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ガクテン  作者: 不定音高ふたつ


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11_A__02_04  第11話 Aパート 分割 2 / 4

第11話 Aパート 分割 2 / 4


【 第11話 概要 】

サブタイトル:それ以上でも、それ以下でもない。

OP曲前:ショージの自宅。ドアがゆるりと開かないように、ハルの案で磁石で工夫。

Aパート:幹音の3種類。ダイアトニックコード、主要三和音。導音。転調、一時転調。短音階。アナリゼの解釈は多く、楽譜を変える人もいる。楽典の説明のわかりやすさは、人による。富士山の高さ。仕事には人柄も大切。

CM明け:ヤッ子。砂糖壷の中で固まった砂糖を、踵で崩す。別な日( )別な服装)マグカップに砂糖どっさり。

Bパート:分数和音。転回形和音、ギターではベース音や、ベースのメロディも。ジャンルの特徴と定義は、国境線の無い文化。シメジ婆さんから聞いた、イソップの話と、三人菩薩の話。ミッツが姓の理由。

Cパート:吹奏楽の先生の自宅、子供の頃に書いた絵の前に黒リボンのタロットカード、回想でその理由。

予告:ハルがヤッ子にギターの弾き語りをして、存在しない模様が浮かび上がり、手拍子の数がおかしくなるぞ。ショージ、その手に持っているのは、何だ!


 ○ --- ○ --- ○


ここから本文です。

ご感想を頂けると嬉しい。ログイン不要ですので、お気楽に一言をお願いします。

ヤッ子「実は、楽典は、音の高さを表す上下方向と、時間の経過を表す音価の、2種類の表記だけなんだ」背景に、1段の楽譜。上下方向の矢印で「音の高さ」、右向きの矢印で「時間経過」を表す。


ヤッ子「そこに、音楽理論の「よく使う」の、和音や調や、その他のあれこれの「便利なもの」の説明が、膨大になっている。楽典と共に、膨大な「よく使う」が、負担になる」


ハル「このアニメは、余談も多いですが、楽典の「よく使う」「便利なもの」の説明も多いですね」


ヤッ子「第1話で、楽典と音楽理論の話をしたが、ざっくりと、大雑把に、乱暴な言い方をすれば、楽典は「上下方向と右方向」で、音楽理論は「よく使う」だ」


ハル「すごい。視聴者から「それは違う」の批判をされそうですが、僕が欲しいのは、そういった分類の情報です」


ヤッ子「導音は、「主音の半音下」だから、イ短調ではシャープが付き、ハ短調ではナチュラルが付く」


ハル「主音の、半音下を含ませるから、そうなるってことですね」


ヤッ子「だから、ここで臨時記号が使われても、転調したのではない」


ハル「転調?」


ヤッ子「ああ、そうか、早坂君には、まだ転調の話をしていなかったか」


ヤッ子「要するに、調の名前が変わることだ。「ハ長調」なら「ハ」と「長」の、どちらかが変わるのが、転調だ」


背景に図を表示。スロットマシンのように、「主音の音名」と「長短」が入れ替わる。指し棒で「どちらかが変われば、転調」を表示する。


ヤッ子。本棚から『ハバネラ』( )ビゼー)の楽譜を出す。


ヤッ子「ここで、調号が変わっているだろう。このように、曲の途中で調が変わることが、転調だ」転調の前後を演奏する。


ハル「なるほど」


ヤッ子「音階スライドがあるだろう。あれの、ドを合わせる鍵盤はどこか。この曲で、転調した後は、Dの鍵盤に合わせる」音階スライドのドをDに合わせる。


ハル「調号に♯が2つありますから、音階スライドでもその通りですね」


ヤッ子「Dの鍵盤が主音なのは、曲の最後がDの鍵盤で終わっているからだな。そこで鳴っている和音はメジャーコードだから、キーはDメジャーだ」セリフの前から、背景に「キーはDメジャー」と表示しておき、セリフに合わせて色が変わる。


