08_A__01_02 第8話 Aパート 分割 1 / 2
第8話 Aパート 分割 1 / 2
【 第8話 概要 】
サブタイトル:どっちがどっちだ?
OP曲前:ハルとショージの思い出。小学生の頃、ハルが手品をショージに見せ、眠らせない。
Aパート:タイ、スラー、レガート、付点。タイで小節を跨ると、浮気者や未練者になる。連符と『月の光』の誤り。牡丹餅とお萩。物体の過去の動きから未来予想が外れる。
CM明け:音楽の先生。自宅でメロン。ラップでくるんだ種を揉んで、妻に「好きだよ」。または、トロール将軍が「ゴメンネ」を教える。トロール将軍の妻が妊娠で「おめでとー!」の叫び。
Bパート:シャッフル、3連符、付点8分音符と16分音符。装飾音符は音価の計算はしない、同時か直前か直後か。3人下校時、ステラの芸術、蟻釣り、パズルの話。ハル自宅、ペットボトルのブローボトルがピィー。
Cパート:ショージがステラの自宅へ。ショージがハプニングを装い、ステラにキスし、胸を触る。ステラの背中(素肌)に氷の蔓植物が、ステラの体を這い、刺される。
予告:トイレのスリッパが温かくて、ミッツはヤッ子と女子トークで盛り上がり、みんなが止まってギロリと睨み合う。それより、ステラ、逃げろ!
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■■■■ 第8話。
▼ サブタイトル。 ▼── ──▼
どっちがどっちだ?
▼ OP曲前。 ▼── ──▼
OP曲前の定型。他の登場人物は知らない、過去の出来事。
ハル、小学3年生。ショージ、小学4年生。
ハルは家族旅行。列車の中で、ハルはトランプ手品の本を読み漁る。
鞄には、数冊のトランプ手品の本。
ハルの父親「少しは、外の景色を楽しまないか」
ハル「うん……」
ハルの父親と母親が、目を合わせる。
ハルの父親。ハルを見て。心の声。「(打ち込めるものがあるのは、いいことだな)」
ハルの父親。外の景色を見て。心の声。「(せっかくの家族旅行が、少し勿体無いが)」
旅館に着くと、偶然にショージ家族がいた。
偶然というのは、現実的でないので、現地集合の一緒に旅行でも良い。
両家族で、地元の風景を見たり、食事をしたり。
夜になり、父親同士は酒を飲み、母親同士は歓談。
ハルとショージは子供なので、夜9時になると、もう眠る頃。
ショージ「俺は、もう寝るぞ」ここでは「眠る」ではなく「寝る」とする。
ハル。手品の披露をしたいので。「もっともっと。次の手品は」
ショージ「いいかげんにしてくれ。あとひとつだぞ」
ハル「今度は……」手品の本から探す。
父親同士は、そろそろ部屋に戻ろうと、席を立つ。
ショージ。布団に入る。ハルが、まだ手品を見せようとする。
ショージの両親が部屋に入って来て、「いい加減に、眠りなさい。君も、お父さん、お母さんが待っているよ」
ハル「はーい」
▼ Aパート。 ▼── ──▼
放課後の音楽室。
ハル、ミッツ、ショージ。
ショージ「ハルの家族との旅行で……」
ミッツ「そんなことがあったんだ」
ショージ「いつまでも続く、終わらない、夏の夜の思い出」
ハル「隠微な言い方をしないで」
ミッツ「隠微な、夏の夜かあ」
ミッツ。『月光(ピアノソナタ)』の第1楽章(ベートーベン)を弾き始める。
ハル「『月の光』!」
ミッツ「残念でした」
ハル「ベートーベンだろ?」
ショージ「ベートーベンの『月光』だろ。『月の光』は、誰だっけ?」
ミッツ「ドビュッシーだよ」
ミッツ。『月の光』(ドビュッシー)を弾く。
