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ガクテン  作者: 不定音高ふたつ


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09_A__03_04  第9話 Aパート 分割 3 / 4

第9話 Aパート 分割 3 / 4


【注意事項:楽典以外の余談に、児童には不適切な生々しい描写や、心的負担の箇所があります】


【 第9話 概要 】

サブタイトル:×って何だ( )バツってなんだ)。

OP曲前:翌日。ステラが、ショージを追い出したことを思い出す。

Aパート:ショージは昨夜、母親から説教されたので、昼休みにステラに謝罪。最大の発明は消しゴム、消したい過去。楽器の練習はゆっくり。家業を継ぐので不要な教科。オーパーツ。恋って何かのついで。あたし、キスしていません。

CM明け:ハル。「ミ♯」は低い黒鍵だっけ? この「×」は何だ? あーわけがわからん。「×」は2種類。フェルマータは何倍延ばすか。

Bパート:ミッツとヤッ子が、昭和の男の話。ミ♯、ダブルシャープとダブルフラット。臨時記号の範囲。不定音高。フェルマータは延ばすじゃない。音符の玉の形は、特に打楽器では様々。コードのsus。半音は2種類。

Cパート:音符の部品の名も、資料によって、異なる記述もある。

予告:ミッツのプロレス技が決まり、今度はハルがステラを泣かせ、誰も弾いていないのにピアノが鳴り始める。先輩、隠していたんですね。


 ○ --- ○ --- ○


ここから本文です。

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▽ 場面変更 ● ── ●


中庭。さっきの続き。


ヤッ子と、音楽の先生が、消しゴムの話をしていた。


バドミントンを中断し、雨宿りをしていた女生徒達2人が、声を掛ける。


生徒「ヤッ子先生ー。校内で堂々と、デートですか?」


ヤッ子「そうだ。君達も、堂々とデートできるよう、自分を磨けよ」


生徒「どうしてあたし達、化学や音楽を勉強しなければいけないんですか?」


音楽の先生「生きるために役立つと思われることを、あれこれ教えるのは、大人の義務なんですね」


生徒「でも、算数は役立っても、数学は役立つとは思えません。あたしは、楽器の演奏ができるのはいいなとは思っても、自分で弾こうとは思いません」


生徒「あたしは、将来は家業を継ぐので、化学は使いません」


生徒「難しくてややこしい計算を、簡単にできるから、数学は役立つそうですが、簡単にするための方法が、難しくてややこしいです」


生徒「しかも、その計算を必要とすることは、一生のうちに、きっと一回も無いと思います」


生徒「一生のうちに、何回かあったとしても、あの面倒な数式が役立つとは気付かないと思います。数式の意味も、数式そのものも、覚えていられないので」


音楽の先生「必要と思われる事柄のうち、何を教えるのかの選択基準は、大人の都合かも知れませんね」


ヤッ子「自分で化学をしなくても、詐欺対策にもなるぞ。家業で、新しく取引先になろうとする者が、嘘の説明をしたのを、見抜くために、理科の知識が役だったり」


音楽の先生「取扱説明書と似ていると思ってください」


生徒「取扱説明書ですか……」


音楽の先生「取扱説明書を熟読する人、ほとんど読まずに使っているうちに慣れる人、様々ですね」


生徒「あたしは、ざっと目を通します」


音楽の先生「どの機能を使うのかは、人によって違いますね。使いたい機能の部分はしっかり読んで、必要ではない機能の部分は読み飛ばす」


生徒「あ、わかります」


生徒「スマホもそうです。全然使わない、使い方も知らないアプリが、買った時から、たくさんあるんですよ」


生徒「そうそう。誰かにとっては、すっごく便利なんだろうけど」


生徒「どんな人が使うのかなあって」


音楽の先生「スマホに元々あるアプリケーションや、取扱説明書にたくさんの機能が載っているのは、学校ではたくさんの教科があるのと似ています。全部の機能を使う人は少なく、全部の機能を使わない人も少ないでしょう」


生徒「全部の機能を使わないって、じゃあ、何のために買ったのかってことですよね」


音楽の先生「実際に使っていると、取扱説明書には書いていない、便利な使い方や、便利な機能を発見しますね。自分で発見するだけでなく、誰かから教わることもありますね」


生徒「インターネットで見ていたら、「そんな方法もあったのか」とか」


音楽の先生「スマートフォンを、最初は電話ができれば良いと思っていた人が、ある日から、これまで使わなかった機能も使い始めることもあります」


音楽の先生「ご自身の生活が変わるように、社会の文明や文化も、これからも変わって行くでしょう。不要と思っていた分野のうち、将来は何が重要になるか、今はわかりません」


