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3 ー参ー


ガウの悲鳴が響き渡る森の中、グィルスカイはテーブルに手をつき椅子から立ち上がろうとする半ばの姿勢のまま固まった。


「・・・あー、何か面倒が起こったか・・。」


はぁ、と演技がかった溜め息をこぼしこれまた椅子に座り直した。この間ガウの悲痛な声は続いている。


「グィルってば〜〜〜!!」「面倒がらずに助けてよーー!」「うわあぁぁあん!!グィルの馬鹿ー!!」「嘘ですごめんなさいーー〜〜〜!!」


これだけ子供の声が響いてるのに非情にも何の表情の変化が見られず、眠そうに目をこすり「えーと、あれ持ってたっけ・・。」とつぶやき服の至る所を探っている。そして目的の物を見つけたのか懐から緑色の包装紙に包まれている飴のような物を取り出した。包装紙をはがしこれまた緑色のブロック型のものを躊躇い無く口に運び、椅子に座ったまま口を開いた。



『こっちに来い!!ガウ!!!』

「「こっちに来い!!ガウ!!」」

【こっちに来い!!ガウ!!】

<<こっちに来い!!ガウ!!>>



それは何重にも重ねて聞こえ、男の声があれば女の声、甲高い子供の声の様にも聞こえてくる。

ぶっちゃけると不気味な騒音以外なんでもない。

一人しか声を上げてないのにグィルスカイの周りからまるで其処に何者かがいて同じように声を張り上げているかのように思える。しかし、其処にいるのはグィルだけだ。


その声を聞きグィルは眉間にシワを寄せ、やっと眠そうな表情を崩した。すると次の瞬間、口に指を突っ込み先ほど口に含んだ物を取り出した。

「うぇっ、ゲホッ!不味!!」


それを包み紙に丸めポケットに戻し、そのまま林檎程の大きさの水晶をテーブルに置いた。苦虫を潰したような苦悶の表情で他にも色々と使い道の分からない、不気味な色合いの道具を取り出している。ちなみにグィルスカイが着ている服には空間拡張・質量変換の魔具としての細工を施してあり、常に色々と持ち歩いている。先ほど取り出した緑色のものもグィルの作った魔具の一つである。効果は何とも言いがたいものであったが、本人はお化け屋敷や悪戯にいいだろうと遊びで作りそのうちガウを含めた近所の子供達にあげようと持ち歩いていたのだ。


・・・体に何の影響も無く、風による音の拡張に音声記憶置換で複数の声を出す、と単純な魔具ではあるが作ってる途中たいして使い道が無いことに気づき最後の方は少々手を抜いた事を認める。しかしーー


(不味すぎた!これは!!)

道具を取り出していた手を止め、残っていたわずかな紅茶を一気に飲み下した。こうして口直しをすると同時に先程使った魔具を急遽作り直そうと決意新たにしているとグィルスカイの斜め前方の樹が不自然に揺れ動いた。



「グィルーーーーーーーーーーーーッ!!!」


「げっ!!バカ・・!!」


黒い物体がとてつもない早さで若き魔具師の腹部に飛び込んだ。いや突っ込んだというべきかもしれない。

魔具師とはいわゆる手工業である。そのためあるのは手先の器用さと知力であっって体力・筋力なんぞあるわけなくー


「ぐっ・・・!!」

「いたっ!?」


黒い物体ーもといガウの勢いを踏みとどめられる訳無く二人して椅子ごとひっくり返った。


「いたたた・・。」

「ご、ご、ごめんなさい〜〜!!」


グィルスカイに会って余程安心したのかそのまま倒れた状態で謝りながらも腹から離れない。というかぼろぼろ涙を流し始めた。

・・・・やれやれ。

そんな少年を見下ろしつつグィルスカイは打ち付けた腰をさすった。いたい・・・腰痛を患った御高齢の方々の気持ちが今なら理解できる。今度会う機会があれば優しく労ってあげよう・・、等と胸に刻み


爆弾発言をかました





「いいから下りろ。その年で女を襲うのは感心しないぞ。もっと色々育ってからにしなさい。」




「大きくなったらいいの!?襲うのは駄目だと思うよ!!なんだかとってもヒワイだよ!?」



ガウはあまりな発言に涙をひっこめた。


グィルスカイ・ヴィドガー


名前のせいでよく間違われるのだが正真正銘ーー女性である。

一見ゆったりとした茶色いローブを着ているため体型が見えにくく大きめの眼鏡で顔をおおっている。背も170スァのため女性ならば高め、男性なら低めに見られる。


彼女ーグィルスカイはガウに対し思い切り顔をしかめた。


「・・・・・ヒワイか。一体どこで覚えたんな言葉。覚えた状況、相手を詳しく話せ。一般的教育論を説いて来てやる。」 

「?ご主人がね、グィルにヒワイなことされたら言えって。その時教えてくれたよ?ヒワイって相手に嫌な事を無理矢理することだって。・・違うの?」

「・・いや、まぁ合ってるが・・・あのクソハゲが、まだ私を疑うか・・。」


グィルスカイは宿屋主人に以前、ガウに対し甘すぎる待遇に疑いをもったのだ。ーー彼女は所謂ショタコンではないかないかと。

真正面から滅多に表情を変えない仏頂面が渋い顔で聞いてきた時、彼女の衝撃と怒りは凄まじかった。



ふざけるなこのハゲが。少年との友情をそのような汚れた目で見ていたのか。そうか、よほどその目はいらないと見える。そもそもあの子に対し歪んだ恋愛感情及び劣情などないわボケ。親愛ならば持っているが貴様とてそうだろうが。ああああ!むかつくぞ。ノイ・ホーンド!!明日の朝日を黄色く見せてやる!


そう叫ぶと彼女が宿屋主人ーノイ・ホーンドに行った鉄槌はまた別の話。


(そうかそうか、ノイのやつまた同じ目ーーいやあれ以上の地獄を見せてやろう。)

薄く笑うとガウに問うた。


「・・・で、オマエは何してる?」


スァ=cm。


グィルスカイは子供好き。大勢の弟妹がいるため世話好きともいえるかも。

「・・かわいいよね。子供って。見てて飽きないのがいい。」



本人にしたら愛玩動物のつもりのようです。ショタコンじゃないです。

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