ショージ「これが『月の光』。さっきの『月光』とは違う曲だ」
ハル「似たような曲名だから、どっちがどっちだか」
ショージ「それでも、クラシック畑でもないのに、すぐに曲名が言えるのは、大したもんだ」
ハル「昔から、ずーっと聞かされてきたし」
ショージ「昔から、ずーっと終わらない、夏の夜の思い出」
ミッツ。演奏を止める。「もう、うるさいなあ。ちゃんと聞きなさいよ」
ハル「そういえば、ずっと長く鳴らす音もあるな」
ミッツ「ペダルを踏んだら、ずっと音が鳴るけど。ピアノのカラクリのひとつで、鍵盤から指を離しても、音が止まらない」
画面上段の、左側に鍵盤と指、右側にペダルと足。画面下段には、ピアノが鳴っている音量をグラフ上に表示し、左側に流れ去る。
ペダルと足の部分には、文字を囲んだ「ペダルを離す」と「ペダルを踏む」が上下に並んでいる。足の状態に合わせ、該当する文字は少し大きく赤色、該当しない文字は少し小さく灰色にする。
ミッツ「鍵盤を、押して、離してを繰り返すから、ペダルを踏んでいるかを見てなさい」
ミッツ。時間の等間隔で、鍵盤を押して離してを繰り返す。鍵盤から手を離す時は、「ビクン」と驚くように、急激に離す。鍵盤を4回押して、ペダルを踏んで、鍵盤を4回押して、ペダルを離してを繰り返す。
ここで、ショージが「ペダルを踏むのを見る」と言い、ピアノの下に入り、ミッツのスカートの中を見ようとするのは、ショージが「ただの、下品な馬鹿」になるので、用いない。
ミッツ「わかった?」
ハル「うん、ペダルの用途はわかった。でも、俺が知りたいのは、こういうもの」
ハル。左手で、1つの鍵盤を押したまま、右手でメロディっぽくいくつかの鍵盤を鳴らす。
ミッツ「ああ、タイのことね。タイで繋がっていたら、いくらでも鳴らし続けるの」
ハル「タイ?」背景に、漢字の「帯」に、フリガナで「たい」と添える。和服姿の帯に、目立つように矢印。
ミッツ。ハルの背景にある想像を見て。「それは、「タイ」じゃなく、「おび」でしょ」ハルの背景の「帯」のフリガナの「たい」に、更に「おび」を加える。
ミッツ「音楽のタイは、「ネクタイ」のタイ」
ハル「ネクタイ?」さっきの想像の絵の、和服の帯がほどけて、首に巻き付く。
ミッツ「だから、帯(おび)じゃないって言ったでしょ」
妖精ちゃんが、ハルに耳打ちする。何かを教える。
ハル「ああ、そうか。「おび」は「帯びる」という使い方もあるから、こうなんだよね」背景に、「電気を帯びる」と「帯電」、「刀を身に付ける」と「帯刀」、「持ち歩く」と「携帯」、「このあたりの時間」と「時間帯」などを表示する。
ハル「あれ? 楽譜の「タイ」と同じだな」
ミッツ「違うって。楽譜の「タイ」は、英語で、「繋がり」「結ぶ」の意味なの」ハルの背景の「帯」を蹴散らすように、「necktie」の文字が出現。「neck」の下に「ネック」と「首」、「tie」の下に「タイ」と「繋がり」を表示。
ショージ。書棚をあれこれ探していたが、1冊の楽譜集を持ち、二人に近付く。
ショージ「つまり、ハルの言いたいことは、こうじゃないか? ネクタイは、人と人の繋がりだって」背景に想像図。ショージとステラの首が、ロープで繋がっている。
ミッツ。ショージの想像図を見て。「ショージの空想は、洒落にならないね」
ショージ。『月の光』の楽譜を探し出す。「ほれ、『月の光』。ハルが間違えたタイトルの曲」
ミッツ「あ、ありがとう。ああ、結構、書き込みされてるね。先輩達かな」楽譜には、曲想、ト音記号の高い加線の多い音に音名(イタリア語をカタカナで)、「いそがない」などが、手書きされている。
