08_B__01_03 第8話 Bパート 分割 1 / 3
第8話 Bパート 分割 1 / 3
【 第8話 概要 】
サブタイトル:どっちがどっちだ?
OP曲前:ハルとショージの思い出。小学生の頃、ハルが手品をショージに見せ、眠らせない。
Aパート:タイ、スラー、レガート、付点。タイで小節を跨ると、浮気者や未練者になる。連符と『月の光』の誤り。牡丹餅とお萩。物体の過去の動きから未来予想が外れる。
CM明け:音楽の先生。自宅でメロン。ラップでくるんだ種を揉んで、妻に「好きだよ」。または、トロール将軍が「ゴメンネ」を教える。トロール将軍の妻が妊娠で「おめでとー!」の叫び。
Bパート:シャッフル、3連符、付点8分音符と16分音符。装飾音符は音価の計算はしない、同時か直前か直後か。3人下校時、ステラの芸術、蟻釣り、パズルの話。ハル自宅、ペットボトルのブローボトルがピィー。
Cパート:ショージがステラの自宅へ。ショージがハプニングを装い、ステラにキスし、胸を触る。ステラの背中(素肌)に氷の蔓植物が、ステラの体を這い、刺される。
予告:トイレのスリッパが温かくて、ミッツはヤッ子と女子トークで盛り上がり、みんなが止まってギロリと睨み合う。それより、ステラ、逃げろ!
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▼ Bパート。 ▼── ──▼
Aパートの続き。
音楽室、放課後。
ハル、ミッツ、ステラ、ショージ、ヤッ子。『月の光』(ドビュッシー)の、レガートとフレーズの区別。
ヤッ子「付点と連符の話では、「跳ねる感じ」の、紛らわしいのがあるな」
ミッツ。ちょっと意地悪な気持ちで「ねえ、ショージ。さっき『ユーモレスク』を弾いたよね。もう一回、ステラちゃんにも聞かせてあげて。サンプルで、2小節だけ」
ショージ「よーっし。しっかり拝聴してくれよ」弾く。
ミッツ「さーっすがー。じゃあさ、次は、何かアドリブでブルースを」
ショージ「俺は、ピアノが弾けないのっ! アドリブなんて無理」
ハル「ヤッ子先生は、どうしてアドリブができるんですか?」
ヤッ子「早坂君には、音階スライドなどで、「よく使う鍵盤」の話をしたな」
ハル「はい。ペンタトニックなど」
ヤッ子「「よく使う」というのは、音階だけでなく、リズムやメロディも、ジャンルによって「よく使う」というのがある」
ハル「はい」
ヤッ子「様々な「よく使う」があって、それを覚えていることを「引き出しが多い」なんて言い方をする。「引き出しを増やす」は「音楽理論を学ぶ」ということだ」
ハル「ここで言う「音楽理論」は、書籍に載っていないものも含めて、「効果的な工夫」ですね」
ヤッ子「そうだ。演奏中に、今ここで相応しい手法を用いるのがアドリブだが、大切なのは、演奏のテンポを乱さず、手法を選択して演奏することだ」
ハル「「よく使う」という手法ですか……」
ヤッ子「もちろん、効果的なら、使用例が少ない手法も覚えておく。しかし、今みたいに、ちょっと弾いてみてという時なら、雰囲気を楽しみたいのだから、「よく使う」手法が適しているな」
ショージ「でも、ブルースをアドリブだなんて」
ヤッ子「蜜霧君は、何か企みがあるんだろう。芝居じみたやり取りに乗ってみないか。コードのC7を、「ジャン、ジャン、ジャン、……」と弾いてみてくれ。メロディには、ソ、ラ、シ♭をデタラメに「タントラント」と鳴らしてくれ」
ショージ「ううーんと、こんな感じかな?」弾く。
ミッツ「ステラちゃん、わかった?」
ステラ「え? 何がですか?」
