02_A__02_04 第2話 Aパート 分割 2 / 4
第2話 Aパート 分割 2 / 4
【 第2話 概要 】
サブタイトル:前にジャンプ、後ろにジャンプ。
OP曲前:小学生時代のハルとミッツ。ハノンが気持ちいい。基本技術でコストダウン。
Aパート:ショージのストローオーボエ。スタッカートの意味は複数。音価。8分音符からは符桁。「4分音符は1」を、ピザで単位が重要。小節にぴったり。調号と臨時記号。ナチュラルは必ず白鍵。「6/8」「3/4」拍子の違い。
CM明け:ステラの自宅、蔵書と、おかしなメルヘン。放屁で空気清浄機が稼働。
Bパート:ステラが流行歌の音楽雑誌で、繰り返し記号の確認。リハーサルナンバー。ハルが数学の授業で「オクトーバは8番目の月」「音楽のオクターブは8」と聞き、音楽の先生から音程を簡単に。鍵盤モノサシと「3+3=5」の謎。
Cパート:ストローオーボエの作り方。
予告:父親はささやかに拍手をもらい、QRコードは意味がわからず、ヤッ子はボワワワッ。アクロバット2号が飛んでくぞ。
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ミッツ。指で、ハルの書いた音符の玉を指す。「これ、真ん丸じゃなくって、ちょっと斜めだよ」
ハル「それは、活字のデザインと同じだから、手書きなら無視してもいいだろう」背景に、明朝体の「口」「大」の例。横棒の右側の三角(ウロコ)、縦棒が太い、右払いを指して「手書きとは違う」と表示。
ミッツ「デザインじゃなく、違うことを表すの。「千」「干」「于」が違うように」背景に、3つの文字「千」「干」「于」の違いを指し棒で。ミッツの顔だけキャラが指している。
ハル「それは、文部科学省も「どっちでもいい」って言っていないか?」
ミッツ「「木」の縦棒なら、はねても良いだろうけど、「犬」「太」は点の場所は大切だったり、「塚」に点があったり無かったり、漢字って基準がよくわからないよね」
ハル「ウーロン茶って、漢字で書いてみろ」
ミッツ「うるさいなあ。音符のこと教えないよ」
ハル「ごめんなさい、お許しください、ミッツ様」
ミッツ「わかればよろしい」
ハル「じゃあ、玉は右上がりに書けばいいんだな」
ミッツ「右上がりと右下がりの2種類があるよ」
ハル「2種類? 冗談だろ。まさか、実は3種類だったりして」
ミッツ「あはは、大丈夫だって。形は右上がりと右下がりの2種類限定! 色は白と黒の2種類限定!」両手のVサインを、顔(目、口など)にあてて、かわいらしいポーズ。
この、2つの「2種類限定」に合わせて、背景に全音符と2分音符の2種類と、2分音符と4分音符の2種類を、ピョコと出現させる。
ミッツが、白黒のストップモーションになり、おどろおどろしい文字で、「自信たっぷりの、この仕草が、第9話への伏線だとは、ミッツは気付いていない」が、ショッキングな音と共に表示される。
文字と共に、ナレーションも添える。ナレーションは、可愛らしく、息の抜けた言い方の方が、怖ろしくもコミカル。
これにより、音符の玉の種類を、他にも知っている視聴者が、にやりと笑う。これが無ければ、視聴者から「玉の種類は、他にもある」と苦情が来る懸念がある。
ハル「本当だろうな。それで、その違いは、何なんだ?」
ミッツ。Vサインを横向きにした、手話の方法。人差し指をつまみ「「1.普通はこれ」と……」、中指をつまみ「「2.これだけ特別」の違い」
ミッツ。ハルが書いていた五線ノートの、開いている場所に、例を書く。
ミッツ「特別なのは全音符で、これだけが右下がり」五線にト音記号を書き、第1間のファの位置に全音符。
