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ガクテン  作者: 不定音高ふたつ


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06_A__01_04  第6話 Aパート 分割 1 / 4

第6話 Aパート 分割 1 / 4


【注意事項:楽典以外の余談に、児童には不適切な生々しい描写や、心的負担の箇所があります】


【 第6話 概要 】

サブタイトル:音楽を自由に楽しんで、何が悪い!

OP曲前:ヤッ子の姉、鍵宮美音( )かぎみや・みね)が、ポップスのバックバンドのコンサートに急遽の出演依頼を受け、失敗。クラシック音楽の基礎はあるが、ポピュラー音楽は経験が無いため。

Aパート:ジャズを簡単に書き直す。シャッフル記号とスウィング。フォルテシモでショージが抱き着く。sfz。長調と短調のジェンダーを宇宙人に教える。「シ、ド」でツナ缶効果。ロックは揺れる。教会旋法。ステラの海老逃げ。

CM明け:左手がテンポ、右手がメロディを叩くのができない。

Bパート:ステラがヤッ子に、吹奏楽の相談。ヤッ子が、姉である鍵宮美音( )かぎみや・みね)の話をする。ピアノは好きではないが、継続を強制され、できない仕事を強制され、投身自殺。

Cパート:将来の夢は世界征服。若いなら何でも。シメジ婆さんが言ってた。夢がたったひとつなら、叶わなかったら悲しいね。夢がたくさんあれば、どれかひとつでも叶えば嬉しいって。

予告:猫の肉球がプニプニで、ハルは突然すごくギターが上手になり、ヤッ子がモーツァルトに一喝。酔っぱらっちゃったぜい、ぐでんぐでんだー。


 ○ --- ○ --- ○


ここから本文です。

ご感想を頂けると嬉しい。ログイン不要ですので、お気楽に一言をお願いします。

■■■■ 第6話。


▼ サブタイトル。   ▼──   ──▼


音楽を自由に楽しんで、何が悪い!


音楽を自由に楽しみたいんだ!


音楽を自由に楽しみたいのに。


音楽を自由に楽しみたいだけ!


この中から1つだけ採用する。


▼ OP曲前。   ▼──   ──▼


OP曲前の定型。他の登場人物は知らない、過去の出来事。


OP曲は無く、この場面にクレジットが表示される。


BGMは、蟻地獄のような、不安な曲。


ヤッ子の姉、鍵宮美音( )かぎみや・みね)が、ポピュラー音楽のバックバンドのメンバーとして、リハーサル中。


服装は、まだ私服のまま。


受け取った楽譜は、略式で書かれている。コードネーム、ちょっとした音符、リピート記号など、手書き。


美音。心の声。「( )どうやって弾けばいいの?)」


美音。バンドのメンバー( )演奏者)に尋ねる。「あの、これ、音符が書かれていないんですけど、どうやって弾けば……」


メンバー「あ、ほとんど、コード弾きでいいから。いきなり呼んで申し訳ないから、簡単なものにしといたから」


メンバーは、演奏中にはそれぞれの表情( )笑顔、怒り顔、凝視、のほほん)をする。演奏に真剣なため。しかし、美音に向かう時は、必ず笑顔。顔が不細工で、笑顔が恐い人もいる。


美音のスタッフ「鍵宮さん、コードはわかるよね」


美音「あ、コードですか、わかります」


メンバー「バッチリだよ。ほとんど白玉で、雰囲気に合わせて、邪魔しないように音が埋まればいいから」


メンバー「それから、聞いてると思うけど、ウチはジャズっぽいものが中心だなんて言われてるけど、実は広く色んなジャンルをするんだよ。だから、クラシックの基本ができていると、とても助かるんだ。頼んだよっ!」自分の立ち位置に戻る。


