04_A__02_02 第4話 Aパート 分割 2 / 2
第4話 Aパート 分割 2 / 2
【 第4話 概要 】
サブタイトル:吹奏楽部にやって来た。
OP曲前:ヤッ子の大学時代。デートが楽しいが、ピアノのレッスンがある。彼氏が「休んじゃえ」と言い、ヤッ子が別れを決意。
Aパート:トロンボーンはヘ音記号、音部記号。ギターとソプラノリコーダーはオクターブ違いの記譜。加線。ショージが黒鍵をでたらめに弾く、鍵盤モノサシと音階スライド。音名階名と4か国語。階名唱法。調号と調の名の裏ワザ。
CM明け:ステラが、吹奏楽部の練習室の黒板に、「ようこそ 吸奏楽部へ」と書く。辞書で「吸う」を調べた、吹く楽器なのになぜ。「わざわざ部室棟までありがとう」を「ぶしつれん」と言う。
Bパート:吹奏楽部の見学会。ピアノは弦楽器か打楽器か。ハープはピアノより速いグリッサンド、ハープと調号。調号に無い音階。フルートのカルマン渦は、竿のピュッと同じ、来たれ宇宙人。ステラのカステラと百合じゃれ。演奏主体、部室が草原に。
Cパート:移調楽器は、実音から逆算で記譜。ギターのカポと同じ。ギターの楽譜「演奏キー、オリジナルキー」の表記。スコアの左端の小節線。ステラの漢字誤りから、漢字の部首と読みの関係。
予告:ステラは先輩とお揃いで喜び、音楽の先生は危険エリアでびくびくして、ミッツがハルを羨ましがる。俳句でダンスだ。
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ハル「でも、日本語の「ハニホ」とかは日本だけですが、音の高さの呼び方って、世界共通じゃないんですか?」
吹奏楽の先生「そうでもないよ。日本のオーケストラに参加した外国人は、日本では、日本語と英語とイタリア語とドイツ語の4つを使うことに驚いたという話もある」
ハル「「アー・マイナー」という言い方は誤りだと聞いたんですが」
吹奏楽の先生「まあ、誤りだが、うっかりや勘違いは、あるもんだ。英語の「エー・マイナー」と、ドイツ語の「アー・モール」を、混ぜてしまったんだな」
背景に英語とドイツ語の表記。それぞれのカタカナのフリガナの「アー」と「マイナー」を繋げる。
ハル「日本人って、別な言語を繋げることってありますよね」
背景に例を表示。「アイスノン」「ノンスメル」の商品名は不可かも。「紙コップ」「窓ガラス」「ガラス窓」「生ライブ」「黄金バット」「大正デモクラシー」「阪神タイガース」「巨人ジャイアンツ」「プチトマト」
ショージ「繋げて意味がわからないのは、フランス国旗のような三色は「トリコロール」だけど、何が巻かれているんだ?」
ハル「ああ、あれは、「トリコ・ロール」じゃなくて、「トリ・コロール」です」
ショージ「トリ・コロール?」
ハル「「トリプル」の「カラー」ってことです。3を表すのは「トリプル」だけじゃなく、「トリオ」「トリリオン」「トライアングル」とか」背景に1つずつ表示され、トライアングルが表示された時に「チーン」と鳴る。
吹奏楽の先生「ところで、この階名が移動するのは、良いアイディアだね。こちらを用いることを「移動ド」や「階名唱法」「ソルフェージュ」と言うよ。イタリア語のドレミを鍵盤に書くと、「固定ド」になるんだ」
ショージ「先生、今は俺が説明しているんですから」
吹奏楽の先生「済まなかった。続きをどうぞ」
ショージ。咳払いして再開。「この歌は、Aで終わっているから、Aの鍵盤に、音階スライドのドを合わせる。すると、音階が黒鍵を使うこともある」
ハル「そうですね、いくつか白鍵からずれて、黒鍵になっていますね」
ショージ「そこで、この楽譜の調号を見る。「調号」は、ト音記号とセットになっている♯や♭だ」楽譜の調号を指す。
