10_A__01_02 第10話 Aパート 分割 1 / 2
第10話 Aパート 分割 1 / 2
【 第10話 概要 】
サブタイトル:これでも楽器なのか。
OP曲前:ミッツの家にハル。小学生時代。台所でグラスハープ。
Aパート:芸術のアイディアの練習。ト長調の音階は「C」で始まらない。タイミングの縦を合わせる。オーケストラ、ビッグバンドの編成の定義。ステラの恋と、ミッツのコブラツイストと、ステラの失恋。ハルがステラを泣かす。
CM明け:ステラ、就寝儀式、マシュマロとチョコレート、自室のコルクボードの写真を、トロンボーン先輩から、ハルに交換。
Bパート:オルゴール館。様々な自動演奏装置の紹介、レコードの原理。現在、最も普及している自動演奏装置は何か。手作りコーナーでカリンバ。ハル、ステラに謝罪。楽器の定義、ノイズ音楽、雑草。そっとティッシュは鉄則。
Cパート:オルゴールの櫛は、同じ櫛を連続するとビビリがある。同音が2本あることも。調律の方法。
予告:ミッツが音楽の先生を引き連れて、湖の水の上にピアノが置かれ、ヤッ子先生は甘すぎですよ。もうやめてよ、お父さん。
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■■■■ 第10話。
▼ サブタイトル。 ▼── ──▼
これでも楽器なのか。
▼ OP曲前。 ▼── ──▼
OP曲前の定型。他の登場人物は知らない、過去の出来事。
ハル(小学2年生の頃)、ミッツ(小学3年生の頃)。
ハルの一人称は、ミッツに対しては「俺」だが、ここでは小学生時代なので「僕」としておく。
ミッツの家。表札の「蜜霧」。ミッツの顔だけのセリフ「あたしは蜜霧多岐(みつきり・たき)。ハルの従姉だよ」。
台所で並んで、食器を洗っている。従姉弟同士なので、互いの家では、家事を手伝う。
ハル「昨日は、誰も遊んでくれなかったから、シメジ婆さんの所に行って来た」
ミッツ「あ、あたしも誘ってくれれば良かったのに」
ハル「ああ、そうだけど、友達と一緒に来てる奴は、ほとんどいないな」
ミッツ「そうだね、どうしてだろう?」
ハル「最後までまあ君が残ってたな」
ミッツ「お母さんの帰りが遅い子って、いつまでも残っているらしいよ」
ハル「僕も聞いた。そして、夕飯を食って帰るんだろ?」
ミッツ「違うよ。ご飯は、家族と食べなさいって。それでね……」食器洗いが終わって、手を拭く。「……おかずを作って、お土産にするんだって。お母さんが夕食を作る手間が減るからって」
ハル「へえ、そうなんだ」
ミッツ「はい、終わり。あたしの仕事は終わったから、あとはヨロシク」
ハル。わかったの意味で「ンー」のような声。
ミッツ。台所から離れて、ソファに身を投げる。「ついでに、シンクも擦り洗いしてねー」
ハル。少し不機嫌に「ンー」のような声。
ハル。洗い終わったコップで、グラスハープ。水を入れたタライの上で、コップの縁をこすっている。
ミッツ「ねえ、なあに? 今の音」怪しむ。
ハル「テレビでやってた」
ミッツ「何の音?」台所に近付く。「ああ、コップだ」
ハル「知ってた?」
ミッツ「音が出るのは知ってたけど、こんな風に、ずっと鳴らそうとは思わなかった。ハル、面白いじゃなーい」軽く肘でつつく。
ハル「こうすると、音が変わる」
水を入れたコップを、斜めにする。水を捨てて、タライの水に半分沈める。伏せる向きで沈めて、斜めになって水が入り「コポ」と鳴る。
ハルとミッツ。図らずも面白くて、笑って噴き出す。ミッツが鼻水を手で拭く。
▼ Aパート。 ▼── ──▼
校外で、美術の写生。ハルとステラが並んで写生。トロール将軍が見回っている。
▽ 場面変更 ● ── ●
回想。
美術室で美術の授業。先生はトロール将軍。ここで初めて、トロール将軍が美術教師だと明らかになる。
ハルとステラは、同じクラスなので、一緒に授業を受けている。
トロール将軍はジャージを着ている。首からは紐で、体育の授業で使う笛をぶら下げている。
身長2メートルの大柄。とても恥ずかしがり屋で、斜め下を見ながら話す。それなのに、言葉がはっきり聞こえる。