ミッツ「棒の無い全音符だけ、右下がり。棒のある音符は全部、右上がり」
ミッツ「全音符にだけ棒が無くって、普通は棒が付く」ラ、ドの位置に2分音符。「ファ、ラ、ド」の玉が積み重なる。
ハル「理由がわからん」
ミッツ「もし、全音符も右上がりなら……」新たに音符を書く。全部右上がり。ファ、ラ、ドのうち、上向きの棒がラ、ドにだけ。「……この縦棒が、ファまで届いているのか、いないのか、わかりにくいでしょ」
ミッツ「でも、全音符が右下がりだと……」最初に書いた、全音符が右下がりの音符を指す。「……棒が届いているのは、右上がりの2分音符までで、その下の全音符は棒が付いていないって、わかるでしょ」
棒が届いているかの説明の際、棒が色変わりの点滅。
ミッツの、次の心の声に重ねて、背景に楽譜。3個の黒玉がファ、ラ、ド。ファには下向きの棒で4分音符。ラ、ドは上向きの棒で8分音符。この8分音符は、続けてシの8分音符がある。
ミッツ。心の声。「(この場合、真ん中の玉は、上向きの棒か、下向きの棒か、わかりにくいんだけどね。ハルは気付いていないから、黙っておこう)」
ハル「白い玉は、線が少し太くなっているな」
ミッツ「それこそが、活字のデザイン。これのおかげで、右上がりか、右下がりか、見やすい」
背景に、活字の全音符の玉と、2分音符の玉。手書きと比べて、マルを描く線の太い箇所があると指し棒。隣に、明朝体の横線が細い、縦線が太いことも示す。
ハル「手書きなら、どっちかわかりにくいな」
ミッツ「これは、個人の工夫だけど、2分音符の玉は普通の大きさ、全音符の玉は横に少し長く書いたりするの。これなら2分音符と区別しやすい。まあ、手書きだから、綺麗じゃなくてもいいかって、個人の工夫」
ハル「横に長くてもいいのか? 音符の玉は、重要なんだろう?」
ミッツ「とんでもなく、大きさを変えたら、まずいけど、重要なのは、縦の大きさ」
ハル「縦?」
ミッツ「こうして、音符の玉が積み重なっているのって、見たこと無い?」五線に、4分音符で「ファ、ラ、ド」を書く。
ハル「うん、あるような気がする」
ミッツ「こうして、ぴったり隙間無く積み上がる大きさ」
ミッツの背景に楽譜を表示。ト音記号の五線の下第1線の「ド」から右上に向かって、上第2線の「ド」まで、全音符が斜めに並んでいる。
ミッツ。第1間の「ファ」を指す。「こんな具合に、玉が、線と線の間に、ぴったりの大きさだよ。線と線の間に玉があるから、これが「間(かん)」の場所。このファも、下のレも間。ラも間。1個飛ばしだね」
ミッツ。第2線の「ソ」を指す。「間(かん)が1個飛ばしだから、じゃあ、線と重なっているのは、どうなのかと言えば、玉の大きさは変わらない。玉の中心が、線と重なる高さに書く」
ミッツ「そうすると、これ、順番に並んでいるのは、「線」「間」「線」「間」……と、交互になる」
ハル「さっきミッツは、少し横に長く書くって言ったが、縦は大きくしないのか?」
ミッツ「手書きなら、少しくらい大きくても、読めればいいってこともあるけど、誤った書き方だってのは、覚えておくこと」背景に、「線」の全音符が大きく、上下の2つの「間」を埋める大きさを表示し、「大きすぎる」と添える。
ハル「そうか。「ドレミ……」と順番なら、音符の玉は「線」「間」「線」「間」……となるのか」
ミッツ「これは「五線」と呼ぶように、5本の線だけど、足りなかったら、こうして継ぎ足しできる」下端と上端の、それぞれの「ド」を指す。
妖精ちゃんが、ミッツの肩をトントン叩く。耳打ちする。左右の手で何かを挟むような仕草。