ヤッ子「日本語で言えば、ニの鍵盤で終わり、長和音だから、ニ長調だ」背景に、「調はニ長調」と表示。「キーはDメジャー」と並べる。


ハル「長調と短調の話の通り、長だらけですね」


ヤッ子「そうだな。では、転調する前はどうか。短調だから、短調の音階スライドをプレゼントしよう」短調の音階スライドを渡す。


長調の音階スライドは、「ド」から「ド」までの1オクターブ。短調の音階スライドは、「ラ」から「ラ」までの1オクターブで、「ソ♯」と「ファ♯」は、控え目に書いてある。


ハル「すごいですね。まるで、今日はこの話をすると知っていたかのように、用意していたんですか?」


ヤッ子「まあ、そういうことにしておいてくれ」


ハル「要するに転調は、音階スライドの位置がズレたり、短調と長調の音階スライドを取り替えることですか?」


ヤッ子「さすがだな。その通りだ」


ヤッ子「短調と長調の、どちらの音階スライドを使うか、どの位置に音階スライドを合わせるかというのが、転調であり、楽典だ」


ヤッ子「転調の前後で、「どの調から、どの調に」という関係には、名前が付いていて……」


ハル。言葉を挟む。「兄弟の関係とか、親子の関係とかですか? ある人からは親でも、ある人からは姉だったり」


ヤッ子。微笑む。「そうだ。その間柄には、たくさんの名前があるだろう。転調にも名前があり、音楽理論だ」


ハル「うーん……。これまで、たくさんの話を聞きましたが、楽典は簡単で、音楽理論は難しい」


ヤッ子「その感想も、正しい」


ヤッ子「楽典は、自分だけで楽譜を読むことに役立つ」


ヤッ子「音楽理論は、会話に役立ち、作曲に役立つ」


ハル「あれっ、転調って、ミッツから聞きました。ゲオルギアの話で」


ヤッ子「ゲオルギアは、怪しい商品の、あの店だな」背景に、第5話の店の景色を表示する。


ハル「長調なのに、短調の特徴が出たら、短調に転調したのかの判断が難しい」


ハル。受け取った、短調の音階スライドを見る。「なるほど、ラからラまでですね」


ヤッ子「そうだ。音階は「どこから始まって、どこで終わる」も大切だからな」


ハル「ファとソに、右向きのカーブ矢印が付いていますね。調号でこれが白鍵だったら右隣にする♯が付いて、調号でこれが♭だったら右隣にするナチュラルが付くんですね」


ハル「もし、音階スライドのファやソが、調号で♯だったら、どうなるんですか?」


短調の音階スライドで、嬰ト短調に合わせる。


ヤッ子「その場合は、ファやソが、ダブルシャープになる」背景に、ダブルシャープの説明。「ナチュラルの白鍵の、右隣の右隣」「黒鍵になるか白鍵になるかは、場合による」を添える。


ハル「何だか、強引な感じですね」


ヤッ子「教科書には、長調の音階は1種類なのに、短調では3種類あると書かれている。3種類を覚える必要があると考えたらうんざりするが、半音高くすることが、よくあるってだけだ」


ヤッ子「学校だからな、面倒なことも教えるし、テストで出題されることもある。これが、その後の人生で使うかどうかは、それぞれの人生だな」


ハル「ちょっと気になるのが、テストで出題されて答えられる生徒は、個人的にピアノを習っているとか、学校ではないところで教わりますよね」


ヤッ子「そうだな」


ハル「もしかしたら、学校の授業だけで、音楽を勉強するのは、不可能なのかな」


ヤッ子「それは、教科によって異なるのだろう。正確なことは、音楽の先生や、文部科学省の教育要領から確認できるかもな」


ヤッ子「漢字なら、日常生活の中で縁が多い。学校とは違う場所でも漢字に接することはある。しかし、音楽を聞くことは多くても、楽典や音楽理論に接することは少ないだろう」


