序章
甘ったるい、砂糖菓子みたいな女だった。
ストロベリー・ブロンドの、きらきらした髪。紫水晶のように澄んだ色の、小さな顔に収まり切らないんじゃないかと思うぐらいに大きな瞳。小さく可愛らしい、ぷるぷるとした唇。薔薇色の頬。妖精のように細い身体は、少女というにも幼く見えた。
総じて、現実味のない女だった。夢の世界の住人のような。それは彼女──アーシャ・スヴァルキアが、スヴェルダ王国の第二王女として、国王夫妻をはじめとした誰からも、この上なく愛されて育ってきたからに違いなかった。
「お姉様たちが言いますの。貴方のことを調べたと。貴方はひどい女誑しで、ほとんど詐欺師のようなお方なのだと」
合っている。
俺──ウィルヘルム・ルーベルデンは、女誑しの詐欺師だった。歴史あるディルセル帝国の第九王子なのに? 答えはイエスだ。王子だろうと、詐欺師であることもある。さて、どうしたものか──と困惑した顔を作りながら思案するウィルヘルムの前で、「でも!」と力強くアーシャは言った。
「でも、私、貴方と結婚したいのです!」
ウィルヘルムは、そのときばかりは表情を取り繕うことを忘れ、ヘイゼルの瞳を軽く見開いた。
「ですから──駆け落ちしましょう!」
……なんだって?
このお姫様は、一体、何を言っている──?