ショージ「この曲では♯が3つある。そこで、音階スライドを見ると……」白鍵の代わりに黒鍵を使う音階に、右上方向の矢印が3つ出現し、赤く点滅。「……ほら、右向きの矢印が3つだ」
ハル「おおーっ!」
ショージ「すごいだろう」得意気。ショージの鼻が、天狗のように伸びる。
ショージ「これが長音階。完全終止が、ドで終わると長音階、ラで終わると短音階」
ショージ「日本語で言うと、ドがイの鍵盤ならイ長調」
ショージ「英語で言うと、ドがAの鍵盤ならAメジャーのキー」
ショージ「ドイツ語で言うと、ドがAの鍵盤ならアードゥア」
ショージの正面の顔。ショージの説明の順に、上から3つの国語が出現し、ショージの顔が下に押される。
ショージ「日本語で言うと、ラがイの鍵盤ならイ短調」
ショージ「英語で言うと、ラがAの鍵盤ならAマイナーのキー」
ショージ「ドイツ語で言うと、ラがAの鍵盤ならアーモール」
長調の3か国語が左に寄り、右半分に同様に短調の3か国語。
ショージ。6つの調の呼び名の文字を蹴散らす。「まずは、全部の調号と、長調と短調の名前を、3か国語で覚えないとな」
吹奏楽の先生「こらっ。無茶を言うな」
ショージ「冗談です。すみません」
吹奏楽の先生「行く行くは、覚えるだろうが、九九の表とは違って、暗記は目的ではないね」
ハル「暗記しなくても、いいんですか?」
吹奏楽の先生「九九の表は、カラクリを知った後で、暗記しますね。暗記しておくと、日常生活で便利だから、そうしましょうと教えます」
吹奏楽の先生「でも、調号は、カラクリを知らされないまま、「調号と、調の名前のセット」を暗記しなさいと指導されることがあります」
吹奏楽の先生「調号を見れば、音階という、よく使う鍵盤がわかる」
吹奏楽の先生「よく使う鍵盤がわかれば、和音もその鍵盤をよく使う」
吹奏楽の先生「音階の主音がわかれば、曲の休憩や区切りによく使う和音や、終わりに向かってよく使う和音がわかる」
吹奏楽の先生「それらがわかれば、鍵盤を選ぶことに迷うことが少し減る」
吹奏楽の先生「という利点があります。調号を見て調の名前を言えることは、大切ではないのに求められて、素早く答えられないと勉強不足と言われてしまう」
吹奏楽の先生「調号と調の名前を暗記するだけなら、無味乾燥で面白くないんだけどなぁ。便利さやカラクリを、どうして隠しているんだろう」
吹奏楽の先生「「慣れれば自然に覚える」っていうんなら、これから弾く曲の調号を見て、資料を見るってことを、しているうちに、資料を見なくても思い出せるってのが、慣れて自然に覚えられるのだろうけど」
吹奏楽の先生「資料は、見て確認することで、便利さを利用できます。早く、資料を見なくても思い出せるのも良いけれど、資料を隠すのは自然じゃない。資料を見るのが面倒だから覚えようってのが自然だ」
ハル「そういえば、小学生の頃、ミッツが、ああ、済みません、従姉がこれで悩んでました」
吹奏楽の先生「練習する時に、その曲の調を確認するのは大切で、調号を見ただけで調がわかれば便利なんだが、この便利な道具を使ってはいけないという規則も無いよね」
ハル「従姉も言ってました。ピアノの先生からは、勘違いさせて申し訳ないと言われたって」
吹奏楽の先生「それは良かった。先生の中には、この道具を見せると、「確かにその通りだが」と、鼻で笑う人もいる。そのくせ、調の一覧の幾何学的な図形を、カラクリという手掛かり無しに、「音楽の基礎だ」って覚えさせる」
みんな、ちょっと意気消沈。
吹奏楽の先生「調号は、出逢った順に覚えて、別な曲をしているうちに忘れて、そのうちに慣れれば大丈夫」
ショージ「丸暗記で役に立つのは、京都の道の名前を「あねさんろっかく……」とかって……」
女生徒。たまたま近くにいた。ショージの言葉に被せるように、京都の通りの名の、わらべうたを歌う。歌は上手ではないが、女生徒の澄んだ歌声。