ハル「そういえば、音階って「よく使う音高を選んだもの」でしたね」


ヤッ子「そこで、主要三和音も、主音から数えて1番目と4番目と5番目の、主音と下属音と属音を根音とした、主和音と下属和音と属和音なんだ」


背景に楽譜。上段に長調、下段に短調。それぞれで、「主音」「下属音」「属音」と、「主和音」「下属和音」「属和音」を示す。


音階スライドを、長調と短調の2つを表示する。それぞれに、「主和音」「下属和音」「属和音」を、それぞれに「根音」「3度音」「5度音」で示す。


ヤッ子「転調する前は短調だから、短調の音階スライドのラを、Dに合わせる」


ヤッ子「そこで、『ハバネラ』の調号を見ると」


ハル「調号は♭が1つですね。主和音の探し方は、曲の終わりの音ですよね。ここは、曲の終わりではありませんよ」


ヤッ子「確かに曲の途中だが、「休憩の区切り」というより、「いったん、ここで終わった感じ」だろう。だから、それが主音で、Dの鍵盤に、音階スライドのラを合わせるんだ」


ハル「区切りの終わりの瞬間に、調号が変わっています」


ヤッ子。微笑んで、芝居じみた演技で。「うーん、困ったな。では、これまでの主音は何か、主和音は何か、どうやって特定するんだ?」微笑みながら、ハルに答えを促すように見る。


ハル「最初の音ならどうです? これって、「レ、ファ、ラ」の和音ですから、それが主和音だと思うんですか」


ヤッ子「どうして、「レ、ファ、ラ」なんだ?」


ハル「コードに使われている音、「和音構成音」でしたっけ? それをオクターブ違いで移動するって、よくありますよね」


ハル「楽譜を見たら、レ、ラ、ファが順番に鳴っています」


ヤッ子「分散和音、アルペジオとも言う」


ハル「そう、和音が分散して鳴っている。レ、ラ、ファを、オクターブ違いの移動をして、積み重なるようにしたら、「レ、ファ、ラ」になります」


ハル「あー、ややこしい。「レ」の鍵盤に、音階スライドの「ラ」を合わせるなんて言い方をすると。えーっと、英語で「D」の鍵盤に、音階スライドの「ラ」を合わせるって言えばいいかな」


背景に、『ハバネラ』の最初の分散和音の、和音構成音のオクターブ移動。玉の中に「レ」などの音名を書き、オクターブ移動した転回形を、いくつか横に並べる。「隙間が無いので、これが基本形和音」と指す。