ミッツ「ショージの演奏サンプルで、2曲弾いたでしょ。2種類の跳ねる感じには、ちょっとした違いがあるんだよ」
ステラ「えっ?」
ハル「えっ?」
ショージ「えっ?」
ミッツ「なんであんた(ショージをツンと指す)まで驚くのよ、弾いた本人なのに。……って、やっぱり、意識していなかったか」
ヤッ子「まあ、雰囲気が似ているし、実際、3連符の意味で付点の記譜をしているものもあるからな」情報過多に感じなければ、背景に「記譜」と、フリガナの「きふ」と、説明「楽譜の表記、書き方」を表示しても良い。
ハル「シャッフルの記号の話ですか?」
ミッツ。ハルはヤッ子に返答したが、話を横取りするように。「そう。楽譜の始まりに、シャッフルのこれが書いてある代わりに、こう書いているものもある」
ミッツ。黒板に、2種類のシャッフル記号の表現を書く。「8分音符が2つ=4分音符と8分音符のシャッフル」と、「付点8分音符と16分音符=4分音符と8分音符のシャッフル」
ステラ「イコールで繋げていますが、おかしいですよね」
ハル「これは、算数のイコールの意味ではなくって、「こう書いてあれば」「イコール」「このように演奏して」の意味なんだ」
ミッツ。黒板に書いた「付点8分音符と16分音符=4分音符と8分音符のシャッフル」を指しながら話す。
ミッツ「ショージは、これとこれの、区別をしないで演奏したけど、この記号が書いていなければ、普通の演奏、つまり、区別して演奏するのが正しい。別な楽譜だもんね」
ステラ「そうですよね、それって、違いますよね」
ミッツ。黒板に、4種類のセットを書く。
セット(1)、4分音符。その下に、4分音符の音価を表す横長の長方形。長方形の左右の両端から、下に点線を伸ばす。この点線は、4分音符の全体の音価を表し、この下に書く例と比較するため。
ミッツ「この下にも、別な音符を書くけど、どれも、これ、4分音符と同じ時間だからね。いつものように、この横幅が、鳴らし続ける時間の意味だよ」
セット(2)、棒が上向きの、付点8分音符と16分音符のセット。その下に、音価の長方形。長方形は音価を4等分する線を書くが、付点8分音符は点線で区切る。音価の長方形の下には、棒が下向きの、16分音符を4つ、符桁で繋げる。
セット(3)、棒が上向きの、4分音符と8分音符の3連符。その下に、音価の長方形。長方形は3等分する線を書くが、3等分した左側2つの区切りは点線。音価の長方形の下には、棒が下向きの、8分音符の3連符、符桁で繋げる。
ヤッ子。ミッツが黒板に書いている間に、ミッツから演奏を頼まれることを予測し、ピアノの椅子に座る。
ミッツ「(3)の下の音符は、有名な『禁じられた遊び』だね。『ロマンス』っていうタイトルもあるよ」
ヤッ子。ピアノで、5小節くらい弾く。後でシャッフルと比較するので、少しテンポが速い。
ミッツ「ありがとうございます」
ステラ「ありがとうございます」
ミッツ「本当は、クラシックギターのソロ曲だけど、ヤッ子先生なら、ピアノで弾けると思いましたので」
ヤッ子。微笑みで応える。
ヤッ子。(2)の演奏を4回(4拍分)、(3)の演奏を4回(4拍分)。両方を何度か交互に弾く。左手がアルペジオで、右手は拍の頭だけ。
ステラ「これを、跳ねる感じにすると、紛らわしい」
ヤッ子。さっきと似た、(2)の演奏を4回(4拍分)、(3)の演奏を4回(4拍分)。両方を何度か交互に弾く。さっきと異なるのは、右手は拍の頭だけでなく、(2)は「タンタ」、(3)は「タンンタ」を、跳ねる感じにする。