ショージ「何だ? 今のは」
女生徒「京都の通りの名前、あっ、通りっていうのは道のことで」
ショージ「知ってるよ」
女生徒「調号と違って、地名だから規則性は無いけど、町の名前より、通りの名前の方が、うち、いや、あたしにはわかりやすい」
ショージ「いいよ、京都の言い方で。聞いていて、わかるから」
女生徒「小さな時分は、場所にも名前があるんだってのが、この歌でわかった。だって、歌にあるのと同じだから、すぐに覚えた」去って行く。
吹奏楽の先生「ト音記号とセットの♯や♭は調号ですね。音符の玉とセットの♯や♭やナチュラルは、臨時記号と呼びます」背景に、音部記号とセットの「調号」と、音符とセットの「臨時記号」を表示する。
吹奏楽の先生「臨時記号があったら、ほとんどの場合、この音階スライドで選ばれなかった音が使われます」音階スライドを持ち、指でなぞる。
ハル「ということは、臨時記号で白鍵になることもあるんですね」
吹奏楽の先生「そうです。ナチュラルは必ず白鍵です。調号で、せっかく黒鍵を指示したのに、臨時記号に逆らって白鍵を指示することがあります」
吹奏楽の先生。鍵盤モノサシと、音階スライドを、改めて見る。「この道具は便利ですね。これをずらして調を変えるのを、「キーを上げ下げする」と言うね」
吹奏楽の先生「もし、キーを上げ下げする楽譜を書くという注文を受けるのなら、さっきのカラクリを知らないと、苦労するね」
吹奏楽の先生「キーを変えて楽譜を書き変えるのは大変だけど、この音階スライドでは、ずらした場所に対応する調号を添えてもいいですね。小窓を設けて、スライドで対応する調号が見えるようにするとかね」
吹奏楽の先生の背景に、想像した鍵盤モノサシと音階スライドを表示。
ショージ「なるほど、アイディアいただきます」
この道具は、後にハルが、自身のアイディアで、ピアノの譜面台に置けるように、折り目を付ける工夫が使われる。
ショージ。ハルに向かって。「いいか、調号の♭が1つ増えるということは、音階スライドがいくつ移動……」
吹奏楽の先生。ショージの話に割り込む。「東海林君、悪いが、その説明は控えてください」
ショージ「どうしてですか? きちんと説明した方が、早く理解できるでしょう?」
吹奏楽の先生「そうではありますが、こちらの生徒は、えっと……」
ハル「早坂です」自分を指す意味で、指先を揃えて、軽く鎖骨の下にあてる。
吹奏楽の先生「そうそう、見学の申込書にお名前は書いてあったけれど、申し訳無い、すぐに思い出せなかった」
ハル「いえいえ」
吹奏楽の先生「興味をもって、楽器の謎解きのために、自分で見学に来たのですね」
ハル「そうです」
吹奏楽の先生「ということは、この道具を受け取って、自分で規則性を発見するのも楽しいでしょう。規則性を知っている人から答えを聞いても、よくわからない」
吹奏楽の先生「それより、自分でじっくり謎解きする楽しみを、残して置きましょう」
ショージ。不満気に。「ああーん、そうですね……」残念そうに、手をこまねく。「……チェッ、教えるのは自慢になって、気持ち良かったのに」
吹奏楽の先生。ショージに耳打ちする。「鍵盤ドーナツを教えたら、驚かれますよ」
ショージ。嬉々として、ハルの方を向く。
吹奏楽の先生。心の声。「(ああっ、早坂君には、自分で作るように言ってほしい。そうすれば、規則性の発見も近道だから)」
ショージ「この、横方向のスライドを、円形のドーナツにする」
ハル「円形?」
ショージ「1回しかやらないから、よく見ろよ」ハルに、鍵盤モノサシを向けて、ドーナツ形に変形させる。瞬時に、それを後ろ手に隠す。
ハル。驚く。「え? どうやったんですか? 手品?」
