09_B__02_02 第9話 Bパート 分割 2 / 2
第9話 Bパート 分割 2 / 2
【 第9話 概要 】
サブタイトル:×って何だ(バツってなんだ)。
OP曲前:翌日。ステラが、ショージを追い出したことを思い出す。
Aパート:ショージは昨夜、母親から説教されたので、昼休みにステラに謝罪。最大の発明は消しゴム、消したい過去。楽器の練習はゆっくり。家業を継ぐので不要な教科。オーパーツ。恋って何かのついで。あたし、キスしていません。
CM明け:ハル。「ミ♯」は低い黒鍵だっけ? この「×」は何だ? あーわけがわからん。「×」は2種類。フェルマータは何倍延ばすか。
Bパート:ミッツとヤッ子が、昭和の男の話。ミ♯、ダブルシャープとダブルフラット。臨時記号の範囲。不定音高。フェルマータは延ばすじゃない。音符の玉の形は、特に打楽器では様々。コードのsus。半音は2種類。
Cパート:音符の部品の名も、資料によって、異なる記述もある。
予告:ミッツのプロレス技が決まり、今度はハルがステラを泣かせ、誰も弾いていないのにピアノが鳴り始める。先輩、隠していたんですね。
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▽ 場面変更 ● ── ●
先生ちゃんの説明が終わり、さっきの続き。
ハル、ミッツ、ヤッ子。
ヤッ子「あ、先生ちゃんの説明は終わったか」本棚から『結婚行進曲』(メンデルスゾーン)を出し、ハルとミッツに見せる。
ミッツ。大声で。「ほら、やっぱり!」ハルを睨む。ヤッ子から楽譜を横取りする。
D7の「♪ドーーレ、ドードー」と、次の小節のGsus4の「(1オクターブ高い)ドーーー、ソー、(元の高さの)ドー」を指す。
ミッツ「ほら、ここは本当は、ソ、シ、レの和音なのに、前の和音のドを引き継いでいるでしょ。しかも、ドからシにならないで、ずっとドのまま」
ハル「それは、もういいよ」
ミッツ「いいってこと、ないでしょ!」
ハル「音楽理論での「禁止」は、「しないことを、強くおすすめ」だから、効果的なら、違反しても、誰も困らない」
ミッツ「それはわかっているけど」
ヤッ子。ミッツを軽く抱き寄せる。「よく見付けたな。和音にも気配りしているんだな」
ミッツ。ヤッ子を見上げる。
ヤッ子「それに、弾いている時には気付いても……」ハルを見て。「……susの話題の時に、それを思い出せるのは、ナイスなことだぞ」
ハル。軽く目を閉じ、あくびするように返事。「はあーい」
ヤッ子。ミッツに微笑む。
ヤッ子。Bメロの7小節目、左手がオクターブユニゾンで、コードが「Dm7、D7」の小節を指す。
ヤッ子「右手のドにシャープがあるが、次はナチュラルが現れたから、シャープの有効は終わり、ここからはナチュラルになる」
ヤッ子「左手は、両方のファにシャープがあり、次のこのファはシャープが有効だが、1オクターブ下のファは初めてなのでシャープを書いている」
ハル「あそうか、付けていないと、ナチュラルのままか」
ヤッ子「そうだ。まあ、言い方の違いだが、ナチュラルのままというより、調号に従ったままの方が、適している」
ハル「「念のための記述」というのは、ありますか?」
ヤッ子。さっきの小節の、7小節後を指す。「このレのナチュラルが、念のためだ。前の小節のレのシャープは、小節が変わったら無効だから、このレは自動的に調号に従ったナチュラルだが、念のために書いている」
ハル「書かなければ、どうなります?」
ヤッ子「書かなくてもナチュラルだ。演奏者が、ちょっと惑うことがあるかもだ」
ヤッ子。C'メロ(右手Bさんが「トーントトントン」の箇所)の「B7」の箇所を指す。「このレのシャープは、直前に右手の段で付いていたが、左手で初めてなので、シャープが付いている」
ハル「これは、必要なんですね」
