06_A__03_04 第6話 Aパート 分割 3 / 4
第6話 Aパート 分割 3 / 4
【 第6話 概要 】
サブタイトル:音楽を自由に楽しんで、何が悪い!
OP曲前:ヤッ子の姉、鍵宮美音(かぎみや・みね)が、ポップスのバックバンドのコンサートに急遽の出演依頼を受け、失敗。クラシック音楽の基礎はあるが、ポピュラー音楽は経験が無いため。
Aパート:ジャズを簡単に書き直す。シャッフル記号とスウィング。フォルテシモでショージが抱き着く。sfz。長調と短調のジェンダーを宇宙人に教える。「シ、ド」でツナ缶効果。ロックは揺れる。教会旋法。ステラの海老逃げ。
CM明け:左手がテンポ、右手がメロディを叩くのができない。
Bパート:ステラがヤッ子に、吹奏楽の相談。ヤッ子が、姉である鍵宮美音(かぎみや・みね)の話をする。ピアノは好きではないが、継続を強制され、できない仕事を強制され、投身自殺。
Cパート:将来の夢は世界征服。若いなら何でも。シメジ婆さんが言ってた。夢がたったひとつなら、叶わなかったら悲しいね。夢がたくさんあれば、どれかひとつでも叶えば嬉しいって。
予告:猫の肉球がプニプニで、ハルは突然すごくギターが上手になり、ヤッ子がモーツァルトに一喝。酔っぱらっちゃったぜい、ぐでんぐでんだー。
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▽ 場面変更 ● ── ●
音楽室。さっきの続き。
ステラから、長調と短調の質問を受けて、ヤッ子が説明を始める。
ヤッ子「1オクターブの中には、ピアノの白鍵と黒鍵を合わせて、12の音があるのは、知っているな」
ステラ「はい。13番目は、また1番目と同じになるんですよね」
背景に鍵盤を3オクターブくらい表示する。中央当たりの1オクターブに、「1」から「12」を記す。「13」は「1」と同じ、ここから、白鍵と黒鍵の並び方のパターンは、「1」からになると説明。
ヤッ子「「1」から「12」の中から、「よく使う鍵盤」の選び方は、数えきれない程あるな」
ハル「数学では、2の12乗だから、……、たくさん」
ヤッ子「そうだ。数ある「選び方」のうち、最も多く使われている選び方が、「長調」と「短調」だ」
ステラ「「長調」と「短調」って、鍵盤の選び方の名前なんですか?」
ヤッ子「そうだ。選び方の名前なのに、「なになに式」や「なになに型」とは呼ばず、「長調」「短調」と呼ぶのだ」
ヤッ子「どの鍵盤が選ばれたのか、音符を順番に並べると、階段状になるから「音階」だ。長調の音階なら「長音階」で、短調の音階なら「短音階」というわけだ」
ステラ「先輩から。「長調」と「短調」の、どっちなのか、二者択一で聞かれるんですが」
ヤッ子「たくさんの選択肢なら、回答が難しいだろう。先輩が星山君に聞くということは、学びの促しなのだろう。だから、選択肢を少なくしたのだろう」
背景に、音階の名が、いくつか飛び交う。「ブルーノート」「教会旋法」「全音音階」「五音音階(ペンタトニック)」「琉球音階」「都節」などなど。
ステラ「なるほど」
ヤッ子「ただし、乱暴な分類をすれば、「長調」と「短調」以外の曲も、「長調」と「短調」のどちらかに集約できそうだが」
ステラ「そうなんですか?」
ヤッ子「乱暴な分類だからな。例えば、『グリーンスリーブス』は、ニ短調の曲で、調号で、シに♭があるのに、わざわざ臨時記号でナチュラルにしているな」
ハル「そうでしたっけ」
ヤッ子「この曲は、実は、長調でもなく、短調でもない。教会旋法のうちの、「ドリア調」なんだ」
ミッツ「教会旋法って、白鍵だけを使うものですか?」
ヤッ子「よく知っているな。教会旋法は馴染みが少ない人も多いから、こうして例を出すと、納得できるだろう」
ヤッ子「鍵盤の「D」が主音の短調である、「Dマイナー」「ニ短調」で楽譜を書くと、シに♭を付けることになる。「ドリア調」と「ニ短調」は、別なものだが、このように長調や短調の調号を使うと、わかりやすい」
