11_B__03_03 第11話 Bパート 分割 3 / 3
第11話 Bパート 分割 3 / 3
【注意事項:楽典以外の余談に、児童には不適切な生々しい描写や、心的負担の箇所があります】
【 第11話 概要 】
サブタイトル:それ以上でも、それ以下でもない。
OP曲前:ショージの自宅。ドアがゆるりと開かないように、ハルの案で磁石で工夫。
Aパート:幹音の3種類。ダイアトニックコード、主要三和音。導音。転調、一時転調。短音階。アナリゼの解釈は多く、楽譜を変える人もいる。楽典の説明のわかりやすさは、人による。富士山の高さ。仕事には人柄も大切。
CM明け:ヤッ子。砂糖壷の中で固まった砂糖を、踵で崩す。別な日(別な服装)マグカップに砂糖どっさり。
Bパート:分数和音。転回形和音、ギターではベース音や、ベースのメロディも。ジャンルの特徴と定義は、国境線の無い文化。シメジ婆さんから聞いた、イソップの話と、三人菩薩の話。ミッツが姓の理由。
Cパート:吹奏楽の先生の自宅、子供の頃に書いた絵の前に黒リボンのタロットカード、回想でその理由。
予告:ハルがヤッ子にギターの弾き語りをして、存在しない模様が浮かび上がり、手拍子の数がおかしくなるぞ。ショージ、その手に持っているのは、何だ!
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▽ 場面変更 ● ── ●
イソップ童話の『狐と鶴』を話した場合。
ハル「父さんは、意地悪でギターを横取りしたんじゃない。色んなジャンル、色んな表現方法を、実際の演奏で示したんだ。まあ、久し振りにギターを弾いて、楽しい気持ちにもなったんだろうけど」
ステラ「楽器の演奏を始めたら、止まらなくなったんですね」
ハル「うん」ちょっと、間が開く。
ハル「シメジ婆さんがイソップの話をしてくれてさ」
ステラ「その、シメジ婆さんって、誰なんですか? 時々、話を聞くけれど」
ハル「産婆さんだよ。もう亡くなったけれど、とっても子供好きで、……優しかったな。子供達は、みんなシメジ婆さんが大好き」
ステラ「わあ、会いたかったな……」
ハル「シメジ婆さんの家は、小さな子供達の遊び場でもあったんだ」
ハル「その、シメジ婆さんが話してくれたんだけど、珍しく、ちょっと難しい話をしてくれた」
ハル「いつもは、まだ学校に行っていない、小さな子供が多いけど、その日はたまたま、みんな小学生だけだったんだ」
ハルの話に合わせ、画面は、紙芝居、ペープサート、影絵といった、昔話の表現。時折、画面の隅に、ハルやステラの顔が表示される。
ハル「知ってるかな? イソップの、狐が鶴を家に招いて、ご馳走をする話」
ステラ「知ってます。狐は意地悪だから、自分の好きなスープを、お皿に入れて出したんですよね」
ハル「うん。昨日の夜のことで、父さんは意地悪で俺からギターを横取りしたんじゃないってことで、思い出してさ。父さんは、息子がギターを始めたのが、嬉しいんだよなって」
ハル「イソップの話では、鶴はくちばしがあるから、スープを飲めない。狐は鶴に言う。「僕はこのスープが大好きなんだ。君も飲んでくれよ」って」
ステラ「狐は意地悪ですね」
ハル「怒った鶴は、狐の悪口を言い触らした。鶴の話を聞いたみんなは、鶴にアドバイスした。同じことをしてやれ。そうしたら、意地悪された者の気持ちがわかるからって」
ステラ「だから、今度は鶴が狐を家に招いて、細い壷に料理を入れて、狐に意地悪で返したんですよね。「この料理が大好きなんだ」って」
ハル「ところが、狐は、壷を手に持って、こうして……」細い壷を持ち、瓶の飲料をラッパ飲みする仕草。「……料理を食べたんだ。そして「下品で申し訳ない」って謝った」
ステラ「え? そこのところは知りません」
ハル「もしかすると、シメジ婆さんの付け足しかもね」
ステラ「かも知れないですね。でも、狐って、厚かましいというか、意地汚いというか。そうまでして、食べたいのでしょうか」
ハル「シメジ婆さんは、続けて、狐の話をしたんだ」
ステラ「狐の話?」