ショージ。ハルからの質問を無視して、黒板に、鍵盤ドーナツを書く。中央の円を、時計の文字盤のように12等分。そこから外側に半音区切りで、黒鍵と白鍵。
ショージ「これに、さっきの音階スライドが回転するようにする。先生が言ってた、小窓を付けたり」
鍵盤ドーナツの隣に、音階円盤(音階スライドを円形にしたもの)を書く。音階円盤から、鍵盤ドーナツの中央の穴に向けて、矢印を書く。
鍵盤ドーナツが、円形の紙ではなく、大きな紙にドーナツ型を描いたものなら、余白をあれこれ活用できる。
ハル「おおーっ! メモする、メモする。帰ったら、すぐに作ります」メモを出して、「小窓」と「音階円盤」と書く。
ショージ「これを作ったら、規則性の発見もできるっ! 役立つだろ」
ハル「はい。鍵盤ドーナツは、ヤッ子先生から教わりましたが、小窓と、音階円盤は、思い付きませんでした。音階円盤は、円形ですよね」
ショージ「鍵盤ドーナツも、教わっていたのか」
ショージとハルの会話を背景に、吹奏楽の先生の表情が、ほっとしたように変わる。吹奏楽の先生の顔の周囲にある文字「自分で作るように」「小窓を空ける」「規則性がわかりやすい」に、「マル済」のスタンプが押される。
吹奏楽の先生。心の声。「(自分で作ると、より理解が深まる。2回くらい作れば、もう理解できて、ほぼ暗記できる)」
▽ 場面変更 ● ── ●
先生ちゃん。先生は、吹奏楽の先生。
説明用の別世界。背景は無地。
先生「調号の♯も♭も、増えて行くのは、規則性があります」
先生「調号で、♯と♭が混在することはありません」
先生「調号の♯も♭も、まずはここに付いて、次はここに付いて、次はここに付いてというように、増えます」
先生「2つ目が付く時は、1つ目は消えないし、移動もしない。3つ目が付く時も、1つ目と2つ目はそのままで、単に3つ目が付け足される」
先生「何個目を付けるのも、これまでの♯も♭もそのままで、単に増えるだけです」
ヘ音記号に♯が6つの調号と、♭が6つの調号を表示する。6つの調号の並び方がわかりやすいように、調号の背景に平行四辺形を重ねる。
先生「♯の増え方は、何となく、右上がりのように見えるね。♭の増え方は、右下がりのように見えるね。ということは、♯も♭も、最初の2つまで、どこに付くのかを覚えたら、3つ目からは、ゆっくり考えながら書けるんだ」
先生「このような並び方は、ヘ音記号だけでなく、ト音記号でも、ハ音記号でも同じだよ」ヘ音記号、ト音記号、ハ音記号の全部に、♯と♭が6つの調号。ト音記号に♯が6つの調号も、右上がりの形。
先生「と、言いたいけど、ト音記号の、この♯が、五線からはみ出しているね。だから、仕方なく、この♯だけは、1オクターブ下に書くんだ」
ト音記号に♯が6つの調号の、ラの♯が分身の術で分かれ、五線内に移動する。分身の術で分かれる時、元の♯は、水色になって「名残り」のような表示。
先生「ラに♯を付けていたけど、五線からはみ出しているから、五線内のラに書く。五線の外でも、五線の中でも、ラだから、同じ意味だよ」
先生「もしかすると、ト音記号の調号の、ラの♯が、こんな書き方だから、「調号に規則性は無いのかも」という誤解になるのかもね」
▽ 場面変更 ● ── ●
吹奏楽部の、部室内の別な場所。
音楽の先生は、ハープ(ダブルアクションハープ)の近くで立っている。
生徒。音楽の先生に質問。「先生、楽譜って、やっぱり読めないと、いけないんですか?」
音楽の先生「「いけない」ということはありません。僕にとっては、とても便利でしたが、誰しもが便利かといえば、そうとも限りませんね」
生徒「便利だとは思うんですが、難しくて、だから、やる気が出ないんです」
音楽の先生「水金地火木土天海冥」ここでは、最後の冥王星を省いても良い。現代の中学校での教え方に倣う。
