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(仮)やまと  作者: 田中 彰
英傑
44/88

月の面影

 宴は夜半を過ぎても続いた。さすがにこの時間ともなると、外気も冷たくなって厠へ行くのも近くなる。



(たける)は用を済ませた後、樹木に寄りかかって佇んでいる小宇迦(おうか)を見かけた。




「こんなところで何をしてるんだ?」



そう声を掛けると、小宇迦は髪を乱雑に掻き毟って苦笑いを浮かべている。その様子を見ると、どうやら随分酒に酔っているようだ。



武は側によって「大丈夫か?」と訊ねるが、小宇迦は返事をすることなくうな垂れたまま動かない。


皆の中で一番酒に弱く、これまでも出来るだけ量を控えることが多かったのだが、今夜に至ってはどういう訳か、酔い潰れてしまうまで飲み続けてしまったらしい。




武もこんな醜態を晒す小宇迦を今まで一度も目にしたことがなかった。ぐったりとうな垂れる小宇迦を間近で見ながら、思わず可笑しさが込み上げてくる。


頭を人差し指で突いてみたり、草で鼻の辺りをくすぐってみたりと、普段は寡黙で隙のない小宇迦には出来ないことをやってみる。



暫くの間、くすくすと笑いながら玩具にして遊んでいたのだが、さすがに不憫に思えてきて近くの衛兵を呼び付けようと手を上げた。しかしその時、突如として目を覚ました小宇迦が武の袖を引く。





「気付いたか?」



武がそう問い掛けると、小宇迦は鋭い眼差しで睨みつける。




「意識はずっとあったんだけどな」



思いも寄らない言葉に、武は「そうなんだ」と苦笑いを浮かべながら、密かに固唾を飲み込まずにはいられなかった。



しどろもどろになる武を余所に、小宇迦は木の幹に寄りかかって大きく息を吸って深呼吸をする。





「今日は俺のせいで酷い目に合わせてしまったな」



「もう済んだことだ」と笑顔で答えるが、小宇迦は気落ちしたように顔を伏せて首を横に振った。武の身を危険に晒してしまったことへの後悔の念が胸中で渦巻いていたのである。


表情を見ただけでその気持ちは十分汲み取れていた。武はわざとらしく笑い声を上げて小宇迦の肩を何度か叩いた。




「気にするな。もしかしたら何か因果があってのことかも知れない。大碓(おおうす)の兄上も事件に関っていたようだしな」



武がそう言うと、小宇迦はふと思い出したかのように「そういえば」と呟く。


驚きと戸惑いが入り混じったかのような眼差しで、その双眸はじっと武の顔を見つめていた。





「お前も見たか?」



「何を?」



武は怪訝な顔で首を傾げる。小宇迦は口下手で多くを語る方ではないが、さすがにそれだけでは何が言いたいのか検討もつかない。





(ひめ)をだ」



「媛?」



『媛』と言われたところで、どの『媛』を指しているのか分からなかった。武は謎掛けのように情報を小出しにする小宇迦に眉をひそめた。





弟橘媛(おとたちばなひめ)をだ」



すでに死んでしまった妻の名を聞かされて、武はいよいよ頭の中がこんがらかった。小宇迦の言葉を繋げていけば「弟橘の姿をお前も見たか?」となる。


当然のことながら、死んだ人間が目の前に現れることなどあり得ない。確かに、意識を失いかけた夢現の中で、武は弟橘の姿を見た。だが、それが現実のこととは到底思えるはずがない。




出来るのであれば、もう一度会いたい。言葉を交わしたい。その手に、その顔に触れていたい。そして、この胸の中に抱き留めたい。武はそれをずっと切望してきた。二度と適うことのないことを知りつつも。