リハーサルの演奏が始まる。


メンバー。美音に向かって「ああ、そこんとこ、★★( )CDのタイトル)の、★★( )曲名)の、イントロのように」


美音「え? あ、はい。でも、その曲を知りません」


メンバー「じゃあ、8ビートで和音を鳴らし続けて、2拍目だけ強くして、こんな風に」メンバーが、ギターで模範演奏。


美音「はい、わかりました。( )8ビートって、8分音符のことだったんだ)」背景に説明文「8分音符を基本としたリズムを、8ビートと呼びます」を表示する。


メンバー「あと、E♭7ってあるけど、そのままじゃなく、キーに合わせて適当にテンション入れて」


美音「テンション? って、何ですか?」


一同、言葉を失う。BGMも、一瞬だけ止まる。


美音のスタッフ「あ、ごめん、鍵宮さんは、音符があった方がいいんだよね。僕が書くから、少し待っててもらえるかな」


リハーサル中に裏拍のレッスン。すぐには身に付かないので、キーボードのエフェクトで、誤魔化し、ドラムスとベースが裏拍効果を提案。「なんだ、これも面白いじゃないか」と、メンバー達は美音に気遣う。


メンバーの気遣いは、コンサートが成功することを優先しているため。


美音のスタッフ。急いで音符を書く。「玉を全部は書けないから、ここには全部の玉があるつもりで。前の小節からの、このタイは、裏拍、「ンタタンターンタ」の、最後の「タ」で鳴らし始めて。スウィングする感じで」


美音。心の声。「( )スウィングって、この単語も知らない)」


メンバー「それから、さっきの8ビートのはさ、2拍目にアクセントって言ったけど、2拍目と、それから、3拍目の裏にアクセントをくれるかな」


美音。慌てて、「さっきの」の楽譜を探す。「あ、ありました。こうですか?」2拍目の裏と、3拍目の裏にアクセント。


美音。頑張って弾いてみる。心の声。「( )なんだか、変な感じ。でも、これでいいんだよね)」


メンバー「違う違う。そんなアクセントだったら、乗れないよ」


美音「2拍目と3拍目の裏ですよね」


メンバー「2拍目の頭と、3拍目の裏……」ギターで模範演奏。「……こう、いい感じでしょ。こっちが、今みたいにストロークでメロディもするから、キーボードも一緒に」


美音「あ、はい、わかりました。メモします。えっと、ペンは……?」ペンを探しながら、心の声。「( )あたしができるように、変えてくれたのは嬉しいけど、元々ちゃんとしていない楽譜から、更に変わるのなんて、無理)」


美音。右往左往する。ペンは、美音のスタッフが持ったまま、バンドのスタッフと話している。


メンバー「やってみよう」


メンバーのリズムに合わせて、美音も弾く。楽譜を見ながら、心の声。「( )どんな感じに変わったんだっけ? ここのリズムが……)」見ている楽譜に、さっきの記憶の楽譜が、ふわふわと漂いながら、迷いながら重なる。


メンバー「ま、何とかなるよ。無理しない程度に、丁寧に、頑張ろうよ。じゃっ、次の曲、始めるよー!」


美音。小声で「はい、済みません」


美音のスタッフ「鍵宮さん、リハーサルの途中だけど、今のうちに着替えて」


美音「はい。あ、でも、まだ確認が」


美音のスタッフ「急がないと、間に合わないよ。スタイリストさんを待たせちゃ悪いし」


美音が苦手なジャンルとして、ボサノバや、タンゴでも良い。


美音。心の声。「( )ボサノバかあ。これ、苦手なんだよな)」


美音。心の声。「( )タンゴなら、少しはできる。ハバネラと似ているから。あれ? でも、このタンゴ、あたしの知っているのと違う。それに、速度も速い。え? なに? ついて行けない)」