ミッツ「どう、ステラちゃん。わかった?」
ステラ「はい、違いがわかりました」
ハル「3等分と、4等分の違いだから……12等分か!」背景に「3×4=12等分」が、輝いて表示。
ミッツ「素晴らしい! ハル、エクセレント、ハクビシン!」
ヤッ子「3等分と4等分は、どっちも「跳ねる感じ」で似ているから、ごっちゃになっていることもある」
ミッツ「跳ねる感じじゃない曲で、こだわって区別していることもあるんだよね」
ハル「例えば?」
ミッツ「よくぞ、聞いてくれた」歯をむき出しにした笑顔。
ヤッ子。ミッツにピアノを譲る。
ミッツ「しっかり拝聴しなさい」『月光』(ベートーベン)を弾き始める。1小節目の次は、すぐに5小節目に繋げる。
ミッツ「わかった? さっきハルが、タイトルを間違えた曲で、『月光』だよ、『月の光』じゃないよ」
ステラ「うーん、もうちょっと」
ハル「具体的に、楽譜が見たい」
ヤッ子「先に、説明用の黒板を見るのが、良いだろう。右手のメロディは(2)で、左手の伴奏は(4)だ」
ハル「あっそうか」
ミッツ。『月光』の5小節目の、3拍目と4拍目を、何度も繰り返す。
ヤッ子。黒板に改めて音符を書く。付点8分音符と16分音符のセットを、棒を上向きに。その下に、音価を表す長方形を4等分する図を書く。付点8分音符の音価は、16分音符3つ分に、点線で区切る。
ヤッ子。その下に、3連符の音価を表す長方形。その下に、3連符を、棒を下向きで。
ハル「やっぱり、12等分ですね?」
ヤッ子「早坂君は、理屈の理解が素早いな。1拍の短い時間を、12等分するのが、数学的だな」
ステラ「そんなの、不可能です」
ヤッ子「安心しろ。こんな無茶苦茶なことを、一般人には求めないから。蜜霧君は、幼少の頃からクラシック音楽に縁がある、特殊な人だからな」
ミッツ「それ、褒め言葉ですよね」
ヤッ子「もちろんだ。蜜霧君は、『幻想即興曲』が弾けるだろう? きっと、「なぜか弾けた」という経験ではないか?」
ミッツ「その通りです。どうしてわかるんですか?」
ヤッ子「早坂君は、練習してきちんと弾けるようになるだろう。12等分を忠実に」
ハル「ピアノは、勘弁してください」
ヤッ子「あはは、まあ、生徒それぞれを、推測してみただけだ。そっと紹介はするが、無理強いはしない。所詮、他人の心なんて、正確に把握するなんて無理だとは、自覚している」
▽ 場面変更 ● ── ●
下校中の生徒2人。
偶然にも、同じ時間(音符での音価)を、異なった等分をする話をしている。
生徒A「手拍子で、左手が2等分、右手が3等分を、同時にできる?」
生徒B「どういうこと?」
生徒A「まず、両手で普通に叩くと、こうだよね」自分の腹か胸を、両手で同時に、ゆっくり(80BPM程度)叩く。
生徒B「うん」
生徒A「右手だけ3等分すると……」左手はさっきのまま。右手だけ3等分になる。「……こうでしょ」
生徒B「うん、わかる」
生徒A「じゃあ、今度は、左手を2等分にすると……」同じテンポで、右手は3等分しないで、左手だけ2等分する。「……こうでしょ」
生徒B「うん」
生徒A「これを、左右で同時にする」
生徒B「えー、無理だよ。ちょっと、やってみるね……」やってみるが、混乱している。「……やっぱり無理」
生徒A「実はこれって、「トントコトン」で簡単なんだよ」
生徒B「トントコトン?」
生徒A。両手で同時にやってみる。
生徒B「本当にトントコトンだ」生徒Aに合わせてやってみる。ちょっと混乱するが、できる。
生徒A「できたじゃない!」2人で喜ぶ。