その想いを知っている筈の小宇迦だからこそ、何処かでその気持ちをからかわれて踏み躙られたような気がした。


武はすっと立ち上がって鋭い眼差しを上から小宇迦にぶつける。幾ら酒に酔っているとはいえ、気安く弟橘のことを冗談の出汁にすることなど許せる訳がないのも無理はない。





「……何の悪い冗談だ」



「冗談なんかじゃない」



視線をぶつける二人の間で険悪な空気が流れる。普段、小宇迦が冗談を口にすることなど殆どない。武は込み上げてくる怒りと酒のせいで、そんなことにも気付くことができなかった。




「オトタチバナが何処に居ると言うんだ?」



「この街の何処か、だ」



冷たい夜風が武を宥めるように頬を撫でていくのだが、到底そんなことでは収まる訳がなかった。打ち震えそうになるのを堪えるかのように、掌はぐっと力強く握り締められている。





「それなら今すぐ連れて来い!」



思わず声を荒げた武に、小宇迦は苦々しい面持ちで、



「居る場所を知っていれば、とっくに引き合わせてやるのに」と吐き捨てるようにそう口にした。





「今は全く匂いがしない。まるで何処かに囚われているかのように、ぱったりと消息が途絶えちまった」



膝を抱えて鬱々と塞ぎ込む小宇迦。その様子を目の当りにして、武は段々と妙な気分になっていた。以前は一縷でも望みがあれば、弟橘の死を覆すことに躍起となっていたはずだったのに、今では自らが頑ななまでに希望を絶とうとしている。


妻を失ってから四年以上も月日が経った。そのことによって苦悩から逃れるかのように、いつの間にかその死を受け入れてしまっているのだ。




「俺は、何を信じればいい」



武もしゃがみ込んで夜空を見上げた。煌々と照らす月がそれはとても美しい夜だ。薄い雲がそれを遮って朧となる。


涙で滲んだ視界ではそれでなくともぼやけて映る。弟橘を想って涙するのは、随分と久し振りな気がした。





「あの稲種(いなだね)とかいういけ好かない男に、媛が連れていかれたところを久須波(くすは)も見たはずだ」



「なんだと?」



それを耳にした武はしゃがみ込んでいた小宇迦の旋毛に視線を向ける。




「確かに久須波も見ているのか?」



「一緒に居たんだ。見ていて当然だろう」



小宇迦はそう言って怪訝な顔を覗かせる。




「何でそれを早く言わなかった」



「え、何が?」



小宇迦は不思議そうな面持ちで首を傾げてみせる。その顔は今にも溶け出しそうなほど目尻が下がっていて、何時も感情を表さない彼とは思えないほどだ。


武は身近の衛兵を呼び付けると、小宇迦の介抱を任せてすぐに拝殿へと戻った。


事の真偽は未だにはっきりとはしないが、少なくとも何かしらの情報を得ることはできるかもしれない。淡い希望に胸を躍らせながらの足取りは、まるで羽が生えたかのように軽く感じた。






 武が拝殿へ戻ったとき、久須波は官吏たちに囲まれて盛大に杯を交わしているところだった。そんなことなどお構いなしに、久須波の腕を取ると一目散に人気の少ない中庭へと連れ出す。





「どうした。何をそんなに慌てているんだ?」



武は何時になく明るい表情を覗かせながら、膨らむ期待で乱れた呼吸を深呼吸で整える。





「お前もオトタチバナの姿を見たのか?」



余りに突拍子もない質問だった。久須波の表情は一瞬で曇って戸惑いを隠せなかった。今日の偶発的事件のことだと、捲くし立てるように早口で迫られる。



確かに、久須波も弟橘媛らしき人物を目撃したのは事実だった。気を失っていた武に寄り添うその姿は、当に彼女以外の何者でもなかったように見えた。しかしながら、彼女が本当に弟橘媛本人であるという確証は何一つないのだ。




小宇迦は内心、荒れ狂った海に飛び込んだ彼女が助かっているとは到底思えなかった。もし仮に何かしらの奇跡で生き延びることが出来たのなら、きっと伴侶である武を真っ先に追い求める筈である。