▽ 場面変更 ● ── ●


回想。


美音の音楽事務所に、キーボード奏者のヘルプ電話。クラシック出身の、技術が確かな人で、スケジュールに支障の無い美音が選ばれる。


事務員。急遽の出演依頼の電話を受けながら。「鍵宮さんちの美音さーん」


美音「はい」


事務員「美音さんは、簡単なポップスだったら、初めての曲でも、楽譜を見ながらすぐに演奏できますよね」背景に「簡単なポップス」を表示したままにしておく。


美音「まあ、簡単な曲なら」


事務員「転調とかも無いし、ポップスだから、大丈夫ね」


事務員。電話の続き。「はい、大丈夫です。クラシック音楽出身で、基礎はしっかりしています。ポップスなら何でも、対応できます。よろしくお願いします」背景の「簡単なポップス」が、矢印で「ポップスなら何でも」に変わる。


ポピュラー音楽なので、美音は不安で断るが、「急な要請で、他のキーボード奏者がいない」「チャンスだから」と無理強いされ、コンサート会場に。


会場に着くと、ピアノだけではなく、複数のキーボードも。


美音。心の声。「( )こんなの、どうすればいいの?)」


メンバー。20枚程度の楽譜を手渡し。「急な呼び出しなのに、来てくれてありがとう。一緒に楽しもうね」


美音「はい、よろしくお願いいたします」


▽ 場面変更 ● ── ●


回想が終わり、さっきの続き。


舞台衣装に着替えている。ステージでリハーサル。時間切れで幕が開く。


美音。足首が動かないようなブーツは、底が高い。襟や袖から延びているたくさんの紐が邪魔。どことなく、SMの女王様や、悪魔っぽい。


ピアノを弾くための椅子も無く、立ったまま演奏するもの。


美音。心の声。「( )こんなの着て、演奏しろなんて)」


美音のスタッフ。美音に耳打ちする。「キーボードの音色などの設定は僕がするから、鍵宮さんは、鍵盤演奏に専念して大丈夫だよ」


美音のスタッフは、キーボードのエフェクト操作、時には演奏し、美音を補佐。


コンサート中の、メンバー紹介もされる。こんな自分が紹介されるのは苦しい。MCは「急遽、呼んだのに、快く承諾してくれて、どうもありがとう」


▼ Aパート。   ▼──   ──▼


理科室の外の廊下。ヤッ子の授業が終わったところ。


ミッツ「ヤッ子先生。ピアノの先生から、ジャズもやってみなさいって言われたんですが、何か、お勧めの曲はありますか?」


ヤッ子「いきなり、そう言われてもな。「ジャズには名演はあるが、名曲は無い」という言葉もあるし」


ミッツ「そうですか。ピアノの先生は、クラシックが専門だから、ヤッ子先生のアドバイスが欲しいって」


ヤッ子「だったら、楽譜店で、ジャズアレンジを探したらどうだろう」


ミッツ「ジャズアレンジですか」


ヤッ子「元々ジャズの曲、流行歌やクラシック曲のジャズアレンジなどがあるから」


ミッツ「あ、そうですね」


ヤッ子「もし、予算が許せば、楽譜集だけでなく、ジャズピアノの教則本もいいな。『ピアノでジャズにトライ』とか『なんとなくジャズ』とか、そんなタイトルのもので」


以上の書名は、架空のものなので、実在していた場合、別な名前にする。


ミッツ「初心者向けですね」


ヤッ子「楽譜集は、初心者向けの簡単アレンジのものと、「こんなの弾けないよ」という難しいものの両方があると良いかも。同じ曲が、2冊でどう違うのかを見比べるとか」


ミッツ「弾けないアレンジは、初心者ですから無理です」


ヤッ子「弾けない楽譜を弾くんじゃなく、弾けるように自分で簡単にアレンジするんだ」


ミッツ「どういうことですか?」


ヤッ子「初心者向けの楽譜は、せっかくの和音の良さが無くなっているものもある。かといって、そこに和音の音符を自分で付け足すのは無理だろう?」


ミッツ「無理無理!」


ヤッ子「だから、既に難しくたくさんの音符が書かれている楽譜を使って、そこから音符を消したりするのなら、できるだろう」


ミッツ「あ、そうですね。2冊の、難しいアレンジと、簡単なアレンジを見て、中間のアレンジの楽譜を、自分で書くんですね」


ヤッ子「クラシック曲に慣れている人には、弾きにくいという部分もあるだろう。弾きやすいように、1オクターブ移動させたり、左手の補佐を右手でするなど、勝手に書き直すだけでも、弾きやすくなることもある」


