47.欲しがり王女の侍女はつらい
会談の準備が無事に終わった。ユーリンのことは侍女長が丸め込み、神殿の帳簿をあれこれ指摘することで、上層部の引責辞任を連発させ、王女殿下に差し出せる状態になった神殿に、エリシアンはじめとした王女宮責任者たちは満足げだ。
「王女殿下は……?」
「大丈夫。ご了承いただいたわ。欲しがるおつもりだったのでしょう? ならば、向こうから差し出した形にしても同じじゃないですか、と説得したの」
笑顔を浮かべる侍女長はとても恐ろしかった。あの侍女長が笑顔? いつも無表情なのに? 思わず自分の体を抱きしめる。
「では、今日の会談では予定通りに王女殿下に神殿を差し出す形でよろしいでしょうか?」
「問題ないわ」
首肯する侍女長をみて、わたくしは調整に走る。正直、神殿にはあれから何度も出入りし、書類の作成から参加してきた。元管理主たち? ふふふ。王女殿下がおっしゃっていたわ。人材は貴重だから、有効活用しないと、ね? 彼らにはやってもらいたい仕事があったの。
名ばかりの役職を与え、雑務をこなす書類処理の魔術具のように働いてもらっている。魔石よりもコスパがいいし、名ばかりの役職のせいで今まで王女殿下が担っていた膿を出す役割としてベストだ。ある程度の書類処理能力があってよかった。ちなみに生活は神殿の下男たちを参考に清貧潔白を。……エスラニア崩壊の事後処理等の業務が終わったら、新しい魔術具の研究に使われることも出てくるかもしれないけど、売国奴には優しい処刑になるのかな。……どんな魔術具を開発しているのか知らないけど。
「……ザシュリア、今日までよく頑張ってくれたわね。あなたの想い、わたくしが受け止めますわ」
王女宮からでてきた王女殿下に頭を下げると、通りすがりにそんな言葉をかけられた。ご自身を犠牲に、という信条であった王女殿下が、わたくしたちの思いを受け取って、ご自身のことも大切にしてくださる。なんと嬉しいことでしょう。侍女冥利に尽きます。涙が溢れそうになるわたくしに、侍女長が肩を叩いてわたくしに言う。
「ザシュリア。もうすぐ女性初の伯爵になるのよ? 覚悟はいいかしら?」
「えぇ、侍女長。王女殿下のために、わたくし身を粉にして働くつもりですわ!」
健闘を祈るようにわたくしの肩を叩き、侍女長が王女殿下の後ろをついていく。
そして、今日、王女殿下はアイデンシャルティーネ様の代替者として、神殿の管理主の座に着くことになった。欲しがり王女はこうして、汚名を返上し、皆に愛される王女となったのだった。
数日後
「ザシュリア・ウェルティンに伯爵位を授けることをここに宣言する!」
女性初の伯爵ということで、反対の声も大きかったが、王女殿下が推してくださったらしい。人々から拍手が送られる中、王女殿下が嬉しそうに笑ってくださる。そして、嬉しさのあまりか、涙をこぼされる。わたくしのことを思って涙を流す王女殿下。侍女思いすぎてこちらが心配になってしまうくらいだ。そんな王女殿下を支えるように、でも自慢げに侍女長がこちらを見ている。
……これだから、王女殿下の侍女はつらい。
最後までお読みいただきありがとうございました!
長編はザシュリアが爵位をもらうところで終わりたかったので、こちらで完結となります。
また、短編を追加したいと考えてますが…
王女殿下の老後?の短編も追加致しましたので、お読みいただけたら嬉しいです!
『公爵閣下、社交界の常識を学び直しては?』
https://ncode.syosetu.com/n2890lt/
新しく連載始めました!
『宮廷魔法使いリフィリーゼの大掃除〜馬車から捨てられた欠陥令嬢が、宮廷魔法使いの座についた理由。』
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