ヤッ子「わかりやすいから、「ドリア調」と「ニ短調」が似ているから、「ニ短調の仲間」という印象で、「長調」と「短調」のどちらかに集約という、乱暴な言い方をした」
ドリア調とニ短調の違いは、第10話で「音階は、どこから始まるか」と似ている。
ヤッ子「「長調」と「短調」は、別なものだが、早坂君の、今の状態は、音楽の研究ではなく、楽典の謎解きをしているから、長調や短調の調号を使った方が、わかりやすい。その例が、『グリーンスリーブス』なんだ」
ヤッ子「性別の話にすると、何かの、記入する書類で、性別は男女のどちらかを選択するものは、今もあるだろう。「その他」や「回答しない」の選択肢が用意されることもあるが。しかし、トイレは男女の二者択一が多い」
ヤッ子「性別と同様、音楽も「長調」と「短調」のどちらかとすることはあるだろう」
ステラ「それは、乱暴ですね」
ヤッ子「乱暴ではあっても、自分や、自分の周囲で、実害が無ければ、気付かないこともある。世の中の「知っておくべきこと」のうちの、ひとつであり、あらゆる「知っておくべきこと」を知っている人は、いないんじゃないかな」
ステラ「そう言われたら、そうですね」
ヤッ子「ライオンは、オスにたてがみがある。鹿は、オスに角(つの)がある」
ステラ「はい」
ヤッ子「小さな子供には、簡単に教えると、理解しやすい。だから、動物はオスとメスに分けられて、人間もそうだと教える」
ヤッ子「大雑把に分類することで、わかりやすく、馴染みやすい。動物に限らず、音楽でも、曲には長調と短調の2種類があるという、大雑把な分類なら、馴染みやすい」
ステラ「動物の雌雄は、見た目で見分けたり、行動で見分けたりします。曲にもあるって聞いたので」背景に「動物の雌雄」の「雌雄」にフリガナ「しゆう」。「雌雄」の「雌」に差し棒で「メス」、「雄」に差し棒で「オス」を添える。
ヤッ子「まずは、大雑把な分類で理解をしながら、「そうとは限らない場合もある」という知識も添えておく。これで、「この分類だけ」の誤解を避けられる」
ハル「それって、ショージさんの好きな余談が、後々、重要ということですね」
ヤッ子「曲は、色々な終わり方があるな。「ああ、終わった」という感じで終わったり、「なになに……なんだけど」と、含みを持たせた終わり方。空中に放り投げたような終わり方」
ステラ「はい」
ヤッ子「西洋音楽で、「ああ、終わった」という感じがするのは、「完全終止」と名前があり、完全終止には2種類ある。それが、長調の終わり方と、短調の終わり方だ」
ヤッ子「いくつかの条件というか、特徴というか、わかりやすく目立つことでは、メロディが「ド」で終わる長調と、「ラ」で終わる短調の、2種類なんだ」
ハル「え? 「♪さくらー、さくらー」って、ミで終わりますよね」
ヤッ子「おおっ、よく知っているな」
ハル「はい、何となく」
ヤッ子「そうなんだが、日本の音楽は、西洋音楽とはジャンルが違うから、『さくら』を「完全終始ではない」とは言えないな」
ステラ「じゃあ、今は気付かなかったふりをします」
ヤッ子「そうだな。学んでいる最中だから、まずはシンプルな例で、納得しておこう」
ステラ「では、「ド」で終わるか、「ラ」で終わるかで、簡単に長調か短調かって思えばいいんですね」
ヤッ子「まずは、そうだ。そこで次に、メロディ以外の話もしよう。何が長いのか、短いのかという、名前の由来だ」
ステラ「そう、それです。「ド」「ラ」の音と、「長調」「短調」って単語が、繋がらないんです」
ハル「繋がらないから、無味乾燥な「暗記しよう」で、面白く感じない」
ステラ「そうなんです!」
ヤッ子「安心しろ。ここから、繋がりを話すから。繋がりがあることで、早坂君の好きな「謎解きの納得」になるから」
ステラ「早坂さんは、そうやって勉強なさっているんですか?」
ハル「そうなんだよ。そうじゃなきゃ、覚えられないし」