ミッツ「そんな、勝手に変えてもいいんですか? 著作権の問題とか」


ヤッ子「勝手に書き換えたものを、販売するのなら、まずいだろうな」


ミッツ「ピアノの練習のために書き換えるんですから、大丈夫ですね」


ヤッ子。微笑む。「わからないことがあったら、また聞きにおいで」


ミッツ「ありがとうございます」


▽ 場面変更 ● ── ●


翌日。


1時限目の前に、ミッツが職員室に走る。手には、昨日買った教則本『ジャズっぽいピアノレッスン』を持っている。


以上の書名は、架空のものなので、実在していた場合、別な名前にする。


ミッツ。ヤッ子の席に行く。「ヤッ子先生、シャッフルとスウィングの違いって、何ですか?」


ヤッ子「お前なあ、時と場所を考えろ。その話なら、昼休みにいくらでも聞いてやるから」


ミッツ「はい、済みません」


▽ 場面変更 ● ── ●


昼休み。


ミッツが職員室に走る。


ミッツ。ヤッ子の席に行く。「ヤッ子先生、シャッフルとスウィングの違いって、何ですか?」


ヤッ子「お前なあ、職員室が悲惨なのは、わかるだろう。飯を食いながら、仕事をするんだぞ」


ミッツ「でも、昼休みにって」


ヤッ子「ああ、そう言ったかも知れないが、済まん、今は、ヒントだけだが」メモ紙を出す。8分音符2つをシャッフルする指示の表記を書く。


ヤッ子「これがシャッフル。スウィングは、気分のノリだ」


ミッツ。メモ紙を受け取る。「はい、済みません」


ヤッ子「放課後には、この仕事も落ち着くから、音楽室においで」


▽ 場面変更 ● ── ●


放課後。


ミッツが来る少し前、音楽室にハルとヤッ子。


ヤッ子「早坂君、私のピアノで、踊ってみないか」


ハル「え? まさか、社交ダンス?」


ヤッ子「それもいいが……」髪を束ねているバンドを外し、長い髪がなびく。「……スウィングを感じてくれ。まずは、脱げ!」


ハル「は、はいぃー?」


ヤッ子「今、脱ぐのが嫌なら、踊りながら脱げ」ヤッ子の髪の毛が、静電気で広がる。


ハル「は、はいぃー?」


ヤッ子「さあ、私のピアノで、心のおもむくまま、踊るのだ!」ピアノを弾く。髪の毛が妖怪のように広がり、静電気の放電が、音楽室の全体に広がる。


曲は、ブギウギやラグタイムをシャッフルしたもの。


ヤッ子。弾きながら、髪の毛が顔に付いたり、髪の毛の先が口に入り、ますます怪談の幽霊や妖怪のようになる。


ハル。曲の雰囲気に合わせて踊るが、下手。


踊りが長時間であることを表すために、学校の敷地内の風景などを挿入する。風景の挿入と、ハルの踊る姿を交互にする度に、ハルが薄着に変わる。


ミッツが廊下から、音楽室のドアの窓から中を見る。


手には、1時限目の前に、ヤッ子に見せた、ジャズピアノの教則本を持っている。


ピアノに向かったヤッ子が、ノリの良い曲を演奏。ヤッ子の顔のアップは、髪の毛が広がり、稲妻が光る。いつもの、妖怪っぽい様子。


廊下にいるミッツから見ると、ヤッ子は静電気で髪がボサボサ。


ヤッ子の演奏に合わせて、ハルが踊っている。それなりに、上手になっている。近くの生徒用の机には、脱いだワイシャツが無造作に置かれている。


ヤッ子。ミッツが室内に入って来て、少しの時間、見ていたのを確認し、演奏を終わらせる。


