職業:中の人2:自作自演?
最近のオンラインゲームには、サポーター機能というのがある。
パーティメンバーが足りない時、
ソロプレイを貫きたい時、
NPCを味方につけ、ボス戦に挑める機能だ。
このNPCは、メインシナリオで、何度も出るキャラで、
それと一緒に戦えるというのも、うれしい!!
そして、このNPCは、
声優さんのイイ声で、しゃべってもくれるのです。
そこも、なかなかにうれしい!!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
でも……
プログラムされた動きでは、いろいろ問題が生じる……
・敵が攻撃を始める前に、先に回避……
・盾役と同じ方向に移動するアタッカー…
・アタッカーが攻撃を始めても、別の敵を攻撃する盾役…
・全員違う場所で攻撃を受けないといけない時に、
突然プレイヤーの方に飛び込んできて、共倒れするヒーラー…
……と、なんだか、あれれ?という動きをしてしまう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
最近、これが「模範」と勘違いしちゃう、プレイヤーが増えてきたんだよ。
そして、NPCのいない普通のパーティで、
こういう動きをして、迷惑をかけるという事が起こっているらしい。
そこで、当社のオンラインゲームでは、このサポータ機能にも「中の人」を採用する事を決めました。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
前置き長くなったけど、今日の俺の仕事は、サポーター機能の「中の人」だ。
求められているのは……
・プレイヤーを勝たせる事
・プレイヤ―を置き去りにしない事
・模範的なプレイをする事
……です。
ですが、当社のオンラインゲームでは、ボス側も「中の人」です。
今日は「中の人」対「中の人」なのです。
こちらは、今日、誰がボス担当なのか聞いていません。
でも、たぶん、佐藤か、長嶋が来ると思っています。
佐藤は、先にアタッカーを潰し、勝てる要素を無くす戦術を取る。
長嶋は、セオリー通り、先にヒーラー潰し、次に盾を潰して、煽りまくる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ピピピ……。
おっと、呼び出しがかかった。「中の人」の出番だ。
えーと、今日の仕事は「先遣拠点ガードナー」で、……。
俺の役は「NPC:セラフィナ:ヒーラー」か……。
さて、頑張るか……。
で、プレイヤーは「レイン:遠隔攻撃アタッカー」か……。
古参のプレイヤーみたいだな……。
◇ ◇ 戦闘開始 ◇ ◇
あれ?、レインさん、全然動かないな……。
……と思ったら、盾役のキャラが、先行して、敵を潰しに行ってる。
ちょ……プレイヤー置き去りにしちゃ、いかん…って
でも、この動き、どっかで見た事あるな……。
新入社員の青島じゃないか……。
ちょっと、メッセージとばしとくか。
「プレイヤー置き去りにしちゃいかんて……」
ん?、返事ないな……。
しかたない……。
メッセージ連打してみるか……。
「プレイヤー置き去りにしちゃいかんて……」
「プレイヤー置き去りにしちゃいかんて……」
「プレイヤー置き去りにしちゃいかんて……」
……気づかねぇ……
電話してみるか……
トゥルルル~、トゥルルル~、
「はい、青島です」
「あぁ、俺だけど。青島ぁ、お前、今、中の人やってるだろ?」
「あ、先輩。え? ナンすか? 中の人って…」
一応、中の人っていうは、守秘義務があるから、気を使ってるようだ…。
「メッセージみてくれた?」
「あぁ……。そういう事っすね。すみません。気をつけます」
……ようやく伝わったか……
……って、おいおい、電話してる間に、
レインさん、特攻しちゃってるぅ~
瀕死じゃん……。あ、やべ……。死んじゃった…。
◇ ◇ リスタート ◇ ◇
今度は、大丈夫だろ……。
ん?、NPC役のアタッカー動いてないぞ……。
おいおい、マジか……。
NPCが寝落ち…って、最悪じゃん……困るな……。
中の人、誰よ?
チャンチャラ~、チャ~ララ~
俺のスマホが鳴る。青島からだ……。
「はい」
「先輩~ぃ。どうしましょう」
「今度は、どうした?」
「盾でもアタッカーでも出来るって、この仕事受けたんですけど……」
「うん」
「両方、同時に来ました」
ちょ……。マジか……。
「仕方ない、アタッカー俺の方にまわせ!」
「どうすればいいんすか…、えーとな…」
俺は、2台めのPCでアタッカーの操作を始める。
まさか、両手使いでやらされるとは……。
さて、頑張るか……、て、あれ?、レインさん死んでるじゃん。
◇ ◇ リスタート ◇ ◇
ここからは、危なげなく、進んでいきました。
まず、1人目のボスと対峙。
なんか、動きがNPCっぽかった。
レインさんが、避けたつもりで、敵の攻撃をもろに受け即死……。
おぉぅ……
◇ ◇ リスタート ◇ ◇
また、危なげなく、進んでいきました。
そして、また、1人目のボスと対峙。
今度も、動きがNPCっぽかった。
無事、勝利~!
俺は、声優さんの声を出すボタンを押す。
「この調子で、やっていこぅ~!!」
そして、危なげなく、進んでいきました。
ただ、右手でヒーラー、左手でアタッカーしてるので、ちょっと余裕ない。
そして、2人目のボスと対峙。
開幕から、執拗にヒーラーの俺を狙ってくる。
中の人は長嶋か……!? こいつ、しつこいんだよな。
くそ……。両手操作で、余裕ないちゅうのに……。
あぁ、また来やがった。
両手操作で、こいつの攻撃を受けるんは、しんどい。
あぁ、また……。
盾役の青島が、俺をかばってガードしてくれた。
お、サンキュー青島!。声には出さない、心の中で、そう思ってるだけ。
……て、あれ?、レインさんも一緒に来てんじゃん……。
レインさんが、盾役の前に移動してきて、ひとり攻撃を受け死亡……。
マジか……
◇ ◇ リスタート ◇ ◇
また、危なげなく、進んでいきました。
そして、また、1人目のボスと対峙。
今度も、動きがNPCっぽかった。
盾役、死にかけたけど、無事、勝利~!
俺は、声優さんの声を出すボタンを押す。
「この調子で、やっていこぅ~!!」
内心思う、マジ、この調子で頼む……。
そして、2人目のボスと対峙。
今度は、こっちにも考えがある。
今やってるヒーラー役は、ヒーラーモードと、
アタッカーモードを切り替えられる。
そして、今回は、道中、アタッカーモードで、
ゲージをMAXにしておいた。
開幕いくでぇ~!!
案の定、長嶋は、攻撃モ―ションを始めている。
ゲージMAXの「ホーリーレイ」を喰らいやがれ。
こっちは、即時発動だ!!
2人目ボス、もとい長嶋が、
HPを大きく削られ、攻撃モーションも止められる。
よっしゃ~!
そして、もう一人のアタッカーでも、
攻撃を叩き込んだ。うん、いい調子……。
ピロロン……。
メッセージが届く。
「先輩、プレイヤー置き去りにしちゃ、ダメですって……」
え?
あぁぁあぁ!!!
レインさん、ボス戦の場所に来てないじゃん。
ボス戦のエリアには、ヒーラーの俺と、アタッカーの俺しかいなかった。
やっちまった~~!
――プレイヤーのレインさんがログアウトしました――
おぉぅ……;
今回は、見事に失敗してしまいました。
みんなは、こんな失敗しちゃダメだぞ~