ヤッ子「実は、意見が分かれている。というのは、大譜表を意味するこのカッコ……」左端の中カッコを指す。「……があれば、1つの楽器を、便宜上2段に分けたものだから、左手のレは初めてではないという考えもある」
ハル「念のため書いておけば、文句は言われないってことですね」
ヤッ子「まあ、そうだな。文句を言われないことも気にするし、読む人の迷いを減らせる気遣いでもある。」
ハル「ダブルフラットは、フラットが2つなのに、ダブルシャープは、シャープとは違う記号ですね」
ヤッ子「誰かが決めたんだろうな。これは、フラットが2つ書かれているというより、フラット2つ並べた、1つの記号だな」
ハル「漢字の「林」は、「木」を2つ並べた1つの漢字ということですね」
ヤッ子「記号の由来を知るのも楽しいが、「誰かが決めて、昔からそうなっている」でも大丈夫なこともある」
ミッツ「あ、思い出した! えーっと、ショパンの……」急に立ち上がり、書棚から楽譜を探す。
ハル「何だ?」
ヤッ子「ショパンも、臨時記号を多用する人だな」
ミッツ。ショパンの楽譜を持って来る。『ワルツ』(作品64-2。ショパン)の楽譜。なお、ここでは登場しないが、作品64-1は『子犬のワルツ』。
ミッツ「さっきは、「フラット2つがくっ付いた、1つの記号」という話でしたが、ナチュラルとシャープがくっついた記号もあるんですか?」
ミッツ。ヤッ子に楽譜を手渡し、4小節目の右手のファに、ナチュラルとシャープが並んでいる箇所を指す。
ハル。覗き込んで。「これって、シャープはソに付くんだろ。よく、こんなことがある」黒板に、ト音記号第3線のシと、第3間のドが1つの棒で共有した音符を書く。シにフラット、ドにシャープを添える。
ミッツ「それは、あたしもよく見るけど、この曲は違う。どっちもファの高さに書いてある」
ミッツ「ほら、シャープの高さは、ファでしょ」
ハル「本当だ。そんなの、ピアノの先生に聞けばいいだろう」
ミッツ「それが……、基本的なことだから、聞きにくくって」
ハル「要するに、弾こうとして諦めたってことだな」
ヤッ子「まあ、そんなこともあるだろう」
ヤッ子「この場合、ナチュラルは「念のため」のものだ」
ミッツ「念のためって?」
ヤッ子「直前のファには、ダブルシャープがあるだろう……」楽譜の図。前の小節の、ファのダブルシャープに矢印。「……そこで、ここは、小節を跨ったから調号に従うのが正しい。本当はただのシャープだ」
ミッツ「シャープでいいんですか?」
ヤッ子「ほら、ややこしいだろう。人によっては、ダブルシャープにシャープを上乗せして、「トリプルシャープ」だと勘違いすることもある」
ハル「トリプルシャープって、あるんですか?」
ヤッ子「あるのか無いのか、私は知らない。まだ見たことが無いだけなのか、存在しないのか」
ミッツ「だから、念のために、前の小節のダブルシャープを取り消すナチュラルと、改めて「ここでは、ただのシャープ」を書いたんですね」
ヤッ子「そうだ……」指で楽譜を辿る。「……あった、ここだ」同じページの、4段目を指す。
ミッツ「これって?」
ヤッ子「クラシック曲では、リピート記号を使わず、同じことを何度も書くことがある。すると、「全く同じなのか」「少しは違うのか」といった、間違い探しをすることがある」
ハル。興味を持って近寄る。「楽譜でも、間違い探しがあるんですか?」
ヤッ子「そうだ。こんな風に……」左右の指で、1回目と2回目を辿る。「……同じ、同じ、ここは、取り消しのナチュラルの有無が違うが、念のための有無だから、演奏は同じ、同じ……という風に、間違い探しをする」
ハル「そんなの、表記が違うだけで、違うところなんて、無いでしょう」
ヤッ子。にやりと笑う。「それが、あるんだな。ここだ。2回目のミには、シャープがあるだろう」
ハル「あ、ほんとだ」
▽ 場面変更 ● ── ●
吹奏楽部の練習。
ステラが楽譜を配っている。
ステラ。テナーサックスの2人に楽譜を渡す。「新しい楽譜です。オミズさんと、モグラさん」