髭が、手品師のジョニオ、映画『ハリー・ポッター』のハグリッド(森番)、閻魔大王、または、それ以上。
髪はボサボサ。頭頂部よりも少し後ろ側のハゲは、逆さハートマークで、生徒からは「頭にケツ」「ケツハゲ」と呼ばれている。
恥ずかしがり屋で、怯えたような声と動きなのに、顔は戦っている将軍のような険しい表情。
生徒達は、トロール将軍を「面白い人」とは思っているが、馬鹿にすることは無い。美術の技術がすごいことと、言っていることに意外性がありながら、的確だから。
トロール将軍「来週は、近所の川原に行って、外で絵を描きましょう。外に出られるんですよ、嬉しいですね、天気が良ければ」
トロール将軍「みんながいつも使っているのは、シャープペンシルとか、鉛筆とか、ボールペンとか、硬いものですね」
トロール将軍「だから、外では、色鉛筆を使います」
トロール将軍「近くの公園には水道もあるので、水彩絵の具でもいいんですが、不慣れな場所で、普段は使わない不慣れな道具では、不本意な出来になって、ストレスの原因になりますからね」
話しながら、首から下げている笛を、指でつまんで、こすっている。
トロール将軍「それから、ちょっと困るんだけど、ほら、横着(おうちゃく)してさっ、川の水で筆を洗ったりすると、困るからね」
トロール将軍「ご近所さんから、僕が叱られるだけじゃなく、お魚さんに申し訳ないからね」
ちょこまかと、歩き始める。
生徒。小声で「ばれなきゃいいよな」
トロール将軍「ばれなきゃいいってもんじゃないよね。それって、ばれてもいいって居直ることもあるから」
トロール将軍。笛をつまむ。
トロール将軍「シメジ婆さんが言ってたもん。ばれたらまずいってのは、ばれなくてもまずいって」
トロール将軍「わざと良い人になってみようよう」
生徒。トロール将軍の「ようよう」に反応。
トロール将軍「1人だけなら隠れてそっと悪いことをする。「一部の人のマナー違反」だって、人数が多ければ大変だし」
トロール将軍「2人以上なら、ふざけ過ぎることもあるよね」
トロール将軍「だからさ、みんながうっかり……」机上のメモが視界に入る。来週の写生の注意点がいくつか書いてある。その中に、「偶然の風景を利用して」と書いてある。
トロール将軍「ボク、面白い形の石に、顔を描いたりするのが、好きなの」
生徒「知ってまーす」何人かが笑う。
トロール将軍「うん。自然の石だったら、形を変えることはできないけど、見た風景だったら、好きなように形を変えることができるよね」
生徒「それって、写生ですか?」
トロール将軍「見たままを絵にするなら、写真を見ながら、こうして机の上の方が、上手にできるよね」
トロール将軍「近所の、見慣れた風景だけど、絵を描くつもりで見ると、新鮮な発見があって、時間内に面白い思い付きをして、描き終わるのが、大変なんだな」
生徒「面白い思い付きって、なんですか?」
トロール将軍「風景を見て、無理に見れば、寝そべった猫っぽいなぁーって思ったら、隠し絵のように、風景画の中に、寝そべった巨大な猫を描いちゃっちゃりして」
生徒。トロール将軍が上手に言えず「ちゃっちゃり」になったので、くすくす笑う。
トロール将軍「踏切の警報機のランプの向こうに、カマボコ屋根の倉庫があって、この角度から見たら、おかっぱ頭の顔にサングラスっぽく見えたりするね」
黒板に、絵を描く。倉庫の正面入り口の大きなシャッターが、口のように見える。これだけなら、目が無いので、顔のようには見えない。そこに、踏切の警報機のランプを書き加える。
美術教師なので、妖精ちゃんの手助けが無くても、話しながら、描くのが速い。
トロール将軍「まあ、実際には、そのように重なって見える場所は無くても、絵だから自由に、重ねて描くこともできるよね」
トロール将軍「スポーツは練習をするけど、芸術の感性は、自分の内から湧き出るものだから学ぶものではないとか、天から降って来るアイディアをひたすら待つとかって話があるよね」
トロール将軍「でも、感性を磨くのは、豊かな経験だって話もあるよね」