ハルは汗だく。上半身はシャツ( )下着)姿になっている。


ミッツ「素敵、かっこいい、ヤッ子先生も、ハルも」


ヤッ子「わかったか、早坂君の踊りがスウィングだ」


ミッツ「え? 踊り?」


ハル「え? 僕?」


ヤッ子「そうだ。シャッフルは3連符で弾む演奏方法のこと。スウィングは、気分のノリってことだ」


ヤッ子。話しながら、髪を後ろで束ね、短時間でいつもの髪型になる。妖精ちゃんが集まって、櫛で髪を梳くなどの世話をしても良い。


ハル「僕は、ミッツのために、踊らされていたんですね」


ミッツ「あたしのため?」


ハル「それで、暑くて、ワイシャツも脱いだんだ」


ミッツ「スウィングは、気分?」


ヤッ子「そう。3連符でシャッフルしていても、ただ聞くだけの演奏は、こうだ」ノリの無い演奏。


ヤッ子「しかし、聞いていると、自然に体を動かしたくなる演奏は、こうだ」さっきと同じ楽譜のはずなのに、ノリのいい演奏。


ハル「あ、ほんとだ」


ヤッ子「スウィングってのは、こんな風に、聞いている人の体も、自然に動かすもんだ」


ミッツ「だから、スウィングが気分のノリなんですね」


ハル「ヤッ子先生。さっき、何でシャッフルって、言ったんですか? ちょっと聞き取れなくて」


ヤッ子「スウィングのことか?」


ハル「いいえ、それではなく、何か、数字、3? が何か……」


ミッツ「3連符じゃない?」


ハル「そう! それ」


ヤッ子「ああ、済まなかった。初心者がいるのに、うっかり、「まるで一般常識のように」という言い方をしてしまった。気を付けてはいるのだが、申し訳ない」


ハル「いえいえ」


ミッツ「第2話で、音符の音価は、半分の半分の……だけって、言ったでしょ」


ハル「おんか?」


ミッツ「音符の、音を鳴らし続ける時間」


ハル「ああ、あれか。全音符の時間の、2分の1の時間は2分音符、4分の1の時間が4分音符。思い出した」


ミッツ「その時間を、「2分音符の音価」とかって言うの。あの時、ハルが、3分の1の時間は無いのかって聞いたでしょ?」


ハル「聞いたかなあ……」


ミッツ「また、忘れている。その時、あたしが「3分音符は無いから、特別な書き方をする」って、それが3連符」


ハル「ああ。その時のことは覚えていないが、3分の1には興味がある」


ミッツ「ヤッ子先生。演奏をお願いできますか?」


ヤッ子「はははっ。任せておけ」指をパチンの鳴らす。


ヤッ子「左手は、単調に鳴らし続ける。右手は「2分の1」「3分の1」のようにしようか」


ミッツ。ヤッ子に向かって。「お願いします」


ミッツ。ハルに向かって。「今は、シャッフルが主題だから、連符の詳しいことは、第8話まで待ってね、坊や」指を顔にあてるなど、色っぽい表情。


ハル「ヤッ子先生、お願いします」


ヤッ子。シャッフルに使えるテンポで、左手は「ド」を単調に鳴らす。右手は、「ドを左手と同時」、「ド、ミを繰り返す」、「ド、ミ、ソを繰り返す」、「ド、ミ、ソ、ドを繰り返す」と進む。


ミッツ。ヤッ子の演奏に合わせて、黒板に音符を書き足す。最上段に、4分音符を1つ。その下に、8分音符を2つ。その下に、8分音符を3つの3連符。その下に、16分音符を4つ。符桁を使った書き方。