ヤッ子「「音名」と「階名」の違いは、知っているだろう?」


ハル「はい。音名は、鍵盤にマジックインキで書いて良い。階名は、音階スライドに書いてあるもの……。あっ、そうか、鍵盤モノサシに、音名を書けばいいのか」


ハル。念のため、ヤッ子を見る。ヤッ子が笑顔で頷いたので、鍵盤モノサシの白鍵部分に、英語の音名を記入する。


ハル「これが主和音だと思います。主和音がわかれば、主音もわかって、調の特定ができます」


ヤッ子「その通りだ」


ハル「ヤッ子先生は、「最後の音で特定」って教えてくれましたが、最初の音でも特定はできますよね」


ヤッ子「もちろん、そうなのだが、最後の音を使うように教えたのは、理由がある。楽譜が無い時に、耳で聞いて、楽器の音を出して確認する場合だ」


ハル「耳コピですね」背景に「耳コピ」と「耳で聞いた音を頼りに、楽器で演奏したり、楽譜を書くこと」と表示。


ヤッ子「音楽に不慣れな時期に、和音を特定するのは難しいだろう?」


ハル「そうですね」


ヤッ子「メロディを特定するのも難しいが、和音の特定よりは、メロディの特定の方が簡単だ」


ハル「はい」


ヤッ子「歌の終わりでは、メロディが主音のことが多いが、歌の始まりでは、主音以外から始まることも多いんだ」


ハル「あっ、そうか」


ヤッ子「歌の始まりは主和音で始まることが多いが、和音の特定が難しい。ではメロディでと思っても、メロディの始まりは多彩。だから、歌の終わりを使おうって教えたんだ」


ハル「そこまで考えていたんですね」


ヤッ子「そこで、この曲の主音は、Dの鍵盤だと、特定ができた」


ハル「じゃあ、なぜDの鍵盤に、ラを合わせたんですか?」


ヤッ子「音階スライドは、長調と短調と、2つあるだろう。Dの鍵盤に、長調のスライドの「ド」を合わせるか、短調のスライドの「ラ」を合わせるか」


ハル「どっちのスライドを使うのか、見分ける方法は?」


ヤッ子「調号と合っているかだ」背景に調号の図をいくつか。指し棒で「ト音記号などとセットで書かれている、♯や♭が「調号」です」と記す。


ヤッ子「長調のスライドの主音の「ド」を、鍵盤の主音の「D」に合わせると、調号と合わないだろう? 短調の主音の「ラ」を「D」に合わせると、調号と合う」


ハル「あ、本当だ」


ハル「吹奏楽部の見学に行った時、調号の最後の♯や♭に、音階スライドを合わせるって聞いたんですが、長調だけですか?」第4話の場面を思い出す。


ヤッ子「おっ、いい情報を持っているな。最後に、何を合わせるのか、具体的に、何だ?」


ハル「はい。ええーっと」鍵盤モノサシの裏に自分で書いていた、メモを見る。


ハル。棒読みのように、メモを読む。「最後の♯に、音階スライドのシを合わせる。最後の♭に、音階スライドのファを合わせる」


ヤッ子「素晴らしい。その情報は、長調にだけ有効なのか、短調でも有効なのか」


ハル「どうなんでしょう」


ヤッ子「これは、「言われてみれば、当たり前だね」なんだが、どっちでも使える」


ハル「そうなんですか?」


ヤッ子「なぜなら……。なぜだと思う? ヒントは「長調と短調の違いは、要するに何か」だ」


ハル「ええーっと。ドで終わる、ラで終わる」ちょっと考える。


ハル。謎解きができて、安堵の表情。「音階スライドの、区切りが違うだけ。「どこから始まって、どこで終わる」が、違うだけ」


ヤッ子「そうだ! その通り! さあ、詳しく説明してみよう」


ハル「長調の音階スライドは、ここからここまでの長さ」ピアノの鍵盤の、ドからドまでの1オクターブを、両手の指で幅を表す。


ハル「短調の音階スライドは、ここからここまでの長さ」ピアノの鍵盤の、ラからラまでの1オクターブを、両手の指で幅を表す。


ハル「始まりと終わりの位置が違う……」第4話でショージからもらった、長調の音階スライドと、さっきヤッ子からもらった、短調の音階スライドを少しずらして、重ねて持つ。