ヤッ子「長調と短調の違いは、定義はあるけれど、はっきりと分けられない曲も多い」
ヤッ子「明確に「どちらかだけ」なんてものではないのは、文系と理系と同様だな。美術は文系だが、遠近法という理系が用いられ、それを知った上で逆らったら面白かったという文系もある」
ステラ「長調と短調も、はっきりと分けられないんですか?」
ヤッ子「星山君、君は、宇宙人に詳しいかね?」
ステラ「え、いいえ、私はどちらかといえば、生物学が好きです。もちろん、地球上の生物で」
ヤッ子「そうか、ちょうどいい。では、もしも宇宙人から、こう問われたら、どう答えるか。「地球人は、男と女がいるそうだが、どう違うんだ?」と」
ステラ「宇宙人にですか? 会ったことがないので」
ヤッ子「女好きの東海林君はどうだ? 君の考える女とは何だ」
適宜、注意書きを表示する「※この会話は、各登場人物のキャラ設定です。」
ショージ「女は、子供を産んで、優しくて、力が弱く、たおやかで、ええーっと……」
ヤッ子「それは、女の定義かい?」
ショージ「定義と言うか、特徴と言うか」
ヤッ子「では逆に、星山君に聞こう。君の考える男とは?」
ステラ「ええーっと、ふと気付いたら、いつもあたしをジロジロ見ている」
ミッツ「それは、ステラちゃんが可愛いからだよ」
ステラ。海老逃げ(両手を前に突き出して、後退り)する。「そ、そ、そんなー」
ショージ「本当だよ、ステラ様」ステラに向かってひざまずき、『ロミオとジュリエット』のような仕草。
ミッツ「ジロジロ見たり、言い寄る人だけでなく、そのうち『竹取物語』のように、貢物が来るようになると、ただでは済まない状態に追い込まれそう」
ヤッ子「その通り」
ヤッ子「では、蜜霧君は、男をどう思う?」
ミッツ。無表情で。「バカ」自分で言っておきながら、自分で笑って吹き出し、鼻水が出る。
ハル「何だよ、俺のことか?」
ミッツ「まあ、ハルもそうだけど、男って恋愛はわからないのに、すぐにその次に行くことばっかり考えてる」
ミッツ、ショージを横目で見る。ショージ、ステラに向かって、大袈裟に首を振り「俺は違うよ」を伝えようとする。
ヤッ子「では、早坂君にとっての女とは?」
ハル。淡々と話す。「ずるい。弱さを利用したずるさは、究極の強さ」
ハル。ミッツに背を向けているが、チラチラとミッツを横目で見る。
ハル「裏の顔は、尊大な態度で、人を奴隷扱いするのに、表の顔は可愛い淑女を演じるしたたかさ。自分の得になる人には甲斐甲斐しく尽力し、あどけない表情で不器用を装う……」
ハルの背景に、ハルにとってのミッツの思い出を表示する。ミッツのいくつかの表情。無邪気な可愛さのポーズ。仕掛けたいたずらに、後が楽しみと、ほくそ笑むどころか、ケラケラと笑う。
ミッツ。ハルの目線に気付き、殴りかかろうとするが、ステラとショージが引き止める。
ヤッ子「みんな、それぞれ、色々な考えがあるな」
ヤッ子。画面の正面に向かって。「この場面をご覧の皆様、これらのセリフは、アニメの登場人物である中学生のキャラ設定ですので、目くじらを立てないように、お願いします」
ステラ。ミッツに向かって。「「目くじら」って何ですか?」
ミッツ「怒るってこと。だから、「怒らないでください」ってこと」
ハル「「目くじら」って言葉を使うんだから、大人に向かっての呼び掛けだね」
ヤッ子「さてと……」再び、4人に向かう。「……俗に、男っぽい、女っぽい、男らしい、女らしいなどと言うのは、ジェンダーというか、期待されているお約束事だ、わかってんのか、お前ら!」
ヤッ子の強い口調に、みんな怯える。
ヤッ子。急に甲高い声で「いやっ、虫、虫ーー!」何度も飛び上がる。
一同は、驚きながらも、笑う。
ヤッ子「虫というのは冗談だが、早坂君、私がこんな声を出したら、意外か?」
ハル「はい、そうですね」
