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押し入れの中の信じられないような出会い

とりあえず、出会うだけ

「痛ッ、ってか狭い! 何よここ、有り得ないんですけど!」


「……は?」

 今のは、何かの聞き間違いだろうか。聞いたこともない、気の強そうな女性の声。間違っても母親の声ではない。あぁそれともいつの間にか、動画の再生ボタンを押してしまっていたのだろうか。宣伝ムービーの自動再生という可能性もある。

ほらその証拠に、ゴッ、ガッ、と何かと何かがぶつかるような音が聞こえてきて、決して一瞬の聞き間違いではないことが――

「聞き間違いじゃ、ない!?」

「ねぇ! ここ開けて! 早く!」

「やだやだやだ! 何これめっちゃ怖いうわぁ!」

 続けて聞こえてきた先程と同じ声に、僕は思わずスクリームな絶叫を上げた。そしてどうやらその声の主は、どうやらパソコンラックの横の室内収納にいらっしゃるようで、押し入れの戸がガンガンと殴られたように揺れているのが見えた。

 これは、霊の仕業では決してないなと僕は確信した。別に信じている訳では全くないが、それでも聞いたことのあるいくつかの怪談話において、幽霊と呼ばれるそれらの存在がやることと言えば、不気味な音を奏でたり、ぼんやりとした姿を浮かべたり、地味な嫌がらせのような行為ばかりだ。だから、大声を上げて、乱暴に戸を叩かれるという現状、それはまかり間違っても霊の仕業では、ない。

 ならば、何なのか? まさか、泥棒? しかし、泥棒がここを開けろだなんて言うだろうか。女性だから泥棒ではないだろう、なんて思い込みこそしないが、そういえばそもそも僕は昼間から御飯の時間以外殆どずっとこの部屋に居て、泥棒が忍び込む暇すらないはずだ。

 いやもしかしたら、その僅かな時間で決着を付けようと意気込んで侵入したはいいが、予想よりも早く僕が帰ってきたから、慌てて押し入れに隠れた? ……それはまず、ないだろう。おかしいところがありすぎる。

 そんな事を考えていた僕の脳に、一つのヒントのようなワードが、消しゴムで周りを消した後の、ボールペンで書いた文字のように浮かび上がってくる。

 ――パソコンラックの横の、押し入れ。

 今日のその場所について、何かのきっかけと成りえるかもしれない一つの記憶がある。いつもなら、小中で使った教材や、今ではすっかり使わなくなった家族の物などが無秩序に放り込まれているだけのその場所に、僕は今日、一つ新しい物を追加した。

 三日前に某有名通販サイトで注文した、『健康用品』。来てすぐに使わず、機が満ちるまではそのままにしておこうと、僕は箱に入れっぱなしで、『それ』を押し入れに入れたのだ。そして今、パソコン及びインターネットという文明の利器を駆使して機と呼ぶべきその時の準備を粛々と……。

「開けてってばー!」

「は、はいぃ!」

 ガラッ、と小気味いい音を立てることなく、すっかり立てつけの悪くなった戸が少しだけ滑り、押し入れの中が僅かに覗ける形になった。差し込んだ部屋の照明に照らされたその場所には、認めたくないが――確かに人影があった。

 その人影は、ごちゃごちゃになっている筈の押し入れの中で相当苦心している様子で、バランスを崩し切った体勢だ。僕からも、投げ出すように伸ばされた片脚しか見えない。そしてその生脚の細白さ、靴下から、まぁほぼ間違いなく、声の通り若い女性なのだろうというのが、解った。

「う、うわぁああああ! 人だぁあああああ!」

「ちょっと、うるさいから何回も驚かないでくれる? よっこら……しょっと!」

 ぐっと、暗闇から伸びた手が押し入れの戸を掴む。そして、『彼女』はそれによってようやく身を起こし、その姿は人工的な室内照明に晒されることとなった。

「あ、お、女の子……だ、誰! なん、こんなとこに……」

「はーようやくまともな恰好になれた。ってうわ、こりゃ確かにタマってそうな顔ねぇ。――なんでこんなところにって、私の記憶が正しければ、アンタ自身がここに閉じ込めてくれた筈なんだけど?」

 あ、質問は二つだったわね。と、声の通り性格のキツそうな見た目の、そして所謂『ギャル』っぽい恰好をした金髪の『彼女』は、ビデオの中に住む悪霊のように押し入れから出てきて、そして僕の顔をしっかりと見つめて、言った。


「アタシ、アンタの買ったオナホ。なんか、人間の姿になれちゃったみたいだから、よろしくね」


 江田伸太郎、17歳。この春休みが明ければ、高校三年生。オナホという道具に憧れて丸一年。僕の憧れだったものは、僕をフィクションの世界にへと、連れてきた。


こんな内容ですが、余程叩かれない限りは意気揚々と続きを書きます。

その内、ね。

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