ハル「こういうことだっ!」自分の考えを確認するために、2枚のスライドを片手で持ちながら、鍵盤モノサシに合わせる。


ハル「こうして、2枚のスライドを重ね持ったまま、鍵盤モノサシのどこなのかということだ」


ハル「だから、最後の♯に、音階スライドのシを合わせる。最後の♭に、音階スライドのファを合わせる。長調でも短調でも同じ」


ヤッ子「素晴らしい。きちんと説明できたな」


ハル「さっき、ヤッ子先生が言った通り、気付けば当たり前ですね」


ヤッ子「長か短か。名前の由来があるだろう」


ハル「距離が長いか短いかの違いですね」


ヤッ子「鍵盤の上に、これを置いてみよう」手を開くと、ダイヤモンドゲームの駒が出現した。


ハル「ヤッ子先生、手品師?」


ヤッ子。ハルの指摘を無視する。「調号に従って駒を置くと、こうなる。ほら、主音のDから数えて、Fまでは「短い3度」、つまり「短3度」だろう。だから短調だ」


ハル「「長は長だらけ」「短は短だらけ」ですね」


ハル「日本語では、ニの鍵盤で、短和音だから、ニ短調ですね」背景に「調はニ短調」と表示。「キーはDマイナー」と並べることで、漢字とフリガナのように見える。


ハル「主音が同じなのに、短調と長調が変わる……あれ? どこかで聞いたな」


ヤッ子「長調の主要三和音は、全部が長和音。短調の主要三和音は、2つが短和音で、1つが長和音」ダイアトニックコードの楽譜を指す。


ヤッ子「主音から数えて1番目と4番目の和音は、長和音と短和音の違いがある」


ハル「大文字と小文字だ!」


ヤッ子「大文字?」


ハル「済みません、以前、ミッツから聞いたのですが、ローマ数字を使って和音を示す方法があって、主音から数え始めるので、主音が変わると数え直しをするって」


ヤッ子「そう、それが転調だ。調号が変わったり、調号は同じでも長調と短調が変わっても転調だ」


ヤッ子「それにしても、蜜霧君の知識には驚きだな。ローマ数字のことも知っているとはな」


ハル「普段は、どんな生活をしているんだか、謎です」


ヤッ子「あはは、そうだな」


ヤッ子「調号は変わらないで、長調から短調に転調することもある。はっきり転調ではなく、転調したっぽいというのもある」


ヤッ子「こうして、調号を変えて転調することもあれば、ほんの短い部分だけの転調は、調号を変えずに、臨時記号で対応することもある」


ヤッ子「『ハバネラ』は、はっきりと転調だが、一時的な転調の「一時転調」をする曲もある」


ハル「はい」


ヤッ子「臨時記号があれば、必ずしも転調かといえば、そうとは限らないってことだ」


ハル「そりゃそうでしょう。メロディが臨時記号ってことは、よくあるし」


ハル「確かに、音階スライドで選ばれた鍵盤だけを使うから、それ以外の鍵盤なら「スライドがずれる」で転調ですが、時々スライド以外の鍵盤を使う度にスライドがずれたら大変です」


ヤッ子「では、ダイアトニックコード以外の和音が使われていたら? 転調か?」


ハル「コードだったら、転調……かな?」


ヤッ子「これもまた、転調とは限らない。更に言えば、メロディは、必ずしも和音構成音を鳴らす必要も無い」


ハル「とにかく、どっちでもいいってこと?」


ヤッ子「そうなのだ。転調なのかの判断は、時にははっきりわかることもあるし、どっちとも思えることもあるし、どの基準を採用するかで変わることもあるのだよ」


ヤッ子「「ほんの短い転調」や「転調したつもり」というのもある」


ハル「音楽って、厄介だな」


ヤッ子「違うのだ。音楽が厄介なのではなく、様々な解釈があって、どれも否定しないでいたいのだ」


ハル「騙し絵のように、見る角度が変われば、違う絵に見えたりするのと似ているかな」


ヤッ子「そうだな。騙し絵として書かれていない曲なのに、騙し絵のように「この角度で見たら」を探すのが楽しい」


ヤッ子「新たな見方や解釈を発見したことを競うのも面白いが、自分が発見した見方を、相手が見付けていないからといって、相手に対して「君はまだ、この曲を理解していない」というのは、避けたいな」


ハル「つまりは、穏便に、楽しくなるよう、努めようってことですね」


ヤッ子「そういうことなのだよ」


ハル「ヤッ子先生の説明は、「そうとは限らない」とか、「どっちも正しい」が多いですね」


ヤッ子「人との余計なトラブルは避けたいしな。しかし、宇宙人に長調と短調の説明をするように、シンプルな説明をしている時に、「そうとは限らない」なんて言うのは無粋だな」


▽ 場面変更 ● ── ●


吹奏楽の練習。


全員、楽器は用意していない。


吹奏楽の先生「先日、提出された『木星』のアナリゼですが、全部読ませていただきました。みなさん、よく頑張りましたね」


背景に、イタリア語「アナリゼ」「analisi」と、英語の「アナライズ」「analyze」と、意味「分析や解析」をフリガナ付きで表示。


BGMは、『木星』( )ホルスト)の中間部分、有名なゆっくりの箇所。


吹奏楽の先生「一部、年代や人間関係など、誤りもありましたが、どれも真摯に書いて下さり、頼もしく感じました」


吹奏楽の先生「情報が異なれば、答えも異なるのは当然です。情報とは、アナリゼに用いた資料だけでなく、皆さんのこれまでの人生も含みます」


吹奏楽の先生「ということは、アナリゼについて語り合う時、「相手は情報が乏しいから、まずはそれを与えないと、正しい会話ができない」と思っても、そうではないかもとも思っていてください」


