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disappear  作者: 黒土 計
11/71

chapter1 カルーアミルク

「遅せえなあYUIの野朗。糞でもしてんのか?」


「車止める所探してんだろ」


「まあYUIは、ほって置いて始めようぜ?俺様は限界だ〜!」


そう叫びながら座敷の中央に立ち上がった篤君の掛け声で


開始予定時刻から10分送れで打上げがスタートした。


座敷の一番奥にあるテーブルに座った私の隣は夏美。


麻紀と智子は開始早々にREIさんのいるテーブルへ移動。


私の目の前に出来た2人分の隙間に乾杯に回ってきた浅見君が腰を下した。


「優奈だっけ?お前さあ。酒飲んだら?」


「そうだよ!飲んじゃえ!カルーアミルクなんてイイんじゃない?」


「何?カルーって?」


「お前マジ飲んだ事ないの?このご時世に珍しいヤツだな」


「コーヒー牛乳みたいなヤツだから飲んでみなよ!

スイマセ〜ン!カルーアミルク1つ下さい!」


運ばれてくる料理。


夏美がお皿に入れてくれるけれど食が進まない。


頭の中だけじゃなくお腹の中も。


私の体は、未だに現れないYUIちゃんの事ばかり気にしてた。


待ち人が到着した事に気が付いたのは


「YUI〜!こっち!こっち!」


YUIちゃんに、手を振った彼女らしきヒトの声。


ここに来た時点から座敷の入り口近くに席を取り、自分の隣にバッグを置いてた。


何の為に置いていたのか最初は気にもならなかったけど


YUIちゃんの為の席取り。


到着と同時にバッグを移動した事で、その意味が判った。


そしてYUIちゃんも、その場所に当たり前のように座る。


【やっぱり彼女なんだ】


気が付いてたけど、2人が並ぶ姿を見ると改めて胸が痛くなる。


私が居る場所は振り返って見なければYUIちゃんが見えないテーブルだけど、


この場所にいる事自体が辛い。


「カルーアミルクのお客様は」


「は〜い!こっちこち!優奈来たよ」


帰りたい気持ちを引き止めるように運ばれてきた得体の知れない液体。


「お前緊張してるんだろ?一気に飲んで酔っ払った方が良いんじゃねえの?」


「そうだよ!一気に飲んじゃえ!」


「おい!浅見?誰が一気に飲むって?はい皆様ご注目!」


夏美と浅見君の声に反応した篤君の良く判らない煽りと手拍子の嵐。


座敷中の視線に耐え切れなくって、後先考えず一気に全部飲み干した。



「結構イケル口じゃねえの?」


「スイマセーン!もう一杯下さい!」


初めて飲んだカルーアミルクの味は美味しかった。


昔お父さんが飲んでいるビールを少し飲んだ時に感じたあのイヤナ苦味と喉を刺すような感覚はなく


コーヒー牛乳よりも冷たく感じ体が欲しがるってこういう事?って


思ったほど美味しく感じ、進むがままに飲み干した。


「新潟行った時さあ、メンバーみんな寝てんじゃん?