ヤッ子「もしも、今のような声を、トロール将軍が出したら、どう思う? おかしいか?」背景に、トロール将軍の全身。体育教師だとすぐにわかるような、ジャージで首から笛をぶら下げている大男。ここではまだ、美術教師だとは明かさない。
ハル「おかしいです」
ヤッ子「初めて、この学校でトロール将軍を見た人は、体育教師だと思うだろう。見た目での推測が外れる、身近な例だな」
ステラ。ハルに小声で。「確かに、トロール将軍って、てっきり体育の先生だと思っていました」
ハル。ステラに小声で。「ジャージと、首から笛でも、体育の先生ではないっていう、見た目の推測とは違う例だな」
ヤッ子「日本人っぽい顔と、外国人っぽい顔。日本人っぽい名前と、外国人っぽい名前。日本人っぽい話し方と、外国人っぽい話し方。予測が外れることもあるな」
ヤッ子「男の特徴、女の特徴、親の特徴、大臣の特徴、僧侶の特徴。それぞれ、何となく期待している人間像がある。世の中の物語は、その期待像に沿っていたり、沿っていなかったりで、泣いたり笑ったりする」
ヤッ子「怪力の女や、子供を虐待する親を物語で描くことで、泣いたり笑ったりするのは、前提として期待像があるからだ」
ヤッ子「強要されて困るというのを……」ハルとショージを見る。「……君たちは、自分を、心身共に男だと思っているだろう?」
ハルとショージ「はい」
ヤッ子「では、学校祭などのイベントで、演劇として、ミニスカートで人前に出るのは、恥ずかしいか?」
ハル「恥ずかしいです」
ショージ「一回だけですから、笑っていられます」
ヤッ子「では、日常生活で、ミニスカートを強要されたらどうだ? 君たちの心は今のままの男で、しかし体だけが美女だとして、だから、周囲の人がミニスカートを期待して強要したら」
ハルとショージ。とんでもない拒絶の表情。
ヤッ子「そういうことだ。周囲は期待していても、応えるか応えないかは、本人の意識だ。周囲が勝手に、体が女である君たちならミニスカートを拒絶するはずがないと、誤解するのだ」
ヤッ子「期待されている人間像は、「期待されている」に過ぎない。「期待するもの以外は存在しない」の意味ではないし、「期待に答えないのは罪悪」でもない」
ショージ「そんなのは、当たり前ですよ。理想と違うからって、否定しちゃ、いけない」
ヤッ子「そう思うのは、どーうしてもっ、我慢できないっていう程ではないからだな」この「どーうしてもっ」の部分は、力を入れた言い方。
ショージ「そうなんですか? 大人げない」
ヤッ子「この、どうにも我慢できないという呪縛は強力だ。なんと、あのアインシュタインも、その呪縛で、宇宙を表す数式を、誤って書いてしまったんだ」背景に「宇宙項」の文字を表示する。
ミッツ「アインシュタインも、理想にとらわれたんですか?」
ヤッ子「そうだ。アインシュタインは、後に、その誤った数式を、「生涯最大の失敗」と後悔したらしい」
注意書きとして、「この数式の正誤は、いくつかの議論があります」を表示する。
ショージ「宇宙の理想の数式って、意味がわかりません」この言葉で、ヤッ子のセリフで表示した注意書きが割れて粉々になる。
ヤッ子「これまでの経験から、男女の役割は、こういうのが多いと知っていて、その情報による予測が当たることが多い。しかし、個別の人に対する時は、予測は未確認情報だということを、自覚しているのがいいな」
ステラ「人に対する時は、ですか?」
ヤッ子「そう、失礼になることもあるからな」
ヤッ子「例えば、ビジネスの、初めて会う取引先の会社の人が、おっさんと、お姉さんだったら、おっさんの方が上司と予測する。しかし、お姉さんが上司ということもある。言葉遣いや態度で、お姉さんを蔑ろにするのは、失礼だな」
ヤッ子「音楽でも、書籍でも、これまでの経験から好みではないジャンルだからと期待していなかったが、いざ接してみると、個別の作品は、意外と面白いこともある」
ヤッ子「これまでの経験による予測は未確認情報。音楽も書籍も人も、予測が外れることもあると自覚しておきたいな」