吹奏楽の先生「相手だって同じことを思っているかも知れません。相手が知っている情報を、自分は知らないのかも知れない。だから、話が噛み合わないのかもと」


吹奏楽の先生「互いに「話を進める準備を与える」であれば、互いに、相手が話している上に、自分の言葉を重ね、いつまでも話が進まずに、言い合いになります。これでは、「会話が成立しない」になります」


吹奏楽の先生「『木星』の話からは逸れますが、情報に関する、一般的な話になります。皆さんは、情報の正しさを、どうやって確認しますか?」


部員達から、いくつかの声が聞こえる。


吹奏楽の先生。部員からの、いくつかの声掛けに答える。「そうですね。では、富士山の高さは、何メートルですか?」


部員「3776メートルです」


吹奏楽の先生「はい、3776メートルですね」黒板に、「3776m」と書く。


吹奏楽の先生「テレビのクイズ番組だけでなく、世の中は、これで正しいとして動いています」


吹奏楽の先生「実は、これは、測量した人が記録する際、誤って書いたものです。正しくは、これです」黒板の「3776」の下に、並べて「3766」と書く。


吹奏楽の先生「同じ数字が並んでいると、このような誤りが誘発されます」


吹奏楽の先生「富士山の高さを確認するために、自分で測量した人はいますか?」


部室内で、軽い笑い声。


黒板に「3766」と書く場面から、誤解を防ぐ目的で、字幕で「この「3766」は、吹奏楽の先生の創作です」の表示を継続する。


吹奏楽の先生「いませんね。ということは、先程の、皆さんが挙げた確認方法は、どれも「伝言ゲームの誤りが無い」というものであり、「3776」と「3766」という異なった情報があれば、どちらが多いかで、確認としていると思います」


吹奏楽の先生「クラシック音楽の、アナリゼのために集めた情報の中には、誤った伝説が混在することもあるでしょう。インターネットや、あちこちの書籍などで、その伝説の種類がたくさんあれば、正しいか誤りかは、判断できません」


吹奏楽の先生「なお、念のために言っておきます。この「3766」というのは、僕の創作です。「3766」は誤りで、「3776」が正しいのです」


吹奏楽の先生「まあ、簡単に言えば、「みんなが言っているから、正しい」というのではなく、「みんなが言っているから、正しいのかも知れないが、未確認だ」ということなので、安直に人を非難することは避けましょう」


部室内で、あちこちから部員達の声がする。富士山の高さに関しては「やっぱりな」「おかしいと思った」「今の時代に、標高を誤るのは、ありえない」など。人を非難することに関するざわめきもある。


吹奏楽の先生。部室内のどよめきがおさまるのを待ってから。「これから、『木星』の練習をします。僕のアナリゼと、みなさんのアナリゼ、異なる箇所はありますが、どれを用いるのかは、僕が統一します」


吹奏楽の先生「僕が統一して、練習を進めます。楽団としての統一が、より良い演奏になると思うからです」


吹奏楽の先生「ただし、現時点での僕の選択が最終的な結論ではありません。練習を繰り返し、これから選択が変わったり、新しいアイディアを思いつくこともあると、承知しておいて下さい」


吹奏楽の先生「では、皆さんのアナリゼを紹介しながら、僕がまとめたお話しをします」スクリーンに、スコアを投影。「指揮者が見るこのスコア、総譜で説明しますので、皆さんは適宜、ご自分の楽譜にメモをお願いします」


吹奏楽の先生「そして、この後、今日の練習は終わりにしますので、皆さんは、今日ここで紹介された他の人のアナリゼを新たな資料として、更に考えてみてください」



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