ミッツが喜びの驚き。
ミッツ「玉の大きさの説明は、こんな表現もある。斜めに並んだ玉を、両方からギューッと押したら、ジグザグになる」
さっきの、斜め並んだ全音符が、左右の両側から板で押され、現実ではあり得ない、一直線に積まれるが、弾力で「プニュ」と反発し、ジグザグに積み重なる。
ハル「なるほど、そんな大きさなのか」
ミッツ「ここまでは、玉の大きさの話。この、ジグザグで思い出したけど、「ファ」と「ソ」を、一緒に鳴らしたい時は、こんな書き方をする」ハルの五線ノートに、2分音符で、第1間の「ファ」と、第2線の「ソ」を斜めの位置に手書きする。
ハル「こんな書き方はしないのか?」五線ノートに、「ファ」と「ソ」が同じ横位置で重なるように書く。
ミッツ「違う違う。斜めの位置になるけど、こうする。2分音符だから、棒があって、1本の棒に、2つの玉が付く」
ハル「でも、音符のこんな書き方は、誤りだろ?」ミッツが書いた「ファ」と「ソ」を斜めの位置のうち、「ソ」だけ書く。棒の右側に玉がある。
ミッツ「「ソ」だけなら、そんな書き方はしないのっ! 「ファ」と「ソ」だから、仕方なく、2分音符の右側に玉を書いただけ」
ハル「さっきから言ってる2分音符って、「2」なんだろ?」
ミッツ「「2」だけど、「2つ」というより、「2分の1の時間」ってこと。どれだけの時間を示しているかは「音価」っていう。2分音符の音価は、全音符の2分の1なの」
背景に「音価=音を鳴らし続ける時間」を表示し、「音価」にはフリガナを添える。「鳴らし続ける」または「続ける」を強調する。
ハル「2分音符が「2つ」で、4分音符が「1つ」で、8分音符が「半分」ってのは、小学校で習ったけど、わけがわからん」
ミッツ「だから、「2分音符」の「2」は、「1つ」「2つ」の「2つ分」の「2」じゃないの。数えるんじゃなく増えるんじゃなくって、「時間が何分の1か」って分割で時間が短くなるの」
ミッツ「説明するから、こっちに来て」黒板に向かいながら、ハルを手招き。ミッツの手の平は、上向きにしておくと、日本を含め、多くの国で手招きの意味になる。指も開いてひらひらさせると、強引さと可愛さも併せ持つ。
ハル。露骨に面倒がる。「ここでも、いいだろう」
ミッツ「へえー。あんた、自分の立場をわかってないんだ」両手で、何かの形を作るが、ぼかし(モザイク)で隠される。
次の瞬間、ハルが最前列の座席に座っている。
ミッツ。黒板に横長の長方形を書き、長方形の左側に全音符を添える。その下に、横が半分の長さの長方形に、2分音符を添える。長さの違う2つの長方形は、左端を揃える。以下、長方形は左端を揃える。
全音符の長方形の右側に「全部の音符の長さの基準となる音符」と書く。ここの「全」と「音符」をマルで囲む。文字数が多いので、長方形の右側に書いた。
2分音符の長方形の右側で、「全部の音符の」の文字の下に、「全音符の2分の1の時間、音を出し続ける音符」と書く。ここの「2分」と「音符」をマルで囲む。
ミッツ「この音符の名前が「全音符」で、この音符の名前が「2分音符」だよ」
ミッツが長方形の左側の音符を指し、妖精ちゃんが長方形の右側の文字を指す。または、黒板の全体を見渡し、左右の中央が折り紙の谷折りになり、時空の歪みに吸い込まれ、左側の音符と、右側の文字が近付く。
ミッツ「音符の名前は、「音を鳴らし続ける時間」を表す。これが、さっき言った「音価」」背景に、さっきと同じ「音価=音を鳴らし続ける時間」を表示する。
ミッツ「全部の音符の基準は「全」音符。曲によって違うけど、2秒から4秒の曲が多いよ」