生徒A「でもね、叩きながら、突然、片手だけにすると、混乱するよ」
生徒B「叩きながらっと……」両手でトントコトンをして、急に片手だけになると、できない。「……本当だ、なんでぇ?」
2人で笑い合う。
▽ 場面変更 ● ── ●
さっきの続き。
音楽室、放課後。
ハル、ミッツ、ステラ、ショージ、ヤッ子。『月光』(ベートーベン)の、12等分。
ヤッ子「ところで、音価の誤りと言えば、早坂君、この曲は、どう思う?」さっき出した楽譜集から、『春の歌』(メンデルスゾーン)のページを開く。「これだ」
このページにも、手書きメモが、たくさんある。主にコードネームが手書きされている。
ハル「えーっと、これは「2/4拍子」だから……」背景に手拍子の楽譜。拍子記号から「4分音符」「2つ」の差し棒。その下に、8分音符2つを符桁で繋いだものを、2セット。
ヤッ子。2小節目の上段を指して「ここ、8分音符が4つで正解だが、右手でAさんとBさんの、2人分があるからな」楽譜が、AさんとBさんを色分けされる。
ここでは、1小節目のAさんに16分音符があるので、2小節目から確認するように指示したが、1小節目からの確認でも良い。
ハル「はい……。Aさんは正しい」背景に、大きく2小節目。「これは下向きの棒があるけど、玉を共有しているから、足し算しないのかな。足し算すると、溢れるし」
ヤッ子「ふふーん。いいねえ、様々な可能性を思い付くのは、早坂君が謎解きをたくさん練習したからだろうな」
ヤッ子「そして、どの可能性が当たりなのか、答えは1つだろうが、確認するまでは、全部の可能性は未確認状態だと認識している」
ヤッ子「だったら、次の小節はどうだ?」
ハル「えーっと。やっぱり、これも溢れる。ヤッ子先生、やっぱりAさんはぴったりなのに、Bさんは溢れます。これも、市販の楽譜なのに、誤りですか?」
ヤッ子「これは正しい。玉が小さい音符があるだろう、それを無視したら、どうだ?」
ハル「えっと、もう一度計算します」
ヤッ子「まだ慣れていないから、ゆっくり計算したまえ」
楽譜の、装飾音符が赤く点滅し、ゆっくり消えて行く。または、薄い水色になる。
ハル。「小さい音符を無視したら、ぴったりです」
ここまで、画面の一部に、楽譜を表示したまま。ハルが迷っている間、視聴者も確認するため。ずっと楽譜だけの画面なら退屈なので、ハル達の顔も表示する。
とはいえ、画面に表示された楽譜で確認視聴者もいるので、楽譜の表示を邪魔しない程度に、ハル達の顔を表示する方法が良さそう。
ヤッ子「そうなんだ。その、小さな音符は、「装飾音符」だ。音符の玉が小さいから「小玉」とも呼ぶ」背景に「装飾音符」と、そのフリガナ。「装飾」の部分を、ぼんやり色分けし、「飾りの意味」と指し棒。
近くに「俗称は「小玉」」と、フリガナも表示する。
ショージ。ステラに小声で。「普通の音符は、肉食音符」
ヤッ子。ショージに注意。「学んでいる最中の者に、嘘は言わないの」ショージの背景の「肉食音符」に×を付ける。
ショージ「棒が短く、玉も小さいと、ものの数ではないってことですね」
ミッツ。ショージに向かって。「冗談は面白いけど、いつでも喜ばれるとは限らないよ。今は真面目に学びたい気持ちが強い時だから、冗談はダメ。特に、下ネタや、下ネタもどきは、喜ばれるどころか、邪魔なだけ」
ヤッ子。無反応な普通の口調で「つまり飾りの音符ってことだ。歌でいえば、コブシが回るようなもんだ」
ハル「民謡や演歌の?」
ヤッ子「そう。蜜霧君、ちょうど、ピアノの前に座っているから、いいように扱って悪いのだか、これを、最初の部分だけでいいから、装飾音符無しで弾けるかい?」
