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【長編版】欲しがり王女の侍女はつらい  作者: 碧井 汐桜香


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12.第二王子の逆襲

「こちらの品を、第二王子殿下に献上いたします」


 ジャリジュール家の属するメルディアンヌ帝国が、ざっくり言うと“いつもジャリジュールがお世話になっているから”という名目で使者を送ってきたらしい。

 ジャリジュールの良き交易相手と印象付けさせるため、侍女たちは総出で傍に控える役割を担っている。もちろん侍女長は王女殿下のそばに控えている。


「わたくし、それほしいわ」


 突然、王女殿下の声が響く。指差す先は、第二王子殿下に献上された宝石だ。宝石といえば、王妃か王女宛だと思っていたが……そう思っていると、使者の一人がなぜかニヤリと笑った気がした。


「……申し訳ないが、ジュリアンヌ王女が欲しがってしまった」


 国王がそう口を開き、使者が困ったような笑みを貼り付けながら返答した。


「……では、よろしければ、そちらは王女殿下に献上し、第二王子殿下にはこちらをお送りしてもよろしいでしょうか?」


 同様の大きさだが、輝きが少し減ったような気がする宝石。第二王子殿下の顔が曇った。


「あぁ、よい。我が国では王女の欲しがりは何よりも優先するからな」


 国王の了承に、使者はニヤリと口の端を歪めて笑った。


「お噂は本当だったんですね。王女殿下、もしも他にもほしいものがあったら、気軽にお声掛けくださいね」


 持ち込んだ包みを開いて、他の宝石を使者が見せるが、一瞥するだけで王女殿下は視線を逸らしてしまった。確かに、この中で一番価値がありそうな宝石は、今王女殿下が受け取るものだ。()()()用意してたかのようなぴったりの宝石箱を、侍女長が持参して宝石をそこに仕舞わせる。それを見た使者が一瞬嫌そうな顔をした気がしたが、すぐに笑顔に戻って王女殿下に媚び諂いはじめた。この国で一番攻略が簡単そうなのは、確かにすぐに人のものを欲しがる王女殿下だろう。残念ながら、敏腕侍女長がついているが。

 わたくしはそんなことを考えながら、ぼーっと使者が帰るのを見送る。人がいなくなったところで、涙を目に溜めた第二王子殿下が王女殿下に向かって声を荒げて言った。


「ずるいです! お姉様ばっかり! いつもいつも僕のものやお兄様、お父様、お母様のものを奪って! それでなんで許されているんですか! ずるいです!」


「いや、だがな……シャンディアン。ジューの欲しがりはただの欲しがりじゃなくてだな」


 困ったように説明する兄王子の説明は、意味不明だ。この説明力で次期国王って大丈夫なのかと不安になり、現国王を見る。


「そうなんだ。ジューの欲しがりは大切なんだ」


 あ、国王陛下の説明力も激弱だったぁ。思わずがくりとしていると、王妃殿下が口を開く。


「ジューはお姉様なの。お姉様の言うことをお聞きなさい」


 あー……暴君がいた。残念に思っていると、ぷるぷると震えていた第二王子殿下が、王女殿下を睨みつけて宣言した。


「ずるい! お姉様ばっかりずるい! ずるいお姉様なんて大嫌いだ!」


 そう言って駆け出していく第二王子殿下。第二王子殿下もまだ子供だからなーと見守っていると、表情を変えずに王女殿下が宣言した。


「わたくし、部屋に戻りますわ」


 第二王子に続いて王女殿下の突然のUターンに、侍女長も慌ててついていく。侍女長に視線で呼ばれ、王女付きの侍女たちも慌てて後に続く。まさかあの王女殿下が動揺でもした?まさかね……。






「……申し訳ないけれど、夕食はいらないと伝えてちょうだい」


 部屋に戻った王女殿下は、毛布をとりにいき、それに包まれたままそう言った。横で侍女長がドレスがシワになるから脱がせようと必死になっているが、鉄壁の王女殿下の守りは強い。……魔法か何か使ってる?


「王女殿下。いただいた贈り物はどうなさいますか? 素手でお触りしてもよろしいのでしょうか?」


 侍女の一人がそう問うと、びくりと肩を揺らした王女殿下が小さく言った。


「……どうせわたくし狙いの毒薬よ。王宮魔術師長でも呼んで解毒してもらえばいいのよ!」


 拗ねたようにそう言って、顔まで毛布にくるまった王女殿下は出てくる気配がない……。って、んん? 毒薬? どういうこと?


 仕方なく王宮魔術師長を呼びに行くように指示を出している侍女の肩をつんつんと突いて、小声で聞いた。


「え、もしかして、王女殿下が贈り物に毒薬が入ってるって見抜いたから、欲しがった……とかですか?」


 いやまさかそんなわけと思っていると、心底驚いた顔をした侍女に言い返された。


「え? 当たり前でしょう? それ以外に王女殿下が他人の物を欲しがる理由なんてあるわけないじゃない。……え、仕えて一月経っているのに、そんなことも知らなかったの?」


 まじか、という顔をするわたくしに、まじか、という顔をする先輩侍女。いや、先輩侍女がそんなお下品な表現をするはずがないのだが、それ以外に表現できない表情を浮かべていた。




 え、王女殿下って欲しがりで誰かを守っているってこと……? そんなまさか、ね?

 それでもって、弟王子に嫌われたショックで引きこもっているってこと……? いやいやいやまさかまさか……え、まさかだよね?




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