ミッツ。声で「ビー」など、楽器の音を真似しながら、長方形の左から右に向かって指を移動すると、説明のために、指の動きに合わせて長方形に色が塗りつぶされる。
ミッツ「全音符を基準として、2分音符は、2分の1の時間、音を出し続ける。だから、名前が2分音符」
ハル「おおっ、そういうことか。まずは、音符の名前の謎は解けた。ということは、4分音符は、時間が4分の1か?」
ミッツ「エグザクトリィ(その通り)」黒板に、4分音符から32分音符まで、音符と長方形を追加。ついでに、不細工で可愛いキャラも描く。
ハル「なんじゃ、それ。ステラの真似をしたいのか?」ステラの顔を思い描く。
ミッツ「あはは」ちょっと恥ずかしいが、まあ、いいじゃないかという笑い。
ハル「ミッツには似合わないが」
ミッツ。睨む。「いいじゃない、ステラちゃん、可愛いんだから」
ミッツ「ついでに、休符もあるよ。音符が「音を出し続ける時間」で、休符は「音を出さないでいる時間」。どちらであっても、時は平等に流れ続ける」各音符の隣に、各休符を添える。
ミッツ「2分音符なら、この時間、音を出し続ける」長方形を、左から右に指を移動しながら、声を「あー」と出す。指の動きに合わせて、長方形に色が塗りつぶされる。
ミッツ「2分休符なら、この時間、音を出さないでいる」長方形を、左から右に指を移動しながら、口に指を当てて、黙っていることを示す。または、呟き「音を出さないでいる、出さないでいる」と言う。指の動きに合わせて、長方形に色が塗りつぶされる。
ハル「3分の1は?」
ミッツ「音符は、「半分の半分の……」ってものだけで、3分の1の音符は無い。その代わりに、3分の1を示すための特別な書き方をするけど、それは、またの機会に」
背景に「3分の1など、「連符」は、第6話と第8話で説明します」を表示する。ここの主題の「音符の音価」「拍子記号」から外れるため、気になった箇所は予告程度にしておく。
ハル「じゃあ、「4分音符が1で、2分音符が2」ってのは、4分の1の時間が2つなら4分の2か? ややこしいな。単純にならないか?」
ハル「例えば、4分音符は「4」、2分音符は「2」って、ああ、うまくいかないな。でも、どうせ4分音符は「1」に決まっているから、何か、ぴったりな説明が、できないかな」
ミッツ「それねえ、困っているんだけど、決まってないんだよね。4分音符を基準にする曲なら「4分音符が1」だけど、8分音符を基準にすると「8分音符が1」なんだよね」
ハル「基準って、何だよ」
ミッツ「手拍子のことなんだけど、教える時に「この曲では、4分音符を1つと数える」のうち、「この曲では」を省略するから、教わっている方は「いつでも、4分音符を1つと数える」と勘違いする」
背景に注意書き「実際は、「この曲では」を省略しないことになっています。なぜか、忘れられているようです」を表示する。
背景に注意書きの続き「しかし、「この曲では」が記載されていない教則本も、少なからずある」を追加する。
ハル「その、「この曲では」って言うからには、基準が曲によって違うってのか?」
ミッツ「そう」
ハル「うーん。ヤッ子先生も言ってたけど、楽典が紛らわしいのは、場合によって基準が違うのに、「今回の場合は」ってのを、省略したのが原因なのか?」
ミッツ「ああーんと……そうかも。あたしは、いつの間にか自然にわかっていたけど」
ハル「ところで、基準って、なんだよ」
ミッツ「手拍子のための楽譜ってこと。音符は音を出し続ける時間を表して」両手で、長方形の左右の幅を示す。