ミッツ「あ、やってみます。そんな弾き方やったことないんで……」弾いてみるが、うまく弾けない。「……ああーん、やっぱり駄目です」
ヤッ子「済まなかった。みんな、蜜霧君の名誉のために言っておくが、いきなり、いつもと違う演奏は難しいもんだ」
ヤッ子。ミッツに代わって、ピアノの椅子に座る。
ヤッ子「私も挑戦してみるが、私が失敗しても、温かい目で見てくれ」テンポの乱れなく、弾ける。
ヤッ子「これが、装飾音符を無視した場合だ。早坂君、次は装飾音符も含めて演奏するから、今のテンポで、手拍子しながら、各小節の音価が正しいか、確認してくれないか。要するに、拍子が乱れないかってことだ」
ハル「はい」手拍子しながら、ヤッ子の演奏を聞く。
ヤッ子「どうだ? ぴったりだろう」
ハル「はい。綺麗ですし、なんだか誤魔化されているようです」
ヤッ子「ははは。メンデルスゾーンは、喜ぶだろうな」
ヤッ子「装飾音符は、しっかり鳴らすが、音価の足し算には含めない。ということは、どこかの隙間に、そっと潜り込ませるのが、装飾音符だ」
ハル「そっと潜り込ませるって、雰囲気はわかるけど、釈然としない」
ヤッ子。ピアノをミッツに譲り、黒板に大譜表。右手の段は、16分音符2個を符桁で繋げた装飾音符で「ドレ」の次に、4分音符の「ミ」。左手の段は、4分音符の「ド」だけ。
ヤッ子「これを弾いてみるが、弾き方には2種類ある」
ヤッ子「これとこれが同時の場合と」両手の4分音符同士を点線で繋ぎ「a」を添える。
ヤッ子「これとこれが同時の場合だ」右手の装飾音符の先頭から、左手の4分音符を繋ぐ、曲がった点線に「b」を添える。
ヤッ子。「a」を指して「これの場合は、装飾音符は、本当の手拍子よりも、少し早いうちに鳴らす」
ヤッ子。「b」を指して「これの場合は、普通の音符は、本当の手拍子よりも、少し遅く鳴らす」
ヤッ子「左手は、装飾音符が無いから、正しく手拍子のタイミングだ」
ヤッ子「右手は、装飾音符があるから、4分音符を左手と同時にするか、装飾音符を左手と同時にするかだ」
ヤッ子「説明するより、実際に演奏した方が納得できるだろう」手拍子を始める。
ヤッ子。手拍子を続けながら「蜜霧君、捲土重来だ。aを何回か連続して演奏してくれないか」
ミッツ「はい」演奏する。
ヤッ子。手拍子を続けながら「素晴らしい。今度はbを頼む」
ミッツ「はい」演奏する。
ヤッ子「バッチリだ」
ミッツ。aとbを、2回ずつ交互に演奏。「a」演奏。「b」演奏。「a」演奏。「b」演奏。
どちらの演奏をしているのかわかるように、画面の楽譜の白い部分を、aとbを交互に、ぼんやりピンクにする。
または、以下の工夫をする。
工夫の案1:楽譜を移動する縦の赤い線。赤い線が左から出現し、右に移動する。
工夫の案2:打鍵した瞬間、音符が赤くなる。
工夫の案3:太鼓の達人のように、打鍵タイミングが上から鍵盤に向かって来る(振り降りる)。打鍵タイミングが向かって来る時、指し棒も一緒に動いて「同時」「少し早い」「少し遅い」の図示。
工夫の案4:ピアノロールの長方形を用いる。手拍子の時刻の線も添える。
ミッツが、4回ずつ、交互に演奏する。ハルの顔が、どんどん晴れやかになる。
ハル「わかりました!」
ハル「本当なら、同時に鳴る音符は、縦を揃えるんですが、今は説明のために、「b」はずれた位置にしているんですね」
ヤッ子「ああ、そうか。そういった解釈もあるのか」
ハル「はい」
