弱る娘
ある日、イオは体調を崩して熱を出してしまい、寝込まざるを得なくなってしまった。元より体力と健康には自信があり、ここ数年来、病気らしい病気などしたこともないイオだったが、ここ数日の寒さに加えて夜更かしなどしていたものだから、見事に風邪をひいてしまったらしい。
「うう~」
寮はセントラルヒーティングのため、温度設定を最大にしてもホワーンとした暖かさになるだけで、イオはベッドの上、毛布にくるまって震えるばかりだ。午前中にいったん熱は下がりかけたかとも思ったが、やはりというか案の定というか、夕方になると容赦なく上がり始め、イオを苛む。
「うう~! 寒気が……」
「イ~オ~? だいじょぶ~?」
見舞ったカリストが枕元で心配そうにしている。今日は日曜日であったが、カリストは朝からイオに付きっきりで何かと世話を焼いていた。
「汗かいたかなっ? スポーツドリンク飲む~?」
「う、うん……」
「汗かいたならパジャマ着替えよ~♪ 手伝ったげる~♪」
「バカっ! ひとりで勝手に着替えるわよっ!?」
「そいじゃねぇ、チュッチュってして、わたしに風邪うつすとイイよっ♪」
「なっ、なに言ってるのよっ!? もうっ!」
イオが弱っているのをいいことに、カリストは好き勝手なことを言っては、狼狽するイオを見て嬉しそうに笑っている。
「あんたさ、元気になったら覚えてなさいよっ!?」
「えへへ~♪」
カリストはテレテレと笑い、タオルを絞ってイオの額に乗せた。ひんやりとした濡れタオルの感触が心地良い。よくよく考えたら、特に何というわけでもないのに、朝から晩までずっと付きっきりでいてくれるなんて、身内でもそうあることではないだろう。
「ねぇねぇ♪ もしわたしが風邪ひいたら、今度はイオが看病してねっ♪」
「……ま、まぁ、そりゃ、まぁ……」
気恥ずかしそうにそっぽを向きかけたイオだったが、思い直したように言い放った。
「っていうか、あんた、絶対に風邪なんかひくわけないわよねっ!?」