音楽の先生「将来、必要になって初めて化学を学ぶより、今のうちにこうして化学に縁があれば、再び学び始めた時に、思い出しやすいでしょう」


生徒「シメジ婆さんは言ってたよ。学校の勉強の全部が役立つ人はいないけど、学校の勉強が1つも役立たない人もいないって」


生徒「今、思い出しました。「小節線」と「縦線」の、どっちが正しいんですか?」


音楽の先生「どちらも正しいです。というのは、音楽は多くの人に親しまれていますから、誤解も含めて、様々に語られます。「元々の意味」「正しい意味」の口論より、伝わることが大切なこともあるでしょう」


音楽の先生「ただし、あまりにも用語が混沌とするのは、学ぶ方も会話も、困ってしまいますが」


生徒「そうなんですよね、同じものなのに違う呼び方、違うものなのに同じ呼び方。一問一答をしたいのに、説明がいつまでも続く」


ヤッ子「わかりやすいように、授業は工夫しているつもりだが、一部分だけを話すと、誤解されることもある。だから、ストーリーを設けてはいるが、授業をする方も難しいんだ」


音楽の先生「以前、僕が東京で仕事をしていた頃、鉄道網が難解でした。その時、東京はわからないと感じたのですが、僕の思う「東京はわからない」は、外国人が思うそれとは違うのだなと思います」


以降は、2人の生徒の、どちらかを明確にするために、「生徒A」「生徒B」と記す。


生徒A「あたしの祖父の失敗談ですが、仕事の出張先の大きな駅で、メモを見ながら「なになに線は、どこですか?」と、駅員さんに聞いたんですって」


ヤッ子「ふむ」


生徒A「すると、駅員さんは「ああ、JR線は、あっちだよ」って教えてくれて、忘れないうちにメモに書き加えたんです。「なになに線は、略してJR」だって」背景にメモの絵を表示し、「なになに線は、略してJR」と書いてある。


生徒B「えーっ、JRって、ジャパンレールでしょ?」


JRは、「ジャパン・レールウェイズ( )Japan Railways)」の略。登場人物が、よくわかっていないままの会話。


生徒A「うん、だから、それだけ東京の鉄道が、わけがわからなくて、もう混乱していたんだって」


音楽の先生とヤッ子。微笑んでいる。


生徒A「それに、ごちゃごちゃした駅で、行き先の案内看板ならたくさんあるけど、今ここはどこなのかっていう看板が少ないって」


生徒B「それって、大変?」


生徒A「今、どこにいるのかがわからないから、地図も路線図も役立たず」


生徒B「あっ、そうか。迷っていない人を導く看板はあるのに、迷っている人のための看板は無い。迷いの解決は、ここはどこかって知ることから始まるのに」


生徒A「道路だったら、電柱に書いてあるのに」背景に、交通事故で電話している人が、電柱に巻かれている看板「ここは……」の地名。


生徒B「その地方に馴染みがあったら、目的の地名じゃなくても、近隣の地名から推測したり、目立つ施設から推測できるけど」


音楽の先生「看板は、見渡したら、たくさんありますが、広告の看板などに紛れて、どれが自分に役立つのか、見渡した風景の中から探すのも、大変ですね」


生徒B「そうなんです。それから、案内看板が理解できなくて。隠し絵とか、騙し絵みたいに、答えを知っている人なら、わかるんだろうけど、迷っている時だから、謎解きをする時じゃない」


生徒B「案内のための看板なのに、案内そのものが理解できない」


生徒A「ついでに言うと、都会の外食店で、天丼を頼んだんだって」


生徒B「うん、それで?」


生徒A「もんじゃ焼きとか、お好み焼きとかなら、友達から教わりながら食べるけど、天丼なら出来上がりを、そのまま食べるでしょ」背景に、どんぶりのフタを宙に浮かせて開けた、天丼の絵。お盆に載せて、みそ汁などが付いていても良い。


生徒A「ところが、お盆の上に、ご飯だけのどんぶりと、別な器に天ぷら、番茶の湯呑と、その湯呑によく似た器につゆ。こうなると、何が何だかわからない」背景に、何が何だかわからないお盆の絵。天ぷらは、ざるそばのように「すのこ( )すだれ)」に載っている。