オミズ。女。「ステラちゃん、今日も可愛いね」
ステラ「ありがとうございます」
モグラ。男。「ステラちゃん、今日も可愛いね」
ステラ「ありがとうございます」
ステラ。2人の持ち物を見るとそれぞれが持っている名札やアクセサリーなどで、2人とも「KIKUCHI」「キクチ」などとある。
ステラ「あれ? お二人とも、本当の名前は、オミズさんじゃないんですか?」
オミズ「そう、オミズは、あだ名」
モグラ「まさか、モグラが本名だと思ったか?」
オミズ「あたしは菊池」
モグラ「俺は菊地だ」
ステラ「先輩はお二人とも、菊地さんですね。双子……ではないか、あ、二卵性の双子」
モグラ「違うよ、俺は菊地だよ」
オミズ「あたしは菊池だからね」
ステラ「ですから、……、あ、ご親戚? じゃなければ、たまたま同じ苗字なんですね」
モグラ「苗字は違うって。俺は菊地で、こいつは菊池」
ステラ。まだわからない。2人の背後に、漢字でそれぞれ「菊池」「菊地」が表示される。
ステラ「間違い探しですか?」
オミズ「発音が同じだけど、あたしのこれ……」背後の「池」を指す。「……は魚が住む池だから、オミズ」
モグラ「そして、俺のこれ……」背後の「地」を指す。「……は地面だからモグラ」
ステラ。まだわからない。
オミズ「ステラちゃんって、色んな細かいところに気付くのに、漢字だけは苦手よね」
ステラ「え? 「ち」って読むのが池で、「じ」って読むのが地面だと思っていました。だって、「ち」は「電池」「貯水池」だし、「じ」は「地面」「地震」だし」
モグラ「「観光地」や「地産地消」、「地球」もそうだよね」
ステラ「「かんこうち」って、観光する池ですよね」背景に、「観光地」と「観光池」が並ぶ。
この場面は、あまりステラを困らせないようにしたい。楽譜での間違い探しの話を、人名の漢字での間違い探しに広げただけなので。
▽ 場面変更 ● ── ●
音楽室。さっきの続き。
ハル、ミッツ、ヤッ子。
ヤッ子「それから、音符の玉が×マークで書かれているのは、「不定音高」だ」背景に漢字とフリガナ。
ハル「「不貞温厚」?」背景に漢字。
ヤッ子「漢字が違うぞ」
ヤッ子「打楽器など、ドレミで表現できない場合、玉の代わりに×マークを使う。こうすることで、音を出すタイミングは指定できる」
ミッツ。ハルに向かって。「第7話で、自分で答えてたでしょ。音符の玉が、太い棒になった「ストローク」のこと。あれと似てるよ」背景に、第7話のストロークの楽譜を、ハルが「音を出すタイミングは、指定できます」と言っているを表示する。
ハル「え? ああ、そう……だ。ストロークと同じで、音の高さを指定できないが、タイミングの指定はできるって、あれと似ているのか」
ヤッ子「歌でも、ドレミで表現できないことがあるな」マイケルジャクソンの真似で「ポゥッ!」と歌う。
ハル「あ、知ってます。こういうのでしょ」右手を股に当てる。
ヤッ子「左手は、こうじゃなかったか?」古今の流行歌、コメディ、その他、何かの真似。
ミッツ「両手じゃなかった?」軽く、両手を股に当てる。
ハル「こうか?」同じく、股に当てる。
ミッツ「そう、少し内股で」
ハル。言われた通りにする。
ミッツ「そう、そして、斜め下を向いて、顔を赤らめる」
ハル。言われた通りにする。
ヤッ子「早坂君が、いつか、音楽室で、電池を使って、相撲の呼び込みを再現していただろう。あれも、一種の不定音高でもあるな」
ミッツ。急にラップを歌い始める。「♪相撲の、呼び込みも、辻売りだって、ふてーオンこぅ」
ヤッ子「そう、ラップも、一種の不定音高だな」
ハル「でも、この楽譜は、ギターで普通に演奏する曲ですよね。ドレミで表現できますよ」
ヤッ子「ギターを、コツコツ叩くことがあるだろう?」
ハル「あ、そうか」
ヤッ子「打楽器の楽譜は、玉の形があれこれあって、面白いぞ。詳しくは、それぞれの打楽器の奏者に聞いてみてくれ」