トロール将軍「奇跡的に、良いアイディアを思い付くこともあるけど、それは運が良かったんだ。実力ではないけど、喜ばしいね」
トロール将軍「意外だと思われるだろうけど、いい思い付きも、練習で上達するんだな」
トロール将軍「技術は表裏一体で、殺し屋さんの能力は、お医者さんの能力と、似ているところが多いらしいよ、よく知らないけど」
生徒。トロール将軍の「殺し屋さん」に、くすくす笑う。
トロール将軍「人付き合いも練習だよね、ボクは、練習しても苦手だけど」
生徒「知ってまーす」何人かが笑う。
トロール将軍「殺し屋さんと、お医者さんの、表裏一体と似てるけど、人付き合いが上手になっても、悪い使い方じゃなく、いい使い方をしてほしいですね」
生徒。トロール将軍の話が迷走したので、戻そうとする。
生徒「感性を磨く練習って、どうやるんですか?」
トロール将軍「え? ああ、うーんと……」
生徒「ほら、しゃべっているのを邪魔したから、トロール将軍がうろたえた」
生徒「トロール将軍って、用意していることが話せなくなったら、迷子になるんだ」
ステラ「トロール先生。先生は、どんな練習をなさっているのですか?」
トロール将軍「絵は、一瞬で全体が見えて、音楽は時間の順番がありますね。時間と共に、嬉しい驚きのある音楽を、どうやったら絵でもできるかなって考えたり」
トロール将軍「考え続けるのは大切だよね。でも、休みも大切だよね。考え続けて、疲れたら、休んで、そしたら、いいアイディアが出るんだな」
生徒「休んでいる時に、良い案が出るって、本当ですか?」
トロール将軍「うん、僕の経験だけど、1時間に1回の休憩したら、いい感じ。でも、いいアイディアのための資料が、頭の中に無いと、休んでも、何も出て来ない」
トロール将軍「考えて、資料を仕入れて、考えて、資料を仕入れてって、行き詰まったら休憩」
トロール将軍「それとか、何人かがダンスの掛け合いをしていて、どうやったら、彫刻で表現できるかなと考えたり」
が~まるちょば(がーまるちょば、パントマイム)が2人組だった頃の芸や、空転軌道(3人組ジャグリング)から、「合いの手」のアイディアを得るとか。
この話は、第10話で美術のアイディアの例と、第12話で編曲のアイディアの例で、共通している。
ステラ「考え続けるんですね」
トロール将軍「そう、いつも考える。何か、いいアイディアがないかなって」
トロール将軍「そうしてると、アイディアを思い付くのが、素早くできるようになる。これが、練習」
トロール将軍。話が繋がったので、安心する。
トロール将軍「理屈はわかっているのに、思い通りにならないのは、スポーツと似ているよね。当たり前に、自然にできるように、練習する」
トロール将軍「駄作ばかりだったとしても、山のように、描いて描いて描きまくる」
トロール将軍。話の筋が変わって行く。
生徒「先生、風景画の中に何かを見付けるのも、練習ですか?」
トロール将軍「そう、来週になっていきなりじゃ、大変だよね。今のうちから、練習を始めたらいいね」
トロール将軍「例えば、野に咲く花の群生があったら、電柱をこんな風に描いて、右半分にお花畑、左半分を住宅密集地に……、あ、ちょっと待っててね」
美術準備室に行く。生徒たちは雑談。ハルはぼんやりと天井を見て、何かを考えている。
トロール将軍。戻って来る。画集を広げて「これだよ、これ、見てみて」雪舟の画集の、『秋冬山水図(冬景)』のページを広げている。
トロール将軍「こんな風に、2つの世界を1枚にして、お花の群生と、住宅密集地を1枚の、2つの世界を、一緒に1枚にしても面白いね」
生徒「そんなアイディア、すぐには出ません」
トロール将軍「だから、来週の写生の日までに、アイディアを思い付くシミレーションをしていてくれたら、嬉しいな」
生徒達「「シミレーション」って」くすくす笑う。
ハル。挙手して「先生」
トロール将軍「はい、どうぞ」
ハル「隠し絵と言うので、トリックアートの見本かと思いました」
トロール将軍「あ、ごめんなさい。ぱっとこれを思い付いたからね。トリックアートや、エッシャーのようなものもいいですね」