目にした事実を伝えるべきか。だが、それで人違いであったとしたら。思慮深い久須波は躊躇わざるを得なかった。それを耳にした武は必ずや、喜びを爆発させて彼女のことを探し求めるであろうことは火を見るよりも明らかだ。



それで違っていたとしたなら、もう取り返しのつかないことにもなり兼ねないのである。


彼は四年もの歳月を、飽きることなく海原と亡き妻に捧げた男だからだ。そう考えると根拠もなく公言しなかった久須波の判断は英断ともいえる。






 そんな重要なことを誰が武に伝えてしまったのか。久須波にとって、小宇迦の安直さが少なからず気懸かりではあった。しかし、ここに至って彼の杞憂は現実のものとなったのである。




「武、ようく聞いてくれ」



久須波は真剣な表情で少し声を低めて、気持ちを落ち着かせるように前置きをする。



「よく似た女を見かけたことは事実だ。だが、彼女が媛である可能性は極めて低い。それは分かるな?」



そう訊ねられた武は微かに表情を曇らせる。




「俺だって完全に信じた訳じゃない。それでも少しの希望が持てるのなら、それに縋るほかないだろう」



久須波はその胸のうちを聞けて、多少は安堵して胸を撫で下ろした。一辺倒で突っ走りがちな武にしては、珍しく冷静な受け止め方が出来ているようだ。




八瀬(やつせ)が来て誤解が解けたとき、稲種殿がその女を連れていったところは目にした。彼女は恐らく稲種殿のところに身を寄せているのであろう」



「小宇迦も同じことを言っていた。とりあえず、稲種殿に事の次第を訊いてみるのが早いか」



踵を返して拝殿へと戻ろうとする武。久須波は口端を緩めて、



「俺も希望を兼ねて媛だと思いたい。もしそうであったなら、こんなに嬉しいことはない」と、大股で踏み出す背中に投げ掛けた。



それに武は「ああ」とだけ答えて、溢れる想いをそのままに屈託なく笑う。二十代半ばとなっても未だに幼さが残る顔。そこに無邪気な笑顔が浮かぶ。無垢な幼児がそのまま大きくなったかのようだった。


久須波も込み上げてくる嬉しさに胸を熱くさせる。彼の望みが叶うことを願いつつ、その背中を見えなくなるのを静かに見送った。







「稲種殿に訊ねたいことがある」



武は拝殿の中央を大股でずかずかと歩く。そして、稲種の前に腰を下ろすと真っ直ぐな眼差しで彼の目を見据えた。



「今日の騒動の折、俺の側に居てくれた女性は何処に居られる」



「話が余りに唐突でみえませぬが……」



首を傾げる稲種に、武は体をずいっと半身ほど近づける。




「気を失っていた俺を介抱してくれていた女性だ。一緒に居た久須波と小宇迦もそれを目撃している」



稲種は当惑したように眉をひそめて首を傾げる。周りの諸官は武の言動が理解できずどよめくばかりだ。稲種の隣に居た乎止与は動じることなく、じっと二人の動向を注視していた。





