初対面の思い出
夏美は、私の高校時代の友達だ。卒業してからも、ずっと仲良くしていて、そんな私との仲よりもずっと仲の良い彼氏がいるのも知っていた。いつか二人は結婚するのだろうな、と見守っていたら、当然のようにそのまま結婚をした。
純白のウェディングドレスを着た夏美は、ライトに照らされてとても輝いていた。新郎側の友人スピーチに、壇上に上がった一人が、龍樹だった。
鼻すじが通っていて、切れ長の目、そしてスーツがビシッと決まっていて、周りの友達が浮かれ囁き合うのが聞こえた。私にとっては、黒い短髪を綺麗に立て、そのワックスだかが、ライトにキラキラと反射していたのが印象的だった。一言二言を言ったかと思うと、次の瞬間――
「ヘーイヘーイ!そこの彼女!なかなか眼鏡が似合ってる♪そこまでドライブ行かないかい♪」
いきなり始まった、二人の馴れ初めを語るラップに、会場内はしんと静まった――というより、言葉を無くしていた。
私はそこで思わず吹き出し、それに反応した龍樹が、真っ直ぐに視線を送って来たのを覚えている。
披露宴のあと、二次会があって、そこには龍樹も参加していた。少し酔った風に頬を染めながら私に近づくと、
「さっきはありがとーな!」
と笑った。なんの事だかさっぱり分からず、キョトンとしていると、
「君が笑ってくれなかったら、俺、あのまま逃げるように帰るところだった」
「え〜〜?」
おかしな人だ、と、笑うと、龍樹は照れ臭そうに頭を掻いた。
「あれから二年かぁ〜〜」
感慨深く思いながら龍樹を見ると、彼はあの時と同じように照れたような表情でそっぽを向いていた。
「余計なこと、思い出さなくていいんだよ!」
「自分から言い出したくせに〜〜」
と笑いながら、私たちは食事を進めた。
デザートを食べ終わる頃、私はバッグに忍ばせておいたプレゼントを取り出した。龍樹は嬉しそうに受け取り、中からマフラーを取り出すと、勇んで首に巻きつけた。
「似合う?」
「うん!似合うよ〜〜!私が選んだんだもの、当たり前〜〜」
「えへへ!ありがとな!」
終始和やかに話を弾ませながら食事を美味しくいただき、会計を済ませ外に出ると、冷たい風に肩をすくめた。
「最近急に、寒くなったよね〜〜?」
顔をしかめて言う私の肩を抱きしめた龍樹は、
「そうだな」
と囁くように言った。
「少し、そこらへんを歩かないか?」
と、そのまま歩き始めた。