生徒「いきなり、何ですか?」
音楽の先生「惑星の並び順だということは、ご存じですか?」背景に、左の太陽から、右に向かって水金地火木……の絵。
生徒「はい、知っています」
音楽の先生「落語の『寿限無』の名前を、早口で聞いたら、その場ですぐに真似はできませんね」
生徒「もちろんです」
音楽の先生「早口言葉を、覚えるには、文字を使うと、自分のペースで覚えられます。楽譜も同じ、耳で聞いた音を覚えるには、ゆっくり楽譜を読みながらができます」
生徒「そうですね」
音楽の先生「しかも、「水金地火木土天海冥」を漢字で読むと、並び順は違いながらも、曜日と共通しているという、新たな発見もあります」
生徒「でも、面倒です」
音楽の先生「教育漢字、常用漢字を、短期間で全部、覚えるのは面倒ですが、学校だけでなく、日常生活の中でも漢字に接していますね」
生徒「そりゃ、そうですよ」
音楽の先生「楽譜も、楽譜の決まりを短期間で覚えるのは無理ですが、聞いた曲の楽譜を読んで、そこから親しむだけで、十分に便利だと思いますよ」
生徒「うーん、そうですね」
音楽の先生「僕は、教師という立場から、学びたい気持ちになる情報を、お教えします。けれど、万人が学びたい気持ちになるとは限らないことも知っています」
音楽の先生「いつか、何かの縁で、学びたい気持ちになると嬉しいです。楽譜だけでなく、世の中には、たくさんの楽しみがあります。楽しい日々、楽しみを期待できる日々であることを、教師として望んでいます」
生徒「ありがとうございます。楽譜そのものが楽しければいいんですが、演奏を楽しむために、我慢して学ぶっていうのが、面倒なんです」
音楽の先生「楽譜そのものを、謎解きとして楽しんでいる生徒がいますよ」ハルを指す。
▽ 場面変更 ● ── ●
吹奏楽部の、部室内の別な場所。
さっきの、ハルとショージの、鍵盤モノサシの話の続き。
吹奏楽の先生「闇雲に規則性を見付けるのは難しいでしょう。スライドしながら、調号と同じズレを探すのは面倒なので、裏ワザを教えよう」
吹奏楽の先生「調号に♯がいくつあっても、最後の♯のところに、音階スライドの「シ」を合わせる。♭がいくつあっても、最後の♭のところに、音階スライドの「ファ」を合わせる」
画面の左上に、♯1つの調号と、「最後のここがシ」の指し棒。画面左下に、♭1つの調号と、「最後のここがファ」の差し棒。
♯1つの右隣に、♯2つの調号で「最後のここがシ」。♭1つの右隣に、♭2つの調号で「最後のここがファ」。このように増えて行く。
増える時、最初は五線が画面いっぱいに大きかったのが、増えながら小さくなり、全部が画面内に収まるようにしても良い。
ショージ「あ、それ言おうと思ったのに」
吹奏楽の先生「もうひとつ、これは、大して役立たない裏ワザだが、調号に従って、ピアノの鍵盤を、下から上に、上から下に、順番に鳴らすと、何となく「ド」に聞こえる鍵盤がある」
ショージ。吹奏楽の先生の言葉を聞いて、ピアノで、ニ長調の音階を、3オクターブくらい、何度か往復する。
吹奏楽の先生「おおっ、ありがとう。それだよ、やって欲しかったのは」
ショージ。音階を演奏しながら、Dの鍵盤に近付くとゆっくりになり、Dの鍵盤で演奏を終える。
ショージ「この鍵盤が、「ド」のように聞こえただろう?」
ハル「はい」ショージの指を見て、Dの鍵盤であることを確認する。
ショージ「だから、音階スライドの「ド」を、この鍵盤に合わせるんだ」
ハル「うーん、なるほど。でも、自宅にピアノがありませんし、ピアノがあっても、調号に従うだけで精一杯なので、これがドに聞こえるような、滑らかな演奏ができません」
吹奏楽の先生「そうですね。初心者向けではない、「大して役に立たない」というものでした」
