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disappear  作者: 黒土 計
10/71

chapter1 通じる?通じない?

NightFiendナイトフィーンドがステージに上がった。


さっき見たバンドとは比べようがない迫力が私にも伝わる。


女の子達が体をゆすり捲くり手を差し伸べてる。


でも曲なんて頭に聞こえない。


ボーカルの隙間と女の子達の体の隙間から見え隠れする


YUIちゃんの事だけしか私の中に存在しない。


「ドラム YUI!」


「YUIちゃ〜ん!!!」


たくさんの歓声があがった。


YUIちゃんの名前を叫ぶ声。


どの子が叫んだの?


あの子かな・・・


隣かな・・・


その声に少しヤキモキする。


誰が叫んだって判るはずないけど


聞こえるのかな・・・


そんな事を考えてたら


「浅見〜!!!!」


夏美が叫んだその声に反応して


ギターの人が夏美を指差しピックを投げた。


「やった〜!キャ〜浅見君!」


激しく上下に体を揺らし夏美はピックを高々と天に上げ喜ぶ姿を見て


浅見君らしきギターの男は夏美に向かって笑顔を返した。


【通じてる】


やっぱり通じるんだ!


何かを感じて私も叫んだ。




NFのライブ終了後、また外に出た。


「優奈ってあんな声出すんだね〜」


浅見君からもらったピックを胸に夏美が笑ってる。


私の胸には何もない。


通じなかった。


ステージを去り際にYUIちゃんは違う女の子めがけてスティックを投げた。


そのスティックを胸に抱いてちょっと年上っぽい女の子が夏美に話しかけて来た。


知り合いなのか、初めてじゃない雰囲気。


「打ち上げ行くよね?」


「当然!浅見君の隣は私だからね!」


「大丈夫!私はYUIちゃんの隣だから♪」


笑顔で楽しそうに盛り上がる夏美達の横で、私1人本気で笑えない。


別に今日約1時間ぐらい前に初めて会っただけ。


だけどずっと前から恋してたような心の痛み。


もしかしたら彼女なのかな・・・


きっとこのひとだって判ってて


スティックを投げたんだ。


キレイだし大人ぽくって鏡に映る即席の自分との差を感じて、


もしかして?ってYUIちゃんと


何か関係を期待した自分が無様に思えた。




「ちょっと待って!?やばいって!」


「大丈夫だってば〜」


「あら?どうしたの?」


YUIちゃんの彼女?らしき女の人に声をかけられた。


「優奈が未成年だからヤバイって大丈夫だって言ってるのに」


「あら〜。じゃあ私と入ろうか?」


いえ。結構ですと言いたい所だけど、


結局彼女らしき女の人に引き連れられ店の中に入った。


「え〜何名様ですか?」


店員の問いになれた夏美が


「山口でとってあると思うんですけど」


「はい!山口様ご到着〜!いらっしゃいませ〜!」


バレルかもって思ってたけれど


店員の前を通る時に背筋を伸ばして大人のフリをしたおかげか


私も止められる事無く店の奥に案内された。


「ねえ?山口って誰?」


「え?適当だよ。面倒臭いから簡単な名前で予約するんだよ」


今日で何個目だろう。


また1つおりこうさんになった気がした。



「1人3千円ね」


無愛想な帽子をかぶった男の子が徴収する。


え・・・3千円?


夏美が言ってたご飯代3千円とは別にですか!?


きっと酷い顔していたのかもしれない。


夏美が笑いながら言った。


「さっき言った3千円だよ」


「ここでご飯食べるの?」


「そうだよ。あとお酒もね♪」


「え?お酒って」


「大丈夫。コーラとかジュースもあるよ」


3千円あったら洋服も買える。


頑張っても月に4万円ちょと。


週3日のコンビニでバイトしている私には貴重な大金。


予算外な出費の心配がなくなってちょっと安心した。


「おう!待たせたてゴメンな!」


「お疲れ様です〜!」


メンバー到着に女の子達がソワソワし始める。


夏美以外は全く知らない人達。


ちょっと話して知っているのは一緒に泊まる麻紀と智子。


NF(ナイトフィーンド)のメンバー。


そして、YUIちゃんの彼女らしきアノヒト


初対面の人たちが沢山集まったこの空間で今から何が始まるのか。


来てしまった事への後悔も


無様に感じてた恋心も忘れ


期待と緊張でドキドキしてた。

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