ミッツ「ここ、これがタイ。タイがあれば、鍵盤を改めて弾くことはなく、押さえたまま」
ハル「その前に、何だ? この、髪の毛だらけの楽譜」
ショージ「まあ、髪の毛を掻きむしりながら、演奏するってことだな」
ミッツ。ショージを無視して「それじゃあ、順番に、音価の話から」黒板に、第2話と同じ、音符の音価の長方形の図。上から下に向かって、全音符から8分音符まで。
後で、付点の音符を書き込むために、全音符と2分音符の間など、それぞれの間に、隙間を用意しておく。
書いている途中に、背景に「音価」の文字と、そのフリガナと、指し棒で「音を鳴らし続ける時間」を添える。
ミッツ「この、音符の種類によって、音を出し続ける時間が決まっているのは、わかるでしょ」
ハル「ああ、覚えている」
ミッツ「そこで、付点。玉の右側に、点が付いていたら、音価が長くなる」背景に「付点」と、そのフリガナ。
ショージ「ちょっとお得な、1.5倍。増量50%」
ミッツ「「1.5倍」というより、「プラス半分」の方が良さそう。なぜなら、音符そのものが、半分の半分のだから」黒板の2分音符の長方形を延ばす。
ミッツ「このように、2分音符に付点が1つなら、2分音符の半分が延びる」
ミッツ。2分音符の上に、付点が1つの2分音符を、更にその上に、付点が2つの2分音符を書き加える。音価の長方形も書く。
ミッツ。4分音符の上に、付点が1つの4分音符を、更にその上に、付点が2つの4分音符を書き加える。音価の長方形も書く。
ミッツ。8分音符の上に、付点が1つの8分音符を、更にその上に、付点が2つの8分音符を書き加える。音価の長方形も書く。
ミッツ「どの音符でも、付点が1つなら、半分長くなる。付点が2つなら、更に、半分の半分長くなる。付点が3つなら、更に、半分の半分の半分長くなる」黒板の長方形を延ばす。
ミッツ「付点があれば、音符が1つだけでも、音価が延びるので、その分は、他の音符の音価を短くする」
黒板に「4/4拍子」の簡単な楽譜。「2分音符が2つ」「付点2分音符と、4分音符」「付点2つの2分音符と、8分音符」「付点3つの2分音符と、16分音符」
ミッツ「どれも、音価を足すと、1小節の時間である、4分の4になる」
ミッツ「付点はもちろん、休符に付けることもできる。音符だろうが、休符だろうが、時間は平等に流れる」
ハル「ツェノンの逆説(ゼノンのパラドックス)みたいだな」
ミッツ「ツェノン? ツェルニーじゃなくて?」背景に注意書き「ツェノンとツェルニーは、どちらも人名で、別人です」を表示する。
ハル「いや、ツェノンだ。それはいいとして、理屈はわかったけど、それって、何の役に立つんだ?」
ミッツ「音符を書く手間が減る。ということは、ごちゃごちゃしてないから、楽譜が読みやすい。これと同じ意味を、タイを使って書くと、こうなる」
ミッツ。さっきの「4/4拍子」の簡単な楽譜に並べて、付点の代わりにタイを使った書き方を加える。
ミッツ「タイの意味が、わかった?」
ハル「要するに、繋げるってことだろ」
ミッツ「エグザクトリィ(その通り)。しかし、演奏する側から言うと、鍵盤を弾き直さないってこと」
ミッツ。付点の代わりにタイを使った楽譜に並べて、タイを消した楽譜を書き加える。タイのある楽譜と、タイを消した楽譜の下には、それぞれに、音価を表す長方形。
ミッツ「これを見て。タイが無ければ、音価の長方形の区切りで、鍵盤を弾き直すよ」
ミッツ。長方形の左端から、拍に従って黒板をコツンと叩き、右に進む。同時に、演奏を表すために「ポーン」と歌う。手が右に移動すると共に長方形の色が変わる。