ハル。ミッツが長方形の横幅を示すため、ハルに背中を向けている途端に、大声で。「手拍子の、いっぱく、にはくってことか」背景に「1拍、2拍」を表示する。
ミッツ。ハルの大声に、びびくんと驚く。「いきなり大声を出さないでよ」
ハル。黒板の別の所に歩きながら。「ゴメン」
ハル。黒板に「手拍子」「1拍、2拍」と書く。
ハル「「1つ、2つ」ってのは、「1拍、2拍」ってことか。漢字のこれだろう?! 「拍手」の「拍」だ」
ミッツ「だから、さっきから言ってるじゃない」
ハル「ミッツは知っているから、言っているつもりでも、こっちは知らないんだ。だから、「1つ、2つ」と「1拍、2拍」と、漢字の「拍」が繋がっているって、今、気付いたんだ」
ミッツ。ヤッ子の言葉である「君にとって当たり前の知識でも、早坂君は迷いながらだから」を思い出す。
ミッツ「ああ……じゃあ、今、言った」
ミッツ「手拍子は叩く時刻、タイミングを表す」片手で、長方形の左端をコツンと叩く。
説明に、「時間は長さがある。時刻は長さが無い」の指し棒があっても良い。
ミッツ。黒板の全部の長方形を、全音符の長さになるだけ付け足す。16分音符と32分音符の長方形は、省略して、点々「……」も使用する。
または、ミッツが指をパチンと鳴らすと、妖精ちゃんが長方形を書く。
省略した点々「……」と、妖精ちゃんが書いた全部の長方形の、どちらが、視聴者の「うんざり」が小さいか、小さい方を採用する。
ミッツ「多くの曲は、4分音符の「鳴り始める瞬間」の時刻で手拍子するから、手拍子が2回分の意味で「2つ」とか言ってるの。これじゃ説明不足。なぜなら、時間は「2つ分」って言えるけど、時刻は「2つ分」じゃなくて「2回分」でしょ」
ミッツ。「2つ分」と言う時に、両手で長方形の幅を、1つ、2つと移動する。「2回分」と言う時に、1回目、2回目と、長方形の左端を指してから、コツ、コツと叩く。
両手で黒板の長方形の幅を表す時、胴体が邪魔なので、肘から指先までを描く。または、肘から先だけが宙を浮く。または、妖精ちゃんが示す。
ミッツ「曲によっては、8分音符の「鳴り始める瞬間」で手拍子するのもあるし」
ハル「なるほど。でも、歌に4分音符が無ければ、手拍子ができない」
ミッツ「ではなくて、手拍子の楽譜は、歌の楽譜と並べて書くんだな」黒板に『メヌエット ト長調(♪レーソラシド、レーソーソー)』(バッハ)の2小節を書く。
普通の教室で、黒板には五線が無いから、高さは曖昧。8分音符は、符桁を使わず、それぞれ独立して旗を書く。五線を含め、全部が手書きなので、説明用の綺麗な楽譜が望まれる。
ミッツ。呟く。「面倒だからって、妖精ちゃんにお願いするのは、やりすぎか?」
ハル「音楽室に行こうか? きっと、ピアノやギターを使いたくなるだろう」
ミッツ「ちょっと、面倒な気持ち」
ハル「音楽の先生に許可をもらう時間を含めても、4分33秒くらいだろう」机上の資料を、手早く揃えて、歩き始める。
この「4分33秒」は、文字で表示しておく。
ミッツ。手早く黒板に書いたものを消し始める。
ミッツ「あんたも、消すのを手伝いなさい!」
ハル。引き返して、消し始める。
▽ 場面変更 ● ── ●
校内のどこか。
さっきのハルのセリフ「4分33秒」の文字が、まだ表示されたまま。
生徒A「俺の方が、上手だ」
生徒B「いや、俺だ」
生徒C「ねえねえ、何を喧嘩しているの? もしかして、あたしを奪い合うための勝負?」
生徒B「もちろんそうだが」
生徒A「俺達の、どっちが、ギターが上手か」
生徒Aと生徒Bが、声を揃えて。「審判をしてほしい」
生徒C。心の声。「(息がぴったりで、交互にセリフを言うなんて、まるで、用意された脚本を読んでいるみたい)」