生徒B「だったら、聞けばいいんだよ、どうやって食べたらいいか」


生徒A「聞いたんだって。そしたら「普通に食べればいい」って」


生徒B「「普通に」って」


生徒A「だから、「普通にじゃ、わからないから聞いているんだ。この2つの湯呑は、どっちがお茶で、どっちがタレなんだ」って。そうしたら、悪質クレーマー扱いされたって」ここでは「タレ」と言っているが、「つゆ」に統一しても良い。


生徒B「知らないから聞いただけなのに」


生徒A「おじいちゃんは、天丼屋さんに入って、壁のメニューにある「天丼」の文字を見て、注文したの。あっ、言い忘れていた、壁のメニューには、「番茶付き」って書かれてあったって」


生徒B「うん」


生徒A「店員さんは、テーブルの上に立ててあるメニューを広げて、わざと聞こえるような大きな溜息で、メニューを手で2回、バンバンって叩いたの」


生徒B「メニュー?」


生徒A「メニューには、出て来た天丼の写真と、番茶の湯呑に「番茶が付いてます」って文字や、つゆの器に「つゆはお好みで」って書かれているの」


生徒B「でもそれって、そこに書かれているのを知っている人なら、見ることができるよね。こだわりの店なのか、その地域の当たり前なのか知らないけど、見るからに外国人なら、親切に教えてくれたのかもね」


生徒A「だから、怒って、大声で「態度が悪い」って言って、1万円札を投げつけて、「釣りは、いらん」って、出て来たの」


生徒B「そうなんだあ」


生徒A「他の店では、「ジンギスカン定食」を注文したら、豚肉だったって」


生徒B「詐欺だよ。羊頭狗肉( )ようとうくにく)だよ。羊頭ブタ肉かな」


生徒A「会計の時に、「この店では、豚肉をジンギスカンと言うんですか」って聞いたら、店員は涼しい顔で「そうですよ」だって」


生徒B「もう、外食店は、信じられないね」


生徒A「それ以来、出張では、コンビニでパンを買って、公園で食べるようになったって」


生徒B「知らない土地で、そんなことがあるんなら、旅行に行くのが楽しくない」


これ以外は、ラジオで読まれた聴取者からの話がある。幼児を連れた母親が、ファストフード店で「オレンジジュース」を注文。カウンターの店員は、確認の復唱で商品名を言う。


母親は「なぜ、わざわざ商品名で返答するのか」を、ラジオに送り、読まれた。


ラジオでは、ここまでの放送だった。店員側の言い分を想像すると、「ジュース」は果汁100パーセントと定義されている。幼児に飲ませるので、果汁100パーセントに留意する母親もいる。


そのため、店員は「果汁100パーセントではない」を知らせたかったのかも。もしかすると、店員は後に「商品名で復唱よりも、果汁100パーセントではないが、良いか」と聞けば良かったと思い、接客技術が向上したかも。


生徒A。音楽の先生に向かって。「どう思います? 店員の態度が悪いって言うのは、カスハラだと思いますか? あたしは、店員がカスハラを作ったと思うんですが」


背景に「カスハラ」と、略していない「カスタマーハラスメント」と、説明の「客が理不尽な理由で、横暴な言動をする」を表示する。


音楽の先生「僕は、その場にいませんでしたが、お話しを聞いた限りでは、目的の相違が原因だったと推測します」


ヤッ子。驚く。心の声。「( )どちらが悪いか、比率で答えると思えば、どちらが悪いかではない答え方? なるほど、これは、誰も責めない方法)」


音楽の先生「お客さんは、食べたいものを、気分良く食べるのが目的です。店員さんは、もしかすると、昼食時間帯で早く席を空けて欲しかったのでしょうか。当たり前のことを尋ねられて、多忙のに、仕事を邪魔する客だと思ったのでしょうか」


ここで、音楽の先生が比喩を用いるのも良い。テレビドラマや映画などで、「犯人逮捕」「人質の解放」「盗まれた物の奪還」など、どれを優先するのかで、警察内部や、その他の立場で、言い合いとなり、自分の望みに反する結果に怒る。


ヤッ子「駅の建築に譬えれば、今でこそ言葉が知られるようになったバリアフリーで、駅にエスカレーターを設置した。これで良いのか、改善すべきかを、利用者に問う」


ヤッ子「すると、利用者は「せっかく作ったものに、苦情は言えないが、エレベーターが無いと、使い物にならないんだよな」と、心で思うだけ。返答が来ないので、改善もできない」


音楽の先生「良い駅を建築するという、共通の目的から、どちらかが目的を変えると、もう話し合いはできません。本人達は当初の目的を保持している気持ちなので、相手が邪魔をしていると判断します」