ミッツ。拍に従って、黒板をコツンと叩くが、長方形との区切りでなければ「ポーン」を言い直さない。長方形の区切りだけ「ポーン」を言い直す。
ミッツ「このように、タイが無ければ、鍵盤を弾き直す」
ミッツ「これに対し、タイがあれば、長方形の区切りは、こうなる」タイのある楽譜に添えてある長方形は、長方形の区切りが点線になっている。
ミッツ「それぞれの音符の音価は、長方形で表すけど、タイで繋がっているから、点線で表現したよ。これを演奏すると、こうなる」
ミッツ。同様に、黒板を叩くのと、「ポーン」で表現する。手の移動に合わせて、長方形の色が変わるのも、さっきと同様。
ミッツ「タイは、こうして、鍵盤を弾き直さないっていう記号。タイを使わず、付点を使う曲も多いから、楽譜の見た感じで過去の経験を思い出して、曲調がわかりやすい」
ミッツ。ショージに向かって。「ショージ、頼んだよ」指をパチンと鳴らす。
ショージ「俺は妖精ちゃんか」
ショージ。ピアノで、両手で簡単な演奏。『ハンガリア舞曲第5番』(ブラームス)、『ユーモレスク』(ドボルザーク)。どちらもサンプルで2小節程度。『ユーモレスク』は、だらしない3連符の「ドーレドーレミーソラーソ」の演奏。
この、ショージの「だらしない3連符」は、「付点と3連符の、僅かな違い」の伏線。
ミッツ「そう、そんな感じ」黒板に「4/4拍子」の簡単な楽譜。
ミッツ「この楽譜を見ただけで、「あ、あの曲に似ているのかな」と思い出して参考になる。よくよく楽譜を読んだり、実際に演奏して、どう似ているのか、どう違うのか、確認できる」
ショージ「楽譜を、ぱっと眺めた時、曲調の推測をすることは、よくあるんだ」
ヤッ子。先刻から、廊下で話を聞いていた。ドアを開けて、話に合流する。「そう、実際に演奏して、その「人となり」のような言い方をすれば「曲となり」を知るんだ」
ヤッ子に続いて、ステラも入室。
ヤッ子「蜜霧君が言ったように、過去の経験は参考になり、実際に演奏して、どう似ているのか、どう違うのか、確認できる」
ショージはステラに、今は何の話をしていたのか、丁寧に教えている。肩を寄せての説明、立ってステラと一緒に黒板の近くに行き説明。ステラは喜んで、後ろ姿の頭部の周囲に、たくさんの花や、不気味なメルヘンのキャラクターがキラキラ。
ショージとステラの声は聞こえないが、話していることを表現するために、吹き出しで音符や何かの絵を表示したり、ショージが花を咲かせたりする。
ヤッ子「これは、人との出会いと似ている。第一印象は大切だが、それに固執していると、その後の付き合いで、勿体無いことになる懸念がある」
ヤッ子「曲だったら何度も演奏し、人だったら何度もその人と会い、少しずつ理解を深める……なんてことは、君達には、わかり切っているだろうな」
ショージが何か冗談を言ったのだろうか、ステラが笑いながらショージを叩く。
ステラの可愛さに、ショージが見惚れる。
ショージ。心の声。「(ああ、ステラ様、あなたは可愛さの女神です。僕は今、いけないことを想像しています)」
ヤッ子。ショージ達に「おおーい、次の話に進んでいいか」
ショージ達「あ、はい、いいです」
ミッツ。ハルに教える。「これまでは、1つの音符で音を出し続ける時間を指定して来たけど、タイを使えば、もっと自在になるんだよ」
ハル「いよいよ、本番だな」。
ヤッ子。ハルの後ろで、ニンマリする。
ミッツ「自在なのに、方法は原始的。タイで繋げるだけ」楽譜『月の光』(ドビュッシー)の、1小節目の左手のタイを指す。