ミッツ「ヤッ子先生、お手上げ?」
ヤッ子「そうなってしまうのは、それだけ多様だってことだ。特に、ドラムスには……」背景にドラムス。「……「基本的」と呼ばれる配置はあるが、個人の好みで自由な組み合わせをする」
ヤッ子「だから、五線のどこが、どのドラムなのか、シンバルなのか、万人に共通な記譜は無い」背景に「記譜」と、そのフリガナ。
ハル「でも、バンド譜では、ドラムスの楽譜が載っていますよね」背景に、バンド譜のサンプルと、その前面に「バンド譜」と、そのフリガナ。
ヤッ子「一応は、基本的と呼ばれる配置での記譜だ。正確なことは曲を聞いて確認したり、バンドメンバーと実際に演奏しながら、自由に変更することもある」
ハル「はあ、そうなんですか」
ヤッ子。黒板に×と白玉を書く。「音符には、白玉と黒玉があるだろう」
ハル「黒足袋白足袋なら知っていますが」
ヤッ子「全音符と2分音符は白玉、4分音符から短い音符は黒玉。会話で「白玉で」と言えば、「長い音価の音符で」という意味だ」余白に音符の例。
ヤッ子「打楽器の場合、白玉と黒玉は、このように書き記す」
ミッツ「打楽器に白玉があるんですか?」
ヤッ子「まあ、実際には、叩いてすぐに音が消えるものもあるんだが、楽譜の見やすさのために、2分音符で書くことがある」
ヤッ子「逆に、細かな音符なのに、ピアノでペダルを踏んだまま、つまり、弦の振動が自然に消えるまで鳴り続けるようにすると、次の音符が鳴り始めても、さっきの音は鳴ったままだろう」
背景に16分音符のグリッサンドの楽譜と演奏。先頭近くの玉に、差し棒で「この玉の音は、まだ鳴っている」と記す。
ヤッ子「実際には音が鳴っているのに、鳴っていないように書いている例では、シンバルがあるな」
ヤッ子「シンバルが「シー」と鳴って、太鼓が「タタ」と鳴る。連続して「シータタシータタ」の演奏を、楽譜では、太鼓が鳴る時にはシンバルの音は消えているように書かれているが、実際にはシンバルは鳴り続けている」
背景に、ドラムスの演奏する姿。右手でシンバル、左手でスネアを鳴らす。楽譜と、ピアノロールを表示する。
ピアノロールには、実際に鳴っている音を表すオシロスコープの線(ギザギザや波線)を重ねる。シンバルはピアノロールよりも長く音が鳴り、スネアはピアノロールよりも短時間で音が止まる。
ハル「音符は、「この時間、音を鳴らし続ける」って決まっているんですよね」
ヤッ子「その指示だが、場合によっては、その指示を「守っているつもり」ということもある。おもちゃの木琴も、叩いてすぐに音が消えるが、鳴っているつもりだろう?」
ハル「なるほど。楽譜の通りに音を鳴らし続けることができないこともありますね」
ヤッ子「音符っていうのは、「音を出し続ける時間」を、厳格に示している。しかし、表記上は厳格でも、実際に演奏する場合には、「厳格なつもり」ということもあるんだ」
ハル「なるほど。楽譜を音に再現するためには、楽譜をきちんと読む。そして、楽器による工夫があるから、楽譜とは違った演奏になることもあるんですね」
ヤッ子「そうだ」
ヤッ子「打楽器では、白玉と黒玉だけでなく、菱形もあって、面白いぞ」黒板に、菱形の白玉と黒玉を書く。
ハル「菱形は、どういう意味ですか?」
ヤッ子「だから、それは打楽器奏者に聞いてくれ。ギターでも、倍音で、ああ、「ハーモニクス」と言った方がいいかな、菱形の玉が使われていることがあるだろう」
ハル「音符の玉は、右上がりと右下がりの、2種類だけって、ミッツから教わったけど」
第2話の、ミッツが自信たっぷりに「あはは、大丈夫だって、2種類限定!」と、Vサインをする場面を再掲する。
ヤッ子「そんなことはないのは、今、見た通りだ」
ヤッ子「更に言えば、ギターのTAB譜(タブふ)では、フレット番号の数字が書かれているぞ」背景に、TAB譜とギターを、上下に並べる。