音楽の先生。会話が落ち着いたので、話を戻す。


音楽の先生「さて、先程の話に戻りますね。僕は化学は専門外ですが、大人である僕にとっての「化学は難しい」と、学習途中のあなた達にとっての「化学はわからない」は、違うと思います。これは、化学だけでなく、音楽でもそうですね」


生徒「基礎的な知識ですか?」


ヤッ子「そうだな。ただし、知識が理解の妨げとなることもあるが」


生徒「その話は、時々聞きますが、本当ですか?」


ヤッ子。ちょっと得意気に「塩基性と酸性の「酸性」という名前の由来は、酸素が含まれていると酸性だという誤解からだ」


ヤッ子「大人になるまでの時間のうちの、どこかで、「酸素」と「酸性」は、化学的に繋がりがあると勘違いしてしまう」


ヤッ子「しかし、そのような誤解を思い付く前に、君達には酸性の意味を教える」


生徒「あ、酸素と酸性。思い付きませんでした」


音楽の先生「地球は洋ナシ形だと言われますが、真ん丸と比べて、どれだけ歪んでいるか。太陽を周る地球の軌道は楕円形と言われますが、真円と比べてどれだけずれているか」


音楽の先生「ノートを開いて、その見開きの全体に、コンパスで円を書き、地球がその大きさなら、どれだけ歪んでいるか、計算してみてください」


生徒「はい」


ヤッ子「人類で最初に飛んだのは、どんな方法で、誰だったか?」


生徒「もちろん、ライト兄弟が飛行機で飛びました」


ヤッ子「では、どうやったら空を飛べるか、小さな子供に「一番、簡単な、空を飛ぶ方法は?」と聞いたら、何と答えると思う?」


生徒「何だろう?」


生徒「うーん、風船?」


生徒「あ、そうか、風船だ」


ヤッ子「そう。初めて飛んだのは、熱気球で、モンゴルフィエ兄弟達だ」


ヤッ子「熱気球は空気より軽いものだな。では、空気より重いものでは?」


生徒「今度こそ、ライト兄弟」


生徒「きっと違うよ。だって、ヤッ子先生だもん」


ヤッ子「バレたか。次はグライダーで、それを発明したケーリーは自分では飛ばず、御者が飛んだ」


生徒「じゃあ、ライト兄弟は、何がすごいんですか?」


ヤッ子「グライダーは自分で動力を持たなかったが、ライト兄弟の飛行機は動力があった、つまり、自力で飛ぶのがすごかったんだ。しかも、小さなおもちゃではなく、人間が乗れる大きさで」


ヤッ子「まあ、話は逸れたが、最初に空を飛んだのはライト兄弟だと思って話を聞くのと、何も知らないで話を聞くのとでは、理解の仕方が違うということだ」


この、最初に空を飛ぶ話は、いらないかも。音楽の先生の、地球の形などで、目的は果たせている。


生徒達「ありがとうございます」


生徒達がバドミントンを再開する。


音楽の先生。生徒達とヤッ子を見て、満足気な表情。


音楽の先生「鍵宮先生」


ヤッ子「はい」


音楽の先生「迷っている時、行き先の看板はたくさんあるのに、ここはどこかを知らせる看板が少ない」


ヤッ子「はい」


音楽の先生「僕達は、あの子達より年上です」


ヤッ子「そうですね」


音楽の先生「僕達は、あの子達を俯瞰して、あの子達が今、人生のどこにいるかを、把握できます」


音楽の先生「でも、あの子達は、自分がどこにいるのか、自分を俯瞰できません」


音楽の先生「僕も、自分が今、人生のどこにいるか、自分では、わかっているつもりでも、実は迷っているのかも知れませんね」


ヤッ子「星山君達も、きっと、迷っているでしょう」中庭に来る前の、廊下から音楽室を見た、泣いているステラを思い出す。画像が、ゆるやかに歪んだり揺れても良い。


音楽の先生「必要であれば、力になりたいと思います。この年齢になった僕も、きっと、迷っているのですから。この年齢になった僕も、きっと、自分を俯瞰できていないのですから。況してや、未熟な子供なら」


ヤッ子。突然、姉の死を思い出す。


ヤッ子「先生……」


音楽の先生「子供達がSOSを出しやすいように、子供達のSOSに気付けるように、そして、子供達が、安心してSOSを言えるように。そんな人に僕はなりたいですし、子供達が、そんな人と出逢えますように」


バドミントンを再開した生徒達は、笑顔。雨上がりで、風景の色は鮮やか。



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