ここでは音価の説明なので、「ドミソド」の音高は無視し、音符の玉は横並び。


ヤッ子の演奏が終わる。


ミッツ「詳しい、書き方の規則は、第8話で教えるから、今は、シャッフルに「慣れるだけ」にすること。ハルの得意な「気になったから、尋ねる」はしないように」


ハル「わかった」ちょっと、不満顔。


ハル。ヤッ子に向かって。「これが、スウィングの……、じゃない、シャッフルの、一般的な書き方なんですね」


ヤッ子「そうだ。ついでに言えば、ロックって何だ? 早坂君」


ハル「石のように、あ、「石」は「ストーン」か。えっと、岩のように、硬い意志がある音楽。あ、これは駄洒落じゃなくて」


ヤッ子。微笑んでブザー音。「そう思っている人も多いと思うが、ブッブー、違うんだ。まあ、駄洒落はいいが、ロックは岩じゃなく、「揺れる」ってことだ」


ミッツ「岩が揺れる?」床にある、ボウリングのボール程度の石が動いている様子を、両手で表現する。スカートの中が短パンだと、はっきりわかる。


ハル「岩だから、もっとでかい」


ミッツ「じゃあ、これくらい?」立ち上がって、着ぐるみの岩になる。男梅( )ノーベル製菓)のCMや、漫画『Dr.スランプ』( )集英社、週刊少年ジャンプ、鳥山明)のニコチャン大王のように、岩の全体が顔になるのでも良い。


ミッツ「岩が揺れるんだ」ゆらゆら揺れる。


ハル「オカルト。超常現象」


ヤッ子「だから、岩じゃない。ロッキングチェアがあるだろう、揺り椅子だ。スペルは同じで、音楽のロックは、聞いているだけで、体が揺れるってことだ」


背景にロッキングチェア。「ROCKING Chair」の「ROCK」の色を強調。「揺れる椅子」と添える。


背景に「ROCK」「ロック」「岩」「揺れ」と、「LOCK」「ロック」「鍵」「固定」を表示する。


ミッツ「じゃあ、石巻市をロックンロールって言うのは、間違い?」


ヤッ子「間違いというより、言葉遊びを用いて楽しもうという気持ちを汲みたいな」


ハル「ロックとロックンロールは、違うの?」


ヤッ子「ああ、そんなに質問続きは、疲れるぞ。音楽のジャンルは、明確な境界線は無くて、境界はぼんやりしている。ロックンロールのスリーコードは、主要三和音が使われている」


ハル「スリーコード? 主要三和音?」


ヤッ子「先に言っておくが、スリーコードは、ロックンロールの特徴のひとつであって、定義ではないからな。ブルースのスリーコードだって多いぞ」


ヤッ子「そこで、スリーコードだが、調によって、基本的によく使われる3つの和音は、「主要三和音」なのは知っているな」


ミッツ「主和音、属和音、下属和音ですね」


ハル「なんじゃ、そりゃ」


ヤッ子「音階スライドで、主音、属音、下属音があって、それぞれを根音とした和音だ」


ミッツ「音階スライドのうち、特に大切な和音があって、その根音に使われる音ってこと」


ハル。考え込む。「根音って……、聞いたことがある。あっ、コードネームのスロットマシンだ」背景に、第3話のスロットマシンを表示する。「根音」「和音の種類」「補足の数字」のうち、「根音」が明るく点滅。


