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disappear  作者: 黒土 計
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chapter1 12月26日

最近学校に来ていないクラスメートの夏美から電話が鳴った。


「こっちこっち〜!」


待ち合わせしたファミレスで


タバコを咥えながら手を挙げた夏美は


別人のように大人びて見える。


「似合う?嬉しい〜!

私ねキレイ系に変更したの!」


化粧の仕方。


服装も話し方も。


瞬きさえもが人生を早送りしたかのように大人に見える。


きっと誰から見ても、同じ高校2年生には見えない。


「でね?さっきの話の続きだけど」


行先は隣の市内のライブハウス。


いろいろなバンドが出演する2日間連続のイベントで、


打ち上げに行ったら深夜を回るから近くにあるホテルに泊まる。


「で、うちに泊まってる事にすればイイからさ。

ババアに電話入れさせるから安心して!」


夏美の家は母親と2人暮らし。


「仲良くして頂いて本当にコチラの方が」


いつもオバサンの方から家に電話を入れてくれる。


何度も泊まってる事になっているけど


実際にはオールでカラオケに行ったりファミレスで1晩中語り明かしたり。


うちのお母さんとは正反対で、理解の良いおばさんが私のお母さんだったらなって何度も思った。


「チケットは各バンドにノルマがあってメンバーから買うから」


2日間のチケット代とホテル代


打ち上げ代は1回に付き3千円ぐらい。


「最低3万円は持って来てね」


「え?3万円!?」


「タクシー代とか入れたら足らないか〜4万だね」


4万円あったら新しい洋服でも何でも買えちゃう。


コンビニの1ヶ月のバイト代が


興味もないような事の為に2日間で飛んで行く。


「何か辞めたくなって来たんですけど。」


「え!!ダメだよ!お願い!」


別にこの日に用事はなかった。


「行く予定の子がさ〜捕まっちゃって!

監視付いてるし家から出れなくなっちゃってさ〜」


「何かすごい友達だね」


行けなくなった子のただの穴埋め要員。


ちょっと興味があった場所だし、


友達同士でホテルという場所にも泊まってみたかったけど


金額を聞いて正直かなりテンションが下がった。



「で!オネエ系かキレイ系の服なんて持ってないよね。」


この上さらなる出費の予感に眉間にシワでも入ったのかもしれない。


「あっ大丈夫!持ってるのでちょっと頑張って!


そう言えば昨日ね、優奈の元彼さ。駅で見たけど、

元彼女より絶対に優奈の方が可愛いっよね!」


何かを感じたかのように夏美がまた嬉しくない話題に変えた。


別に好きだった訳じゃない。


同じ駅を利用する男子校の3年生。


「付き合ってほしい」って言ってきたのは向こう。


2ヶ月前の10月。


通学ラッシュの駅の改札での告白。


固まる女の子達の視線に女としての優越感が


好きでも何でもない彼との交際をOKにさせた。


付き合ってるうち好きになるかもしれない。


告白の3日目からバイトがない日は彼の家に行った。


6畳位のフローリングの部屋に勉強机とステレオ。


敷きっ放しの布団。


どれぐらい彼の事を知ったかな。


彼の事を知る前にキスの味を知り


兄弟の名前を覚える前にSEXを覚え


彼の事を好きになる前にタバコが好きになった。


彼と付き合ったのは


みんなが羨む様な見た目だったし


彼氏という言葉が欲しかった。


早く処女が捨てたかったって言うのもあったけど


1番の理由は忘れられない男と同じ苗字だった事。


名前で呼んでよという彼の希望を無視して苗字で呼び続けた。


彼から「別れよう」とは言われていない。


11月末に突然自然消滅。


原因は元彼女。


付き合う前から復縁したいって言われていたらしい。


別れたくない!とは思わなかったけど


SEXという行為をした分だけ。


私より前の女を選んだという事実に


かなり女としてのプライドに傷が付いた。


「何?元彼に未練あったの?」


「全然ないよ」


そう。彼には全く未練はない。


出来る事なら私の人生から消してしまいたい


女として恥になる経歴。


どんどん憂鬱になっていく雰囲気にバツが悪くなったのか


「じゃあ、明日!12時に駅にね!」


「勝手に決めないでよ」


夏美が強制的に予定をまとめ出した。


ここまでは、本気で断る気だった。


「絶対に約束だよ!じゃあね!」


「無理。行かない。」


「本気で一生のお願い!私達って親友でしょ!?」


夏美は私の唯一の親友。


その【親友】と言う言葉に


断る理由が見つからなくなってしまっただけ。


「本当に!?やっぱり持つべき者は親友だね!」


勝利の祝杯と言わんばかりに万遍の笑みでタバコをふかす夏美。


後悔と疲労感でテーブルに比し伏せる私。


何にも興味のない


出来れば無くなってしまって欲しいと願った約束は、


運命と言われる物だったのかもしれないなんて。


「指きりげんまん!」


「そんな気分じゃないって」


「ダメ!指きり!」


この日さえナケレバ。


過去に戻ってやり直す事が出来るのなら。


【消去してしまいたい】


人生を変える1あすの約束が成立した。

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