ハル。ミッツを睨む。「ミッツーーー」
ミッツ「仕方ないでしょ、ピアノじゃ、まず見ない音符だもん」
ヤッ子。なだめるように、柔らかな笑顔で頷く。
ハル「ヤッ子先生、それから、フェルマータも知りたいんですが」
ヤッ子「ああ、停止記号だな」
ハル「へ?」
ヤッ子「フェルマータは、停止記号と言ったんだ」
ハル「フェルマータは、延ばす記号じゃないんですか?」
ヤッ子「結果的に延ばすことになるが、停止記号だ。手拍子を、一時的に停止する」
ハル。ミッツを睨む。「ミッツーーー」
ミッツ「そうでしょ、2倍から3倍、延ばすんだって教わったよ」
ヤッ子「音を延ばすのなら、「ゆっくりにする」や「一時的に、ゆっくりにする」を意味する「リタルダンド」の方法もある」
ヤッ子「逆に、テンポを速くする指示もある」
背景に、「リタルダンド」の表記「ritardando」「rit.」「ritard.」に、フリガナ「リタルダンド」を添える。
同時に、「アッチェレランド」など、いくつかの速度変更の用語を表示する。カタカナ表記が複数あれば、併記する。カタカナ表記は、資料の対象年齢や、出版年代により、異なる場合があるため。略式表記があれば、併記する。
ヤッ子「どの場合でも、演奏者の全員が揃って、手拍子のテンポを変える」
ヤッ子「で、早坂君が知りたいのは、AさんとBさんの2声があって、異なる音価にフェルマータがあれば、どっちの音価を2倍すればいいか、ということではないのかな?」
背景に、CM明けでハルが迷った楽譜を表示する。「どっちを基準に、2倍の時間に延ばすのか?」を添える。
ハル「その通りです。どっちでショ?」
ヤッ子「手拍子は全員が同時に。全部の声部、全部の段で、同時に手拍子するという、大前提がある。だから、フェルマータで全員が一斉に手拍子を停止して、また、全員で一斉に再開する」
ヤッ子「手拍子が停止した時に、ある担当は4分音符の時に停止、ある担当は2分休符の時に停止。だから、担当している箇所によって、2倍延ばすのか、3倍延ばすのかは変わるが、手拍子の再開は同時だ」
ミッツ。突然の大声。「あっ!」
ハル「どうした?」
ミッツ「そうだよ、停止記号だよ」
ヤッ子。ミッツの気付きを、こっそり喜ぶように、微笑む。
ミッツ「だって、楽譜の途中で曲が終わった時に……」
ハル「そんなこと、あるか。楽譜の途中なのに、曲が終わるなんて」
ミッツ「違うって。一度は楽譜の最後まで演奏して、リピートとかで戻って、途中で終わる時ってこと」
背景に、楽譜の最後まで演奏し、戻って、途中で終わるという演奏順を、厚みを持った帯の矢印で表す。第2話でステラが自宅で勉強したような、「きしめんのような、厚みのある帯」の矢印の表現。
ハル「ああ、そういえば、そういうものもあったかも」
ミッツ「そこで、終わりの場所には、フェルマータが書いてある」
ハル「最後の音符にか?」
ミッツ「違う。小節線に」
ハル「フェルマータは、音符か休符に付くものだろう?」
ミッツ「だから、違うって。こんな風に、フェルマータを書くの」黒板に、簡単な楽譜を書く。複縦線(縦線が二重線)の上にフェルマータ、下に「fine.」の例。
ミッツ「楽譜によっては、「fine.」だけのものもあるけど、フェルマータも書くってことは、フェルマータは手拍子を「一時的に止める」だけでなく、「もう手拍子しない」って意味じゃないかな?」
▽ 場面変更 ● ── ●
吹奏楽部の練習。
先生が、ギョロ目で生徒を睨んでいる。生徒達も、ギョロ目で先生を睨んでいる。音を出している楽器と、出していない楽器がある。
先生が、睨みながら、合図のように顎を上げると、演奏が再開する。
吹奏楽の先生。手を叩いて。「はーい、はーい」演奏が止まる。
吹奏楽の先生「このように、フェルマータがあれば手拍子を停止して、みんなで目配せして、再開の合図をする」
吹奏楽の先生「だから、フェルマータは、目玉のマークになった。カッコ! 諸説あります、カッコ閉じ」