ハル「根音から数え始めて、音符の玉を積み上げるんだ」ここで思い浮かべるのは、音符の玉が3つ、積み重なったもの。


ヤッ子「その通り。よく思い出せたな。頼もしい」


ヤッ子。ピアノを弾いて説明。ハ長調の音階を1オクターブ。ドを鳴らして、主和音を鳴らす。ドレミファのファで止まって下属和音。ドレミファソのソで止まって属和音。


ヤッ子。主和音、下属和音、属和音の順に、2回鳴らす。


ヤッ子。『きらきら星』を、左手で和音だけ演奏。右手のメロディを加えて演奏。


ここまで、背景に楽譜。


ミッツ。黒板に、ハ長調でダイアトニックコードを書き、主要三和音をそれぞれ四角で囲む。


ミッツ「ハルが理解しやすいように、音階スライドを、ハ長調に合わせたつもりで説明するよ」


ハル「ハ長調って、「C」の鍵盤に、音階スライドの「ド」を合わせるものだな」


画面に、「ハ長調」を、日本語、英語、ドイツ語で、並べて表示。英語とドイツ語には、カタカナでフリガナを添える。日本語、英語、ドイツ語の、「ハ」「C」「C」を囲み、単語が同じ意味だとわかるようにする。


ミッツ。黒板に追加。「ド」に差し棒で「主音」、「ファ」に「下属音」、「ソ」に「属音」と書く。主要三和音に、それぞれ差し棒で「主和音」「下属和音」「属和音」と書く。


ミッツ「これって、見たことが無い? ダイアトニックコードっていうんだよ」背景に「ダイアトニックコード」の文字を表示する。


ハル「ああ、どっかで見たことがあるが、単に音階があって、その上に和音になるように積み重ねているだけだろう。何の謎解きにもなっていない」


ヤッ子「では、原子の周期表はどうだ?」


ハル「あれこそ、意味不明です。時々、壁に貼っているのを見ますが、行と列の表になっている国語の五十音表と比べたら、分類ではない並び方をされている「いろは歌」のようです」


ヤッ子「生徒がそのように答えるのは、理科の教師としては、喜べないな」ヤッ子に指し棒で「理科の先生。専門は化学」と表示。


ハル「あ、ごめんなさい。そういえば、ヤッ子先生は、理科の先生でしたね。理科室や、自分の教室なら、理科の先生だと思い出しますが、ここ、音楽室にいると、音楽の先生のように、勘違いしてしまいます」