トロール将軍。笛をつまむ。
▽ 場面変更 ● ── ●
回想が終わり、さっきの続き。
ハルとステラが並んで写生。
二人とも、時間に余裕がある。
ハル「ステラは、転校してから、音楽を始めたんだろ」
ステラ「そう。それまでは、普段の生活に、楽譜なんて使わないし」
ハル「ステラなら、わかるかなあ」
ステラ「何?」
ハル「音楽のテストで、「ト長調の音階を書きなさい」の問題で、「ド、レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド」って書いたら、バツだったんだ」
背景に問題用紙。五線とト音記号。そこに手書きで、♯が1つの調号と、音符は下第1線の「ハ」から、1オクターブ上の第3間の「ハ」まで。手書きがわかるように、鉛筆の先で順番にトントンと叩きながら出現する。
ステラ「あたしはマルだったよ」
ハル「何ぃ、何でだよ」
ステラ「同じ回答じゃないよ。「ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、ファ♯、ソ」って書いたの」ハルと同じ問題用紙。調号はハルと同じ。音符は、第2線の「ト」から、1オクターブ上まで。
ハル「どっちだって、同じだろう」
ステラ「音階は、「どこから始まって、どこで終わる」も一緒に、テスト問題になってるの」
ハル「いや、どこからだって、同じだろう」
ステラ「あたしも、そう思うんだけど、トロンボーン先輩が「とりあえず、そういうもんだ」って言ってた」
ハル「なんか、いい加減だな、トロン先輩。三三七拍子の話も、4拍子だって説明が不十分だし」
ステラ「先輩は、ちゃんとしてるよ」
ハル「ちゃんとしてないから、「とりあえず」なんて言い方なんだろ、トロン先輩」
ステラ「どうして、そんな言い方するの! 信じられない」
ハル「トロンボーン先輩だから、トロン先輩。ステラに、ちゃんと教えてくれないかな」
ステラ。急に黙る。絵を描くペンが震える。涙を拭きながら、立ち上がって、どこかに行く。
▽ 場面変更 ● ── ●
放課後。音楽室。
ハルとミッツ。
ハル「音楽のテストで、ト長調の音階で「ド、レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ、ド」って書いたら、バツだったんだ」
ミッツ「当たり前でしょ、ト長調なんだから」
ハル「何が当たり前なんだよ」
ミッツ「音階は、「どこから始まって、どこで終わる」が決まってるんだから」
ハル「とりあえず、そういうもんなのか?」
ミッツ「「音階を答えなさい」って問題でしょ? だったら、音階スライドの、左端から右端までを答えればいいんだよ」
背景で、鍵盤モノサシの上を、音階スライドが左右に移動する。念のため、指し棒で「鍵盤モノサシ」と「音階スライド」も表示する。
ハル「あ、そういうことか」
ミッツ「ト長調の音階で「使われる音は何か」って設問なら、ハルの答えだって正解。でも設問は「音階は何か」だからね」
ミッツ「ピアノの白鍵だけなら、ハ長調でしょ」
ハル「そうだな」
ミッツ「ハ長調の音階は、ドから始まって、ドで終わる」ピアノで、ドからドの1オクターブを弾く。素早く何度も往復。
ミッツ「これが、普通の音階」
ミッツ「これを、白鍵だけのハ長調なのに、例えばミから始まったり、ソから始まったりすると、こうなる」ピアノで、ミからミの1オクターブを弾く。素早く何度も往復。ピアノで、ソからソの1オクターブを弾く。素早く何度も往復。
ミッツ「どう?」
ハル「え? それって、本当にハ長調か?」
ミッツ「ハ長調で使う鍵盤だけ、つまり、白鍵だけだよ。でも、始まりを変えただけで、ハ長調っぽくないでしょ。だから、どこから始まるかってのも答えるのが正解」
ミッツ「第6話での、長調と短調の話で、ヤッ子先生が言ってたよね。教会旋法は白鍵だけだから、ハ長調と同じ鍵盤だけど、主音が違うと印象が変わるって」話しながら、ちょっと憤慨したように、足音を大きくして、書棚に行く。
ミッツ。書棚から、学校に配布される副読本を取り出し、『グリーンスリーブス』のページを開く。