生徒の全員の顔が、口は無表情、両目がフェルマータ。
吹奏楽の先生「まあ、こうして指揮者がいれば、指揮者と合わせればいいから、目配せはいりませんね。目配せは、人数の少ないアンサンブルで有用ですね」
吹奏楽の先生「それから、ステラさん、この、フェルマータのすぐ後は、柔らかい音で再開するように、できますか?」
ステラ「柔らかく? ですか?」
トロンボーン先輩「口の穴、これ……」自分の口を指す。「……これを少し、柔らかく広げるといいんだよ」
ステラ「そうしたら、柔らかくなりますか?」
トロンボーン先輩「あれこれ、実験するといいよ」
吹奏楽の先生「音の高さは、かなり上達しましたので、嬉しく思います。少し気持ちに余裕ができたと思いますので、音色への気配りもできそうですね」
ステラ。トロンボーン先輩に。「演奏って、音符の通りに鳴らせばいいってものじゃ、ないんですね」
トロンボーン先輩「そうだね、音の高さだけじゃなく、表現って、色々と気遣いできるよ。譬えれば、冷たいアイスクリームと、温かいアイスクリームでは、味は同じなのに、美味しさは違うよね」
ステラ「なるほど、それが演奏の音色が違うと、聞いた楽しさの違いになるんですね」
トロンボーン先輩「そう。それから、嬉しそうに「演奏が上手になって嬉しい」って言うのと、自慢気に「演奏が上手になった、すごいでしょ」って言うのとでは、印象が違うよね」
ステラ「自慢にしても、相手に楽しんでもらおうと「自慢の料理です」って言うのなら、相手に喜んでもらおうって気持ちですものね」
▼ Cパート。 ▼── ──▼
先生ちゃん。音楽の先生。
説明用の別世界。背景は無地。
先生「世界中で、多くの人が音楽を楽しんでいます」
先生「仲間内で演奏を楽しんでいて、「ちょっとこれを教えて」と教わることもあれば、音楽教室で学ぶこともあるでしょう」
先生「教わる方は、知らないから教わる。教える方は、どうすればわかってもらえるか、思案する。そこで、わかりやすい説明方法を考案したり、それから、うっかりミスで、誤ったことを教えてしまうことがあります」
先生「これまで縁が薄かった楽器の楽譜を見て、初めて知る事柄もありますね」
先生「正しくはないけど、誤りではなく、わかりやすい説明もあるものです」
先生「仲間内だけで伝わるスラング、方言の用語を、一般的な用語だと勘違いして広めてしまうことも、あるでしょう」
先生「資料も、作成者の考えにより、異なっていることがあります」
先生「実際、音符の部品の名前すら、資料によって異なってることがあります」
音符の各部の名称を表示する。玉の呼び名「符頭」。棒の呼び名「符幹」「符尾」。旗の呼び名「符尾」「符鉤」。鉤の呼び名「鉤」「鈎」「符桁」。
「鉤」と「鈎」の漢字も異なる。
先生「自分が手にした資料だけが正しいと思うより、資料によって異なることは、覚えておいてほしい」
学者がテレビで、ハリー・フレデリック・ハーロウによるアカゲザルの実験を補足情報として発言したところ、「チンパンジー」を含め、複数の誤りがあった。対談中の発言であり、主題ではない。
NHKの学術番組で、人体の神経に電気が流れる表現は、「神経という電線に、電気が流れる」の誤解を誘発するものだった。番組内で「これまでの表現は、誤り誘発」と、言葉で訂正。正しくは、化学反応の連鎖。
▼ 次回予告。 ▼── ──▼
ミッツのプロレス技が決まり、
今度はハルが、ステラを泣かせ、
誰も弾いていないのに、ピアノが鳴り始める。
先輩、隠していたんですね。
▼ 1コマ漫画。 ▼── ──▼
ナポレオンに、部下が辞書を手渡している。
「日本語の辞書ですので、「不可能」の文字が載っています」
ナポレオンは、赤いサスペンダーをしている。
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