「いったい如何されたのですか?」



横から口を挟んだ八瀬も、何時になく張り詰めた面持ちの武に戸惑いを隠せない。




「その女性に是非ともお引き合わせ願いたい」



武ははっきりとした口調でそう言うと慇懃に首を垂れた。その様子を呆然と窺っていた諸官は、いよいよざわめきたって収拾がつかなくなっていくばかりだ。




「何を為されます。早く頭をお上げ下さい!」



稲種は慌てて肩を抱き上げようとするが、武はそれを頑なに拒んで体を起こそうとしなかった。





「引き合わせよ、と申されましても、某にはどういうことなのか全く検討もつきませぬ。武君は何か思い違いをなされておいでではないのでしょうか」



「長い黒髪は艶やかで美しく、透き通るような白い肌は淡雪のようだった。包み込んでくれるような優しさを秘めた瞳。そんな愛しき顔をどうして忘れることが出来ようか」



武は首を垂れたまま、震える声で唸るように言った。八瀬はそれを聞いていて、瞬時に弟橘媛の花顔を思い浮かべた。




「はてさて、そのように麗しき女人であれば、某も是非お目に掛かりたいものです」



稲種はそれでも動じることなく、白を切るかのように平然とそう言い退けて笑みを浮かべていた。



暫くの間、居た堪れない沈黙が続いた。武は身体を細かく震わせながらも、ずっと首を下げたまま動こうとはしない。


対する稲種もその顔に笑みを絶やすことはなかった。諸官もそんな二人を遠巻きに眺めていることしか出来ずにいた。



険悪な空気は或る人物のひと言で新たな展開を迎えることになる。緊迫した空気の中、悠々と酒を口にしていた乎止与(おとよ)である。




「御子の申された女人は我が娘、美夜受(みやず)によく似ているようだ」



武はそれを耳にするや否や、身体を起こし上げて『美夜受』という名を一拍も置くことなく口にした。



稲種は意表を突かれたのか、怪訝な顔で横に鎮座する乎止与に視線を向けた。





「如何にも。美夜受という娘は先ほど申された外見によく似ております。ですが、御子と我が娘にこれまで接点があったとは到底思えませぬが」



眉をひそめて首を傾げる乎止与。続けて言うには、



「それに美夜受は病を患っておりましてな。表情を示すことなど一度もなく、虚ろな眼は常に宙を捉えて、人の心を全く持ち合わせていないのです」とのことである。



それを耳にした武の落胆振りは相当なものだった。脱力する余り、諸官がいようともお構いなしに身体を投げ出して寝転がった。



乎止与が我が娘と呼ぶからには、その出自を疑う余地は何一つない。それに、熱田の主たる乎止与が家臣の前で堂々と嘘をつくとも思えなかった。


どれだけ訝しがって疑おうにも、娘であるという事実を覆すことなど何人たりとて出来るはずもないのだ。武の淡い期待は哀れにも木っ端微塵に砕け散った。




暫くして、武はおもむろに起き上がり先ほどの非礼を詫びた。それからふらふらとした足取りで拝殿を後にする。それを案じた八瀬と久須波も中座を願い出て彼の後を追った。






 離れに用意された住居に戻ってきたものの、武はその晩を一睡もすることなく次の朝を迎えた。


傍らには八瀬と久須波が横で寝息をたて、戸口には隻腕の猪根が控えていた。小宇迦は酒に酔い潰れてしまったのか、部屋の片隅で縮こまるように転がっている。



岬の先に建てられた住居の窓からは、朝陽を映し出してきらきらと揺れる広大な海が臨めた。外敵が住居まで及ばないよう取り計らっているのであろう。


岬の上の更に奥ばった立地は戸口から宮の全体が窺え、その先に街並みが張り巡らされているのが一望できる。実に見晴らしが良いところであった。





「話は久須波に聞いた」



背後から八瀬の声が聞こえてくる。




「冷たいようだが、媛君が生き延びているとは思えない。もう諦めろ」



実に八瀬らしい口振りだった。宥めるわけでもなく、励ますわけでもない。ただただ現実を突きつけるだけの、冷淡で廉直、そして静かな言い方だ。久須波も体を起こしてうな垂れている。