ミッツ。楽譜を指しながら、ピアノ。「これを弾いて、次の音符を弾く時刻になっても……」ミッツが指で辿ると、現在時刻に合わせて、楽譜の紙の色が変わってゆく。「……鍵盤は押さえたまま」
ミッツ「タイが無ければ、改めて鍵盤を弾き直す」
ミッツ「こうすれば、付点を使っても不可能な長さを指定できる」黒板に、2分音符と8分音符を、タイで繋げる。
ミッツ「どう? これは、付点を使っても表現できないでしょ」
ハル「付点……っと、ああ、本当だ」
ハル。『月の光』の楽譜を見ながら。「次の小節に続くタイもある」
ミッツ「トレビアン! そうだよ。音符の音価は、足し算して、1小節の中でぴったりだけど、タイを使えば、小節を跨ることもできるの」楽譜を表示する。小節を跨ったタイに、「これも鍵盤を押さえたまま」の差し棒。
ミッツ「タイの最大の利点は、付点を使っても表現できなかった時間だって、タイを使えば自在。しかも、1つの音符では不可能な、隣の小節にまで繋げることができる」
ヤッ子「以上の、蜜霧君の話でわかった通り、タイには、立場によって2種類の意味合いがある」
ハル「2種類?」
ミッツ「演奏方法が変わるんですか?」
ヤッ子「演奏方法は変わらないが、意味合いが2つ、ということだ」
ヤッ子「蜜霧君は、さっき、演奏する立場としては、弾き直さないと言ってくれた。これが、立場の一つだ」
ヤッ子「もう一つは、作曲する立場だ。東海林君、協力してくれないか」
ここから、「掛留」「係留」と、「先行音」「先取音」の話になるが、この用語は、ここでは用いない。
第9話で「Csus4」は「Cの仲間なのに、ミ♯ではなくファなのは、なぜか」の質問への返答で、ここからのショージのポーズの話と共に、用語も教える。
ショージ「はい。え? 何を?」
ヤッ子「ここに立ってくれ」ミッツとステラの、中間位置を示す。黒板の前の、左右の中央位置。
ヤッ子「蜜霧君と、星山君は、もう少し離れてくれ」
ヤッ子「さて、東海林君。恋愛もののミュージカルのように、腕を伸ばして、星山君に愛を告白する格好をしてくれ。説明のポーズだから、余計なことは言わないでくれよ」
ショージ。言われた通りのポーズをする。
ヤッ子「では、蜜霧君の方に、一歩だけ近付く。すると、今度は蜜霧君の方を向いて、同じポーズをしてくれ」
ショージ。言われた通りのポーズをする。
ミッツ。面白くて笑っているが、嬉しくないことを表すように、片頬で笑い、眉は「ハ」の字。
ヤッ子「立っている場所が、星山君と蜜霧君のどちらに近いか、近い方の相手に、そのポーズをすることになっている。一歩ずつ、交互に立ち位置を変えてくれ」
ショージ「はい、わかりました」言われた通り、立ち位置を、ピョンピョンと交互に変えながら、ポーズを繰り返す。
ヤッ子「早坂君。普通は、このように、立ち位置と向きは、明確になっている。音楽に譬えれば、和音、つまりコードの変わり目と、メロディの変わり目が、一致している」
ハル「うーん、そうですね」今一つ、納得できない。
ヤッ子「では、これはどうだ。東海林君、今度は、立ち位置を移動した後、体の向きを変えるのは、体の下の方から上に、順番に、脚、胴体、腕、そして、顔を最後に向きを変えてくれ。顔が最後に向きを変える。ゆっくり、3回くらいでいい」
ショージ。言われた通りにする。
ヤッ子「どうだ、東海林君は、未練がある動きに見えるだろう」
ハル「はい、見えます」
ショージ「見えるのか?!」
ヤッ子「東海林君。今度は、今の動きの逆再生のように、最初は顔から向きを変え、腕、胴体、脚、そして最後に立ち位置の移動をしてくれ」