ヤッ子「しかも、私の専門は化学なのでな。まあ、まだ原子の周期表は習っていないからな。実は、あれも、縦と横の並び方には、理由のある分類がされているのだよ」


ミッツ「この、ダイアトニックコードも、説明も無く見せられても、意味不明だよね」


ミッツ「ダイアトニックコードは、よく使う和音を見せたもの。だって、和音ってどっさりあるから、その中で「よく使う」があると、便利でしょ」


ハル「あ、そうか。また「よく使う」のお知らせか」


ミッツ「その中で、「特によく使う」のが3つあって、それが「主要三和音」なの」


ヤッ子「特によく使うから、名前があると、会話に便利だ。漢字が苦手なら、カタカナの方を覚えるのもいいな」


ヤッ子。指をパチンと鳴らすと、黒板の「主和音」「下属和音」「属和音」に、それぞれ「トニック」「サブドミナント」「ドミナント」が付加される。


ヤッ子。再び『きらきら星』を弾く。左手で和音をジャーンと弾き、その後にメロディという順番で弾くことで、和音の説明であることが強調される。


ミッツは、ヤッ子の演奏に合わせ、黒板のダイアトニックコードの、主要三和音のどれが鳴っているかを指しているが、ハルはヤッ子の手元を見ている。


ミッツ「ハル。ねえ、ハル。こっちを見なさい」


ハル「え? ああ、そっち?」


ミッツ「今、どの和音を弾いているか、指すから」


ハル「あああ、わかった」


ミッツ「ヤッ子先生、もう一度お願いします」


ヤッ子。演奏する。演奏が終わる。


ヤッ子「主要三和音を、それぞれ変形させて、こんな感じにしたものが、ロックンロールだ」サンプルを演奏する。


ハル「あれ? 主和音が、何か変ですね」


ヤッ子「よく気付いたな。ただの「C」じゃなく、シ♭を加えた「C7」なんだ。主和音の、こんな使い方も、面白い」


ミッツ。黒板の和音に、セブンスを加える。


ハル「不協和音が主和音って、面白いですね、しかも、臨時記号があるってことは、音階ではない音を使っているんですね。」


ヤッ子「それだけ、音楽は自由だってことだ。ただし、C7は「不協和音」よりも適した呼び方があるぞ」


ハル「え? 「7」があるから、不協和音だって、何かに書いてありましたよ」


ヤッ子「もちろん、不協和音と呼んでも誤りではないが、もっと適した呼び方がある」


ハル「適した呼び方ですか」


ヤッ子「そう」黒板に「協和音」と「不協和音」を横並びに書き、その下に「協和和音」と「不協和和音」を並べて書く。


ヤッ子「こうすると、意味がわかりやすい」黒板の文字に、下線を添える。「協和・音」「不協和・音」「協和・和音」「不協和・和音」と分ける意味で、「不協和」と「和音」の下線を分離。


ヤッ子「不協和な音、不協和音を含んだ和音が、不協和和音ということだ」ピアノで、「シ♭、ド」を鳴らす。


ヤッ子「C7という和音は、この不協和な音が含まれているから、不協和和音なんだ」


ハル「面白いのに、不協和ってのは、納得できない気もします」


ヤッ子「では、これはどうだ?」ピアノで、「シ、ド」の短2度を鳴らす。


ハル「これは汚いです。僕でもわかります」


ヤッ子「隣の鍵盤だから汚いと思うのなら、離してみるか」ピアノで、「ド、シ」の長7度を鳴らす。


ハル「やっぱり汚いです」


ヤッ子。にやりと笑う。「では、これはどうだ?」ピアノで、「ソ、シ、ド、ミ」を鳴らす。「ド、ミ、ソ、シ」を鳴らす。


ミッツ「あ、綺麗。美しい」


ハル「音楽って、すごい」


ヤッ子「不思議だろう」


ハル「色が汚いとか、味がまずいとか、そこに、更に何かを加えると、どんどん汚くなるのに、音楽では綺麗になるんですね」


ヤッ子「音楽だからというのは、分野毎の実験も集計もしていないから、よくわからないが、私はこれを「和音のツナ缶効果」と呼んでいる」


ミッツ「ツナ缶?」


ヤッ子「そうだ、ツナ缶だ」


ヤッ子「若者というのは、とんでもない思い付きを流行させることがある。ご飯にマヨネーズを掛けて食べるなんて、昔は「寄食」といって、若者のとんでもない、おかしな食べ方だった」


背景に「寄食」と、フリガナ「きしょく」を表示する。


ここに、更に、デブがマヨネーズのボトルを吸いながら「マヨネーズは飲み物だよ」を加えても良いが、面白さで昇華できないとも思える。


ヤッ子「そこに、更にツナ缶や、海苔などの海産物を加えると、美味しくなった」


ハル「コンビニの、おにぎりのメニューにもあります」


ミッツ「タルタルソースは?」


ヤッ子「よく気付いてくれたな。ご飯にタルタルソースだけなら、やはり物足りないだろう」


ハル「そうですよね。やっぱり、魚のフライトか、海苔とか。あっ、やっぱり海産物」


ミッツ「ドリアって、マヨネーズでしょ。外国には、ご飯とマヨネーズの組み合わせって、普通なのかも」


ハル「ドリアは、チーズが使われている。でも、マヨネーズを使っても良いかも」


背景に「ドリアは、各国にあり、日本とは異なったマヨネーズを使うものも、あるようです」を表示する。


ヤッ子「「ところ変われば品変わる」で、日本国内だけでも、「ご当地ラーメン」があるように、ドリアも、様々だろう」


ハル。ミッツに小声で。「広島風お好み焼き」


ミッツ。ハルに小声で。「広島の男は、いいなあ」



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