ショージ「同性愛ってのは、結局は、本人の好みだから、「物好きな人もいるもんだ」とは思うけど、体は男か女の、どっちかだけですよね」
ステラ「それは誤解です」
ショージ「え?」ショージはヤッ子に向かって話しているのに、横からステラの訂正があったので、驚く。
ショージ「男が男を好きになるとか、精神的にどっちつかずはあっても、体は必ず、どちらかだろう?」
ステラ「いいえ、違います。もし、宇宙人に聞かれたら、まずは「大雑把に言えば」と前置きして、男女の別を言います。けれど、明確に分かれるのではなく、体の作りもグラデーションです」
ハル「え? そうなのか?」
ミッツ「あたしも、聞いたことがある」
ヤッ子「そのように、宇宙人に説明するのも、ひとつの方法だな」
ヤッ子。少し移動する。立ち位置を変えるなど、話の雰囲気に区切りをつけるように。
ヤッ子「ジェンダーのついでに言及すれば、年齢による期待もあって、年齢によって人徳が高くなりつつも、大雑把に価値が下がるというのを、文化として前提としている」
ハル、ショージ、ミッツが、それぞれの経験を思い出す。親(両親ではなく、父親や母親だけでも良い)が、若く見られる努力や、「おじさん」「おばさん」と呼ばれると激怒する姿など。
ヤッ子「無論、期待像が主題ではない物語もあるが、期待像を知らない宇宙人は、意味不明のことも多いだろう」
ショージ「アルキメデスが、入浴中に、水中で物が軽くなる原理を発見した時、喜びのあまり、風呂場から全裸で町を走り回ったって話があるよな」
ミッツ「あの、「ユリーカ」の話でしょ。喜ぶのはいいけど、我を忘れる程って、信じられない」
ショージ「実は、当時は、猛暑の日に全裸で外出ってことは、普通のことだったんだ」
ミッツ「そうなの?!」
ヤッ子「当時のギリシャを知らない蜜霧君が、アルキメデスの行動を奇異に感じたように、宇宙人にとっては、なぜ蜜霧君がそう感じたのか、意味不明だな」
ステラ。ショージに向かって。「水に入れると軽くなるんですか?」
ショージ。大喜びでステラに教える。「そうなんだよ、王冠が押しのけた水と同じだけ、軽くなるんだ」
ステラ「その、押しのけたというのが、わからないんです」
ショージ。困る。「王冠の形は、複雑で、ええーっと」
ハル「1リットルの牛乳パックがあるよな」両手で、牛乳パックっぽい形を表現する。
ステラ「はい」
ハル「水が1リットルなら、重さは1キログラム。もし、1リットルの金属か何か、何でもいいや、その塊が5キログラムなら、水に入れたら4キログラムになる。何を水に入れても、1キログラム軽くなる」
ステラ「何を入れてもですか?」
ハル「そう。水がこの大きさで1キロだから。金属が、細長い針金でも、もっと複雑な形でも、王冠の形でも、金属じゃなくても、何がどんな形でも、1リットルの大きさなら、1キログラム軽くなる」
ステラ「押しのけるって、大きさなんですね」
ハル「そう。1リットルの物を、水に入れたら、1キログラム軽くなる。何かの軽い液体、油だったら、1リットルが800グラムの液体になら、金属を沈めても、木材を入れても、800グラム軽くなる」
ハル「もっと重い液体で、1リットルが1200グラムの液体になら、何を沈めても、1200グラム軽くなる」
ハル「液体に沈めて、重さがマイナスになったら浮く。プラスのままなら沈む。水に木を沈めたら重さがマイナスだから、木は水に浮く。水に金属を沈めたら、プラスのままだから、金属は水に沈む」
ステラ「じゃあ、1リットルの大きさで、重さが1キロよりも重ければ沈んで、軽ければ浮く。これで合ってます?」
ショージ。割り込む。「すごい、ステラちゃん。エグザクトリィ、トリビアーン!」ショージは、「トレビアン」をジョークで「トリビアン」と言ったが、誰もジョークと気付かない。単に誤ったと思い、誰も訂正しない。
ハル「水よりも、油の方が軽いよね。何かの液体が、1リットルで500グラムなら、そこに何かを入れたら、1リットルで500グラムより重いか軽いかで、沈むか浮くかが変わる」
