17.詰められ侍女はこわい
「つまり?」
無表情な王女殿下と侍女長に詰められる。散々ユーリンに羨ましがられながら連行された後だ。これが羨ましいなんて、ユーリンはかなりの変わり者だ。
「えーっと、わたくしの友人の婚約者が、エスラニアの女王陛下の、」
「敵国エスラニアの女王」
無表情で侍女長に訂正される。怖い。
「えっと、敵国エスラニアの女王陛下の」
ギロリと睨まれた気がする。侍女長だけじゃなく王女殿下にも。
「……敵国エスラニアの女王の好みの男性の容姿に似ている気がしまして」
「姫様。資料はこちらに準備してあります」
「あらあら。前から気になっていたお方だわ。あまりにも言動が困るものだから、少し手が空いたらわたくしが欲しがろうかと思っていたのだけれど、ちょうどいいわ」
にっこり笑う王女殿下に、震える。貴族のそんなあれこれまで目を光らせておいでなのですね。何をどう使うつもりか、聞かなかったことにしますね。
「敵国エスラニアの女王の好みを資料として把握していても、かの令息の容姿まではしっかりと把握していなかったから、助かるわ」
笑顔の王女殿下に、侍女長が書類を並べる。いつの間にか、きっとダビメット伯爵家が自宅に飾る用に準備したのだろうユリンス様の絵姿まで、準備されている。おそらく最新のもので、わたくしの記憶と相違ない。エスラニアの女王の好みを具体的に羅列した書類は、先ほどわたくしが作成したものだが、その横にいつの間にかイメージ図が描かれている。仕事が早すぎて怖い。それにいつの間にか今までエスラニアの女王が閨を共にした男性の絵姿まで揃っている。あれ、どうやって手に入れた?
「メイシア嬢には申し訳ありませんが、このような婚約者がそばにいることの方が問題でしょう。早急に手を打ちましょう」
「そうね。お父様に夜会を開く様に要請するわ。敵国エスラニアの女王は人のものが好きなだけで、自分の好みじゃないものだったら放置なさるでしょう? おそらく、メチウス姫の婚約者のお方のことはお好みではないと思うの。だから、奪還は容易だと思うわ。……本当想定外なことばかりする困ったお方ですこと」
次々と案を出していく中に、勇気を出してわたくしは口をひらく。
「あのぉ。差し出がましい様ですが。シュナウ伯爵令息をメイシアの新しい婚約者に打診していただくことは可能でしょうか?」
「え? あぁ、そうね。メイシア嬢とシュナウ伯爵令息は想い合っていそうな様子だものね。婚約解消という瑕疵を埋めるには、ちょうどいいかしら」
なんで知っているんだろう。わたくしの言葉はきっとこの場では気にしたら負けなのだろう。神の愛し子とか……? でも、神の愛し子って一度の奇跡を起こす方でしょう? 情報をこんなに持っていることもおかしいし。何度も起こしているから違うのだろう。なんなのこの王女。淡々と受け入れる侍女長もこわいけど。ぼーっと見送っていると、王女殿下に問われる。
「メイシア嬢はどんなお方なの? 優秀だと聞いているけれど、友人として見たあなたの感想が聞きたいわ」
学園生活に想いを馳せながら、親友メイシアについて王女殿下に語って聞かせる。メイシアの国を思う気持ちや努力家なところ、その優秀さや優しさ。語って聞かせるたびに王女殿下も、いいお友達ねと聞いてくださる。嬉しくなって余計なことまで話した気もするが、メイシアがいい子ということと、こっそり想い合う二人を見る楽しさについては共有できたと思う。……もしもメイシアに怒られたら、素直に謝ろう。そう思いながら。