ミッツ「ホラ、この曲は、調号のシに♭がある、ニ短調の曲。だけど、せっかく調号でシに♭を付けたのに、メロディではナチュラルになっている」
ハル「本当だ。だったら、調号に♭なんて、付けなくていいのに」
ミッツ「調号に♭が無ければ、ハ長調と勘違いするでしょ。主音がレ、つまり、音階はレから始まってレで終わる。それを知らせるために、♭があるの」
ハル「そうか。だから、ぱっと見て、すぐに「レが主音」とわかるのか」
ミッツ「でも、ニ短調のように見せて、本当は教会旋法の「ドリア調」だから、ヤッ子先生は、「乱暴な言い方だが」って前置きして、「長調」と「短調」のどちらかに集約って言ったの」
ミッツ「音階は、どこから始まって、どこで終わるかってのが重要。主音から始まって、主音で終わる。ト長調だったら、「ト」が主音だから、「ト」の鍵盤から始まって、「ト」の鍵盤で終わる。わかった?!」
ハル「そういうことかぁ?」考え込む。
ミッツ「納得できないの?」
ハル「あ、そうじゃなく、ミッツの答えは納得できたけど、なんでステラが泣いたのかな」
ミッツ。憤慨して、ハルを責める強い口調で。「ステラちゃんを泣かせたの?! ねえ、あんた、泣かせたの?! ひっどーい!!」
ハル「だから、わからないんだよ。始まりが違えば、雰囲気は変わるのはわかったけど、それで泣くのかなあ。トロンボーン先輩は、そこまで教えてくれたとは思えないしなぁ……」
ミッツ。ハルの「トロンボーン先輩」の言葉に反応する。「ちゃんと話してごらん、お姉さんが聞いてあげるから」
ハル。考え込む。「何がいけなかったんだ」悩んで、髪の毛に、指を入れる。
ミッツ。ハルにヘッドロック。「だーかーらー。ちゃんと話してごらんって、言っ! てん! のー!」
……ちょっと、間。
ハル「……というわけです」
ミッツ。呆れて、鼻から大きな溜息。鼻水が出たのを隠すために、鼻の下にぼかし。
ハル「何か、鼻から出たぞ!」
ミッツ「そういう時は、気付かないふりで会話を続けて、行動ではそっとティッシュを渡しなさい。いい! よく聞きなさい。女の子には、気付かない素振りで、そっとティッシュ。これは、鉄則!」
ミッツ。自分でポケットティッシュを出して、鼻を拭きながら「女心をまるで知らないんだから」
ハル「でも、最も身近な女は、ミッツだし」
ミッツ「それが何だっていうのよー!」
ミッツ。ハルの胸倉をつかみ、大きく前後に振る。そのままコブラツイスト。
ヤッ子。廊下を歩いている。通り過ぎようとしていたが、音楽室のドアの窓を一瞥し、中のコブラツイストの姿を見て、気になって、音楽室に入る。
ヤッ子「何をしているんだ?」ハルとミッツの髪の毛を、軽く鷲掴みする。
ハル「ミッツから、女心を教わっています」
ヤッ子。心の声。「(大声が聞こえたが、トラブルじゃなくて良かった)」背景に注釈文「ヤッ子先生は、生徒同士のトラブルを、とても心配している」を表示する。
ヤッ子「そうか。しっかり学べ、若者よ」音楽室を出る。振り向いて、いつものことなので、軽い口調で。「セックスするなよ」この「セックス」の部分には、ピーを入れても良い。去る。
ハル。小声で「こんな女に、そんな気分になれるもんか」
ミッツ「なんだってー」力を強くする。
ハル。苦しそうな表情。
ミッツ「いい、ステラちゃんはね、トロンボーン先輩が、好! き! な! の! よ!」この、「好! き! な! の! よ!」一文字ごとに、体を揺らす。
ハル。驚いて、茫然とする。ハルが急に力を抜き、体は、骨が柔らかくなり、関節とは無関係にフニャフニャになる。コブラツイストが解けて(ほどけて)倒れる。
2人とも尻餅で、足が上向きになり、画面が天井を向く。
ハル。小声で「クマさんのパンツ」
ミッツ「バカ。短パンを履いてるよ」
▽ 場面変更 ● ── ●
吹奏楽部の練習。
ステラ。元気が無い。
トロンボーン先輩「どうしたの? 今日は元気が無いね」
ステラ「うん」
トロンボーン先輩「息の吸い方が、いつもより少ない」
ステラ「先輩は、ちゃんと私のことを、わかってくれてるんですね」
