃん。全然判らないんだし」


夏美との間に流れる不穏な空気に


金髪の男のひざの上に座っている智子がメンバーに向かって話を続けた。


「優奈ちゃんって

レブナントのYUIちゃんのお気に入りだからさ。

手を出さない方が無難かもよ」


「マジ!?何でココにいるんだよ!」


智子の言葉にメンバーとは違う感じがする男の子が


青毛の男の指示で動いた。


「夏美の友達で、今日のホテル代のスポンサーの1人って所かな。

まあ、何も知らないで連れてこられただけだから、そういう気がないって事」


指示を出された男の子に促され


夏美と麻紀のキマズイ視線を浴びながら


青毛の男と向かい合ってイスに腰をかけた。


「別にイイジャン。

私は3Pで全然OKだよ。

じゃ、ちゃちゃっと部屋割りしようよ」


夏美がピンクに髪を染めたリュウセイという男と


麻紀ちゃんは一緒に腕を組んで入ってきた赤毛の男。


智子ちゃんは金髪の男と何やら話をしてる。


(部屋割りって何・・・?)


でも聞けない。


未だに意味が判らない私にイスを用意させた青毛の男の人が話しかけてきた。


「YUIさんのお気に入りなんだ。昨日NF見た?どうだった?」


「どう・・と聞かれても」


何系って聞かれても何て言って良いのか


さっぱり思いつかなかい私の変わりに智子が代弁する。


「優奈ちゃんって昨日初めてバンド系見たぐらいだからさ判んないんだよ。

結構カッコ良かったよ」


部屋の中央に立って全てを智子が仕切り


「で、取り合えず寝るチームとしてコノ部屋に優奈ちゃんと私とセイジ君」


トキ君と言って青毛の男の子を指差した。



「いや・・・

あの私眠くないので、どうぞ」


「あ・・・

YUIさんにバレタラ怖いんで、気にしないで寝てください」


イスに腰掛けて譲り合う2人を見て1つのベッドに入るセイジ君と智子が笑ってる。


「あっ!お兄さん。

こんな所に寝てたら」


「あ・・・

俺は大丈夫っすから」


メンバーではなくローディーと呼ばれる男の子が


カーペットの上に寝転びコートで顔を隠したと同時に寝息を立てて眠ってしまった。


何か可愛そうな気がしたけど


トキ君がいつもの事でツアー先では


ローディーはもっとスゴイ状況で寝たりする話をしてくれた。


「寝れるだけ今日は幸せなんじゃないかな」


「大変なんですね」


「YUIさんは、そういう話しないんですか?」


眠りについてしまった智子のジャッジは聞けない。


お気に入りだって紹介されたけど本当は昨日初めて会った事。


そして携帯番号とメルアドを教えてもらった事。


言って良いのか悪いのか判断に迷った事も


トキ君と話しているうちに、何故か全部知って欲しくなって。


「へえ〜じゃあ本当に

YUIさんは優奈ちゃんの事が好きなのかもしれないよ?」


夏美に言ったら大騒ぎし出すと思って躊躇う内容でも


正直に途中でYUIちゃんが止めた事まで全部話してた。


「普通って言うか。女の子には判らないだろうけど」


男は挿入後にヤメルってほぼ無理って事や


「人によるだろうけど

携帯番号は教えてもメルアドを教えるって致命傷だからさ」


「そうなんですか?」


「逆の人もいるかもしれないけどメールって残るでしょ。

女って見せびらかして自慢したがるから俺とかは教えても番号にしてるかな」


「トキさんも」


「トキで良いよ」


「じゃ、トキ君で」


もしYUIちゃんに出会ってなかったら、トキ君に番号を聞いたかもしれない。


どんな内容にも冷静で温かい感じがして


恋人じゃなく何でも相談できる男友達になれたらなって思ったけど


何故かそれは自然にイケナイ事だって感じた。


「他の人は教えないと思うけど」


「会ったばかりの人に?」


「今はしてないけどね。僕にとってはファンもメンバーも変わらないから」


トキ君は聞かれたら全員に携帯番号を昔は教えてたと言った。


「でもさ。女の子って、それ以上の関係を望むでしょ?

例えば彼女になりたいとか。

で、無理だと判るとファンまで辞めちゃうからさ。バンドの動員にも影響するしね」


トキ君にとっては、自分のヤッテル音楽を好きだと言ってくれて応援してくれる子達と話す時間が好きだったらしい。


メールや掲示板みたいに文字じゃ判らない真の言葉が聞ける。


「会話ってライブと一緒だと思うんだ」


「一緒?」


「鼓動って言うかさ。

文字じゃ伝わらない事だってあるでしょ?

例えば言いにくい事を躊躇ってる時間とかさ」


「そうなんですか?」


「あ・・ライブとか初めてだったっけ」


「はい」


「じゃあ、また後で話そう。

今日はいっぱい時間あるし僕もちょっと寝なきゃ」


「あっ・・・はい」


「優奈ちゃんも寝ておかないと後で気が気じゃないかもよ」


「え?何で?」


「何しに泊まるのかって聞かなかったの?

これからは親友の願いでも最後まで確認した方が良いよ」


本当の目的は


2日間のイベントの宿泊兼


リザードマンのメンバーとの


乱交パーティーで


隣の部屋はもうしてるかもしれない


・・・て何。


私が先に起きたら起してくれれば良いって言ってたけど


何か居てはいけない場所にいる気がして不安で眠れない。


時計は午前10時。


カーペットの上で眠るローディーと


イスに腰掛けたまま眠りについたトキ君に申し訳ないって思いながら、


トキ君が勧めたとおりに一応目をつぶった。

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