ハル「イソップの話は、鶴の立場での話。シメジ婆さんの話は、狐はどう思っていたか」
ステラ「意地悪な狐の話ですね」
ハル「狐は、鶴と仲良くなりたかったんだ」
ステラ「そんなことはありません。現に、意地悪をしたじゃないですか、それが証拠です。狐は意地悪に決まっています。仲良くなりたいだなんて、考えられない」
ハル「狐がしたことは事実でも、狐の心に対してできるのは、推測だけ。狐は、鶴を喜ばせたいが、どうすれば良いかわからない。臆病だから鶴に直接聞くことはできない」
ハル「誰かに相談したら、食事に招きなさい。自分が好きなものを、ご馳走しなさいというアドバイス。共通の喜びが持てて、仲良くなれるって」
ステラ「え?」
ハル「狐は、アドバイスに従ってご馳走した。けれど、鶴はスープを飲まないで帰ったから、嫌われたのかって、心配した。くちばしがあるから、スープが飲めないだなんて、気付きもせずに」
ハル「わかりやすく言うと、狐は「意地悪」をしたんではない。鶴の事情を知らなかったことに起因する「失敗」をしたんだ。しかも、どんな事情があるのか、誰からも知らされない」
ステラ「……」
ハル「後日、鶴から家に招かれたので、嫌われていなかったと安心した。細い壷にくちばしを入れて食べる、優雅な鶴を見て、ますます鶴を好きになった」
ハル「せっかくのご馳走だからと、狐は工夫して、瓶を持って食べた」再び、ラッパ飲みする仕草。
ハル「狐は、鶴に「ごちそうさま、美味しかったよ、ありがとう」とは言った」
ステラ「狐は、ちゃんと、お礼を言えるんですね」
ハル「狐がお礼を言ったのは、この食事は、鶴からの仕返しだと、知らなかったからだ」
ハル「その後、狐はみんなから意地悪をされ続けた」
ステラ「どうしてですか? 勘違いでも、鶴の仕返しは終わったのに」
ハル「狐が壷を持って肉を食べたから、意地汚い奴だって、鶴が狐の悪口を言い触らしたから」
ステラ「あ……」
ハル「周囲の人は、鶴と食事をしたことが、何度もある。鶴は、浅い皿でスープを飲めないのを知っている。だから、狐が浅い皿でスープを出したのは、わざと意地悪をしたとしか思えないと」
ステラ「そんなの、無理ですよ。だって、狐は初めて、鶴を招待したんですよね」
ハル「悪い噂の中には、聞いていて「そりゃ、おかしい」という部分もある。中立の人は、狐がそんなことをするとは思えないと言う」
ハル「しかし、別な人は、「だったら、こう考えたら、納得できる」と、作り話をする。いわゆる「噂に尾鰭が付く」だな。冗談が盛り上がり、「ああいう奴は、こんなひどいこともする」なんてことも言い合う」
ハル「作り話なのに、新たに狐を悪人とする「証拠」として、噂が広まる」
ステラ「刑事ドラマとか、推理ドラマなら、犯人を追い詰めて、「お前が犯人なら、すべての辻褄が合う」と言えば、犯人は罪を認めます。でも、それはフィクションです。「こう考えたら、納得できる」で犯人にされたくありません」
ハル「そんな状態なら、うっかり冗談も言えない」
ステラ「冗談の一部を悪用されそうです」
ハル「辻褄が合うような嘘を言ったり、逃げの言い方として「絶対に、こうに決まっている、間違いない、100パーセントだ、多分そうだろう」って言ったり」
ステラ「矛盾しています」
ハル「そうなんだよ。「絶対」「決まっている」「間違いない」「100パーセント」と「多分そうだろう」は矛盾している。でも、「多分そうだろう」だから、推測だと、はっきり言っているって逃げ道」
ステラ「でも、それを聞いたら、推測とは受け取れません」
ハル「うっかり、間違えて、断定した言い方をして、狐がとんでもないことになって、騒ぎがおさまった後で責められても、逃げられる」
ステラ「どうやって逃げるのですか?」
ハル「謝る。「うっかり、間違えました」って」
ステラ「でも、時は戻りません」
ハル「謝る時に、「うっかり間違えたり、失敗することは、誰にだってあるだろう。もう謝ったから、いいだろう」って言う」
ステラ「わざと嘘情報を広げて、謝ったから終わりって、都合がよすぎます。狐の失敗を、あんなに責めたのに」