ヤッ子「早坂君は、「b」の楽譜は、こう書くのが正しいと考えているのだろう?」改めて、似た楽譜を書く。右手の装飾音符の「ド」と、左手の音符の、縦が揃っている。
ハル「そうです」
ヤッ子「確かに、このように書けば、「a」と「b」の、どちらの演奏をすべきか、明示できるな。しかし、小玉は楽譜上でも、そっと忍び込ませるんだ」
ショージ「つまり、棒が短く、玉が小さいのは、ものの数に入らないってことだ」
ヤッ子「こんな、ほんのちょっとの装飾音符でも、あるか無いかで、随分と雰囲気が違うもんだ。例えば、この曲はどうだ?」スマホを出して、曲を鳴らす。
鳴らす曲は、当アニメのBGM。装飾音符の多い曲。
ヤッ子「聞いたことがあるだろう?」
ショージ「どこで聞いたか覚えていませんが、凄く馴染みがあります」背景に「当アニメのBGMです」を表示する。
ヤッ子「これの装飾音符を無視したら、こうなる」スマホで鳴らす。背景に楽譜。差し棒で「この装飾音符を無視すると、こうなる」と示す。
ハル「聞き比べて、初めて気付きます。装飾音符が、いい感じですね」
ステラ「ファッションでも、小さなアクセサリーが、あるのと無いのとでは、随分と違います」
ヤッ子「ついでに言うと、装飾音符には、棒をカットするような線が、あったり無かったりする」
ショージ。慌てて股間を両手で護る。
ヤッ子「カットするような線があると、短前打音で「とにかく素早く」の意味。線が無ければ、長前打音で、装飾音符なのに「この音符の音価を使え」の意味」背景に「短前打音」と「長前打音」と、そのフリガナ。
ハル「なんでー?」
ヤッ子「などとなっているが、どっちの書き方でも短前打音を意味することもある」
ハル「これも、曖昧なんですか」
ヤッ子「言葉と似ているかな。時の流れと共に、言葉の使われ方が変わって、それが通用するようになると、辞書にも新しい意味と、元々の意味の、両方が載るようになったり。同じ辞書でも、版によって内容が変わることは、珍しくない」
ステラ「それで、さっきは、カットするような線が無くても、短前打音にしたんですね」
ヤッ子「そうだ。しかし、元々の意味も一緒に教えたから、私がデタラメを教えたとは思うなよ」
ステラ「ところで、aとbの、どっちが正しいんですか?」
ハル「そう、教えてください。演奏の違いがわかって、嬉しいんですから」
ハルとステラが、揃って晴れやかな笑顔。
ヤッ子。同じく、晴れやかな笑顔で応える。「どっちでもいい」
ハル。晴れやかな笑顔が、残念そうに固まる。「どっちでもいいって、ちゃんと教えてください」
ヤッ子「だから、決まっていないんだ。『春の歌』ではaで弾く。ショパンの曲は研究結果としてbだという話があるが、プロの演奏を聞くと、ショパンの曲でも、aの演奏もある」
ヤッ子「要するに、決まっていない。芸術であるから「正しい」「誤り」ではなく、どっちが面白いかだ」
ハル「じゃあ、『月の光』の2連符も、誤りではないんですか?」背景に、『月の光』の2連符の部分。
ヤッ子「ああ、あれか。はっきりした答えを知りたいか?」
ハル「はい! 知りたいです」
ヤッ子「よし、はっきり言おう。「わからない」だ」
ハル「そりゃ、逃げっていうことでしょう」
ヤッ子「責任逃れと思うこともあろうが、私が連符を決めたのではない。誰かが決めたのだ。だから、いくつかの資料を比較することと、それを紹介する以上に、できることはない」
ヤッ子「そもそも、専門家でも意見が分かれているんだ。私が決着を付けられるわけがない」
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