表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

2 ー弐ー

ガウは焦っていた。年の離れた友人とのお茶会の時間に遅れてしまっているからだ。


(グィル、今日はケーキを焼くって言ってたけど何のケーキかな?外で食べるからクリームのないやつかな?・・残ってるといいなぁ。)


少年は友の事をよーく理解していた。お茶会自体は三日に一度ガウが誘われる形で行われ、グィルの気が向いた時にのみ菓子を作るのだ。

グィルはお菓子を作る時、何故か昼食を食べ忘れることが多い。しかし本人がお菓子を作るのは月に2・3度の割合だ。その時以外のお茶には近くのお菓子屋さんで購入している。だからいつもは自分の分の心配をする事も無いのだが今日は本人が宣言していたため心配も一押しだ。しかも誘っておきながら空腹に耐えきれず、一人で食べ始めることも過去にたびたびあった。


(仕事が長引いちゃったから・・。最近・変な人がよく来るからな〜、洗濯物が増えて疲れちゃった・・・。今日はグィルの所に泊めてもらおうかな?)


頭には茶色いニット帽を深くかぶり、その下からは短い黒髪が覗いている。瞳は太陽のように明るい金色で少々三白眼気味の目つきは鋭く顔の輪郭は子供特有の丸みをおびている。服装は何故か全身黒のものを身につけ首から青い雫型のペンダントをさげている。

そんな彼・ガウは7歳になる子供である。



彼は生きるために宿屋の雑用として住み込みで働いていた。

両親は既に他界し、頼るべく親戚には彼の出生に問題があると忌み嫌われ天涯孤独の身であった。


しかし宿屋の主人は何とも淡白な人できっちり働くのなら大人だろうが子供だろうが関係がないといい、ガウを雇ってくれている。そのため7歳の子供を雑用とはいえ宿の従業員扱いする為、周囲は彼がガウの保護者であると認識している。否定も肯定もしない所を見るとまんざらでもないのだろう、とは宿屋の主人の友人達の言葉だ。

ガウ自身はそんな周囲の事など知らなかったが。純粋に子供である自分を雇ってくれている主人に感謝の念を抱くとともに尊敬していた。



彼は特異な出自故、様々な危険にさらされてきた。そのため今でこそ落ち着いているが、軽度の対人恐怖症なのだ。なので未だに周囲の住民といえど、挨拶ひとつまともにできない。「こここ、こ、こんにちはっ!!」と、どもりまくってその後猛ダッシュでの逃亡、な挨拶だが。このような状態のため、周囲の認識など知る由もなかった。



しかし最近、宿の客に怪しい集団がここ三日程滞在している。

何かとガウに視線を寄越し、その後必ずといっていい程宿屋の主人に詰め寄り何かを話している。


ガウはその客達の視線が嫌で堪らなかった。無機質な表情のクセに眼は何か熱がやたらとこもっていた気がする。

どうやら何かの宗教団体であるらしく近づかないよう固く注意を受けていた。グィルにはまだその客達について話していない。宿屋主人からはグィルに客達について詳しく伝えるように伝言を受けていた。


そもそもグィルと宿屋主人は知り合いなのだと聞いている。そう話したグィルは藍色の瞳を面白そうに細め、主人は眉間にしわを寄せ随分と渋い顔をしていた。当初、ガウには随分と不思議に思った。

どういった知り合いなのだろう。というか友達なのでは?と聞いたら二人は即座に否定した。『こいつと友達なんてありえない。』と。

言葉こそ違ったが同じニュアンスではあった。やはり二人はお友達なのかとガウは未だに思っている。



(ご主人も遠回しに泊まってきていいって言ってた気がするから別にいいよね?グィルはいつでも来ていいって言ってくれてるし。)


いつもお茶会のときは半刻ほどの休憩時間をもらいグィルの家へ行っている。しかし昨夜、何故か急に半日の暇をもらえたため、こうして最近見つけた自分のとっておきの場所でお茶をしようとなったのだ。


ガウはあのお客達に会いたくないと日に日に強く思うようになっていた。そのためこうして仕事が休みだと思うと仕事以外であの人達に会うことになる宿に帰りたくないのだった。


グィルはガウにとてつもなく甘い。ガウに対し拒否の言葉を発した事がないのではないかという程甘い。グィルスカイは普段他人に対し線を引くような態度で接している。自分の領域に踏み込まれるのを嫌うのだ。しかしガウだけは別であった。本人曰く「気に入った」らしく最初は会えば話す程度であったが、今ではこうしてお茶をする仲までとなった。ガウとしても珍しくグィルにとても懐いていて家には何度も泊まり、今では空いていた客室がガウの寝室として使われている。


なのでいつ泊まりに行っても問題はないむしろ使われた方が埃がかぶらずちょうどいい、といつもガウが泊まるたびグィルは遠慮しまくって小さくなる少年に言って聞かせている。




(・・あれ?人の話し声?この森に誰か入って来てるの?)


ガウは人より優れている耳に人の話し声を拾った。複数いるようで何やら布越しのようなくぐもった音に聞こえた。


(グィルじゃない。・・・他に僕らみたいに森へ入れる人達がいたのかな?)



少年は少しその音に耳を傾けるため音源の方へ足を進め始めた。ガウは見つからない自信があった。自分は普通の人より何倍も感覚が優れている。相手からだいぶ離れていれば気づかれないだろうと高をくくっていたのだ。



そのため音のする前方に集中していたため背後から自分を見つめる視線に気づいていなかったーー。







一時期グィル・ショタコン疑惑浮上。まず疑い始めたガウの仮保護者宿屋主人に報復を行ったら一気に噂は下火になりました。何されたんでしょう宿屋主人。

「・・・・・・・・・・・・・恐ろしすぎて・・・・・思い出したく・ない。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