ショージ。割り込む。「つまり、王冠がどんなに複雑な形でも、大きさの違いで、浮くか沈むかが決まる」
ショージ「金と銀の2つの王冠が、同じ重さで、水に沈めたら、軽くなる具合が違う。なぜなら、2つの王冠は、金と銀で、素材が違うからだ」
ヤッ子。話が横道に逸れたので、戻す。
ヤッ子。演技として、声を出して泣く。「理科の教師として、私は嬉しいぞ。お前達がこんなに、理科を理解して……」
ミッツ。笑いで、吹き出す。背景に「理科を理解」が表示される。ふりがながあると、わかりやすいかも。
ヤッ子。軽く咳払い。
ヤッ子「さっき東海林君が、良い例を出してくれたな。現代の日本と、古代ギリシャでは、裸で外出する文化が違う。期待象は、文化に依存する」
ヤッ子「文化に依存した前提の中で生活するから、無理して期待に応える演技を続けている人もいるだろうし、期待と無関係に自分の人間像を生きていたり、無理もせずに素のままで期待像の人もいるだろう」
ヤッ子「ドラマや漫画は、現実離れした事件が描かれながら、それ以外は理想的な家族像も描かれることもある。都合よくドラマの中から「理想の普通」を採用し、それと違う自分の境遇を憐れんでも……」
ヤッ子「男なら男らしく、先生なら先生らしく生きるとか、それよりも、自分らしく生きるとか……」
ヤッ子「星占いや血液型の性格付けは、科学的な根拠の議論はしなくても……」
ヤッ子。両手を出して、片方ずつ動かす。「……左利きと右利きは、脳味噌の右脳と左脳に違いがあるにしても、「得手不得手に、そういった傾向がある」という程度で、明確に分かれるのではない」
ハル「大阪の人だからといって」
ヤッ子。ハルの「大阪の人」に反応する。「大阪人だからって、必ずしも、いつも面白いことを言うとは限らない」
背景に、第4話のオープニング曲前に登場した、ヤッ子の彼氏。その彼氏の周囲にいる人が、心の声。「何か面白いことを言う」「わくわく」
ヤッ子「何か面白いことをと、期待されるのは、辛いぞ」
ヤッ子「大阪人であっても、納豆が平気な人もいる」ヤッ子の思い出。彼氏との食事。ヤッ子「納豆だけど、平気?」、彼氏「実は、好きなんだよ」。
ヤッ子「大阪人であっても、阪神タイガースのファンとは限らない」
ヤッ子「大阪人であっても、普通に「関西電気保安協会」と言える人もいる」
ヤッ子「大阪人であっても……」
ヤッ子は、例を1つ挙げる毎に、スーパーヒーローのようなポーズを、あれこれ。
ミッツ「ヤッ子先生、もういいです」
ヤッ子「ああ……そうか」
ハル「大阪への愛がなんだか凄い」
ショージ「静岡出身だからって、必ずしも、サッカーのリフティングが上手だとは限らない」背景に、静岡県の町中の、あちこちで、老若男女がリフティングを楽しんでいる風景。
ヤッ子。ショージの背景のリフティングに被るように。「ああー、しっ! ずおかぁぁ……」
ハルたちが、呆然と横目でヤッ子を見る。
ヤッ子。目を輝かせて、中腰で、コアリクイの威嚇ポーズのような姿勢で、哀願するような演説。「静岡県民はな、静岡県民はなぁ……」
ミッツ「はいはい、ヤッ子先生は、素敵な恋愛をして来たんですね」ヤッ子の背中や肩をさする。
ハル「ということは、それだけ、恋も終わったんですね」
ヤッ子。ハルを鋭く睨む。歯がギザギザでもいい。
ヤッ子に、指し棒で「実は、単に惚れっぽいだけ。いつも片想い」を表示する。
ヤッ子。仁王立ちで、少し大きな声で。「つまり!」みんなが息をのむ。「男女と言っても人それぞれで、定義や特徴に当てはまらない人がいるように、長調と短調も、曲によって様々だ。そこのところを、肝に銘じておけ! 返事はっ!」
一同「はいっ!」
ヤッ子。急に、にこやかに「ということを踏まえた上で、長調と短調の話をしようか」
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