「分かっている」



武は振り向くことなくそう言った。視線の先には境界が分からない空と海。太陽の姿が海面にも美しく映し出されている。まるで現世とは別の世界が存在しているかのようだ。



その世界では仲睦まじく寄り添う自分とよく似た夫婦が空を見上げていて、幸せそうな笑顔を共に湛えているのか。


それとも今と同じように海面に目を落として亡き妻を想っているのか。一体どちらなのだろう、と。実際のところ、そんな世界があるかどうかも分からないのだけれど。





 武は懐に忍ばせていた翡翠の櫛を手に取った。後生大事に取っておいても、弟橘が戻ってくることはない。手にしたいものはこの櫛ではない。


これを持っていることで妻への未練が断ち切れないのではないか。そう考えた武は櫛をぎゅっと握り締めて、過去と決別する覚悟を固めた。大きく息を吸って、強く、深く吐き出した。





「さらばだ」



櫛に向けて語りかけた後、視線を再び海の果てに向けた。腕を振り被って遠くへと投じる。






 その瞬間、部屋の隅から「おいっ!」と絶叫が響く。窓に投じたはず櫛は脇から飛び出してきた影に命中した。ひどく鈍い音が聞こえた後、床に落ちた櫛が涼やかな音色を奏でて転がっている。



皆が呆気にとられている中、激痛にもんどりうつ小宇迦。それほど重量感はない櫛とはいえ、全力で投じた金属をまともに受けたのである。しかも、あたった場所が頭部ともなれば、その激痛は想像するに容易い。





「だ、大丈夫か?」



武は歩み寄って恐る恐る声を掛ける。




「馬鹿野郎、何で媛の櫛を棄てようとしたんだ!」と憤りを露にする小宇迦。後頭部を抑えて涙ぐんだ情けのない顔に、武は思わず吹き出さずにはいられなかった。




「お前こそ何やってんだ」



呆れ顔でそう訊ねれば、



「それはこっちの台詞だ!」と、小宇迦はまるで泣き叫ぶ赤子のように声を張り上げる。


らしくない様子に、端で見ていた久須波や八瀬も笑い声を上げずにはいられなかった。戸口にいた猪根も思わず口を押さえている。



武は一息つくよう宥めてから、ようやくたんこぶの痛みが和らいできた小宇迦に彼女が弟橘でなかったことを大まかに伝えた。



すると、それを聞いていた小宇迦は段々と怪訝な顔を浮かべて首を傾げてみせる。どうにも腑に落ちないのか、たんこぶを擦りながら何やら思案を巡らせているようだ。




「兎も角、オトタチバナのことはもういいんだ」



武はそう言って床に転がっていた櫛を拾い上げる。それから大きく深呼吸をして、憂いを帯びた表情を歪んだ笑みで塗り替えた。




「待ってくれ」



小宇迦は突拍子もなくそう口にした。そして「今日だけ、あと一日だけ俺に時間をくれないか?」と続けた。



それは意図の分からない不可解な申し出だった。美夜受は弟橘とは別人であるという事実は、乎止与が口にした『我が娘』という言葉で疑いようのないものとなった。


櫛を手放すのに今更一日待ったところで何だというのか。武も久須波も八瀬も、その真意を量れずにいた。



さりとて、櫛を棄てるという作業は小宇迦の静止を振り切ってまで、今すぐに行わなくてはならないこともないのである。





「待つことに意味があるのか?」



武は苦笑してそう言うと、小宇迦は首を僅かに頷かせた。俺に任せろと言わんばかりに古傷の残る顔に自信を覗かせる。





「何か思うところがあるんだろう。一日くらいなら待ってやってもいいんじゃないか」



八瀬は少し呆れ顔で武に声を掛ける。



武も「そうだな」と同意して渋々頷く。


明日になればこの決心が揺るいでいるのではないか。少なからずの憂慮はあったものの、ここは小宇迦を信じることにして櫛を懐に収めた。




「強烈な一撃で二日酔いもすっきり醒めた。絶対に媛を見つけてきてやるからな」



小宇迦は微笑みながらそう言い残して戸口から颯爽と飛び出していった。


その背中を首を傾げて見送った一同。この世にいない筈の弟橘を、小宇迦はどのようにして見つけてくるというのだろうか。


この時はまだ誰も、まことの事実には触れていないのである。






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