ハル「嘘情報を、言ったり聞いたりして、「こうとしか思えないから、これが真実だ」っていうのは、気を付けるべきだ」
ステラ「冤罪を防ぐために」
ハル「そう。それには、2つの迷惑があるんだ」
ステラ「冤罪に、2つの迷惑? ですか?」
ハル「NASA、アメリカの、宇宙関係の組織が、宇宙人との密約をしているのを隠しているって、知っているか」
ここからの、宇宙人関係の話をしている間、注意書きの「この話は、中学生が、テレビで見たことを、うろおぼえの記憶で話しています」を表示しておく。
ステラ「本当ですか?! 噂は聞いたことがありますけど」
ハル「そう信じている人がいるらしく、数々の証拠をNASAに突き付けた。NASAだけでなく、FBI、CIA、ホワイトハウスでの極秘文書が流出して、これが証拠だって」
ステラ「極秘文書が流出するって、大変なことじゃないですか!」
ハル「これらの組織で働いていた人からの証言もあって、宇宙人との密約は決定的だ。NASAは、これに回答する義務がある。でも、NASAは回答しない。どうしてだと思う?」
ステラ「うーん、NASAは卑怯ですね。あ、「卑怯」は言い過ぎでした。やましいことが無いなら、ちゃんと「無い」と答えるべきです」
ハル「実は、これまで、NASAは「宇宙人との密約とか、宇宙船とか、そんなことは無い」と、何度も回答している」
ステラ「それは、やっぱり、何かを隠しているんですね。本当のことを言うまで、問い詰めなければ」顎に手を当てて、真剣な眼つき。
ハル「しかし、実は「極秘文書」の中には、ニセモノもあったんだ」
ステラ「はいぃー?」
ハル「ある記者が、勝手に「流出した極秘文書」っぽいものを作って、配ったんだ。受け取った人は、NASAが隠し事をしているという気持ちが強くなる。そこで、NASAを問い詰めた」
ステラ「そんなのって、……それで、NASAはどうしたんですか?」
ハル「だから、回答していない。当たり前だ。どこかの誰かが、勝手にNASAの名前で、ニセモノの文書を作ったのに、それの責任なんて、持っていない」
ステラ「NASAにとっては、いい迷惑ですね」
ハル「狐にしても、勝手に噂話の中で作られた「だったら、こう考えたら、納得できる」といった作り話に、何の責任も無い」
ステラ「そうやって、冤罪が強くなるんですね」
ハル「あとは、冤罪だけでなく、狐を責めた周囲の人も気を付けないと。これが、「2つの迷惑」の、2番目」
ステラ「1つが、嘘で作った、極秘文書の流出。もう1つが、これからの話ですね」
ステラ「でも、周囲の人に、何かあるんですか? 冤罪を作った罪で罰せられるとか」
ハル「「こうとしか思えない」は「思いもよらぬ事実」の可能性もあるんだ。つまり、詐欺なのに「正しいとしか思えない」「すっかり騙された」になる」
ステラ「なるほど。「こうとしか思えないから、これが真実だ」は、詐欺の標的にされるというのが、危険だってことですね」
ステラ「詐欺師が手品をしたのに「超能力としか思えない」とか」
ハル「ことわざの「人を呪わば穴二つ」だね」
ステラ「「人を、のろわ?」……何ですか?」
ハル「「人を呪わば穴二つ」って、誰かを呪い殺そうとしたら、自分も死ぬ。お墓の穴が、相手の分だけでなく、自分の分もってことで、「穴二つ」」
ステラ「自業自得です」
ハル「狐に対しての、誤った「これが真実」が広まり、これまで普通に接していたみんなが、まるで何かの感染症が広がったように、どんどん敵が増えて行く。狐の知らないうちに、狐に敵意を持つ感染症が広がっているように感じる」
ハル「まるで、見ただけでは区別できないゾンビか吸血鬼に囲まれるように、初めて会った相手も、最初から敵として接するようになる。これでは、狐は心が荒むだろう?」
ステラ「初めて会った人からも、敵視されるんですか?」
ハル「そうだ。新参者には、周囲の人は先んじて、「狐は性格が悪いから、気を付けろ」と言っておく。すると、新参者は努めて、狐の悪いところを探す」