コイツ運転しながらさあ踏み切りの上で居眠りしやがって俺等全員死んじゃう所だったんだぜ?」


無愛想な帽子をかぶった男の子の頭をピシャリと叩き


少し赤く染まった顔で笑う浅見君は


生まれて此の方接した事がないほどカッコ良く見えて。


話も面白くて、次はどんな話が出てくるのか。


「そうだ。ココだけの話よ。大きな声では言えねえけど。

ちょっとその前に、お前火持ってない?」


浅見君の言葉の続きを聞き逃さないと全身の神経を集中したままの私は


浅見君が咥えたタバコに火をつけた夏美の行動に全ての意識を奪われた。


「この前さ篤と・・?と・どしたの!?」


「え!?今の何!?もしかして手品ですか!?」


一瞬固まったように見えた浅見君とローディー君。


夏美まで加わり3人の大爆笑は、座敷中の会話を停止させた。


「手品だって!マジこいつ面白れえ〜!」


「え?だって!今夏美のココからポーンって火が出て」


「やだ〜 優奈って可愛過ぎる!」


「何?何笑ってんだ?」


「篤〜!コイツさあ」


「もう!何も可笑しくないよ!だって、ここから火がボーンって!」


「おかしいよ優奈〜」


「何だよ!早く教えろよ!」


何が何だかサッパリ判らないけど


3人の大爆笑にドジな事言ってるであろう自分が恥ずかしくて。


必死に取り繕おうとする私の横に


いつの間にか篤君。


背後からREI君が私の体に密着してる。


「違うの!ここからね?炎がね?」


「おっ前バカじゃねえの??」


平手だったけど篤君に頭をペシャリと叩かれ


初めて会った人達に大笑いされて


泣きたい訳じゃなかったけど何故か涙が溢れる。


「おいおい。何でだよマジ泣くなよ」


「篤君が叩くから優奈ビックリしたんだよ」


「何だよ。俺が泣かしたみてえじゃねえか!」


「親にも殴られた事ないってお前はガンダムか?」


「REI。ガンダムじゃねえよ。アムロだよ」


「ってほら!お前名前なんだっけ!笑ってんじゃねえか!」


最初はビックリしたのもあったし


恥ずかしいと悔しいが入り混じった嫌な気持ちだったけど、


みんなの会話を聞いてたら、いつの間にか笑いが堪えきれなくて溢れる涙に変わってた。


「お前が紛らわしいから俺様が悪者になる所だったじゃねえか!」


「で、手品がどうって何だったんだよ」


「全然手品なんかじゃないよ。優奈よく見てて」


笑い過ぎて今度は涙が止まらない私に


手品だと思った種明かしを夏美が再現を始める。


上半身ボタンを外し、大きく胸元を広げた夏美。


「こうやってブラジャーの間にねライター入れてたの」


「夏美!男の人が見てるよ!!」


その言葉にまたREI君が腹を抱えて悶絶し始めた。


「え〜?大丈夫!可愛いブラジャーでしょ?」


「どれ?珍しく乙女系だね」


耳まで真っ赤に酔う夏美の大胆さを


何時もの事とばかりに普通に対応する周囲。


1人ドキドキしまくる私に夏美の谷間にあるライターを抜いて浅見君が言った。


「お前もしてみる?」


「って言うかさ。お前 乳小さいな」


その言葉と同時に背後から揉み解される私の胸。


我に返り拒絶するよりも早く


「え〜!!REI君〜!私のは〜?」


見知らぬ女の子が、ブラ全開に大きく襟元を開き出していた。


「お前は結構大きいな〜」


「どれ。触らしてみ?Dか?Eか?」


「私も挟めるよ!!」


「私も見てください〜!」


夏美に触発されてか、次々と女の子達が我先にと胸元を開け出す異様な光景。


一体この人達は何なんだろう。


胸の谷間にライターを挟めるか否か大会が突如開催されだした。



「じゃあ、優奈の〜貧乳にカンパ〜イ!!」


「カンパ〜イ!!!」


「全然嬉しくな〜い!!」


ちょっと1時間ぐらい前までは夏美以外初めて会う人ばかりでどうなるの?と思ったけれど


何かすっごく楽しい。


こんなに大騒ぎするのって初めて。


「優奈〜!次何飲む?」


「何でもコ〜イって感じ!」


「これ飲んでみる?結構美味しいよ?」


名前も知らない女の子とグラスでの間接キッス。


誰が使ってたのかも判らなくなった箸を使って


誰が誰なんてどうでもイイ。


楽しくって。ただ楽しくって笑い過ぎて体が熱くて苦しくなって。


「優奈〜酔っ払ってるでしょ!?

ちょっと飲み過ぎだって!大丈夫?」


お酒を飲んで、調子に乗り過ぎると罰が下るという事を


身を持って知るまでに、そんなに時間はかからなかった。

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