ショージ。言われた通りにする。
ヤッ子「どうだ、東海林君は、浮気者に見えるだろう」
ハル「はい、見えます」
ショージ「見えるのか?!」
ミッツ。大笑いする。
ヤッ子「これが、振付する立場で、音楽では作曲する立場だ。作曲の時には、このようなことも考慮する」
ヤッ子「これを拡張して、組み合わせのグラデーションにできたりする。作曲の小ネタである音楽理論の、組み合わせのグラデーションは、第12話で、音楽の先生が話すから、楽しみにしてくれ」
ハル「はい。なるほど。コードが変わる区切りを跨るように、タイを使えて、「次のコードになっても、少し音を残す」と、「まだ前のコードのうちから、次の音を始める」という指示ができるんですね。組み合わせですね」
ミッツ「それに従って演奏すると、ショージのように、未練のある男や、浮気癖の男になるんだ」
ショージ。ステラに向かって。「違うよ! 僕はただ、踊らされていただけだ!」
ミッツ「演奏する人も、楽譜を正確に演奏ということもあれば、工夫して楽譜を書き換えることもありますね」
ヤッ子「あるな」
ミッツ「振付師と演者が、はっきりと役割が分かれていなくて、演者が振付を工夫することもありますね」
ヤッ子「そうだ。さっきの私の言い方なら、2種類の意味合いが、互いに不可侵、明確に分かれているように聞こえたと思うが、振付師と演者、作曲者と演奏者、お互いに、相手の感性を持つのも、良いと思う」
ハル。話が落ち着いたので、改めて楽譜を見る。
ハル「あれ? これって、全音符じゃないのか?」10小節目を指す。
ショージ「全音符?」
ハル「これ、左手の音……価? 4分音符と、付点2分音符を足したら、全音符と同じ時間だよな。全音符の方がシンプルなのに、どうして、わざわざ分けて、タイで繋げるんだ?」
ヤッ子。期待で微笑んでいる。心の声。「(さすが早坂君、よく気付いたな。でも、あれとあれは、気付くかな?)」
ショージ「ステラちゃん、来てごらん。ここ、全音符と同じ音価なのに、どうして分けているの?」
ステラ「え? だって、上に合わせたから?」
ショージ「素晴らしい、エクセレント、ブリリアント、ヘモグロビン」各単語は、不格好な発音で、最後から2番目の文字(または音)にアクセントを付けて、少し伸ばす。「ブリリあーーント」のように。
ピアノの椅子にはミッツ、右隣にはハル。ミッツの左後ろにはショージとステラ。ショージは楽譜に腕を伸ばす。4人で混雑しているので、ヤッ子は楽譜が見えない位置で微笑んでいる。
ヤッ子「そう、この曲は、「9/8拍子」で、手拍子はこうなる」
ヤッ子。手拍子。8分音符が3つずつ、わかりやすいアクセントあり。声で数えながら、「9」まで数えて、2小節分。声で数える時、1から9の数字の表示が、色変わり(1、4、7が別な色)するのも良い。
ショージ。黒板に、手拍子の楽譜を書く。左端には拍子記号も書く。8分音符3つを符桁で繋げたものを、3セット。
第2話と同様に、拍子記号の「8」と「9」を、手拍子の音符と連携する線と、説明の文字も添える。妖精ちゃんが手助けしても良い。
ヤッ子「棒が上向きと下向きで、手拍子の区切りが紛らわしくなるなら、見やすいように書く場合もある」
ショージ。小声で。「棒が、上向き」少しニヤニヤする。
ミッツ。10小節目を指す。「右手でAさんとBさん、左手でCさんとDさん」楽譜。説明しやすくするため、大譜表の上段(右手の段)と、下段(左手の段)の間隔が広がり、4声を4色で色分け、指し棒で「Aさん」など。