ハル「狐のいるコミュニティでは、「狐の悪いところを探そうゲーム」が、流行している」
ここで、恐怖映画に譬えても良い。冤罪で逃げ続ける主人公、街中で一般人に見付かり、群衆から逃げて、路地裏に隠れるなど。
ステラ「どうして狐は、鶴に何をごちそうすべきか、聞かなかったんでしょうか。メニューが良ければ、こんなことには、ならなかったのに」
ハル「そもそも、どうすれば喜ぶかが、わからないんだ。そして、食事に招待するというアドバイスを受けた。メニューも大切だとは、思い付かなかった。臆病で不器用な狐にとっては、あれで精一杯の頑張りだったんだ」
ステラ「……」
ハル「それに、メニューを教わっても、まだ足りない。器の形や、曜日や時間帯など、気を付けることは尽きない。そんなにたくさん尋ねたら、尋ねた相手からうんざりされるだろう」
ステラ「そう……ですね」
ステラ。少し考えて。「じゃあ、最初から、鶴と仲良くなれないと決まっていたのかな。誰かと仲良くする方法を知らなかったことが、死亡フラグ、つまり、もう駄目だってことが決定事項だったのかな」
この「死亡フラグ」の単語は、使わない方が良さそう。
ステラ「それでも頑張ったら、失敗して、それが悪事とされる。1つの悪事には、1つの罰ではあっても、1人の悪人には、その人の人生に罰が与えられる」
ハル「最初から駄目だと決まっていて、どんなに努力しても駄目ってのは、希望が無いから、認めたくないけど」
ステラ「認めたくないから、あり得ないではなく。もちろん、成功の条件に努力があるのは、わかっていますが、死亡フラグをオフにする努力は無駄だし、そんな状況でも努力を続けても、別な幸せは……」
ハル「認めたくなくても、少なくとも、この話の狐に関しては、絶望だ」
ステラ「この狐に関しては、そうだったんですね。悲しいけど」
ハル「狐が誰に、何を言っても、悪い意味に受け取ろうと準備している相手だったら、悪い意味になる基準を用いて、狐が悪人だという証拠を増やすことになる。まるで、後出しじゃんけんだ」
ハル「狐は、たった一回の失敗を償う以上の罰を、日常的に継続的に受け続ける。悪人だから、罰を受け続けるべきという、勧善懲悪を止める者はいない」
ステラ「勧善懲悪ではないでしょ。狐は「いつでも悪いことをする奴」ではなく、たった一回の失敗だったんだから」
ハル「狐は、鶴に謝っていないから」
ステラ「え?」
ハル「鶴を食事に招待した。それが、鶴に対して悪いことだったとは、知らなかった。だから謝っていない。「失敗なら、謝るはずだ。謝らないのは、悪人だからだ」という理屈さ」
ハル「狐が、どうやら周囲の人から悪人扱いされていると気付いた頃には、鶴に対して失敗をしたのが原因だとは、誰も覚えていない。狐が誰かに尋ねても「自分で考えろ」「聞く方がおかしい」となる」
ハル「理由がわからないから、謝ることができない。鶴に対しての「失敗」を、「意地悪」とされたのなら、不本意だが謝ることもできるだろうけど」
ステラ「じゃあ、謝れば」
ハル「無駄だよ。狐が悪人だということが、周囲の意識に定着しているから」
ステラ「だって、嘘情報を広めた人は、「謝ったから、いいだろう」で済ませますよね」
ハル「ところが、狐に対しては、「謝って、それで終わりだと思うなよ」「知らなかったら、何をやっても許されるのは、間違いだ」となる」
ステラ「身勝手です」
ハル「狐は、自分の何が悪かったのか、わからないから、誰かに聞いても、「お前が馬鹿だからだ」のような返答だけだから、わからないまま」
ステラ「どうしてそうなのかな。恋愛漫画で、恋の相談を友達にしたら、「あんたが鈍感だからだよ」なんて返答をされて、鈍感だからそれではわからない。相談しているのだから、謎解きを返されても困ります」
ハル「狐は、「知らなかったから、仕方ない、悪くない」の言い訳はしない。理由を知って、愕然とする」
ステラ「狐は誠実ですね。失敗の謝罪から、逃げないんですね」
ハル「狐に対してなら、能動的な意地悪をしても、勧善懲悪という名目がある。能動的な意地悪は、許されるだけでなく称賛され、狐を救う者はいない。意地悪をするのに、隠れて行う必要は無い。公然と意地悪できる」