生徒C「え? いいけど、ギター演奏の、腕前の優劣って、あたしは、わかんないよ」
生徒B「いいんだよ」
生徒A「ギターは弾かないから」
生徒C「弾かないの? 何て曲なの? 曲名は?」
生徒AとB「ジョン・ケージの曲で、タイトルは『4分33秒』だ」
さっきのハルのセリフ「4分33秒」の文字が、大袈裟になる。
▽ 場面変更 ● ── ●
音楽室。
ハルとミッツが、ハルの教室から移動して来た。
黒板には、音符の音価を示す長方形と、『メヌエット ト長調』(バッハ)の2小節が、既に再現されている。
ミッツ。『メヌエット ト長調』の下に並べて、手拍子用の、4分音符だけの楽譜を書く。
ミッツ。2小節を、軽く歌う。
ミッツ「曲は知ってるでしょ」
ハル「うん、知ってる。だけど、それ……」調号の♯を指す。「……これって、何だっけ?」
ミッツ「ああ、シャープっていうの。半音高くって意味」
ハル「それが、よくわからないんだよ。シャープやフラットって、音符のためのものだろう。どうして、音符とは関係無い場所に、書いてあるんだ? そんな所に書いてあると、音符とは別な意味なのかと思った」
ミッツ「うーん、仕方ないなあ。じゃあ、横道に逸れるけど、シャープの仲間の話をしよう」
ハル「お願いします」
ミッツ「まず、普通の音符は、ピアノの白鍵を弾く。これはわかるでしょ?」
ハル「うん、わかる」
ミッツ「普通だったら白鍵だけど、じゃあ、黒鍵を弾く時はどうするか。そのために、シャープやフラットを使う」
ミッツ「まずはシャープ。これは半音高く」
ハル「半音って?」
ミッツ「隣の鍵盤ってこと。白でも黒でも平等に、隣の鍵盤。ギターで言えば、隣のフレットのこと」
背景に、ギターの演奏者の視点から、ギターを見下ろす。フレットが一斉に赤く点滅。ギターを見下ろしているのがわかるように、ギターのボディの半分から、糸巻き部分までが画面の中。演奏しない左手の指も表示しておく。
ハル「ああー、あれか」納得する。立ち上がって、ピアノの鍵盤の蓋を開ける。
ハル。第1話と同様に、紙を出して、ピアノの鍵盤の、手前側の、白鍵だけの部分を隠す。鍵盤の奥の、白鍵と黒鍵が縞模様のように見える。
ハル「鍵盤では、白と黒になっているけど、白と黒を平等に扱って、隣の鍵盤が半音か」
ハル「理屈としては、「半音上げて、半音上げて」は、「シャープにして、シャープにして」と、同じことだな」
ミッツ「それは、言い方がおかしい」
ハル「楽典としての表現方法の正しさではなく、理屈として……理屈が正しいかってことだ。理屈は、合っているよな」
ミッツ「そう、正しい」
ハル「この理屈から、楽典での正しい言い方を、理解するんだから」
背景に、カラオケの操作で「♯」「♭」のボタンのうち、「♯」を何度も押す様子を表示する。押す度に、「♯」の吹き出しが増える。
字幕で「二人共、中学生なので、カラオケの操作のことを、思い付いていません」を表示する。
ハル「あれ? 「半音」って、距離か? 半音が1つ分、2つ分、3つ分って」
ミッツ「そう。ドとレの距離が全音。その半分の距離だから半音。ドの全音高いのはレ。ドの半音高いのはド♯」黒板に、鍵盤の「ド」「ド♯」「レ」だけの簡単な鍵盤を書く。
ハル「鍵盤の白と黒を平等に扱うってことは、色の違いを無視するってことか? だったら、要するに、2つ分の距離が全音、1つ分の距離が半音か」
ミッツ「ザッツ・ライト(その通り)。白とか黒とか、♯とか♭とかナチュラルとか、そんなことは無視して、全音か半音かってこと」
ハル「わかった」