ミッツ「第2話で教えたように、符桁や休符は、見やすいようにするよ。見やすいってのは、手拍子の区切りと合わせる方法もある。ここでは、AさんとBさんが似ているって形になったよ」
ハル「なるほど。全音符ならシンプルだと思ったけど、Aさんが手拍子の区切りに合わせているから、Bさんもそれに合わせたのか」
ヤッ子「作曲する立場から言えば、全音符を分けたのではなく、手拍子に合った音符を書いて、タイで繋げたら、偶然に全音符と同じ音価になったんだ」
ミッツ「両手だけで、4人分の声部を演奏する。4人とも、全員が、音価は1小節にぴったりとなる」背景に「4人分だから「4声部」と言います」の文字と、「声部」には「せいぶ」のフリガナ。
ハル「あれ? Dさんの音価は、足りないんじゃないか? だって、付点2分音符だけじゃ……ホラ、ここと違う」3小節目と比較する。
ミッツ「そんなわけないでしょ。あれ、ホントだ。ヤッ子先生、これって、間違い?」
ヤッ子「そうだ。よく気付いたな。音価を足しても、付点4分音符が1つ分、少ない。この曲の楽譜には、他にも誤りがあるぞ」
ミッツ。一人で楽譜を手に取り、探す。「見つからないよ」
ヤッ子。ニヤニヤする。「東海林君。連符の話をしてくれないか」
ショージ「連符は、ギュウ詰め!」
ハル「ギュウ詰め?」
ショージ。ハルに抱き着き「ハル君、好きー! じゃなく」
ショージ「3等分、5等分するのに使う。6等分とか、7等分とか、自由に時間を等分する」
ハル。ショージに向かって。驚いて尋ねる。「7等分なんて、できるんですか? ややこしそう」
ショージ。ミッツに向かって。わざとらしく尋ねる。「7等分なんて、できるんですか? ややこしそう」
ミッツ。急に尋ねられて、驚く、誤魔化すように答える。「え? 7等分? もちろん、うん、できるよ」言っている途中から、目を、斜め上に逸らす。
ヤッ子「7等分は、ショパンの『雨だれのプレリュード』に、あるだろう」背景に、『前奏曲 変ニ長調 雨だれ Op.28-15』(ショパン)の、4小節目を表示する。
ミッツ。急に偉そうな態度になる。「できるよ。当たり前でしょ!」立ち上がり、偉ぶった仁王立ちをする。
ミッツ。黒板に向かう。「音符は、半分の半分の……だけしかないから、3分の1を指示するために、連符がある」黒板に2分音符。
ミッツ「全音符の2分の1の時間は、2分音符。全音符の半分の半分、つまり4分の1時間は4分音符。その中間の、3分の1の音符が無いから、2分音符を3つ書いて、「3」を添えれば、3連符のできあがり」
この部分がわかりにくければ、「全音符の時間の、2分の1は2分音符、4分の1は4分音符。その中間の3分の1を表す音符が無いので」でも良い。
ミッツのセリフに沿って、画面には図形が書き加えられる。画面が室内に戻った時には、同じ図が黒板に描かれている。
ハル「8分音符じゃだめなのか?」
ミッツ「8分音符なら、足りないから、ギュウ詰めにならない」
ハル「5連符は?」
ミッツ「2分音符が5つなら、ギュウ詰め過ぎる。8分音符が5つなら足りない。4分音符が5つならちょうどいいギュウ詰め。だから、4分音符に「5」を添えて、5連符にする」
ミッツ「どの連符でも、「ギュウ詰め過ぎない」「足りなくない」の音符を使う」
ショージ「つまり、「ギュウ詰め」が良くて、「ギュウギュウ詰め」は駄目ってことだな」
ステラ。わかりやすいショージの言葉に、驚いて目を丸くして、笑う。
ショージ。ステラに向かって、鼻から、花を連続発射。
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