ハル「狐は、たった一回の失敗をしたことを発端として、周囲の姦策で、何度も失敗をさせられた」
ハル「失敗したくない、みんなとも仲良くなりたいという焦りを嘲笑されて、わざと失敗するように仕向けられ、その失敗は、新たな「悪人の証明材料」にされる」
ハル「内気な人へのアドバイスで、「勇気を出して、思っていることを言いなさい」とか「言葉にしなければ、何も伝わらない」があるけど、狐にとっては、無駄なんだ」
ハル「なぜなら、どんなに言葉を尽くしても、相手は、悪人の証明材料にするよう、準備しているのだから」
ハル「狐と初めて会う人には、「狐は悪人だから気を付けて」と言ってあるから、狐の言動に悪人の証拠を探す。狐にとっては、初めて会った相手からも、敵対する態度を受けてしまう」
ハル「家庭の中でなら親、学校の中でなら先生に、助けを求めても、悪人である狐に味方する者はいない。「叩けよさらば開かれん」という言葉は、狐にとっては慰めにもならない」
ハル「映画『サマーウォーズ』では、人類の危機という特殊な状況があるけど、会ったこともない世界中の人が協力してくれる」
ハル「けれど、狐に対しては、濡れ衣を着せられて、学校のクラス会で先生が「狐の犯行現場を見た者は、手を上げろ」と言ったら、クラスの全員が挙手するだろう」
ハル「先生は、勝ち誇ったように言う。「ほら、お前が隠れて悪いことをしても、こんなに多くの人にバレている」
ステラ「あり得ません。矛盾しています。隠れて悪いことをしたのなら、それを目撃する人は、ほんの少人数のはず。それなのに、クラスの全員が揃うタイミングで、それなら「隠れて」にはなっていません」
ハル「みんなから意地悪をされ続けて、ある日、狐は機嫌が悪くなって怒った。するとみんなは「とうとう正体を現したな。やはり狐は悪い奴。凶暴な野蛮人」と納得した」
この「野蛮人」という言い方は、アニメで不適切なら、用いない。
ここで「居直り強盗」は、狐を表すには不適当であり、中学生が用いるのも相応しくない。
ハル「これまで、狐の言動から、「狐は悪人だ」の証拠に使えるものばかりを集めて、強固な証拠に用いていた。そこに、決定的に断定できる、狐の姿だ。みんなは、我が意を得たりと喜ぶ」
ハル「シメジ婆さんは言ってなかったけど、現代なら、周囲の人は狐の凶暴さを記録するために、狐を遠巻きにして、一斉にスマホで撮影するんだろうな」
ステラ「ひどい。……そうか、みんなが喜ぶのは、狐が怒るように、追い詰めたから、願いが叶ったことなんですね。でも、ひどい、ひどいです」
ハル「狐を、そのような状況に追い詰めた人達を含め、周囲のみんなは、「今、現在、騒いでいるのは狐だ。狐を拘束しろ」というのが、優先される」
ハル「もしも狐が、うんざりして、うんざりして、どうしても耐えられない程になったら、犯罪者になる。周囲の人達は正義の人、狐だけが悪人となっているから、狐の罪は裁く対象だけど、狐を追い詰めた周囲の人は無罪」
ハル「みんな、狐が悪人だという事実を証拠にして、納得して、考えるのをストップする。狐への攻撃を続けたのは誰なのか、自分よりももっと酷い攻撃をした者を隠れ蓑に、自分は無罪だと納得する」
ハル「絶望が生み出すものは、2つ。ひとつは「信じられないこと」、もうひとつは「信じたいこと」。狐は、どっちだったのだろう」
ハル「ステラだけじゃなく、みんな、狐は悪い奴に決まっている、そうとしか考えられないと言うんだ」
ステラ「あたしも、そう思っていました」
ハル「でも、シメジ婆さんの話では、狐は意地悪はしていない、失敗しただけだ。鶴を喜ばせる方法を知らなかった、鶴がお皿でスープを飲むことができないと、知らなかったから、失敗したんだ」
ハル「最初に意地悪を目的としたのは、鶴だったんだ」
ハル「シメジ婆さんは、人の行動だけを、悪人の証拠にしてはいけないよって、教えてくれた」