ミッツ。ちょっと考える。背景に「半音階的半音」「全音階的半音」の文字が浮かぶ。
ハル「わかったから、話を続けてくれ」
ミッツ。背景の文字「半音階的半音」「全音階的半音」が、ぼんやりと消える。
ミッツ。心の声。「(まあ、これは、そのうちでいいか)」字幕で、「この話は、第9話で説明されます」が表示される。ここの主題の「音符の音価」「拍子記号」から外れるため、気になった箇所は予告程度にしておく。
ミッツ「シャープは半音高くだよね。次にフラット。これは半音低く」
ハル「フラットが低いのか」
ミッツ「レの半音低いのは、レ♭」黒板のド♯の鍵盤に、「レ♭」も書く。
ハル「あれ? その鍵盤はド♯じゃないのか?」
ミッツ「そうなんだけど、レ♭でもある。黒鍵は、2つの白鍵に挟まれているから、このように2つの名前がある」
ハル「ほほう」
ミッツ「では、シャープやフラットで黒鍵を指示した後、また白鍵を弾くように指示するには、どうするか」
ハル「何も書かなければいいだろう?」
ミッツ「そうじゃないんだな。というのは、例えばドに♯を付けたら、しばらくは♯を付けたままでいたいこともある」黒板に、ドの音符を4つ続ける。最初の2つのドに♯が付いている。
ミッツ「ハルが言いたいのは、こういうことでしょ。これとこれは黒鍵で、これとこれは白鍵だって」
ハル「そう。それでいいだろう」
ミッツ「それでもいいんだけど、楽典では、こうしても4つのドはシャープで黒鍵の指示になる」2番目の♯を消す。
ハル「どうしてなんだよ。それじゃあ、不便だろう」
ミッツ「あたしに言わないでよ。これは決めの問題だから、そう決まっているのっ!」
ハル「算数の式で、掛け算と割り算の記号の方を先にして、足し算と引き算の記号を後にするようなものかな?」背景に式。指し棒で「これを先に計算」「その後で、これを計算」と記す。
数式で「1×2+3×4」があり、2つの「×」の記号から波紋のように同心円がいくつか広がり、隣接する数字を包むまで波紋が広がり、「これが先」とする。
ミッツ「まあ、よくわかんないけど、何かが便利だから、こうなっているの」
ハル「♯とかは、俺は「これを変える」だと思っていたが、「ここから変える」なんだな」
ミッツ「そう! まあ、音符に付く♯や♭は「臨時記号」で、有効範囲は、あれこれの理由がある。今の本題ではないから、詳しくは、そのうちに教える」
ハル「うん、そうなのか。で、何の話だっけ?」
ミッツ「もう、話の横道から、また横道に逸れるから、わからなくなんのよ……」黒板を見て、ミッツも何の話だったか思い出す。「……♯で黒鍵にしたのを、また白鍵に戻す方法でしょ」
ハル「そうだった」
ミッツ「白鍵に戻すには、ナチュラルを書く」黒板の、3番目のドにナチュラルを付ける。
ミッツ「こうすると……」音符を、1つずつ指しながら。「……シャープの黒鍵、シャープの黒鍵、ナチュラルの白鍵、ナチュラルの白鍵。ということ」
ミッツが、4つの音符を、1つずつ指すのに合わせて、吹き出しで文字が「♯の黒鍵」「♯の黒鍵のまま」「ナチュラルで白鍵」「ナチュラルの白鍵のまま」がポヨンと表示される。
ハル「なるほど。何かが付いたら、それを続ける。次に何かが付いたら、またそれを続けるってことか」
ミッツ「そう! 因みに、♯と♭は、白鍵から黒鍵に変えるから「変位記号」と呼ぶ。ナチュラルは「本位記号」と呼ぶ。ナチュラルは必ず白鍵だよ」
ハルは、ミッツのこの言葉から、「♯や♭は、必ず黒鍵」と誤解して、第9話で混乱する。
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