トロンボーン先輩「かわいい後輩のことだ、当たり前だよ」ステラの頭を、軽くポンポン叩く。
ステラ「先輩……。先輩はデタラメじゃないですよね。ちゃんとしてますよね」
トロンボーン先輩「そう言われて、「そうだよ」とは答えられないよ、わかるだろ」
ステラ「でも、先輩は、音階とか、色々教えてくれてます」
ショージ。ステラがトロンボーン先輩と親しく話しているから、嫉妬して会話を邪魔する。振り返って。「先輩、彼女は元気ですか?」
ステラ。ショージを睨む。
トロンボーン先輩「お前、俺の彼女のことを知ってるのか? どこで会った?」
ステラだけでなく、ショージも驚く。ショージは、トロンボーン先輩がステラと親しく話しているので、嫉妬して、意地悪な質問をしただけ。
ステラとショージが同時に思う。「(先輩には、彼女がいたんだ)」
トロンボーン先輩。心の声。「(あいつと付き合っていることは、秘密にしているのに)」背景に、ステラと一緒にストローオーボエをした、ムギ(大吠麦穂、おおぼえ・むぎほ)の、第3話の「もう一回シャワー浴びてから」を表示。
ステラにとっては、片思いしている相手であるトロンボーン先輩と、仲の良い同級生であるムギが、付き合っているということは、夢にも思っていない。
ショージ「相手は、誰ですか?」
トロンボーン先輩「秘密だよ!」
ステラ。たった今、失恋したばかりで、放心している。吹奏楽の先生の話も、聞こえていない様子。
吹奏楽の先生「前回の練習の後、ちょっと質問を受けたので、ここで皆さんにも、お知らせします」
吹奏楽の先生「吹奏楽団と、オーケストラと、ビッグバンドの違いです」
吹奏楽の先生「吹奏楽団と、オーケストラの違いは、ストリングスなど、楽器の数の違いです。吹奏楽は、その名の通り、吹奏楽器が中心です」
吹奏楽の先生「吹奏楽器は管楽器で、そこにバイオリン属の弦楽器が加わると、管弦楽団です。クラシック音楽でオーケストラと言えば、管弦楽団を最初に思い描きます」
吹奏楽の先生「とはいえ、「カラオケ」という言葉があるように、「オケ」と言えばいくつかの楽器があるという意味もあります」
画面で、吹奏楽団(打楽器は少し)。そこに、ストリングス、ハープ、木琴、多彩な打楽器が、出現したり消えたりして、「吹奏楽団」と「オーケストラ」の文字が、交互に強調される。
吹奏楽の先生「オーケストラの中でも、交響曲、シンフォニーを演奏できる規模なら「交響楽団」「シンフォニック・オーケストラ」と呼ばれたりします。コンサート用に、曲目によっては、演奏者や楽器を、一時的に増やすこともあります」
吹奏楽の先生「ブラスバンドの「ブラス」とは金管楽器のことで、金管楽器だけならブラスバンドという定義があります。日本では、木管楽器を含めた吹奏楽団でも、ブラスバンドと呼ぶことがあります」
画面で、画面左側に、金管楽器。上側に、文字の「金管楽器」に、「ラッパの仲間」を添える。下側に「「ブラス」とは、これ」を添える。右側に、木管楽器と、いくつかの打楽器。
全体の下段に、「プラスバンド」の文字を囲む、横長の長方形。「日本では、木管楽器も含める言い方がされる」を添える。
吹奏楽の先生「ここは吹奏楽部で、吹奏楽器以外に、打楽器もあります。ということは、「吹奏楽団」は「吹奏楽器だけの楽団」に限定しません。広く、多くの曲目に対応できるのが、便利ですね」
吹奏楽の先生「吹奏楽団とビッグバンドの、大きな違いは、ビッグバンドはジャズ発祥で、演奏曲はジャズを中心としていることです。ジャズだけ演奏すると宣言している楽団もあります」
吹奏楽の先生「ジャズでは、楽器に不慣れな人達が、身近にある楽器を用いた、人数の少ない楽団が多かった時代がありました。その後、充実した和声が出せるように、人数を増やしたのが、ビッグバンドです」
吹奏楽の先生「どの楽団の編成も、使用する楽器や人数などは、一応の「標準」や「基本的には」というのがありますが、厳密ではありません」
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