ハル「父さんも、ヤッ子先生も、俺にとっては迷惑じゃない。人付き合いって、「この人は、意地悪に決まっている」と思っても、もしかすると何かのすれ違いかも知れないって考えたら、気持ちが楽になるかもね」
ハル「本当に意地悪なのか、他人の心はわからない」
ステラ「そうですよね。親友や恋人なら、冗談で意地悪っぽいことをしても、本当は味方だって信じられるから、安心できる」
ステラは、ミッツとハルの仲の良さを思い出す。ファストフード店で、ミッツがハルの鼻にポテトを突っ込もうとし、ハルが食べる。オルゴール館で、ミッツがハルに「お帰りください、ご主人様」と、手で追い払う仕草。
ハル「でも、騙されているのかもね。信じていたら騙されていたって、結婚詐欺やグルーミングでもあるから」
ステラ「グルーミングって、猿の毛づくろい?」
ハル「ああ……」言い淀む。「……大人が子供に対して、「自分こそが、君にとっての唯一の理解者だ」と思わせたり、優しい人と思わせて、騙して、実は性暴力が目的だったり……。これも、シメジ婆さんが教えてくれた」
ハル「まあ、シメジ婆さんは、「グルーミング」とは言わなかったけど、信頼して、性暴力や、行き過ぎたら殺されても後悔しないという気持ちは、おかしいと言っていた。自分を殺そうとする人は、信頼できないって」
ステラ「早坂さんが素敵なのは、シメジ婆さんのお陰なんですね」
ハル「うん。みんな、シメジ婆さんが大好き。ステラにも会わせたかったな」
▼ Cパート。 ▼── ──▼
吹奏楽の先生の自宅。
本棚には、音楽関連の書籍が多い。身長より低い本棚の上、黒いリボンが巻かれたタロットカードの箱。それは、週刊誌サイズの額の手前に置かれている。
額には、吹奏楽の先生が子供の頃に描いた、誰かの顔の絵。絵の手前の右下部分には、誰かの顔写真が添えられている。顔写真は、ガラス面に光が反射し、よく見えない。
隣には、結婚式の写真。
この、黒いリボンのタロットカードは、次回(第12話)のOP曲前が初出でも良い。
▽ 場面変更 ● ── ●
回想。
吹奏楽の先生。新婚時代。
妻「結婚式の写真が届いたよ。ここに置いていい?」本棚の上の、夫が描いた絵の額の隣に、結婚式の写真の額を置こうとする。
夫「いいよ」
妻。額の絵を見る。幼少の頃に描いたシメジ婆さんの絵。絵には、幼児らしい下手な字で「シメジばあさん」「すき」と書いてあるが、妻の頭部などにほとんど隠れて見えない。
妻「あなたの、子供の頃の絵なの?」
夫「そうだよ。俺の初恋の人」
妻「へぇ、初恋の人を、描いたのね。かわいいね」幼少の頃の夫が、シメジ婆さんに甘えている様子を想像する。
夫。タロットカードを持ち出す。「そうだ、俺達の今後を、占ってみようか」
妻「もしかしたら、あたしが恋のライバル、あなたの初恋の人に、負けちゃうかも」
夫「ははは……」タロット占いする。
夫「おや、まずまずの結果だ。自分達を信じていれば、夢が叶うって」
妻「夢って?」
夫「俺達の夢は、決まっているだろう。家族みんなで、幸せになるってこと」
ロマンチックな気分でキス。
妻「ねえ、初恋の人を占ってみない?」
夫「占いなんてしなくても、幸せだよ。みんなに好かれているし、これからもずっと幸せだよ」
妻「そうね、何しろ、あなたが恋するくらいだもの」
夫。占う。カードをめくり、置き、めくり……。手の動きが遅くなる。口角が、どうしようもなく、どうしようもなく下がる。カードをめくり、置く。涙がボロボロと落ちる。
占いの場面では、妻は描かない手法が良いか、思案中。
▼ 次回予告。 ▼── ──▼
ハルがヤッ子に、ギターの弾き語りをして、
存在しない模様が浮かび上がり、
手拍子の数が、おかしくなるぞ。
ショージ、その手に持っているのは、何だ!
▼ 1コマ漫画。 ▼── ──▼
ミッツの質問に、音楽の先生が困っている。
ミッツ「目玉焼きには、醤油? ソース? 塩?」「カレーライスには、豚肉? 牛肉? 鶏肉?」
音楽の先生「ですから、それは、お好みで」
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