ショージ「絶対音感を持っていたら、「ドに聞こえる」の言い回しに、違和感がありそう」
吹奏楽の先生「忘れないうちに言っておくけど、「調号」は「調子記号」の略だよ」背景に、「調号」「調子記号」の文字と、そのフリガナ。
ショージ「え? 「調号」って、略した言い方だったんですか?」
吹奏楽の先生「実は、そうなんだ」
吹奏楽の先生「好きな歌があって、楽譜が無くて、そんな時、「耳コピ」をすることがあるよね」
ハル「耳コピって、何ですか?」
ショージ「耳でコピーする。絶対音感があれば、曲を聞いたらそのまま楽譜に書けるよな」
ハル「らしいけど、絶対音感って、都市伝説もある」
ショージ「いや、都市伝説ではない。絶対音感を持つ人は、実在する」
吹奏楽の先生「早坂君が言ったのは、絶対音感を持つ人の噂をすると、嘘もあるという意味ですよ」
ショージ「ああ、なるほど。で、耳コピだが、聞いた音楽を楽譜にするために、絶対音感を持たなかったら、楽器を頼りにするよな。それが、聞いた音をコピーする、耳コピだ」
ハル「楽譜にコピーするのが、耳コピなんですね」
吹奏楽の先生「まあ、そうでもあるけど、楽譜に書かないまでも、聞いた曲を口真似するのだって、耳コピと言えるかもね。さっき僕が言ったのは、楽器でメロディを弾くとか、そういったことだよ」
吹奏楽の先生「どの鍵盤が、どの高さなのか、よくわからない時に、手探りで全部の鍵盤を試行するのは、効率が悪いし、混乱もする」
吹奏楽の先生「もし、その曲が、「ああ、終わった」という感じで終わっていたら、その最後の音の鍵盤に、音階スライドの「ド」を合わせる。最後の音だけなら、探す手間は小さいよね」
吹奏楽の先生「最後の音を頼りに、音階スライドを合わせたら、メロディは音階に選ばれた鍵盤で試すと、当たることが多いよね」
吹奏楽の先生「和音も、音階に選ばれた鍵盤が使われていることが多い」
ハル「曲の終わりが、そんな感じじゃなかったら?」
吹奏楽の先生「その場合は、曲の途中で、休憩のような区切りがあるだろう。区切りの最後の音は、音階スライドの「ソ、シ、レ」のどれかのことが多い」
吹奏楽の先生「そうでなくても、メロディの一部を手探りで鳴らしてみて、どの黒鍵が使われているかで、どの調号なのかを推測することもできる」
吹奏楽の先生「これは、調号に慣れたら、できるようになるから、早く慣れたら便利ってことだ」
ショージ「そう、「よく使う鍵盤」なんだから、当たる確率が高い」
吹奏楽の先生「よく気を付けた言い方ですね」
ハル「え? 気を付けてる?」ショージを見る。
ショージ「え? 気を付けてる?」
吹奏楽の先生「ご自身で自覚が無いのは寂しいですが、無意識に気を付けていらっしゃるのでしょう」
ハル「何に、気を付けているんですか?」
吹奏楽の先生「「必ずしも、そうとは限らない」ということに、留意するのです」
ショージ「そりゃそうでしょう。外れることもありますから」
吹奏楽の先生「耳コピなら、推測が外れても、誰にも迷惑ではない。でも、人に対してなら、推測が外れると、失礼以上に迷惑なこともある」
ショージ「迷惑ですか?」
吹奏楽の先生「ビジネスの場で、取引先の会社の人と会う。取引先の会社の人は2人いる。初対面で、名刺交換をする時、どっちが上司か。名刺交換は、先に上司とするからね」背景に、50歳代の男、20歳代の女。
吹奏楽の先生「多くの場合、年上の男性が上司、年下の女性が部下だね。でも、まだ確認をしていないから、名刺交換をする時は、相手の出方を待つのが良いね」背景の若い女性が名刺を出しながら「上司です」と言う。
ハル「そうなんですか!」
吹奏楽の先生「相手の出方を待たずに、年上の男性と名刺交換をするのは失礼だね。その場面だけなら小さな失礼だけど、女性にとっては毎回のように小さな失礼を受けるのが、ずっと心に積み重なっている」
