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【長編版】欲しがり王女の侍女はつらい  作者: 碧井 汐桜香


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42.商会の中身は?

「こちらが収入に関する部分というところまで理解できましたか?」


「あー……わかったかも。ということは、それを応用すると、この部分が支出で、この帳簿はこことかがおかしいってこと?」


 ……憎みたくなるジュガルドの理解力にわたくしは頷く。「ふーん、そっか」などと言いながら、ジュガルドは帳簿をめくっていく。もう完璧に理解したらしい。ジュガルドにとって摩訶不思議なものから玩具のようなものに成り変わった帳簿を取り上げ、ピックアップした問題点をいくつかまとめる。


「さっきデスラントが言っていたように、エスラニアから多額の資金を受け取り、それを上部層で分配していますね。その代わり、信者や信仰国から集めた資金の使用用途が不明です……。裏帳簿にも濁して書いてありました」


 わたくしの言葉に、ジュガルドが書類の束を一つ取り出し、わたくしに見せてきた。


「これって役立つ? 隠し部屋の本棚の中に隠されていたらしいんだけど」


 “商品案内”と書かれたその書類の隅には小さく商会の名前が書いてあった。エスラニア御用達の商会だ。表では食料を売っているが、裏では武器だけではなく、違法奴隷や違法薬物を売っていると商会関係者たちに囁かれていた。使用不明の魔石を購入しようと何度も交渉に来たが、あまりにも怪しかったのでわたくしが出禁を言い渡した経緯もある。


「うーん……」


 わたくしが唸っていると、ジュガルドが不思議そうに首を傾げた。


「どうかした?」


「この商会……商会関係者たちからあまりいい印象を持たれていないんですよ。エスラニア御用達ですが……」


 エスラニアという単語に反応してデスラントが覗き込みにきて、嫌そうに顔を歪めた。


「……あぁー……」


「どうしたの?」


 わたくしの問いに、デスラントが顔を歪めたまま答えた。


「その商会、エスラニアを拠点にしているし、王宮御用達ですが、正直外国ではあれこれやらかしていて苦情が大変でしたよ……」


 外国での人攫いからの違法奴隷。敵国とみなしたら何をしてもいいと判断して違法薬物を売り付ける。魔術具も粗悪なものばかり仕入れていた。次々と上がる内容に、穏やかなはずのジュガルドの顔も歪むし、わたくしも表情が引き攣っている自覚がある。


「……」


「我が国を拠点とするはずのアイデンシャルティーネ教が違法奴隷や武器、薬物、その他に手を染めていた可能性が高い、という理解でよろしいのでしょうか? というか、武器なら一体どこに……?」


 わたくしが悩んでいると、天井から一枚の紙がぴらぴらと落ちてきた。びっくりして見上げるが、誰もいない。ジュガルドには何か見えているらしく指を二本立てて何やら合図を送っている。


「……これは?」


 事情がわかっていそうなジュガルドに問うと、したり顔で説明してくれた。


「影から追加情報だって」


「ジュガルド様といい、影の方々ってなんで普通に書類を渡せないんですかね?」


 わたくしの言葉に、デスラントは大きく頷く。一方でジュガルドは不思議そうに首を傾げている。


「え、そんな変な渡し方、したことないよね?」


 無自覚ですか!? そう思いながら、書類を手に取り中身を見る……。は? クーデター計画書? というか決行日時が会談の日なのですが!?


「これどういうことですか!?」


 わたくしの言葉に書類を覗き込んだデスラントが眉間に手を置き、ジュガルドも納得している表情を浮かべている。


「エスラニアの解体予定を受けて、焦ったんでしょうね」


「武器の支給元がいなくなったら困るけど、今ならまだ武器もあるしエスラニアの威光もあるかもしれない。なかったとしても、アイデンシャルティーネ教の神殿関係者で上層部を固めてしまえってところだろうね」


 何を普通に納得しているのでしょうか? わたくしの大仕事の日になんでそんな計画を!? まだ見ぬ神殿関係者たちに殺意を抱きながら、わたくしはジュガルドに警備の計画を相談するのだった。







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