ハル「うんざりしますね」
吹奏楽の先生「もしも、僕が君に、「楽譜くらいは読めるだろう、中学生なんだから」と言ったら、嫌な気分にならないか?」
ハル「なります」
吹奏楽の先生「自分の日常生活で当たり前のことでも、世界中の人にとって、少なくとも日本中の人にとって当たり前とは限らない」
吹奏楽の先生「小学校で習ったけれども、日常的に楽譜に接していないから、忘れているのは当然。常日頃から楽譜に接している僕の基準は、君の基準とは違うよね」
ショージ「生活環境が違うのに、中学生なら楽譜が読めるという推測をして、外れたら、失礼というか、迷惑というか」
吹奏楽の先生「「これくらいできるだろう、馬鹿じゃないなら」とか、「どうせお前は馬鹿だから、できないだろう」とか、どっちにしても、勝手な推測は攻撃になるよ」
ショージ「でも、耳コピなら、推測が外れても大丈夫。ペンタトニックで試してもいいし。とにかく、「よく使う鍵盤」なんだから、当たる確率が高い」
ハル「そう、その、ペ、ペタンコピンク? 5つを選ぶ」
ショージ「ペンタトニック」
ハル「そうそう、それ」
ショージ「普通の長音階なら、音階スライドの「ドレミ……」の7つ、それよりも少ない5つの選び方で、黒鍵だけの方法を使ったんだ」両手でゆっくりの演奏例、早い演奏例、時々「キャンキャン」を入れる演奏例。
ハル。思い出す。「そういえば、第1話で、ヤッ子先生から教わっていました。黒鍵だけを使うとって」
ショージ。がっかりする。「なんだ、これも知っていたのか」
ハル「他にも、選び方はあるんですか?」
ショージ「あるさ。7つよりも多い選び方や、その時々のコードによって選び方に偏りがあったり」
吹奏楽の先生「選び方はいくつかあるけど、有名なのは、ドから数えて4番目のファと、7番目のシを抜く「ヨナ抜き」で、さっき東海林君が黒鍵だけを弾いたのは、嬰ヘ長調のヨナ抜きです」
背景に、音階スライド。長音階に数字。「四七抜き」と、そのフリガナ「ヨナぬき」。音階スライドを鍵盤モノサシに当てて、「黒鍵だけ」と表示。
吹奏楽の先生「ヨナ抜きは、日本では古くから馴染みがあって、偶然にも、スコットランドから日本に輸入された歌にも……」周囲の雑談の声が大きくなって、話をやめる。
ステラ。見学者が全員来たので、思い立つ。鼻歌で黒板にスキップで向かう。赤のチョークを持って、大きな何かを書き始める。
▼ CM明け。 ▼── ──▼
CM明けの定型。他の登場人物は知らない、自宅などの場面。
今回は例外で、吹奏楽部の見学内。
ステラ、黒板の余白に、好きなメルヘンのキャラの絵や、花やリボンなどを描いている。中央には、大きく「ようこそ 吸奏学部へ」と書いてある。
ステラ。明るいファンファーレを歌い、明るい大声で。「ようこそ、吹奏楽部へー!」
見学者。隣の人に向かって。「「すいそうがくぶ」って、あんな字だっけ?」
ハル「ステラ、字が間違ってないか?」
ステラ。辞書を得意気に持ち。「ちゃんと調べたよ。「すいそうがくぶ」だから「すう」「かなでる」「がくぶ」って。あっ、そうだ、字のレタリングは、間違いにしないでね」
みんな。心の声。「(なぜ「すいそうがく」で調べないんだ)」
ステラ。見学者それぞれに挨拶。「わざわざ部室棟までありがとうございます」と言うつもりが「ぶしつれんまで」と言っている。背景に「部室棟」と、そのフリガナの「ぶしつとう」。誤りの「ぶしつれん」にバツ印。
みんな。心の声。「(おい、誰か教えてやれよ)」
ステラ。独り言の文字を、ステラの近くに表示。「吹いて演奏するのに、なぜ「すいそう」なんだろう?」
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